「GS美神 極楽大作戦!!/椎名高志」レビュー ~読んでいてひたすら楽しい~ 5/5 (1)

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今回レビューするのは、椎名高志さんの『GS美神 極楽大作戦!!』です。久々に読み返したのですがやはり面白く、一気に読んでしまいました。

 

それでは早速レビューを書いていきたいと思います。

 

未読の人が知らない方が良いネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。

 

あらすじ

今や除霊は最先端のビジネス。もはやこの日本に幽霊を住まわせる土地などないのだ。経済活動を妨害する悪霊たちを退治する、それが「ゴーストスイーパー」の仕事である。横島忠夫は、そのゴーストスイーパーの一員だ。美神除霊事務所の所長である美神令子をサポートし、さまざまな現場に出向く――。ナイスバディーの霊能力者・美神令子は、凄腕の除霊師。今日もアコギに稼ぎます!!

 

長所と短所

  • ◎ギャグとストーリーが上手く融合している
  • ◎ストーリーも面白い
  • ◎キャラが立っている
  • ◎駄目な横島が良い
  • ○たまに良い話がある
  • ○成長過程の横島がワクワクする
  • △長編はだれることがある
  • ○タイムトラベル物が多い
  • △最終回は…
  • ○美神さんとおキヌちゃんのどちらにするべきか悩む
  • ◎大好きな話しがたくさんできるはず

 

感想

◎ギャグとストーリーが上手く融合している

GS美神の何が魅力かと言うと、個人的には2つあります。それはギャグ漫画でありながらストーリー性も高いことが1つ。もう1つはキャラが魅力的だと言うこと。この項目ではギャグとストーリーについて書いていきます。

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基本的にこの漫画はギャグ漫画と言って差し支えないと思います。実際、連載開始から暫くは1話完結のドタバタギャグでした。その後2話や3話の中編をやるようになりストーリー性が出てきます。また、面白いギャグ漫画ではお約束の、『ギャグ漫画なのに良い話を入れてくる』こともきちんとできており、個人的にはこの辺りの中盤が大好きです。

 

その後はキャラやストーリーが広がったギャグ漫画にありがちな7話や8話の長編。さらには2巻や3巻使う大長編へと発展していきます。私は終盤の大長編はあまり好きではありません。他の漫画でもそうなのですが、大長編に入ってしまうとその話が好みに合わない場合、その間ずっと付き合わなければならず…。数話の中編ならつまらないと思ってもすぐ次の話に行くんですけどね。

 

漫画で終盤に脱落する方は、このあたりの大長編で飽きてしまうのも多いと思います。1話完結、中編、長編、大長編。そしてなんとなくなし崩し的に人気が落ちて終了は長期連載漫画の1つのパターンだと思います。

 

終盤についての好みは置いておいて、最初は単発でしかなかったギャグ漫画が、キャラが多くなり、ストーリーが進んでそのキャラが掘り下げられて魅力が出てくると、自然とその中でストーリーができ上がり、話が自然に動いていく感じがする漫画です。

 

◎ストーリーも面白い

単発のギャグ漫画だったのですが、最初に続き物のストーリーが出てきたのが第2巻の『愛に時間を!!』です。このエピソードは4話使ったのですが、最初のストーリー物でこの面白さ、完成度にビックリしました。

 

話としては、ドクターカオスが作った存在を過去に遡って消滅させる薬を横島が飲んでしまい、過去24時間以内に最も印象に残っていることを、その過去に遡っている間に再現しなければならないとのもの。

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まず1つはタイムトラベル物でワクワクです。過去に遡って今いる仲の良い人と出会う。しかし、当然過去には繋がりがないので不審がられる。その困難を乗り越えて仲良くしなければ…。タイムトラベルあるあるですね。

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タイムトラベル物あるあるなのですが完成度が高くて面白いんです。ただでさえ高飛車で拝金主義で一癖も二癖もある美神さんとお近づきになり、ほっぺにキスして貰わなければならない。困難すぎるミッションをどうやって横島は達成するのか…。

 

