目次
はじめに
最近、『銀のニーナ』、『ヒナまつり』と、大人×子供のハートフルコメディを読んだので、同系統の漫画『よつばと!』、『ばらかもん』の2つを加えて合計4作品で比較していきたいと思います。ヒナまつりに関しては若干毛色が違いますが…まあそれも後ほど。
主人公(保護者)の比較
よつばと! | ばらかもん | 銀のニーナ | ヒナまつり | |
名前 | 小岩井葉介 | 半田清舟 | 志摩崎修太郎 | 新田義史 |
初登場時の年齢 | 年齢不詳 (20代後半~30代前半) |
23歳 | 27歳 | 年齢不詳 (20代後半~30代前半) |
ヒロインとの関係 | 養子 | 近所の子 | 姪 | 世話係 |
職業 | 翻訳家 | 書道家 | 無職 | ヤクザ |
『天真爛漫な子供に大人が癒やされる』ことがこの手の大人×子供のハートフルコメディの基本的な話の流れです。主人公はヒロインの子供の方と思われがちですが、主に男性読者をメインターゲットにしているため、よつばと!以外はどれも(一応)主人公は大人です。
こうしてまとめるとどれも大人の主人公は20代~30代ですね。この辺りが感情移入するには無難なのでしょう。前述もしたように、よつばと!だけは完全に子供のよつば目線です。と言うか、よつばを透明人間の自分が常に見ている感じの視点です。よつばには海外で貰ってきた子との設定はあるのですが、作風的にもここは特に取り上げられることもなく終了でしょう。
ばらかもん、銀のニーナは駄目な大人が子供の天真爛漫さに触れながら立ち直っていく話で酷似しています。また、ヒナまつりはヤクザの新田を振り回すヒナが面白さになっています。
ヒロイン(主人公)の比較
よつばと! | ばらかもん | 銀のニーナ | ヒナまつり | |
名前 | 小岩井よつば | 琴石なる | 志摩崎ニーナ | 新田ヒナ |
初登場時の年齢 | 5歳 | 7歳 (小1) |
10歳 (小4) |
13歳 (中1) |
主人公との関係 | 義理の父 | 近所のお兄さん | 叔父 | 保護者 |
友人 | 綾瀬あさぎ 綾瀬風香 綾瀬恵那 早坂みうら |
久保田陽菜 山村美和 新井珠子 |
森沢亜里沙 小日向舞琴 |
三嶋瞳 アンズ マオ |
銀のニーナのニーナとヒナまつりのヒナ。
完全に子供なのでヒロインと言って良いのか微妙ですが、子供に関してはこの4作品で結構バラツキがあります。よつばは5歳、なるは7歳、ニーナは10歳、ヒナは13歳です。ヒナだけ少し年齢が離れていて中学生となっており、他3作品とは癒やしの部分がだいぶ違う方向性になっています。
年齢的にもニーナの10歳、11歳、もしくは小学生までがこの手の大人×子供のハートフルコメディでは限界でしょう。ヒナまつりのヒナ13歳まで行ってしまうと、天真爛漫な子供が大人を癒やす成分はかなり薄くなってしまいます。ただ、その分大人の部分も出てくるので、思春期特有の我が儘や葛藤、背伸びをした話や子供にはできない気遣いなんかで話の幅は広がるんですけどね。ここは好みの問題になってくるかと思います。単純に癒やしを求めるか、それとも癒やし成分が減ってもストーリー性を求めるか…。
ちなみに、個人的な感想ですが、癒やしの大きさでは、よつばと!>ばらかもん=銀のニーナ>ヒナまつりの順だと思います。見事に子供の年齢順ですね。
舞台と時期の比較
よつばと! | ばらかもん | 銀のニーナ | ヒナまつり | |
場所 | 紫陽花市 (架空) 20~30万人都市 |
長崎県 五島列島 |
長野県 北軽井沢 |
東京都 豊島区 |
住居 | 一軒家 (賃貸) |
一軒家 (賃貸) |
一軒家 | マンション 一軒家 |
主な舞台 | 自宅 隣の綾瀬家 近所 |
自宅 小学校 近所 実家 東京 |
自宅 小学校 近所 |
自宅 中学校・高校 組事務所 近所 |
初登場時の時期 | よつば5歳の夏 | なる7歳の夏 | ニーナ10歳の8月 | ヒナ13歳の秋 |
最新刊の時期 | よつば5歳の秋 (第13巻) |
なる7歳の翌冬 (第12巻) |
ニーナ10歳の翌4月 (第8巻) |
ヒナ16歳の春 (第10巻) |
それぞれの物語が展開される舞台を見ると、田舎ものがばらかもんと銀のニーナ。都会ものがよつばと!とヒナまつりになります。
明らかに癒やしを狙って描いているばらかもんと銀のニーナの舞台が田舎なのは納得ですね。この2つの共通点として、『駄目人間が天真爛漫な子供に癒やされて社会復帰していく』との物もあるので、偶然の一致と言うよりは必然の一致でしょう。
ばらかもんの半田は東京で書道の大先生を殴って都落ち。銀のニーナの修太郎は東京で失業して都落ち。失意の中で子供の天真爛漫さに癒やされる話ですから、『田舎へ逃げ帰る』とのシチュエーションはその失意をわかりやすく表すのに最適なのでしょう。
一方、都会もののよつばと!とヒナまつりの主人公は一応駄目人間ではありません。よつばと!の父ちゃんはパンツ一丁で家をウロウロしてだらけますし、ヒナまつりの新田はアウトローのヤクザなので、ある意味駄目人間のカテゴリーに入れても良いのですが、前述したばらかもんや銀のニーナのように失意の中立ち直っていく話ではないので、都落ちするシチュエーションもいらないのでしょうね。
