「うる星やつら/高橋留美子」レビュー ~この楽しい世界に入ってみたくなる~ 5/5 (1)

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今回レビューするのは、高橋留美子さんの漫画『うる星やつら』です。

 

それでは早速レビューを書いていきたいと思います。

 

 

ちなみに、未読の人が知らない方が良いネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。

 

漫画とアニメの全話レビューを投稿しているので、よろしければご覧ください。

 

あらすじ

宇宙人である鬼族が、地球侵略を仕掛ける。鬼族は圧倒的な技術力と軍事力を保有しており、武力で容易に地球を手に入れるのでは簡単過ぎて面白くない。そこで、鬼族代表と地球代表とが一騎討ちで戦い、地球代表が勝った場合、おとなしく帰り、地球代表が敗れた場合、地球を占領すると宣言した。その一騎討ちは、鬼族の伝統に従い『鬼ごっこ』で行われ、期限内に地球代表が鬼族代表の角を掴むと地球の勝ち、鬼族代表が逃げ切ると鬼族の勝ちというものである。

 

地球の命運を賭けた「鬼ごっこ」の地球代表に選ばれてしまった高校生の諸星あたるは、当初やる気がなかったものの、恋人で幼なじみである三宅しのぶの色恋仕掛け(勝ったら、結婚してあげる)により、彼女と結ばれたいがために鬼族代表のラムを追いかけ始める。あたるがラムを追いかけつつ発した「勝って結婚じゃぁ〜」の一言は、あたるが恋人で幼なじみのしのぶを想っての発言であったが、ラムは自分に求婚しているのだと勘違いし、それを受け入れてしまう。そのため、鬼ごっこには勝利、地球は侵略を免れるが、ラムは諸星家に住み着いてしまう。

 

かくして、恋多き男・あたると宇宙から来た押しかけ女房・ラムの果てしなき鬼ごっこが始まる。そして、友引町はさまざまな災いや奇妙なでき事に巻き込まれていく。

 

長所と短所

  • ◎楽しい世界観
  • ◎なんでもありのストーリー
  • ◎個性的なキャラクター
  • ◎絵で表現する面白さ
  • ○漫画の完成度がどんどん上がっていくのが分かる
  • △後半は無茶苦茶さが減った

 

感想

登場人物紹介

今更にも程がありますし、漫画好きなら誰もが知っているとは思いますが、一応お約束なので登場人物紹介をしておきます。

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高橋留美子さん曰く主人公の諸星あたる。女好きにも程がある性格ですが何故か憎めません。

 

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本作のヒロインで宇宙人で鬼のラム。メチャクチャ素直で健気で善意の塊。

 

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元あたるの恋人の三宅しのぶ。お手机するくらい怪力です。

 

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あたるのライバル的立ち位置の面堂終太郞。面堂財閥の跡取りで大金持ち。

 

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男性として育てられてすっかり男らしく育った女性の藤波竜之介。父親との掛け合いはお約束。

 

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坊主のチェリーこと錯乱防。アニメではストーリーテラーになっていました。

 

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錯乱防の姪で巫女のサクラ。響子さんじゃないですよ。ちょっと油断して目尻を下げると響子さんになっちゃいますが…。

 

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友引高校教諭であたるたちの担任温泉マーク。あたるやラムという無茶苦茶な生徒達の担任する不幸な境遇。

 

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ラムの幼なじみで二重人格のランちゃん。ぶりっ子と凶暴さのギャップが可愛いです。

 

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ラムの幼なじみで福の神族の弁天。性格は完全に男です。

 

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ラムの幼なじみで海王星女王の雪女おユキ。おっとりしてますが怒ると周りに迷惑を掛けまくります。

 

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ラムの親戚の子供ジャリテンことテン。口から火を噴く凶暴な幼児。

 

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化け猫のコタツネコ。悲しい過去のせいでコタツに異常な執着を燃やします。

 

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元ラムの許嫁レイ。顔は良いのですが、大食いで油断すると牛になってしまいます。

 

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面堂終太郞の妹、面堂了子。兄の面堂終太郞をからかうことが生き甲斐です。

 

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面堂終太郞のライバルとトンちゃんこと水乃小路飛麿。自分でも存在を知らなかった妹に振り回されます。

 

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水乃小路飛麿の妹、普段は甲冑を着ている男性嫌いの水乃小路飛鳥

 

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ラムたちが通っていた中学校の現在のスケ番、しゅがあ、じんじゃあ、ぺっぱあ。先代のスケ番ラム立ちにことあるごとに勝負を挑んでくるのですが…。

 