オチも素晴らしく、実は横島と美神さんは幼い頃から接点があり、今出会っているのは運命なのではと思わせてくれます。既読の人はもう知っていると思いますが、実際出会うのは運命でしたか。このときその話や設定を考えていたとは思えませんが、良い漫画はこのようなことが後に繋がります。

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このような単発ギャグ漫画で最初に出てくるストーリーものは、前後編だったり、長くても3話くらいで、これまでの延長のような感じが多いと思うのですが、いきなりこれだけ面白いストリーものになるのは凄いです。おそらくこの完成度と面白さで、この漫画は単発も長編も行けると読者も編集も、作者本人も確信したのではないでしょうか。

 

GS美神は第1話で面白いと思って填まったと後述していますが、どっぷり完璧にはまったのはこのエピソードからです。それくらい面白かったです。

 

◎キャラが立っている

キャラはどれも立っていて、特徴が極端なのですぐに顔と名前を覚えてしまいます。

 

主役は当時バブル真っ盛りだったので、その当時流行っていたミニスカボディコンイケイケのお姉さん。とは言っても20歳ですが…。週間少年サンデー連載なので、その読者層に合わせて20歳くらいがお姉さんとの感じだったのでしょう。そんな凄腕ゴーストスイーパーの美神令子がヒロインであり主人公です。

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高飛車で超拝金主義。現実的で金、金、金なのですが、ちょっと優しいところを見せたり、可愛らしいところがあったり、このあたりは男が食いついてしまうキャラです。本来は性格や見た目だけ見ると、ヒロインやタイプではないので、初めて読んだときは違和感がありました。こんな高飛車で拝金主義の女がヒロインか…と。しかし、読んでいくと前述もしたように、どんどんキャラが掘り下げられて優しい部分や可愛らしいところがあり、しっかりヒロインとして違和感がなくなるのもGS美神の凄いところだと思います。

 

少年漫画なので、当然男性は美神のアシスタントである横島に感情移入すると思います。タイトルはGS美神なのですが、男性読者目線だと横島が主人公でしょう。この手の漫画はよくあります。女性が主役の立ち位置でタイトルにもなっているものの、実はその側に居る男性も実質主人公。男性向け漫画でよくあるダブル主人公です。

 

横島忠夫は17歳の高校2年生。女性を見れば突っ込んでいき、入浴している女性がいれば必ず覗きに行く極端なくらい煩悩の塊です。この横島の存在1つでギャグ漫画として成立しています。周りがどんなにマトモなキャラだとしても、そこに横島が絡むと真面目な話になりません。後半はそれでもシリアスなストーリーも絡んできますが、それについては後述します。

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最初からの計算だとは思えませんが、煩悩の塊はギャグ用だけではなく、後のストーリーに深く関わってきます。その前にも横島の煩悩のおかげでストーリーが進んだり、オチになったり、非常に使い勝手の良い万能なものになっています。

 

主要キャラは3人いるのですが、美神さんと横島の他に幽霊のおキヌちゃんが出てきます。除霊事務所なのに幽霊を雇う可笑しさもあります。タイトルからもわかるように、主人公でヒロインなのは美神さんなのですが、それら前提を取り除いて話とキャラだけ見ると、おキヌちゃんの方が美神さんよりよっぽどヒロインしています。

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アニメは3話まで見て判断しろとか、漫画は1巻読んで判断しろとかよく言われます。その意味は1話だけでは善し悪しを判断するのは早いので、もう少し見てから判断しよう。面白さはその辺からわかるから…と言うことです。実際私も大好きな漫画やアニメに1話目からはまることはまずないです。めぞん一刻でも桃色電話まではどっぷりはまりませんでしたし、シュタインズゲートは9話までいまいちだとすら思っていました。しかし、このGS美神は1話目で「凄い面白いぞ!」とはまりました。

