漫画全話レビュー「めぞん一刻を終えて」 5/5 (6)

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はじめに

長いことめぞん一刻の漫画全話レビュを書いてきましたが、なんとか無事最後までやり遂げることができました。

 

ここでは、今まで書いてきたことと被る部分も多いのですが、漫画全話レビューを終えての総括として、めぞん一刻という漫画の魅力や、改めて読み直して分かったこと、作品の分析などを総括として書き残しておきたいと思います。

 

漫画とアニメの全話レビューを投稿しているので、よろしければご覧ください。

 

原作漫画のアニメ未消化率を考える

巻数 話数 サブタイトル
4 33 あれがいい
34 SOPPO(そっぽ)
37 祭りの暗い片すみで
5 44 風邪に抱かれて
45 星をつかむ男
46 願ひ事かなふ
48 見るものか
49 なんて器用なの
53 子供のいる情景
6 55 ちょっと休もうか
56 BACHAN IN TOKIO
61 夏色の風と
番外 一刻島ナンパ始末記(OVA化)
7 69 駆け落ちクラッカー
76 闇の中の顔
8 78 一緒に住もうね
79 ジャブ&うっちゃり
80 仲よき事は
81 雨に濡れても
82 神経過微
83 なんでもありません
84 スクランブル・キッド
9 93 ひとつだけお願い
10 100 桜迷路

 

原作漫画からは24話分アニメ化されていませんでした。全161話なので、アニメの原作漫画未消化率は、「(24÷161)×100≓14.9%」となります。およそ15%ですね。6~7話に1話カットされていた計算になります。しかし上表を見て貰えると分かるように、アニメ化していない話は8巻に集中しています。これはそう、二階堂の話です。二階堂はアニメでは存在しないことになっていますからね。では二階堂以外の話で未消化率を計算してみると、「(17÷154)×100≓11.0%」となり、大体9話に1話アニメ化していない計算になります。こう見ると一応、原作に沿ってアニメ化している感覚になりますね。

 

二階堂がメインの8巻以外を見てみると、初期の4~6巻のアニメ消化率が悪いことが分かると思います。この時期はアニメ第2期の暗黒期で、完全にカットされたり、大幅に改変されたり、アニメオリジナルを7話も入れた時期で、ファンの評判も芳しくありませんでした。丁度この頃の原作にあたるのが4~6巻です。本来はアニメ第2期から第3期初期に消化するエピソードだったのですが、残念ながらこの時期のアニメの方針が、オリジナル性を強く出すとのことだったようで、そこに当たってしまいました。

 

アニメ第2期は、オリジナルエピソードが多く、もしかしたらオリジナル要素満載で成功した、うる星やつらの二匹目のドジョウを狙ったのかも知れませんが、ご存じの通り敢えなく失敗し、原作路線へ戻りました。それも当然で、めぞん一刻はうる星やつらとは違い、原作漫画は完全なストーリー漫画になりましたからね。オリジナル要素を入れる余地なんてなくなったんです。

 

アニメが放送開始された時期は1986年3月26日で、その頃原作漫画のめぞん一刻は何をやっていたのかと言えば、第122話の「沈黙は金ヅル」辺りです。アニメの制作はもっと前から始まっていたはずなので少し遡っても、八神のエピソード終盤くらいでしょうか。更に第2期から急にオリジナル要素が増えたことを考えると、第2期のスタッフは原作のもっと先まで十分見ていたはずです。つまり、とっくにめぞん一刻がストーリー漫画になってからだったので、オリジナル要素を入れる余地があまりないのはわかるはずなのです。この辺りは戦略ミスというか、予見の甘さと言わざるを得ないと思います。アニメにする原作が足りなかったわけではなく、アニメ化していない話が24話もあったことは、今まで述べてきたとおりですからね。

 

