「空母いぶき/かわぐちかいじ」(第1~10巻)レビュー ~中国が尖閣諸島を実際に取りに来たらのif漫画~ 評価はまだありません

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今回レビューするのは、かわぐちかいじさんの漫画『空母いぶき』です。

 

それでは早速レビューを書いていきたいと思います。

 

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ちなみに、未読の人が知らない方が良いネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。

 

あらすじ

20XX年10月、嵐の中で遭難者に擬装したと思われる工作員が、尖閣諸島の南小島に上陸し、「この島は中国固有の領土であり、中国本土の船舶を待つ」と主張する「尖閣諸島中国人上陸事件」が発生。さらに日本の領海に侵入を図る中国海警局の船舶と海上保安庁巡視船との衝突、調査目的で派遣された護衛艦への威嚇射撃と事態がエスカレートし、日本政府はなかば中国に屈する形で事態の収拾を図るが、中国の行動に危機感を覚えた首相は、同時に新型護衛艦の就役と、その艦船を旗艦にした新護衛隊群の創設を柱とする「ペガソス計画」の前倒しを決定する。 事件から1年後、事実上自衛隊初の空母である「いぶき」が完成。艦長には元航空自衛隊のエースパイロットという異例の経歴を持つ秋津竜太一佐が任命され、副艦長兼航海長には新波歳也二佐が選ばれる[注釈 2]。自分たち自衛官は軍人であり、万一の際は武力行使や命を懸けることも厭わない秋津の方針に対し、自衛隊が専守防衛・人命第一で行動してきたことに誇りを持つ新波は違和感を覚えるが、一方で彼の努力、部下を取りまとめる力は認めており、反意を示すことは避けつつ各地で演習航海を続けていた。

 

翌20XY年4月、「いぶき」が南鳥島沖での演習航海中、中国軍は「曙光工程」を発動、突如として日本への侵攻を開始する。先島諸島(与那国島)や尖閣諸島の制圧を許し、自衛隊初の戦死者を出したことに加え、中国に話し合いの意思がないと見た日本政府は、内閣総理大臣である垂水慶一郎の指揮により、海上警備行動に続き史上初の防衛出動を下令。この時点で自衛隊と中国人民解放軍との武力衝突は避けられないものとなる。かねてより政府批判の先鋒として知られている東都新聞記者一の瀬一は会見でその流れを察知し、かつての大戦の愚を繰り返すのではないかと危惧する。

 

「いぶき」は前線へと急行するが、中国も防衛出動に即応し、新型空母「広東」を先島諸島へと向かわせていた。日中両政府の交渉は決裂し、ついに実力行使による領土奪還作戦「隼」が発動する。

 

長所と短所

  • ○尖閣諸島を中国が力で奪いに来たらを真面目に描いている
  • ◎国名が現実のまま登場しているのでリアル
  • ○多くのifがある
  • ○日本の憲法、法律、制度の問題点も描いている
  • △日本に都合良く事が進む
  • △いつものかわぐちかいじの主人公
  • ×読んでいて疲れる

 

感想

いつものかわぐちかいじ漫画

先日かわぐちかいじさんの空母いぶきを読んだのですが、いつものかわぐちかいじ漫画でした。現実に則した自衛隊を主役として、そこに社会問題や世界情勢を絡めた漫画です。
具体的にストーリーを簡単にまとめると、中国が尖閣諸島を武力で奪いに来たら、日本はどうするのか、その後どうやって取り返すのか…とのものです。このifを軍事面と政治面の両方から描いています。そして、軍事面とは当然日本の自衛隊なのですが、その中でも海上自衛隊の空母が主役となります。一応日本の憲法、法律に配慮して護衛艦とは言っていますが、このあたりも現実に則っています。

 

また、主人公が実にかわぐちかいじさんらしいです。冷静沈着で多くを語らず内に秘めた大きな野望があり、絵柄を見ると顔もいつものかわぐちかいじさんの主人公と全く同じです。そして多くを語らない主人公のため、腹心でもありライバルでもある副主人公が出てくるのもかわぐちかいじさんらしいなと。