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1話目はどんな話だったかと言うと、美神さんが依頼を受けて雪山へ出向き、遭難者のむさ苦しい山男の地縛霊を除霊する話です。その際、同じく地縛霊のおキヌちゃんが登場。自分と入れ替わってもらうために横島を罠に殺そうとして失敗。幽霊のおキヌちゃんですら押し倒そうとする横島。300年幽霊をやっていたので、成仏の仕方を忘れたおキヌちゃん。仕方がないのでいずれ除霊して貰うため、美神除霊事務所に時給30円で雇われることになる。こんな話です。

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可愛い幽霊の女の子が出てきて仲間になる。もうこの時点で面白そうです。この先のドタバタギャグにワクワクしてしまいます。1話目で填まった漫画はほとんど記憶にありませんが、それがGS美神でした。

 

連載前の読み切りではおキヌちゃんは一切出てきませんでした。その後、連載が決まったときにキャラを作ったと思うのですが、これは神の一手と言って良いでしょう。美神さん、横島、おキヌちゃん。この3人がいなければGS美神はここまで人気になっていなかったはず。

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1話目で美神さん、横島、おキヌちゃんの主要キャラ3人が一気に出てきたのですが、それぞれ非常に個性的なので、キャラをすぐに覚えてしまいました。被っているキャラはいません。明確にキャラ分けができています。

 

その後も色々なキャラが出てきて、そのまま1回だけの場合もあるのですが、人気があったり使い勝手の良いキャラはレギュラー、準レギュラー化します。

 

ゴーストスイーパー業界のライバルであり仲間でもある小笠原エミ、六道冥子。美神さんの師匠唐澤和宏神父。バンパイアハーフのピートことピエトロ・ド・ブラドー。元ヨーロッパの魔王でありマッドサイエンティストのドクター・カオスとその従者のロボットマリア。オカルトGメンであり美神さんの幼なじみの西条輝彦。このほかにも色々出てきますが、誰も彼も勢いのあるギャグ漫画だけに特徴がわかりやすく非常に個性的です。

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◎駄目な横島が良い

初期の横島は典型的な駄目人間で煩悩の塊でしかありません。特技も霊力もなくなんの役にも立ちません。その横島が自分の無力さを自虐したギャグだったり、めげずに美神さんに突撃したり、良いように使われてヘトヘトになったり。そんな駄目な横島が凄く好きです。ギャグの瞬発力ではこの無能な横島が1番勢いがあります。

 

横島には煩悩以外にもう1つ大きな特徴があります。それは『物の怪に好かれやすい体質』であること。これも煩悩が人並み外れていることとと同じくストーリーに大きく関わってきます。

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煩悩と違い、明確にここが物の怪に好かれたからこうなったんです、こうなりますと説明されることは少ないのですが、この設定があることにより、何故か物の怪の女の子に好かれるとか、寄ってくることに説得力が出ます。「現実の女の子にもてないのに、物の怪には好かれるのかw」と、ここもきちんとギャグ要素になっています。しかし、横島に寄ってくる物の怪は可愛い子が多く…。それはそれで羨ましいのですが…。そもそもおキヌちゃんも幽霊で物の怪の類いなので、切っ掛けは横島のその体質に引き寄せられたのでしょう。

 

横島の良いところは、切っ掛けは物の怪に好かれる体質だとしても、その後関わっているうちにその人間性…と言って良いのか、正直で裏表のないところや、やるときはやるメリハリで結局は好意を持たれるところ。主人公はこうでなくちゃと思わせてくれる面もあります。

 

○たまに良い話がある

基本的にはギャグ漫画なのですが、その中にほろっとする良い話だったり、淡い恋心を描いた話など、良い話もポツポツあります。普段は笑い重視のギャグ漫画でこれをやると、そのギャップ効果抜群です。良い話をずっとやっているものより良い話に見えてしまいます。不良がたまに良いことをしたら凄く良いことをしたように見えるあのギャップです。こち亀なんかもそうです。たまに少年時代の思い出話で良い話を入れてきますよね。あのテイストがこのGS美神でもあります。

 

