世界が無茶苦茶になる「ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン/荒木飛呂彦」レビュー 5/5 (1)

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宇宙規模の壮大な話

結局最終的には宇宙規模の話へとなってしまいました。これを壮大すぎると捉えるか、壮大で良いと捉えるか難しいところですが、ジョジョシリーズの中ではこの第六部は人気が無いので概ね前者みたいですね。オチの付け方など捻っていてお洒落で面白いんですけどね。

 

少しまとめると、これまでの世界(第一部から第六部までの全てを含む)はプッチ神父が時間を超加速させて一度宇宙を終わらせてしまったため『一周目の宇宙』となり過去の物に。そして二周目の宇宙が始まり、同じような(完全に同じではない)歴史が繰り返されるのですが、一周目の宇宙の記憶を持っている人類はその先に自分に起こること、世界に起こることがわかっているため『覚悟』ができた世界となり、それがプッチ神父の言う天国とのこと。これは天国なのかなあとは思いますが…。

 

今までのジョジョは無かったことに

厳密にはパラレルワールドが生まれただけで、以前の宇宙は無に返ったわけではない(と思う)のですが、このパラレルワールドでは今までのジョジョの物語は起こっていません。つまり、第一部のジョナサンとディオの因縁や、第二部のジョセフと柱の男の対決、第三部の復活したディオと承太郎の対決、第四部の杜王町でのでき事、第五部のマフィアのボスに上り詰めたジョルノ、そしてこの第六部の徐倫の活躍。それは全ては以前の宇宙でのでき事なので、このパラレルワールドでは起こっていないんです。と言うことで、これがこの先始まるジョジョ第七部のスティール・ボール・ラン、第八部のジョジョリオンへと繋がります。スティール・ボール・ランにはディオとジョースターが出てきます。ジョジョリオンには吉良吉影と東方『定助(仗助ではない)』が出てきます。つまりはパラレルワールドのでき事なので、これまでのジョジョの物語は起きていないので新しいジョジョの話になったんです。

 

終わり方が切ない

タイムトラベル物やパラレルワールド物ではよくあるのですが、自分が歴史を弄ってしまったことにより、世の中は良い方向へと変わるのですが、そのせいで今までの親友や恋人と自分が出会った歴史は無くなってしまい、「よう!」と声を掛けたら「誰?」と答えが返ってきて、一つの物事を得るために一つの物事を失い切ない…なんて終わり方が良くあるのですが、この第六部も似た終わり方で、世界はプッチ神父の身勝手な天国から救われた物の、似てはいる物の少しずつ違う歴史を歩んできたパラレルワールドなので、これまで命を賭けて戦ってきた徐倫、エルメェス、ウェザー・リポート、アナスイ、そしてエンポリオは面識が無い状態になってしまいました。そして前の宇宙を知っているのはエンポリオだけのため、この悲しさ、だけど皆が犯罪者では無く普通の幸せな生活をしている嬉しさを知っているのはエンポリオだけと言う実に切ない状態に…。タイムトラベル物ではこういう切なさを演出できるのが面白さのひとつですね。

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終わり方だけを見ると、切なさや感動と言う面では、この第六部がジョジョシリーズの中では一番かも知れません。最後は胸が締め付けられるような思いで読んでいました。エンポリオ少年がどれだけ輝いて見えたか…。

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以前の宇宙から来た人間はエンポリオだけなので、他の人間は何も起こっていない生活をこのパラレルワールドではしています。徐倫には帰る家があり、父親との関係も悪くないようなのですが、このエンポリオ自身はどうなるんでしょうね。知り合いは誰もおらず、父親だって母親だっていないでしょう。そこが若干引っ掛かると言うか心配と言うか…。エンポリオの母親も幸せな生活を送っており、当然のようにエンポリオに「お帰り」なんてなると良いのですが。ただ、エンポリオは刑務所で生まれたため家も無いんですよね。

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このパラレルワールドで徐倫たちが『再会』するシーンでは最後にウェザー・リポートが出てきましたが、そこではウェザー・リポートが出てくる前に雨が降ってきて、以前の世界でのスタンド能力を彷彿とさせる細かい演出もありグッときました。

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総評

第六部はジョジョシリーズの中でも決して人気があるシリーズではありません。改めて読むとやはりスタンド能力に規模が大きすぎる物が多く無理のある部分もあります。しかし、最後の宇宙を巻き込む壮大さや、主人公の徐倫たちがほぼ全滅し、無力に近い少年に運命を託すところなんかは非常に良くできていて、この先どうなるんだろうとワクワクして読んでしまいました。自分の中でもこの第六部はこれまで評価が低く、どのような話かうろ覚えだったんですけどね。

 

宇宙が寿命を迎えるまでに時間を進め、二周目の宇宙が始まるなんて壮大な話なので、矛盾点や疑問点を考え出すとキリが無いのですが、轢き逃げから刑務所に収監されたところから始まった物語で、最終的には宇宙消滅の規模にまで話が大きくなり、色々な意味で面白かったです。ジョジョシリーズの中では最も規模の大きい話ですね。

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何回か書いていますが、無茶苦茶なスタンド能力もありますし、宇宙を一周するので矛盾や疑問点もいっぱいあります。しかしこの終わり方は最高でした。ここだけのためにアニメ化して欲しいと思ってしまいます。ただ、第六部はもろにアメリカのミュージシャンや曲の名前を使っているので権利上厳しいかも知れません。これは第五部から顕著でした。第五部もこのような名前の権利上アニメ化は難しい気がします。するとしたらスタンド名を変えるとかでしょうか。実際、第三部のアニメで公式に海外配信している英語字幕版では、名前を変更している箇所もいくつかあるようです。

 

第六部はあまり記憶に残らない人が多いと思いますが、全体を通して読んでみると大変面白い話でした。特に終わり方だけで私の中で評価は爆上げしました。

 

こんな人にお勧め

  • 頭脳戦が好きな人
  • ぶっ飛んだスタンド能力が好きな人
  • 規模の大きい話を読みたい人

 

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