また、時間の進み方を見るとここにもそれぞれ特徴が出ています。最も時間の進みが遅いのは勿論よつばと!。最も早いのはヒナまつりとなっています。
よつばと!はもはや説明不要の日常系漫画で、本当になんでもない1日や2日のでき事を1話でやるので全くと言って良いほど時間が進みません。第1巻時点でおそらく8月でしたが、第13巻まで進んでもおそらく11月です。この期間たったの3,4ヶ月…。これを良しとするかはまた個人の好みになりますね。
ばらかもんは第1巻で夏、第12巻で翌年の冬なので、8月から2月として7ヶ月経過したことになります。よつばと!よりはよっぽど時間はきちんと進むのですが、こちらもサクサク時間が進むわけではなくスローペースになっています。
銀のニーナは第1巻で8月、第8巻で翌年4月なので、8巻で9ヶ月進みました。よつばと!、ばらかもんよりも時間の進み方は早いです。
ヒナまつりは第1巻で13歳の中1だっったのですが、10巻で16歳の高1になっています。ただし、これは9巻で突然『3年後』との文字が出て時間が飛んだので、1つ1つ漫画の中で時間を消化して3年たったわけではありません。高校生編をやりたかったんでしょうね。9巻までの時間の流れは中1の話だけだったので、他3作品と比べてここだけを捉えると時間の流れは最も遅いかも知れません。
このように、基本的にこの大人×子供のハートフルコメディは時間が進むのが遅いです。理由は単純で、子供が成長してしまっては話の肝である『天真爛漫な子供が大人を癒やす話』が成り立たなくなるからです。この定石を打ち破ったのが『うさぎドロップ』なのですが…。うさぎドロップは今回の比較に入れませんでしたが、ラストのオチまでは物凄く面白いのでお勧めです。オチがまあ…あれですが…。
物語の比較
よつばと! | ばらかもん | 銀のニーナ | ヒナまつり | |
ストーリー性 | × | △ | ○ | ◎ |
時間の進み方 | × | △ | ◎ | ◎ |
絵柄 | ◎ | ○ | ○ | △ |
萌え要素 | △ | ○ | ◎ | × |
ヒロインの可愛さ | ○ | ○ | ◎ | △ |
最後に全体的な比較をしていきたいと思います。
ストーリー性に関してはよつばと!は全くと言って良いほどありません。これが魅力でもあり、また敬遠する理由にもなると思います。なんでもない1日が子供のよつばにとってはこんな風に冒険譚になっているんだよ、こんな特別な1日なんだよとの漫画です。子供の目線や感覚を凄くよく表していると思います。ただ、最近はよつばの言動がちょっとわざとらしくて、『大人が考えた子供の無邪気な言葉』になっている感が強いです。そんな中8ヶ月ほど休載してしまって、その間に見付けて読んだのが同系統のばらかもんでした。
ばらかもんは駄目人間の半田が天真爛漫ななるや村人に癒やされ、徐々に前向きになっていくとの基本線がしっかりとあるので、ストーリー性はよつばと!の比ではなくきちんとあります。まあよつばと!のストーリーの無さが飛び抜けているのですが…。ちなみに、よつばと!にストーリーが無いと言うのは悪口ではないです。読めば分かるのですが、これはよつばと!独特の魅力になっています。
銀のニーナはばらかもんを更にストーリーの進み方を早くした感じで、季節が変わり、年が明け、ニーナは進級して…と着実に話が進んでいきます。また、銀のニーナの記事でも書きましたが、外国人の少女が日本の文化や風習に触れて驚く様もよく描かれています。
ヒナまつりは他3作品とは若干毛色が違い、ハートフルコメディと言うよりもより笑いが多く入っていてストーリー性(何かが起こること)が最も強い漫画です。また、他とは違いヒナの正体、ヒナはどこから来たかなどの『謎』があるのが特徴です。そして年齢も最も高く13歳なので、天真爛漫な子供が大人を癒やすとの要素は最も薄くなっています。ただ、その分ストーリー性は最も強いので、先が読みたいとの欲求は一番強い漫画でした。
他の同ジャンルの漫画は…
今回は比較として挙げませんでしたが、当然他にもこのような大人×子供のハートフルコメディはあります。いくつか補足として追加してみたいと思います。
前述もしたうさぎドロップの他には、『赤ちゃんと僕』、『愛してるぜベイベ★★』あたりですね。どれも私は面白く読めたのでお勧めです。
総評
『天真爛漫な子供が大人を癒やす』と言う同系統の4作品を比較してきましたがいかがだったでしょうか。それぞれに違った魅力があり面白い漫画だと思います。
特徴をまとめると、最も癒やされるのはよつばと!。最も萌えるのは銀のニーナ。最もストーリーが面白いのはヒナまつり。最も楽しいのはばらかもん。こんな感じでしょうか。
最後に一言でその漫画を表してみたいと思います。
- よつばと!『子供目線の日常』
- ばらかもん『駄目人間が子供に癒やされて立ち直っていく』
- 銀のニーナ『ニーナが可愛い』
- ヒナまつりは『ストーリーが面白い』
関連リンク