例をいくつか挙げると、マリアに惚れ薬が偶然掛かってしまい、目の前にいた横島に惚れるものの、自分の力では横島を傷付けてしまうので自ら動作停止する『機械じかけの愛が止まらない!!』。物の怪に好かれる体質だからか、マリアは横島に親近感を持っている様子はこれまでもあったので、惚れ薬が切っ掛けとは言え、この話でちょっと「やっぱり」と思って嬉しかったです。

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おキヌちゃんが不良娘に憑依する話も良かったです。別人の女の子に乗り移ったのに、横島は「もしかしておキヌちゃん?」と正体を見破ります。別人なのに自分と分かってくれたことに喜ぶおキヌちゃんが可愛い『ブラインド・デート』。おキヌちゃんも横島も素晴らしくてほっこりしました。

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泣くまでの話はなかなかないのですが、このようにほっこりする話がたまに入ります。ギャグの中にこのような良い話を唐突ではなく、それまでにでき上がったキャラ設定や性格、背景を壊さず入れる漫画は面白いことが多いです。

 

○成長過程の横島がワクワクする

久しぶりに読んで勘違いしていたのですが、駄目で無能な横島との状態はそんなに長くはありませんでした。通常単行本で言うと、第9巻から横島が強くなる兆候や決意が始まりました。エピソードだと『誰がために鐘は鳴る!!』(全20話)です。この話でひょんなことからゴーストスイーパーの資格試験を受けることになり…。

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ゴーストスイーパーの試験は六道冥子初登場のときに触れられています。美神さんと六道冥子は試験の時に…と。これも最初からこの話に繋げる気はなく、なんとなく出した話だと思うのですが、面白い漫画はこうやって前に出した物を後から伏線にしちゃえってことで拾うんです。これもその類いだと思います。

 

試験はこれまでに出たピートやタイガー、ドクター・カオスも出て一緒に受けることになったり、美神さんが変身して潜入したり、このあたりはトーナメント方式の話あるあるが詰まっています。

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どうせ勝ち上がれるわけはない、合格するわけはないと最初は諦めているのですが、小龍姫様が神通力を授けたバンダナと煩悩、特有の運の強さで勝ち上がっていってしまい…。もう少しで合格すると発奮したり、やっぱり諦めたり。この辺りの迷いが面白く、横島が格好良く見えるところもありました。合格が決まってからもそこで終わらず、二転三転するのもワクワクします。

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ここではライバルキャラとなり、その後の話にも絡んで来る雪之丞と勘九郎も登場。この辺りからしばらくは縦軸の話がメデューサになるのでメデューサ編と言えます。

 

このエピソードは一気に話が膨らみ全20話となりました。面白かったのですが、やはり1つのエピソードが20話となるとどうしてもその中には中弛みを感じることもあり…。この辺りは単発ギャグ漫画から長編ストーリー物になるときにさじ加減が難しいと感じます。コミックで読んでも丸々2巻と長いのですが、週間連載だと4ヶ月近いですからね。

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ゴーストスイーパーになったとは言え、駆け出しですし、そこは元々駄目な横島なので、『駄目な横島』から『駄目なゴーストスイーパー横島』に少しだけステップアップしたに過ぎません。相変わらず美神さんからはお荷物扱いですし、失敗しまくります。怖いことからは逃げます。

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駄目な横島が長く続くと思っていたのは、この駄目なゴーストスイーパー横島の部分も私の中では入れていたからみたいです。ゴーストスイーパーでもない、ただの丁稚奉公状態の横島はそんなに長くありませんでした。

 

丁稚奉公の横島もギャグに突出していて好きですが、成長していく様も面白いです。私は駆け上がっていくサクセスストーリーが好きなので、このような成長物語はやはりワクワクします。駄目なゴーストスイーパー横島の中にも、偶然ややけっぱちが功を奏して役に立ち、それをちょっと美神さんやおキヌちゃんが「やるじゃん」と認める、褒める。その偶然だったものが段々と身につき実力となり、周囲も成長を認め…。この辺りがギャグ漫画の中にあるストーリー性なんです。

 

