目次
あらすじ
書道家の半田清舟は、ある受賞パーティーで自作を酷評した書道展示館の館長を感情に任せて殴りつけてしまう。見かねた父親は半田に「自分の人間として欠けている部分」を見つけさせるため、彼を自然豊かな五島へと送り込む。
内心では反省する気のない半田だったが、天真爛漫少女・琴石なるをはじめとする個性的な島民達と出会い、少しずつ心を動かされる。都会の温室で育った半田は耐性の無い田舎の環境や島独特の人間関係に戸惑いながらも、島民たちに助けられ励まされ挫折を繰り返しながら新たな書の境地を拓いていく。初めて出会った自然の世界やお互いに助け合う気持ち、それは型に嵌っていた半田の書、そして半田自身の心も少しずつ成長させていた。
毎度の如くアニメに触発され大人買い
もう私の近年恒例の漫画の買い方なのですが、「アニメ情報を見る→面白そう→漫画大人買い」、もしくは「アニメを数話見る→面白い→漫画大人買い」。このパターンが非常に多いのですが、今回も同じ買い方をしてしまいました。今回はアニメを見る前に「よつばと!」みたいで面白そうと思い漫画大人買いです。その後アニメも見ましたが、今回は基本的に漫画の感想です。
「よつばと!」に似ている
先生となると言う、大人と子供のハートウォーミングなコメディと聞いて思いつくのは、やはりよつばと!でしょう。よつばと!はこの手のジャンルの漫画では最も有名で面白いですからね。私も最初は正直、よつばと!の劣化版くらいに思って読んでいたのですが、途中からはよつばと!以上に面白く読んでいる自分に気が付きました。
よつばと!の話を少しすると、途中までは物凄く面白かったのですが、段々とよつばが発する言葉に子供感がなくなってしまって、大人が一生懸命考えた言葉でしかなくなってしまいました。それを子供が言うのは無理矢理だったり、明らかに笑わせようとしているわざとらしい言葉だったり。そうこうしているうちに休載休載で8ヶ月連載が止まってしまったりと、よつばと!の面白さ、興味がどんどん減少してしまいました。
そういった自爆行為で面白さが減少していったよつばと!に比べ、このばらかもんを読んだら、もしかしたらよつばと!より面白いんじゃないかとの感想になったんです。
「よつばと!」との違い
大枠としてのジャンルはよつばと!と同じハートウォーミングなホームコメディで、大人と子供の交流が軸ですから、よつばと!に似てはいるのですが、話が進むにつれてよつばと!とは離れていき、もはやよつばと!と似ているとは言えなくなりました。これは私的には悪いことではなくて良い事です。二番煎じは所詮二番煎じですからね。オリジナリティのある話で面白いに越したことはありません。
なにが違うのかと言うと、よつばと!はあくまでよつばと父ちゃん、もしくはよつばとお隣さんの話がほとんどで、それ以外の世界の広がりはほぼありません。物凄くミニマムな話です。これは、よつば視点の世界だからで、5歳6歳の子供の世界ですから狭くて当たり前なんですよね。タイトルもそれを表していて、「よつばと!」の「と」とは「and」と言う意味です。あくまで「よつば and ○○」の話なんです。
ところがばらかもんは、23歳の大人の半田清舟(はんだせいしゅう)こと「先生」の視点で話が進むので、なるやひなと言った子供たちとの交流や、近所の中学生(美和、タマ)との交流の他にも、近所の高校生ヒロシ、その親の郷長、奥さん、なるのお爺さん、商店のキヨバ、先生の両親、友人など、よつばと!に比べて非常に世界が広いんです。これだけ世界が広いので、先生と子供の交流だけではなく、色んな人間関係の掛け合わせがあるので、面白さや話の引き出しが非常に多彩なんです。
しかしこの世界の広がりや、登場人物の多さは、ともすれば話がグチャグチャになり、纏まりがなくなる危険性もあるのですが、そこは上手くなるとひな、そして中学生の美和とたまを中心に、彼女らを架け橋として、非常に良く話が纏まっているので、話が分からなくなるとか、以前の話とどう繋がっているのかわからなくなる突飛な話などが出てくることもなく、今やっている話に集中できるので、読みやすさが抜群で、なおかつストーリーもよつばと!に比べしっかり存在しているので、続き物の漫画としても非常に面白く読めました。
よつばと!は基本的に単発の話の集合体で、続きが気になると言う類いの漫画ではなく、今やっているその1話を全力で楽しむって感じでしたからね。そういう面でもよつばと!とは大分違うんです。
「よつばと!」の視点と「ばらかもん」の視点