さて、話を全体のアニメ消化率に戻しますが、終盤はストーリーが全て繋がっているので、カットしようにもできない作りになっていて、11巻以降は全てアニメ化されています。それを踏まえて、アニメ化されていないエピソードは10巻までに集中しているので、そこまでの原作漫画未消化率を計算すると、「(24÷106)×100≓22.6%」となり、およそ23%となりました。未消化率が一気に跳ね上がります。おおまかに言えば4話に1話アニメ化されていないんですね。これはもうかなりの数字です。

 

このようなアニメ未消化率からも分かるように、原作漫画でしか読めない話が24話もあります。24話と言えばアニメだと2クールの半年分です。アニメはアニメで素晴らしいのですが、アニメしか見ていない人は、是非原作漫画を読んだ方が良いと思います。特に10巻までのアニメ未消化率が高いので、初期から中盤に掛けてのドタバタコメディ、ラブコメの要素が強い話が多く、単純に読んでいて楽し話が盛りだくさんです。

 

めぞん一刻の3部構成について

漫画のめぞん一刻全話レビュー中に、初期だとかドタバタコメディ編だとか私は何回か書いてきましたが、それについて少し説明したいと思います。これはあくまで個人的で勝手な解釈によるパート分けです。公式ではないので予めその点をご了承下さい。

 

まず簡単に表でざっと説明するとこのようなことになります。

 

第1部 第2部 第3部
ドタバタコメディ編 ラブコメ編 ラブストーリー編
漫画
始まり
第001話
「隣はなにを…!?」
第087話
「VS.乙女」
第118話
「犬詣」
漫画
終わり
第086話
「見栄リクルート」
第117話
「弱虫」
第161話
「P.S.一刻館」
話数 86話 31話 44話

 

これがアニメになるとどうなるのかと言うと下表のようになります。

 

第1部 第2部 第3部
ドタバタコメディ編 ラブコメ編 ラブストーリー編
アニメ
始まり
第01話
「お待たせしました!私が音無響子です!!」
第54話
「女子高生パワー爆発響子に恋の宣戦布告」
第81話
「愛の執念!明日菜はやっぱり懲りない女」
アニメ
終わり
第53話
「許して惣一郎さん!響 子涙の再婚宣言!!」
第80話
「五代ドッキリ!突然八神のバニーガール!!」
第96話
「この愛ある限り!一刻館は永遠に…!!」
話数 53話 27話 16話

 

アニメでは、八神退場シーンが改悪されてしまったため、若干2部と3部が混ざってしまっているのですが、このような形の構成になります。

 

各部で話数にかなりばらつきはあるのですが、物語の内容や構成、コンセプトから見て、この分類でおおよそ合っていると思います。話数による3部分けではなく、内容による3部分けです。

 

第1部 ドタバタコメディ編

この第1部は、言い換えると「初期」、「前期」とも言えます。

 

この第1部のドタバタコメディ編は、その名の通り漫画のジャンルとしてはドタバタコメディであり、恋愛要素はその味付けに過ぎません。この第1部を表現するときに私がよく使うのが、「楽しいお祭りがいつまでも続くような毎日」です。登場人物同士の関係は付かず離れず進展せず、一刻館と言う閉じた世界で、延々とドタバタコメディが繰り返されます。

 

面白いことに、めぞん一刻は現実と同じように時間が進むにも関わらず、一刻館の閉じた世界で、この楽しいお祭り騒ぎが毎日続くようなお話が中心となって構成されているのです。一応基本線として、五代君と響子さんの恋愛との軸はあるのですが、それは軸でありながらもドタバタコメディを描くための装置としての役割しか持っておらず、ほとんどこの2人の関係性は変わりません。要は、五代君と響子さんの恋愛をだしに、ドタバタコメディを描いているのが第1部のドタバタコメディ編です。

 