 

このようにかわぐちかいじさんの得意分野であり、いつものかわぐちかいじさん漫画であり、かわぐちかいじさんが好きな人にはたまらないと思います。逆に言うとマンネリも正直感じますけどね。ただ、現実の日本で起こっている中国との領土紛争をリアルに描いた漫画ということで、他に例を見ず新鮮でもあります。

 

主な登場人物紹介

それではここで主な登場人物を紹介したいと思います。

 

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主人公で空母いぶきの艦長『秋津竜太』。なにか秘めたる野望を持っている様子。かわぐちかいじさんらしい主人公です。

 

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副主人公で空母いぶきの副艦長『新波歳也』。主人公のライバルでもあり狂言回しでもあります。

 

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日本の首相で政治パートの主役『垂水慶一郎』。こんな断固たる措置を執れる首相は現実にはいないでしょうね…。

 

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首相のブレーンであり政治パートの狂言回しでもある『沢崎勇作』。本人曰く空母就航には慎重派とのこと。

 

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このような物語ではなくてはならない無茶をする新聞記者『一の瀬一』。最前線に特攻して取材したりします。

 

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政治パートで中国の交渉窓口として登場する『王志強(ワン・ヂーチャン)』。今のところ無茶苦茶いやな奴ですが果たして今後態度は軟化するのか…。

 

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おそらく中国側の主人公であろう『馬大奇(マー・ターチー)』。日本国内に敢えて残りなにかする様子。

 

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尖閣諸島奪還作戦立案者の『王志強(ワン・ヂーチャン)』。中国国内での政治パートに重要な役割を果たしそうです。

 

10巻まででは主にこの登場人物にスポットが当たり物語は進んでいきます。まだ中国の内部事情や人物が詳しく描かれていないので、このあとどうなるのか…ですね。この辺りも詳しくやるとなると20巻は必要そうです。

 

いくつかのifがテーマになっている

空母いぶきとのタイトルなので、主人公は空母であり、艦長の秋津竜太なのですが、大きなテーマとしては下記の3つが挙げられます。

 

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  1. もし尖閣諸島が中国に力で奪われたら
  2. もし日本が空母を所有したら
  3. もし『防衛出動』が発動されたら

 

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(1)については東アジアで覇権を争っている中国ですし、21世紀の今帝国主義を取っているので、日本と武力衝突が起こるとしたら中国か北朝鮮ですよね。技術もどんどん発展しているので、いずれ日本が技術、人員、練度面でも抜かされるのでしょう。そこに危機感を感じている方も多いと思いますし、そのような報道も良く見ます。その中国がもし日本に攻めてきたら…が空母いぶきでは描かれています。

 

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そして、その中国の武力はどこに向かうのか…って話ですが、当然中国が領有権を主張している尖閣諸島です。ニュースでも定期的に中国漁船、漁船に偽装した武装船、中国海軍がピンポンダッシュよろしく、領海侵犯したとの報道をしています。これを一歩進め、本気で中国が武力で尖閣諸島を取りに来たらなにが起こるのか…とのテーマがメインテーマです。

 

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(2)は日本が本格的な空母を持ったら…とのifです。それがこの漫画の中で新たに就航する空母いぶきです。現実でもヘリ搭載艦はあり、少し改修すれば空母になる『いずも』が話題になりましたが、空母いぶきは更に空母に近く…と言うか完全に空母になっています。日本が空母を持ったらどうなるのか…。このifもテーマになっています。

 

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(3)はニュースでもたまに出てくる『防衛出動』について。防衛出動とは、簡単に言うと、日本が外部から武力による攻撃を受けたとき、日本の自衛隊が武力使用制限を全て解除し、武力で対抗する法律上の制度です。勿論、防衛出動が発動したことは歴史上1度もありません。この防衛出動がもし発動されたらどうなるのか…とのifも大きなテーマになっています。

 