このようなサクセスストーリーや成長物は頂点に立ってしまうと、話の広がりや展開が狭くなり、登る爽快感もなくなるので難しいです。横島も最終的には美神さんをも超えるのではとの実力を付けるのですが、そうするとやはりストーリーに広がりがなくなり…。アシュタロス編あたりからはだれてしまいました。

 

△長編はだれることがある

単発、中編、長編、大長編と、このGS美神はわかりやすく物語が発展というか、1エピソード当たりに掛かる話数が増えていきました。終盤は2巻や3巻使った話まで出てきました。その顕著な例がアシュタロス編です。前述もしましたが、個人的にはここでだれてしまいました。

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アシュタロス編だけの話ではありませんが、終盤は横島が強くなりすぎて駄目な横島という演出がやりづらくなったこと。幽霊のおキヌちゃんがいなくなってしまったこと。絡む人物が多すぎて話にまとまりがなくなったこと。個人的はこれらの理由で読んでいて飽きることに…。もう少し短くまとまっていれば良かったのですが、これがずっと続きましたからね。

 

アシュタロス編の大長編は『仁義なき戦い!!』、『続・仁義なき戦い!!』、『仁義なき戦い・超常作戦!!』、『ワン・フロム・ザ・ハート!!』、『ザ・ライト・スタッフ!!』、『激突!!』、『そして船は行く!!』、『GSの一番長い日!!』、『甘い生活!!』、『疑惑の影!!』、『ジャッジ・メント・デイ!!』、『エピローグ・長いお別れ』と、サブタイトルは変わっていきましたが、62話ずっとインターバルなく続きまいした。

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長いですよね…。さすがにここまで大長編にしたのは失敗だったのではないかなと思います。週間連載にしたら62週なので1年と3ヶ月くらいになってしまいます。

 

ここで飽きられて人気がなくなったのかはわかりませんが、この後はタマモなど新キャラを出したり、そこにシロを絡めたりするのですが、これまでの勢いを感じられず、そのままなんとなく最終回へと向かって行きます。

 

この辺りは終わってしまう漫画に多いパターンだと思います。構想が膨らんで大長編をやるのですが、そこで長すぎたり飽きられると読者が付いてこなくなり、大長編後にこれまでのパターンに戻しても人気が戻ってこず…。39巻まで楽しませて貰えれば十分ですけどね。

 

○タイムトラベル物が多い

意外なのがタイムトラベルの話が多いこと。幽霊を退治することがテーマの漫画なのですが、美神さんの前世から来る能力だったり、マッドサイエンティストのドクター・カオスの不思議な薬や道具で時間を飛んでしまうことがままあります。

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前述したドクター・カオスの薬を横島が飲んでしまう『誰がために鐘は鳴る!!』もそうですし、美神さんの母親のエピソードでも多いです。ドクター・カオスの若い頃に飛んでしまう『ある日どこかで!!』もそう。その他にもいくつかあります。タイムトラベルによって、卵が先なのか鶏が先なのかなんだかわからない奇妙な話が好きな方にも楽しめる漫画だと思います。

 

△最終回は…

ここから次のオレンジ色のマーカーまで最終回に関するネタバレが含まれます。未読の方は読み飛ばしてください。

 

最終回はいきなりそれまでの話から飛んで2199年。GS美神の舞台設定が西暦何年かはわかりませんが、連載時期はバブル真っ盛りですし、作中の様子もそうなので、1990年前半と思われます。そこから200年余り未来となります。

 

そこにやってきた謎のサイバーチックなゴーストスイーパー。除霊する対象は美神除霊事務所。いきなりで驚きました。そして、ここに美神さん、横島、おキヌちゃんが死後に残留思念として取り憑いています。しかし、他人が除霊して儲けることが許せない美神さんは除霊される気は全くなありません。

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ここにはピートがまだ若々しい姿で登場していました。バンパイアハーフなので寿命はまだまだある模様。ドクター・カオスもボケてはしまったが健在のようです。そんな中美神さんたちだけ死んでしまったのは悲しいです。