少し注釈を付けるとただのコメディではありません。「ドタバタ」が重要です。これは映画でもジャンルが確立しており、そちらの呼び方だと、「スラップスティック・コメディ」となります。これを日本語訳にしたのが「ドタバタ喜劇」であり「ドタバタコメディ」です。このスラップスティック・コメディは、サイレント時代の映画に多く存在したジャンルで、音声が無い時代なので、大袈裟な動きや表現で観客の笑いを引き出すコメディの一種で古典です。今はもう廃れてしまったジャンルなのですが、この面影は映画以外の漫画やアニメで引き継がれていると思っています。映画でわかりやすく言うとチャップリン映画ですね。

 

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そこでめぞん一刻を思い返すと、めぞん一刻は、五代君の白昼夢からの電柱激突や、響子さんが図星を突かれてギクッとなるシーン、一の瀬さんや四谷さんや朱美さんの大袈裟な仕草や表情。これらを見ていくと、やはりドタバタコメディであり喜劇であることがおわかり頂けると思います。めぞん一刻は会話の妙や勘違いの連鎖も面白い要素なのですが、そこで取られる登場人物のリアクションが実に喜劇っぽく、他のコメディ漫画とは若干色合いが違うんです。これは同じ作者の高橋留美子さんが描く、うる星やつらやらんま1/2でもあまり見られない特徴で、高橋留美子漫画では、このめぞん一刻で格段に色濃く出ています。

 

 

以前にも少し触れましたが、うる星やつらは宇宙人を出したり、宇宙規模の馬鹿なことができるので、細かいリアクションや表情に頼らずとも、面白い表現ができました。また、らんま1/2では、男が女になるなどの、これまた表情やリアクションに頼らずとも面白い表現ができました。一方、めぞん一刻はどうかと言えば、宇宙規模の馬鹿もできず、男が女に変身する変わり種もなく、あくまで現実に則った世界の、ごく有り触れた日常の話なので、このような喜劇的要素を入れた、もしくは入れざるを得なかったのだろうなと思います。この辺は面白さを読者に伝えるために苦労したと思うのですが、結果的にこれが他の高橋留美子作品とは、一線を画す作品になった所以でもあると思います。

 

「楽しい」との感情だけで言えば、私はこの第1部のドタバタコメディ編が一番好きです。この楽しいお祭りのような毎日をいつまでも読んでいられる、疑似体験できるような感覚になるこの楽しさ。クスッと笑えて、時にはほっこりしたり感動したり。物語が進まないからこその安心感がありました。五代君と響子さんの恋愛の装置は消えようが無いので、1度歯車が回り出せば、一気に終わりまで持って行けることは、読者なりにわかっていましたからね。心のどこかで、このままずっとめぞん一刻の楽しい世界を見ていたいとの気持ちがありました。

 

第2部 ラブコメ編

この第2部は、言い換えると「中期」、「中盤」とも言えます。また、ここは八神が主人公のような構成も多いので、「八神編」と言ってもいいですね。

 

この第2部は当然名前の通りラブコメパートです。それもコテコテのラブコメで、それだけにラブコメの教科書と言ってもいい程良くできていて、お邪魔キャラが主人公を好きと迫ってくる、それに戸惑う主人公、そして嫉妬するヒロイン、お邪魔キャラとヒロインの火花バチバチ。このラブコメのお約束の流れが次から次へと襲ってくるパートです。そしてこの八神登場から退場までがこの第2部です。

 

今まで長いこと毎日お祭りが続くようなドタバタコメディが、一刻館を中心に繰り広げられてきたのですが、八神という一刻館の外のキャラの登場により、突然閉じた世界から広い世界へと舞台は広がり、止まっていた一刻館の時計も動き始めました。

 

何故八神が必要だったかは何回も書いているのですが、こずえちゃんはねんねで五代君と深い関係にならないことこそが、五代君とこずえちゃんの関係性の面白さの肝だとしてしまったこと。そして響子さんをライバルとは気付かない設定にしてしまったため、こずえちゃんではどうやっても響子さんの気持ちを動かし、時間を進めることができなかったのです。この部分は少し作者も悩んだのかも知れません。

 

