最高のヒューマンドラマ漫画「宇宙兄弟/小山宙哉」(第1~23巻)レビュー 評価はまだありません

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ストーリー

2006年7月9日、月に飛翔するUFOに遭遇し「2人で宇宙飛行士になろう」と約束した南波六太(なんば むった)、日々人(ひびと)兄弟。時は流れ2025年、その時に交わした約束通り日々人はNASAの宇宙飛行士となって月に向かおうとしていた。その一方、弟の悪口を言った上司に頭突きして自動車開発会社を退職(リストラ)し無職となった六太。再就職もうまく行かず、意気消沈していた六太の元に、事情を聞いた日々人からメールが届く。「あの日のテープを聴け。」メールに書かれているまま、幼い日に録音したテープを聴く六太。するとそこには、六太が置き去りにしていた「約束」が鮮明に刻まれていた。

 

テンポ

脇役の話をキッチリこなしつつ、それが冗長すぎないので、本編に集中でき、テンポ良く読めました。

 

熱中度

ここまで我を忘れて読み耽ったのは、最近だとちはやふる、砂の栄冠以来です。でもこれの熱中度を一とすると宇宙兄弟は三くらい。それくらいぶっちぎりでのめり込みました。

 

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総評

いやあ…填まった填まった。我を忘れ、時間を忘れ、宇宙兄弟の世界観にのめり込み、びっくりするくらい感情移入してしまいました。

 

まずこれは十人読んだら九人が絶賛する漫画だと思います。悪いところを探そうとしても無いんですよね。無理矢理探し出すとすると、2025年の近未来が舞台なのですが、近未来感ゼロってところくらいですかね。近未来を感じさせるのは車のデザインくらいで、あとの世界観や技術は現代のままです。しかしこの方が世界を身近に感じて感情移入しやすいので、これはこれで問題ないと言うか、読んでいて全く気にならないんですけどね。どうしても気になるところを挙げればってことで、それでもこれくらいしか思い浮かばないです。

 

読んだ切っ掛けですが、たまたまTVで宇宙兄弟の映画がやるというCMを見て、「あーそう言えばこんな漫画あって前から少し気になってたんだよなあ」と思い出し、一巻を読んでみたら最後で、気付いたら一気に読んでしまいました。

 

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漫画でも映画でも大抵の創作物でそうなのですが、どんなに面白い漫画でも最初の数話、数巻程度。どんなに面白い映画でも最初の30分程度。これくらいは前振りや設定の説明、世界観や登場人物の描写などで話数や時間を使い、始まってすぐ無茶苦茶面白いなんてことは非常に希なのですが、この宇宙兄弟に関しては一話目から無茶苦茶面白い…。この感覚は漫画では本当に何年ぶりの事かもしれません。映画だバック・トゥ・ザ・フューチャーと、天空の城ラピュタもこんな感覚でした。

 

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漫画を読むときは面白いかどうか判断するまで、長いときは2,3巻掛かるだろうなと思っていつも読んでいるので、まさかの一話からの面白さに「え?なにこれ…」とびっくりしました。一話目読み終わった時点で、こりゃとんでもない漫画を見付けたと歓喜しました。評判が良いのは分かっていて、私が読んでいなかっただけなんですけどね。

 

で、何が凄いって、目が離せなくなるジャンルの王道であるアクションやサスペンス、謎を引っ張る話でも無いですし、そういった要素も無いのに、この世界に異常にのめり込んでしまったことです。冴えない兄の六太が弟の日々人に背中を押され、なんとなく夢の宇宙飛行士を目指すと言う、別に何でも無い話なのですが、話のテンポが良く、見せ方が異常に上手いので、グイグイこの世界に引き込まれて感情移入してしまいました。

 

16巻も続くと中弛みしたり、無駄な話、引き延ばしの話なんてのがあるものなのですが、今のところいらない話が全く無いように思えます。長年多くの漫画を読んできましたが、これって凄いことだと思います。極端な話、全ての話、全てのコマに意味があるように思えますし、全てのコマが興味深いです。

 

ダメ兄貴が頑張って上り詰めて人生逆転、なんて単純な話でもありません。ダメ兄貴の根底はあくまでダメ兄貴のままですし、弟は当然立ち止まっていてくれる訳でもなくどんどん先へ進みますし、とんとん拍子には上手く行かず、いちいちウジウジ悩むところも等身大でまた面白いです。元々兄貴も優秀なエンジニアだと言うのは根底にありますけどね。それでも弟に対するコンプレックスや、自分の弱さ、人生への妥協など、いちいち悩みながらも前へ進むので非常に共感できます。ウジウジ悩むだけだとイライラするのでしょうが、一歩一歩確実に前へ進むのが自分を重ねているのでたまりません。

 

宇宙飛行士になって宇宙の冒険に出ると言う漫画や映画は数多くありますが、宇宙飛行士になろうとする話、選ばれる過程の話をここまでみっちりやった 話は珍しいんじゃないでしょうか。六太の選抜されていく過程と同時に日々人が宇宙に出るので、宇宙飛行士に選ばれる過程の物語と、宇宙飛行士の宇宙での物 語両方が同時に進められていくので、一粒で二度美味しい漫画ですよね。兄弟の一方を宇宙に、一方を選抜過程にしたのは非常に上手い作りだと思います。

 

その六太が宇宙飛行士になる過程の話も、日本に実際にあるJAXAが舞台なので、NASAだったりアメリカを舞台にした話より、我々日本人にしたら非常に馴染み深く物語に入りやすいです。

 

そこでの選抜過程の話も非常に細かく非常にリアルです。面接、集団生活などおそらく実際にもこんなことが行われているのでしょう。そこでの人間関係や脇役の 描き方も丁寧で、単なる一緒に試験を受けた人ではなく、ちゃんと仲間になって行く様がよく分かります。その脇役のサイドストーリーも丁寧にコンパクトに纏 められていて非常に面白かったです。脇役の話を全く書かない、逆にもの凄く掘り下げて長く描く事もできたのでしょうが、一話か二話程度で脇役の深いところ まで掘り下げていて感心しました。長く描けばキャラが立つって訳じゃ無いんですよね。

 

あとびっくりしたのは感動させよう、泣かせようとし ていないなんでもない話なのに、読んでいるこっちは何故か涙ぐむって話が結構多くありました。話の流れが凄くナチュラルなんですよね。一見なんでもないエ ピソードなのに、気付いたらウルウルしてる感じです。周りが何と言おうと日々人の揺るぎない六太への信頼だったり、ひとつひとつ小さなコンプレックスやトラウマを克服していく六太だったり、今まで気にも留めてない風に見せていた両親が打ち上げ前日やっと弱音を吐いたり、日々人に対するコンプレックスの塊 だった六太が日々人の月への第一歩を見て笑いながら泣いたり。この辺の話が泣かせるぞと言うわざとらしい流れで出てくるのではなく、さらっと普通の流れの 中で出てくるんですよね。だから読んでいるこっちも構えること無く素直に感動して涙ぐんでしまうと。この辺凄く上手いと思います。

 

面白すぎて「読みたいけど(読み終わるの勿体ないから)読みたくない」という漫画は久々でした。こういう漫画に出会うと「あ~漫画読んでいて良かった~」と心底思えます。漫画好きじゃなければこれに出会うこと無く死んでいたわけですからね。

 

とにかくこれは絶対に人に勧めたい漫画です。

 

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