◎楽しい世界観
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なんと言ってもうる星やつらはその楽しい世界に憧れます。漫画の中でその世界に入りたいと思える上位ではないでしょうか。毎日のようにドタバタコメディが繰り返され、終わりのないような永遠とも思える楽しい時間を過ごしている感じがします。

 

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地球が話のメインですが、ラムたちの星や、過去の話なんかも面白いです。特に、ラム、ラン、弁天、おユキの子供時代はもう無茶苦茶。

 

◎なんでもありのストーリー
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ジャンル的にはSFラブコメか、SFギャグか…。どちらにしろラムがいることで宇宙要素、SF要素が色濃く出ています。そのため、『宇宙人だから…』、『宇宙の未知の技術だから…』でなんでもありなんです。空を飛ぶのは当たり前ですし、地球に石油の雨が降るのも、キノコで覆い尽くされるのもなにからなにまでアリになっちゃうんです。この幅の広さはなかなかないです。

 

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ギャグ漫画とは言え、現実的な世界が舞台だったりすると、どこかでストッパーが掛かり、ある程度予想の範囲内に話は収まるのですが、うる星やつらは地球規模でおかしなことになることも当たり前です。たまに宇宙人が出てきて無茶苦茶になる…なんてアクセントがあるギャグ漫画はよくあるのですが、それが毎回ある感じです。

 

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宇宙人が絡まない話でも、男にしか見えない竜之介と浜茶屋の親父、チェリーこと錯乱防、コタツネコなど、とても現実ではいないキャラクターが騒動を巻き起こすので無茶苦茶になります。この無茶苦茶感、ごった煮感、何でもあり感は、間違いなくうる星やつら独特の魅力だと思います。

 

大抵ここまで何でもありにしちゃうと、話にまとまりがなくなったり、登場人物が多すぎて覚えきれなかったりするのですが、そんなことはないんですよね。きちんと毎回話はまとまってオチますし、キャラも適度な頻度で出てくるので忘れません。

 

◎個性的なキャラクター

個性的なキャラクターもうる星やつらの大きな魅力の1つです。

 

ちなみに、メガネはほぼアニメオリジナルのキャラクターですね。『ほぼ』と言うのは、一応漫画の初期も初期である2巻くらいまではチラッと出てきて、一言二言台詞も言っているので、漫画にメガネがいなかったかと言うとそんなことはなく、きちんと漫画にも存在しているからです。とは言え、モブもモブのメガネがアニメであそこまでのキャラになったのですから、ほぼアニメオリジナルキャラクターと言ってしまっても差し支えないレベルです。

 

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今回、10年以上ぶりに漫画を再読しましたが、新たな発見としてランちゃんが凄く可愛くて…。女の子らしいフリフリの服、お姫様のようなフワフワの髪、可愛らしい顔、ぶりっ子な性格なのに、1度スイッチが入ると「おんどりゃあ~われぇ~」など、関西弁(?)でドスをきかせる悪態キャラに変身。この二面性のギャップにやられました。

 

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腕力は普通なので、空を飛ぶラムや喧嘩番長の弁天、周りを凍らせるおユキちゃんには対抗できません。しかし、武器の扱いに精通しており、ロケットランチャーらしき武器を使いまくるのも面白くて可愛かったです。可愛いフリフリの服で、可愛い顔して…で、「おんどりゃあ~ぶっ放してやる~」とロケットランチャー発射ですからね。これもギャップにやられました。今回うる星やつらを読んで1番好きなキャラになったかもしれません。

 

◎絵で表現する面白さ

私は同じ高橋留美子さんの漫画『めぞん一刻』も大好きなのですが、このめぞん一刻とはまた違った面白さがうる星やつらにはあります。めぞん一刻のレビュー記事や全話レビューにも何回も書いていますが、このめぞん一刻は『会話の面白さ』が突出しているんです。会話の応酬2,3往復で勘違いが実に良く描かれていて、表面上話が通じているのに、本当は話が通じていない、「え?」、「ん?」となる面白さです。一方、このこのうる星やつらは絵で面白さを色濃く表現しているんです。

 

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具体的に一例を挙げます。ラムは料理が物凄い下手です。宇宙の料理番組を見ながら、その通りに本人は作っているつもりなのですが、TVから「絶対に目を離さないでね!」と言われた工程で、目を離している絵があり、TVから「泡立て過ぎちゃダメだよ!」と言われた工程で、平然と鼻歌を歌いながら思い切り泡立てる絵があり…。このように、うる星やつらめぞん一刻と違い、『会話の面白さ』より、『絵の面白さ』が際立っています。