本来、ライバルキャラとしてとしてこずえちゃんを登場させたと思うのですが、物語が進むにつれ、いつのまにか響子さんとは争わないポジションになってしまいました。実際、第1部の初めの頃は、響子さんに対抗して五代君と腕を組んでみたり、仲が良いところをアピールしていたのですが、こずえちゃんのエピソードを進めていくうちに、どんどん天然でねんねが一人歩きしていき、ライバルキャラではなくなってしまいました。そこで、響子さんとライバル関係で、バチバチ火花を散らし、響子さんも認めたくなかった惣一郎さんの忘却と、五代君への思いを気付かせるために、どうしてもこずえちゃん以外のライバルキャラが必要だったのです。

 

今までの第1部では、後半からは話がまたがるエピソードも出てきましたが、基本的に1話完結で、「ストーリーの続きが気になる」作りではなく、その時その時の会話の掛け合いや勘違いを楽しんでいたのですが、この第2部のラブコメ編からは、ストーリーが基本的に繋がる作りに一変しました。となると、楽しみ方も変わるもので、その瞬間の会話の掛け合いや勘違いを楽しんでいた第1部とは打って変わり、「先が気になる」漫画へと変貌を遂げました。

 

大雑把に言うと、1話完結のドタバタコメディから、続き物のストーリー漫画になったので、この続きが気になる気持ちが湧き出るのは正しいんですよね。初めて読んだときは、次のコマ!次のページ!次の話はどうなるの!とページをめくる手が止まりませんでした。記憶をなくしてもう1度めぞん一刻を読みたいです…。

 

ついこの間まで1話完結物のドタバタコメディをやり、それで人気を博していたのに、突然この第2部からはストーリー物のラブコメに変わり、それでも面白さを維持、もしくは向上させるのは本当に凄いです。高橋留美子さんは他にも面白いヒット漫画を描いているのはご存じの通りなのですが、漫画を読んでため息をつき、この人天才過ぎるだろと思ったのは、やはりめぞん一刻がダントツです。

 

物語の構成の変化についてもう少し補足すると、今までは響子さんを頂点とした、響子さん、五代君、三鷹さんの三角関係が物語の基本だったのですが、第2部からはこのメインの三角関係が変わり、五代君を頂点とした、五代君、響子さん、八神の三角関係になりました。勿論、三鷹さんもこずえちゃんもちょくちょく出てくるので、明確にこの三角関係だけということではないのですが、中心にドカンと存在する三角関係は、第2部ではこの五代君、響子さん、八神の三角関係に変わりました。

 

これはなんとなく漫画を読んでいると気付かないのですが、話の骨格がまるで変わったので大事件です。ところが、これだけ骨格が変わったことを、読者に違和感として感じさせない高橋留美子さんのスムーズな話の流れ、移行のさせ方は感心せざるを得ません。第1部から第2部では、実は登場人物だけは同じで、別世界のパラレルワールドの話を書いていると言って良いくらい骨組みは変わっていて、本来もの凄く違和感を感じるはずなのですが、それがまるでありませんでした。読者にとっては漫画が面白ければ良いわけで、物語の骨組みが裏側で変わろうと関係ありませんからね。違和感を感じさせず、そのまま本当は全く違う構成の話に持っていくことができるのは上手いです。そしてこれだけ物語の骨組が変わったのですが、今までのめぞん一刻の面白さは損なわれず維持しているのもまた凄いんです。

 

第3部 ラブストーリー編

この第3部は、言い換えると「後期」、「終盤」とも言えます。

 