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結局、公的に除霊するので誰も儲からないとピートに説得されて成仏していきました。ここで終わりだと思ったら、これは美神さんと横島が同時に見ていた夢でした。夢オチに近い形だと思ったのですが、この夢はゴーストスイーパーが同時に見ている夢であることを考えると、あながち非現実的なものではなくあり得る未来のようです。ただ、未来は決まっていないのでわからないことを悩んでも仕方がない、だから私は現実を生きると美神さんがいつものように目の前の霊を除霊して終了。

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これは結構際どい終わり方でした。最後の最後まで夢オチに近い形で終わるのかと思ってドキドキしました。また、このように最後勢いがなくなって終わってしまう漫画の場合、急に1話でまとめて終了なんてこともあるのですが、取り敢えず2話に渡って展開してまとめてくれたのは良かったです。

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おキヌちゃんもヒロインであるとのようなことを前述しましたが、最後のこのコマを見ると、やはりヒロインであり主人公は美神さんなんですよね。

 

これまで美神さんと横島は色んなことを経験してきましたが、結局現世利益(げんせりやく)最優先と、連載開始当初の美神さんから変わらず。最後までブレませんでした。ただ、その中身は色んなことがあったので変わっていると思いますけどね。

 

ちなみに、現世利益に『げんせりえき』とルビが振ってありますがこれは間違いで、『げんせりやく』です。良くある誤用です。

 

げんせ‐りやく【現世利益】
神仏を信仰することによって現世において得られる利福。現益(げんやく)。

広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店

 

現世利益とは、神や仏を信仰することによって現世で得られる利益のことなので、神様だろうが仏様だろうが、利益を得るために利用している美神さんということなのでしょう。

 

ネタバレはここまでです。

 

○美神さんとおキヌちゃんのどちらにするべきか悩む

既読の方はおそらく、美神さんとおキヌちゃんのどちらが良いか悩んだはず。もっと言うと、横島はどちらとくっつくのだろう…と。結局どちらも選べないので前述した最終回になったのだとは思いますが…。

 

美神さんとおキヌちゃんに関して、未読の方は知らない方が良いネタバレが次のマーカーまで含まれます。

 

高飛車、拝金主義で普段は冷たいけれど、前世からの運命の女性であり、実は横島にも優しい美神令子。幽霊から人間に無事転生し、優しさの塊のような女性で横島のことをずっと好きでいてくれたおキヌちゃん。自分が横島の立場に立って考えると選べないです。

 

美神さんなんて数百年前から一緒になる約束をしているわけですし、可能性の高い未来の1つとして、将来結婚して幸せにやっているわけです。しかし、一方でおキヌちゃんは幽霊の頃から、駄目な横島を目の当たりにしてもずっと好きでいてくれました。300年前に人柱になって死んでいる不幸な身の上だったり、人間に転生して記憶がなくなっても戻ってきて、それでもやっぱり横島を好きなこともポイントが高い…。

 

ネタバレはここまでです。

 

◎大好きな話しがたくさんできるはず

全39巻の長期連載物なので、面白い話、ちょっと良い話、過去の話、恋愛の話、親子の話などなど物語は多岐にわたります。そのため、最後まで面白く読める方は、お気に入りの話やキャラがたくさんできると思います。

 

この項目では超個人的で恐縮ですが、好きなエピソードをその理由とともに紹介していきます。

 

  1. 『誰がために鐘は鳴る!!』全20話
  2. 『スリーピング・ビューティー!!』全11話
  3. 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』全4話
  4. 『デッド・ゾーン』全10話
  5. 『愛に時間を!!』全4話

 

『誰がために鐘は鳴る!!』は横島がゴーストスイーパー資格を取るために試験もとい天下一武道会に参加する話です。初めての大長編で20話もありました。横島の駄目なところも覚悟する格好良いところもあり、これまでのキャラも総登場して今後のライバルにもなるキャラも出てきます。GS美神の全てが詰まったエピソードです。駄目な横島が使える横島になる成長していく様もあり爽快感もあります。

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ストーリー上もここは大きな分岐点でした。それまでのなにもできない丁稚奉公から、少しは使える見習いゴーストスイーパーになる。そしてそこから徐々に成長していく土台になるエピソード。残念なところを敢えて挙げるとすると、おキヌちゃんの存在感が薄いくらいでしょうか。