 

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うる星やつらめぞん一刻は当然同じ作者の漫画ですし、連載時期は一部被っていて同時連載してもいたのですが、この2作品では結構面白さの方向性が違います。その理由としては、これもめぞん一刻の記事で触れましたが、めぞん一刻は完全に現実世界が舞台であることが挙げられます。現実世界を舞台にした、等身大の登場人物の恋愛がテーマになっているので、いくら面白くギャグを入れようと、人が空を飛んだり、宇宙人と追いかけっこをするなど、わかりやすいギャグは描けません。なので、面白さを表現するのに必然的の『会話』を使わざるを得なかったんだと思います。

 

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一方、うる星やつらはヒロインからして宇宙人の鬼ですからね。宇宙人の友達はたくさん出てきますし、宇宙の変な道具もたくさん出てきます。なので、わざわざ会話の応酬で面白さを表現しなくても、空を飛ぶ、地球規模の鬼ごっこをするなど、絵を目で見て分かりすい面白さに重きを置くようになっていったのだと思います。これも作品の性質上必然ですね。なるべくしてなった感じです。

 

○漫画の完成度がどんどん上がっていくのが分かる
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うる星やつらが連載されたのが、1978年から1987年の約10年間です。最初の頃作者は大学生でした。そこから10年間で目に見えて漫画が上手くなっていったのがよくわかります。個人的には通常版の単行本7巻から急に話の流れやまとめ方が上手くなったなった印象を受けました。ゲーム的に言うと覚醒したって感じでしょうか。絵も小綺麗にまとまってきて、話の流れがスムーズになって読みやすさが抜群に良くなりました。画像はその7巻の1ページ。コマの流れもスムーズで、ギャグのテンポも非常に良いのでスラスラ読めてしまいます。

 

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このようなギャグ漫画ではお約束ですが、ギャグの合間にたまに良い話を入れてくるんです。普段は馬鹿な話ばかりをやっているのに、そのバカを演じていたキャラで急にちょっと良い話や切ない話をするので、このギャップにやられちゃうんです。こち亀もそうでした。普段のギャグ路線とちょっと良い話の落差で、余計に面白く感じちゃうんです。

 

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また、めぞん一刻でもそうでしたが、絵柄の変遷も凄くて、最初期の頃と終盤では別人のようです。個人的にはとめぞん一刻やうる星やつらの終盤(1985年頃)の絵柄が、高橋留美子さんの絵柄の中では1番好きです。

 

ここで少し主要キャラの絵柄の変遷を見ていきます。

 

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ラム。

 

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三宅しのぶ。

 

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ランちゃん。

 

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弁天。

 

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おユキ。

 

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週刊連載の10年間ですからね。どんどん絵が上達しているのがよく分かります。漫画独特の顔のデフォルメ(目が大きいとか鼻が線とか)と、顔に比べてリアルっぽい体のバランスが最高にマッチしていて、実に漫画らしい絵柄だなと感じます。

 

△後半は無茶苦茶さが減った

漫画どんどん上手くなっていく一方、初期の頃のような無茶苦茶で荒々しい話はどんどん減少していきました。勢いだけで描いていた初期と、テクニックやコツを覚えて上手く描けるようになった中盤以降って感じでしょうか。どちらが好きかは好みによりますが、初期の頃は絵柄こそ古くて今見ると厳しいものがあるのですが、常識外の発想やパワーは凄かったです。

 

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初期の頃(主に通常版の6巻まで)は、強引に話を1話にまとめた力強い1話完結物でしたが、後半は練り込まれたストーリーを複数話にわたってやることが多くなりました。話の面白さ自体を楽しむなら中盤以降で、1話完結の無茶苦茶な話を楽しみたいなら初期ですね。後半は物凄く綺麗な流れの話が多くなりました。この辺はストーリー漫画のめぞん一刻を同時連載していたので、そっちでノウハウを培ってうる星やつらみ持ってきた感じでしょうか。

 

総評

わかってはいましたが再読するとやはり面白いですね。感情移入やストーリー性ではめぞん一刻に軍配が上がるものの、楽しそうな世界観や個性のあるキャラクターの豊富さではうる星やつらに軍配が上がると思います。好みの問題や作風の違いなので、どちらが上と言うわけではありませんけどね。

 

終わり方も良かったのですが、今回はその当たりは省きました。何故かと言うと、最終エピソードや終わり方に関しては、アニメ映画の完結篇がきっちりやっているので、後日そちらの感想として別個に記事を書くかもしれません。

 

こんな人にお勧め

  • ドタバタコメディが好きな人

 

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