これはもう皆さんおわかりの通り、ラブコメの「コメ」の部分がバサッと抜き取られ、大人のしっとりしたラブストーリーのパートになりました。ところが、コメディの部分は少なくなったものの、要所要所でズバッとタイミング良く笑えるポイントがあったり、会話の妙でクスッとさせたりが良いアクセントになり、切ないだけではない、ドタバタコメディだった頃の隠し味を残した、めぞん一刻ならではのラブストーリーとなりました。ただしっとりとしたラブストーリーなら他にもあるんです。しかし絶妙のタイミングで、そして押しつけがましくもなく、笑えるポイントを要所要所に入れるバランス感覚の良さは、めぞん一刻ならではでしょう。このバランスの良さは実に絶妙で、しっとりとしたラブストーリーの雰囲気を壊すことなく、それでいてめぞん一刻ならではの滑稽な勘違いや笑いが入っていました。

 

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第2部でこずえちゃんが動かせなかった響子さんの気持ちを、八神がガンガン動かし、既に心の中では五代君1本に絞っていることは読者にも明確で、あとはどう紆余曲折を経て五代君とくっつくかを見守るパートでもあります。もうこの時点ではゴールの予想図は読者には見えていて、地球がひっくり返っても三鷹さんとくっついたり、誰ともくっつかずなんてこともないのはわかりきっていたので、あとはめぞん一刻と言う物語がどうやって終わるのか見守るばかりです。

 

このように、めぞん一刻は私的な分析で恐縮ですが、話の内容や構成で分けると、大きく3つのパートに別れることがご理解頂けると思います。第1部ののドタバタコメディ、第2部のラブコメ、第3部のラブストーリー。めぞん一刻は1つの漫画でありながら、3つのジャンルを楽しめる珍しい漫画でもあるのです。更にそれが希代の天才漫画家、高橋留美子さんの漫画なのですから面白いに決まっています。

 

蛇足ですが、もし物語を2つに分けるとしたら、それは勿論「桜迷路」です。桜迷路以前は、ドタバタコメディ、ラブコメで笑いの要素が色濃く出ていたのですが、桜迷路以後は笑いの要素が薄くなり、作風が大きく変わったターニングポイントです。一応今回はもう少し細かく3部構成の話をしましたが、桜迷路前後でも分けられます。

 

八神いぶきの重要性

八神はなにも読者の食いつきをよくするために、わかりやすい女子高生キャラを出したわけではないんです。…いやまあ多少その腹づもりはあったのかも知れませんが…。今まで書いてきた、物語が3つに別れる構成を読んで頂ければ分かるように、めぞん一刻は八神登場前、八神登場中、八神登場後に別れます。個人的に八神が好きなので、それで贔屓目に見て八神を重要な位置だと推しているのではなく、本当に八神登場前、中、後で、めぞん一刻の漫画のジャンルが変わるんです。

 

八神登場前は明らかなドタバタコメディでした。ところが最後にはしっとりとした大人のラブストーリーへと内容が激変したのですが、いきなり第1部のドタバタコメディから、第3部のしっとりとした大人のラブストーリーに物語は変われるでしょうか。答えは否です。間に第2部の八神ラブコメ編があったからこそ、ドタバタコメディ→ラブコメ→ラブストーリーと、違和感なく物語が緩やかに変わっていけたのです。このような意味でも、八神のキャラはめぞん一刻では欠かせないのです。

 

八神はあくまでヒロインの恋路を邪魔するお邪魔キャラなので嫌いな人もいるでしょう。しかしもう1度読むときは、この辺りの物語への貢献度を念頭に置いて読んでみて下さい。きっとめぞん一刻で、最も欠かせないキャラの1人であることが分かって頂けると思います。

 

一番好きなキャラ

八神の話が出たところで、一番好きなキャラの話を少ししたいと思います。

 

一番好きなキャラは響子さん!と言いたいところですが、そこは難しいんです…。勿論響子さんはヒロインであり、仕草や嫉妬含めて可愛く面白いので大好きなのですが、好き嫌いで語れる次元を超えているんです。言ってみれば響子さんは他のキャラとは別次元に存在していて、比較対象としてもはや見られないところに存在してしまっています。好き嫌いでは語れないんです。少し現実的に表現すると、○○ランキング何年連続1位で殿堂入りとの感じでしょうか。

 

 