 

『スリーピング・ビューティー!!』は面白くて好きな話なのですが、果たしておキヌちゃんが人間になると言う選択肢は正しかったのかどうか…。『幽霊のおキヌちゃん』だからこそ面白くて話が作れてキャラが立っていたわけで、ただの女子高生にしてしまうと、これらのメリットがなくなってしまうんですよね。ただ、逆に女子高生だからこそできる話もその後出てくるんですけどね。横島がその女子高に行ったり、おキヌちゃんがゴーストスイーパーを目指したり。これは幽霊のおキヌちゃんではできない話でした。

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おキヌちゃんは一旦ここで退場。暫く出てこないんですよね。生き返ってすぐにまた話に参加してしまうとこの話の重みがなくなるので、しばらくのクールダウン期間は必要でしたた。ただ、やはりおキヌちゃんがいないGS美神の期間はかなり物足りなく感じることは確かでした。

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『ストレンジャー・ザン・パラダイス』は、10年後の横島が現代にタイムトラベルしてくる話です。なんとこの横島は美神さんと結婚しており、未来で命の危機になっている美神さんを救うために過去に現れます。未来はいくつもあるからこうなるかはわからないこと。そして、美神さんは知ってしまうと今後の行動がおかしくなるので、未来の美神さんに託された手紙に同封されていた文殊で今回のことを忘れること。オチも素晴らしいです。

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美神さん達の前世が分かる『デッド・ゾーン』も好きです。美神さんだけではなく、横島、西郷も前世から関わりがあることが分かります。美神さんの前世は魔族のメフィストだったことも。メフィストと横島の前世である高島は恋に落ちており、当然美神さんは納得できない様子。高島が死んでしまうのも衝撃でした。そこから伝説になっている安倍晴明の話に絡めてきたり面白いんです。

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『愛に時間を!!』について詳しくは前述しているので省くとして、タイムスリップし、今の仲が良かった人と出会い、そしてストーリーが転がっていく面白さはたまりませんでした。

 

このほかにも面白いエピソードがいっぱいあります。

 

次に好きなキャラです。

  1. 横島忠夫
  2. おキヌちゃん
  3. 美神令子
  4. 愛子(机の妖怪)

 

横島、おキヌちゃん、美神さんの主役クラス3人は勿論なのですが、実は机の妖怪愛子ちゃんがかなり好きです。何故かと言うと、机と言う学校の備品なのに、真面目な生徒会長みたいなキャラで面白くてたまりませんでした。また、物の怪に好かれる体質の横島に、青春を味わいたくて、バレンタインチョコを下駄箱に入れるなんて話もほっこりして好きです。

 

総評

漫画やアニメを読んでいて好きになる理由は色々あります。ストーリーが好き、キャラが可愛い、感情移入できるなどなど。そんな中、GS美神は読んでいて『その楽しそうな世界に入りたくなる漫画』です。ドタバタコメディで面白い漫画はこの傾向が強く出ると思います。この辺りの世界観、空気感はうる星やつらに似ていると思います。

 

キャラが生き生きとして楽しそうな物語を展開していると、その中に自分も入ってみたいな、参加してみたいなと思ってしまうんです。まあ、私なんかが入ったところで、主役やヒロインなど主要キャラに話しかけられるようなポジションではなく、名前もないモブだろうなとは思いますが…。

 

読んでいて楽しい、愉快な気持ちになりたい方に、今更ではありますがお勧めの漫画です。39巻あるのですが、終盤のアシュタロス編はちょっとダレたものの、一晩中読んでいられるくらい勢いもありますし面白いです。

 

イライラしたり不愉快になるような話は一切ないので、元気を出したいときにも是非。

 

こんな人にお勧め

  • 楽しい漫画を読みたい人
  • ギャグとストーリーが融合している漫画を読みたい人
  • 駄目な主人公が成長していく様を見たい人
  • タイムトラベル物が好きな人

 

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