前段でよつばと!との違いは、登場人物の多さと世界の大きさだと書きましたが、もう一つ大きな違いがあります。それは、誰の視点で描かれているかと言う事です。
よつばと!は勿論主人公の子供であるよつばの視点です。一方、ばらかもんの視点はと言うと先生なんです。当たり前なのですが、これが物凄く大きな違いとして漫画に現れています。
よつばと!はよつばの目から見た世界であり、大人には何でもないでき事でも、子供のよつばにとっては毎日が新鮮な事件の連続、冒険の連続であり、それを読む者が童心を思い出したり、子供って可愛いなと思ってほのぼのする漫画なのですが、ばらかもんはダメ人間である先生が子供たちと触れ合いながら真人間になっていく更正物語なんです。
先生は友達がおらず、遊び心もなく、衝動的な行動で書道界のお偉いさんを殴ってしまい、半ば島流しの形で田舎に来ました。このダメ人間である先生が、田舎の子供と触れ合いながら、人との付き合い方や人の素晴らしさ、善意を学んでいくと言う話であり、あくまで大人目線の漫画なんですね。これがよつばと!との大きな違いなんです。
本当に填まったのは先生帰郷前後
これだけ絶賛しているこのばらかもんですが、実は途中まで嵌まれそうで嵌まれない状態が続いていました。それはどこかよつばと!と似ていて引っ掛かるからか何なのか…。自分でもいまいち分かりませんが…。急激に嵌まった時期は、先生が東京に帰郷する話の少し前からでした。
思い返せば、先にも述べたように、この頃登場人物の多さや世界の広さなどで、「よつばと!と似ている」状態から離れていった時期だったと思うので、頭の隅にあった「よつばと!と似ているよな…」と言う雑音的思いが消えたんでしょう。この辺りからはもうよつばと!の影は消え、ばらかもんの世界にガッツリ嵌まりました。
アニメの子供声優は…
少しここで漫画の話から逸れてアニメの話を。
アニメの方はなるやひなの声を本物の子供が演じています。プロの声優ではありません。一般的には子供の声優は演技力、経験共に乏しいので、大人の女性声優が演じるのが一般的なのですが、このばらかもんのアニメでは本物の子供が演じています。
論評やファンによると、子供独特の声質だったり抑揚、テンションが出るので、これで良い、むしろこれが良いんだという声が多いようですが、私は今ひとつ馴染めませんでした。勿論悪くはありません。8歳9歳の子が演じているにしては物凄く上手いですし、確かに子供独特の声質なので、これが本物の子供の声なんでしょう。しかし面白さってリアルを追求すれば面白くなるんでしょうか?私は否だと思っています。例えばゲームでもリアルなグラフィックにすれば面白いのか?面白さは増すのか?と言えばこれも否だと思います。
あくまでアニメはフィクションであり、そのままの現実を求めているわけではないので、子供のキャラだから子供が演じるのが自然とか、子供の声質がリアルだから良いと言う意見には賛同しかねます。あくまで物語として見ているので、リアルさ=面白さだったり評価ではないと思うんですよね。そこを評価するのは少し違う気がします。
じゃあなにが馴染めないのかと言うと、子役の声優の演技が拙いのも勿論あるのですが、主に「周りから浮いている」ことなんです。周りは勿論プロの声優たちで、子供の声優はまだまだ経験が浅い子役です。それに加えて不慣れな声優業をやっているので、明らかにその部分だけ周りと浮いてしまうんです。いっそのこと全て役者にするジブリ方式ならここまで気にならないと思うんですけどね。そういう言う意味では、「崖の上のポニョ」なんかは、子供の声優が浮いていなかったんですよね。
子供が頑張って演技してる感が物凄く感じ取れてしまって、私は逆にふと現実に戻されるような感覚に陥ってしまいました。
「よつばと!」好きなら買って間違いなし
漫画の話に戻しますが、このばらかもんは、よつばと!好きなら買って間違いありません。よつばと!と途中から作風が離れるとは書きましたが、基本線として大人と子供のハートフルコメディであることは共通なので、そう言った心温まる漫画を読みたい人には、今一番推せる漫画だと思います。
惜しむらくは今回のアニメ化では、東京帰郷のエピソードで終わったことです。私の個人的感想を言うと、この後はもっと面白かったんですよね。
こんな人にお勧め
- ホームコメディが好きな人
- 心が温かくなる話が好きな人
- 大人と子供の心温まる交流が好きな人
- 「よつばと!」が好きな人
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