と、いうことで、響子さんは殿堂入りなので、好き嫌いの対象外との前提で、響子さん以外のキャラで一番好きなキャラを選ぶと…はい、八神です。やはりこのキャラは色々な意味で良いんです。八神はヒロインのお邪魔キャラであり、そのお約束からすれば、いやらしくて意地悪で邪魔ばかりする憎たらしい奴でも良いのですが、この八神は本当に「良い子」なんです。

 

本気で五代君を好きで、五代君以外には目もくれない一途さもあり、響子さんに対して姑息な手段を使って五代君を落とそうともせず正面からぶつかり(かなり無茶苦茶ですが)、自分に酔っている節はあるものの、全ての行動原理は「五代君のために」でした。言動を見ていると憎むべきところがないのです。そして最後は、死んでしまった惣一郎さんと五代君との間で悩む響子さんを察し、叱咤して五代君からは身を引きます。これはもう八神の性格好きになってしまいますよ…。

 

初めて読んだときは、八神はちょっと邪魔なキャラだなと思い、特に思い入れも無かったのですが、何回か読んでいるうちに、八神の素直さや実直さ、五代君を思う本気の気持ち、そして響子さんの思いには敵わないと悟り、自ら涙をこらえて身を引く気持ちも感じ取れるようになると、もう八神を好きにならずにはいられませんでした。

 

最初に読んだときは、あまりのめぞん一刻の面白さに、はやる手を抑えながら興奮して読んでいて、細かい脇役の心情や動向にまで目を配ることはできなかったのですが、2回目以降は脇役の心情や細かい心理描写まで読み取る余裕ができたので、一気に八神の魅力が理解できました。

 

普通、ヒロインのライバルキャラは、読者から疎まれても不思議ではなく、寧ろそれが普通なのですが、八神の場合は最後まで良い子でした。また、これは五代君のライバル三鷹さんにも当てはまり、三鷹さんもやはり男らしくて良い人なんです。めぞん一刻の素晴らしいところの一つに、登場人物が皆良い人と言うこともあります。一刻館の住人は…微妙なのですが…まあそれは一旦置いておいてですが…。皆生きることに一生懸命なんです。

 

終わり方の素晴らしさ

この件に関してももう何度も書いているのですが、やはり書かずにはいられません。めぞん一刻の終わり方は素晴らしいです。もっと言えば完璧です。たくさんの漫画を読んできましたが、終わり方でこれを超える漫画とは出会っていません。

 

謎やアレはどうなったんだとの思いを何一つ残すことなく、全てにおいて決着が付きました。読者にその後を想像させる終わり方は、完結後も妄想をできる楽しさがある反面、納得させる終わり方を放棄したとも受け取られかねず、消化不良になってしまう面もあります。完璧に終わらせる終わりか方か、想像の余地を残す終わり方か、どちらが良いのかは一概には言えないのですが、個人的には始まったらきちんと終わって欲しいので、「あとのことは読者の想像にお任せします」終わりは好きではありません。

 

終わり良ければ全て良しとの格言もあるように、終わり方が良ければその物語全体の印象もぐんとアップします。その点、めぞん一刻は全ての人物、全ての事柄に完璧に決着が付き、それでいて全員が幸せになっている、もしくはずっこけるようなお笑いオチ(二階堂望など)だったので、気分良く物語を終えることができました。反面、終わりが悪いとそれまで面白かったものが全て台無しになってしまうことがあります。個人的な感想でこれを挙げると、GANTZや20世紀少年です。途中までは最高に面白かったのですが、オチで「え…?」となってしまいました。

 

 

色々な漫画や映画の終わり方を見ている中でも、やはりこのめぞん一刻の後味の良さはも物凄く良く、全てが晴れやかで、漫画を読んでいるだけで、実際は自分が何か成し遂げたわけでもなく、誰かと幸せにくっついたわけでもないのに、得も言われぬ幸福感に包まれてしまいました。漫画を寝っ転がりながら読んだだけで、こんな幸福感に包まれた漫画は後にも先にもこのめぞん一刻だけです。