防衛出動(ぼうえいしゅつどう)とは、日本に対する外部からの武力攻撃が発生した事態または武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態、もしくは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に際して、日本を防衛するため必要があると認める場合に、内閣総理大臣の命令により、自衛隊の一部または全部が出動すること。自衛隊法第6章「自衛隊の行動」のうち第76条に規定されている。一種の軍事行動と解される。ただし、戦時国際法上の宣戦布告には該当せず、自衛権を行使することはできても、交戦権は認められない。

 

とまあ、こんな感じで、尖閣諸島周りの微妙な問題に関する3つのifをテーマにした漫画です。

 

きちんと実際の国名を使っている
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細かい事ですが個人的に良かったのは、中国を中国、アメリカをアメリカときちんと現実の国名を使っていることです。映画も好きで良く見るのですが、邦画の場合、架空の国名を使うことの多いこと多いこと。洋画はそんなことないんですけどね。

 

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アメリカの映画の場合、きちんと敵国をロシアだの中国だの現実の名前を堂々と出しているのに、邦画は周辺国に気を遣ってなのか架空の名前にしていて、見ているときにふと「ああこれ映画なんだなあ」と、ふと熱中している温度が下がっちゃいます。その点、この空母いぶきは敵国を中国とハッキリ名前を出して描いているので、現実感も緊張感もあって良かったです。

 

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邦画や日本の映像化の文化の制限を考えると、空母いぶきは映画化、アニメ化は無理でしょうね。やるとしたらそれこそ架空の名前に置き換えるしかないと思います。

 

読んでいて疲れる
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現実のシリアスなニュースをテーマにしている真面目な漫画なので、個人的には読んでいて多少疲れます。『興味深い』と『面白い』は少し方向性が違いますからね。空母いぶきはどちらかと言うと前者の『興味深い』に近い漫画です。

 

『朝まで生テレビ』って見ていて面白いかって言うと違いますよね。興味深くはありますが…。見ていて純粋に楽しいって気持ちではありませんし、見ていて少し疲れませんか?私はそうです。空母いぶきを読んでいる感覚としてはこれに近いかなと思います。

 

政治パートは意外と少ない

かわぐちかいじさんの漫画は政治的な話も多いのが特徴です。ジパングもそうでした。しかし、この空母いぶきは自衛隊vs中国軍の話がほとんどを占めます。また、日米安保や国連の話もあまり出てきません。何故出てこないかはきちんと説明があるのですが、それでもやはり出てこないなあとの印象。

 

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10巻までの比率としては、自衛隊の話が7割、日本の政治の話が2割、中国軍の話が0.7割、国連の話が0.3割と言ったところ。本当に自衛隊の戦いに比重が置かれています。まあそれもテーマを考えると理解できて、あくまで『尖閣諸島を中国に武力で奪われたら”日本はどうするのか?”』ですからね。

 

総評

空母いぶきは実にかわぐちかいじさんらしい漫画です。しっかり自衛隊を描いていますし、現実に則した武器を出してリアルに戦闘と社会情勢を描いています。ただ、その分現実の世の中とリンクするので、現実に感じるストレスも感じちゃいます。

 

10巻まで読んだところ中国は本当にいやな奴ばかりですからねえ。この後じっくり連載が続くのであれば、中国軍の事情や中国側でフィーチャーする人物が出てくるのでしょうが…。今のところいやな奴しか出てきません。

 

良くも悪くもいつものかわぐちかいじ漫画なので、かわぐちかいじさんが好きな方には合いますし、合わない方には無理でしょう。

 

現実のニュースのif漫画なので、前提条件として尖閣諸島周辺のニュースをある程度知っている必要があります。詳しくは知らなくても普段のニュースでさらっと知ってれば良い程度ですが、この知識がないと、多少面白さや興味深さが減ってしまう可能性があります。

 

こんな人にお勧め

  • かわぐちかいじ漫画が好きな人
  • 尖閣諸島周辺のニュースに興味がある人
  • 日本と中国が戦ったらどうなるのか興味がある人

 

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