 

めぞん一刻エピソードランキング

さて、ここで独断と偏見による、私的エピソードランキングを発表です。

 

楽しい話

【第1位】第089話「体育祭の指導と管理」

 

【第2位】第090話「パジャマでお邪魔」

 

【第3位】第112話「秋の罠」

 

案の定、八神の話ばかりになってしまいましたね。あくまで個人的なランキングなのでゴメンナサイ。でも仕方がないんです。八神の話は単純に読んでいて楽しい話が多いのですから。読み終わって、「あ~面白かった~楽しかった~」とニンマリ笑うエピソードはやはり八神編に多いんです。

 

笑える話

【第1位】第051話「一刻館の昼と夜」

 

【第2位】第023話「帰らざる彼」

 

【第3位】第083話「なんでもありません」

 

前述の楽しい話と少し被りますが、こちらは笑える話ということで、プッっと吹き出してしまうような話のランキングとなります。もう少し噛み砕いて書くと、「お馬鹿な話」ですね。そういう意味で、一刻館の常識人であるはずの響子さんの壊れぶりや、五代君の馬鹿な意地の張り方、そして二階堂の話などを挙げました。

 

二階堂の話はこのような笑える話が多いので、めぞん一刻で笑いたい場合にオススメで私も好きなのですが、人によってはこの二階堂部分は中弛みと感じるようで、評価にばらつきがあるようです。

 

温かくなる話

【第1位】第016話「桃色電話」

 

【第2位】第018話「キャンパス・ドール」

 

【第3位】第063話「しわのあるキューピッド」

 

こちらは心が温かくなる話、ほっこりする話となります。桃色電話とキャンパスドールは、初期のドタバタコメディの中では異彩を放っていて、ドタバタコメディの中に突然こんな良い話が出てきたので、読んだ当時ビックリし、そして「めぞん一刻すげー!!」となった思い出深い話です。この桃色電話~キャンパスドールの流れで、私は完全にめぞん一刻にやられたんです。

 

また、第3位のしわのあるキューピッドは、お婆ちゃんという存在を知らない私は羨ましく、そして暖かさを感じながら読んだ話です。デートが実は成功だったことを、五代君と響子さん以外は知らず、お婆ちゃん含め、他の人は失敗したと思っているのですが、全容を知っている読者には、この誤解や流れが全てわかっていて、ちょっとした神様目線で物語を見ている、不思議な感覚になる話でもありました。

 

辛い話

【第1位】第100話「桜迷路」

 

【第2位】第120話「シャボン玉 翔んだ」

 

【第3位】第123話「発覚」

 

辛い話はやはり後半に集中しますね。前半は辛い話はほとんどなかったのですが、後半は、就職浪人や別れとのストーリー上、どうしても辛い話が多く、読んでいて胸が痛くなるような話も多かったです。ところが、これでも面白く読めてしまうのがめぞん一刻。胸が痛くなるということは、それだけ物語に入り込んでいたってことですからね。

 

切ない話

【第1位】第152話「本当のこと」

 

【第2位】第141話「しあわせ曲線」

 

【第3位】第117話「弱虫」

 

前述の辛い話と似ているのですが、これは切ない話です。辛いと切ないの違いわかりますかね…。私も上手く言葉で説明する自信が無いので、ここは辞書に頼ります。

 

つら・い【(▽辛い)】(形)
①〈経験/見聞き〉することに たえられない〈気持ち/ようす〉だ。
「━別れ」「━仕事」
②〔相手の しうちが〕つめたい。むごい。
「つらくあたる」「━態度」
[派生] 辛がる。辛さ。
⇨:づらい(造語)。
-----せつ な・い【(切ない)】(形)
胸が しめつけられるようで、たまらない。
「ああ、━〔=苦しくて、がまんが できない〕」「━〔=かなえられなくて、苦しい〕思い」
[派生] 切なげ。切なさ。
三省堂国語辞典 第七版 (C) Sanseido Co.,Ltd. 2014

 

要は「辛い=見聞きすることに堪えられない」、「切ない=胸が締め付けられるような」でしょうか。

 

ここでは、やはり切ない話ということで、「別れの話」が多く印象に残っています。こずえちゃんとの別れ、三鷹さんとの別れ、八神との別れ。全て主要登場人物との別れの話です。そこは誰しも通らなければならない道であり、なおかつこの挙げた三つの別れは、嫌いで別れたわけではないので、そこに切なさを強く感じました。

 

感動する話

【第1位】第160話「桜の下で」

 

【第2位】第142話「ワンモア・ピリオド」

 

【第3位】第158話「約束」

 

こちらは単純に感動する話でそのままです。五代君が気持ちを整理して、響子さんがあなたに出会えて良かったと思う話。三鷹さんが明日菜さんとともに幸せになる決意をした話。そして五代君が響子さんにプロポーズをした話。こちらもストーリー上、終盤に偏っていますね。

 

総合

【第1位】第161話「P.S.一刻館」

 

【第2位】第160話「桜の下で」

 

【第3位】第016話「桃色電話」

 

そして最後に総合的に見て好きな話です。やはり1位は最終回かなと。作者も読者も五代君と響子さんも、全てはこの最終回(結婚)を目指してきたわけですからね。そして読者の予想を超えて子供ができ、そして各登場人物が皆それぞれの道で頑張り、幸せになる様を描く。ここまで「きちんと描き切った最終回」は、他に例を見ないのではないでしょうか。

 

そして2位は最終回1話前の五代君と響子さんが真にわかり合えた描写のあった話です。もう一つ付け加えると、惣一郎さんにも報告しているので3人の決着でしょうね。惣一郎さんも納得するでしょう。

 

で、少し蛇足です。あの世があるとして…いや、いきなり変な話でスイマセン。妄想の与太話なのでそのつもりで読んでください。で、あの世があるとして、あの世では最愛の人とずっと一緒にいられるとか、永遠の愛があるとか言われますが…だとしたら、この場合響子さんどうなるんでしょう。これは、何回も結婚している人にも言えるのですが、そんなあの世があるとしたら、響子さんは五代君と惣一郎さんのどちらとあの世で暮らすんですかね。そもそも結婚制度や一夫一婦制が、この世の人間が作った制度でしかなく、あの世はもっとおおらかで、多夫多妻全然OKよ、なんて世界かも知れませんが…。

 

話を戻して…3位はやはり桃色電話。これ本当に好きなんです。めぞん一刻にガッツリはまる切っ掛けになった話なので、個人的に思い出深いとのこともあるのですが、笑いの中に良い話がありほっこりさせ、それでいて最後は綺麗に落とし、それでいて最後までは見せないよ、でもわかるよね的お洒落な終わり方には痺れました。

 

総評

これにてめぞん一刻の漫画全話レビューは本当に終わりです。

 

全161話で、1日1話記事を掲載していたので、実に161日で、約4ヶ月半の長期企画になってしまいました。ここまで長いことお付き合い頂き有り難うございました。また、有り難いことに、最近はブログ全体へのコメントも増え、それ故に全てにコメントをお返しできなく申し訳なく思っております。どうしても全てのコメントにお返事をすることは、時間的にも労力的にも難しくなってしまいました。質問や間違いの指摘にはできるだけ返信するようにしていたのですが、それでも全てとはいかず申し訳ありません。

 

めぞん一刻は、漫画の中で一番好きな漫画で、もう何十回と読んでいるのですが、記事を書くにあたり、細かい部分まで見て考え、背景やセリフの1文字にまで目を光らせると、気付かなかった事や、登場人物の心情など、新たに見えてくることもあるもので、自分でも楽しみながら記事を書くことができました。

 

本当に長いことお付き合い頂き有り難うございました。

 

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