人生やり直し物語「僕だけがいない街/三部けい」レビュー 5/5 (1)

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あらすじ

売れない漫画家・藤沼悟は、「再上映(リバイバル)」と呼んでいる特殊能力を持っていた。その能力は、直後に起こる「悪いこと(事件・事故等)」の原因が取り除かれるまで、その直前の場面に何度もタイムスリップしてしまうというものだった。自分の意思とは関係なく発動する上に、能力が発動した結果「マイナスだったことがプラマイ0になる(悪いことが発生しなくなるだけ)、もしくは自分にとってマイナスになる(未然に防ごうとした結果、自分が労力を使う)」というこの能力に不満を持ちながら、悟はピザ屋のアルバイトをこなす日々を過ごしていた。

 

ある日、ピザの配達中に交通事故をめぐるリバイバルを経験した悟は、事故の被害は減らせたが自身は負傷し、二日間入院することになる。これを機会に、ピザ屋で一緒にアルバイトをしていた愛梨と親しくなり、また事故の知らせを受けて上京した母親・佐知子とアパートで暮らし始めることになる。

 

後日、佐知子との買い物中にリバイバルが発生、このとき子連れの男の挙動に注目した佐知子は誘拐を未然に防いだことを確信し、同時に1988年に北海道で起きた誘拐殺人事件の真犯人と同一犯であることにも気付いた。佐知子は、以前「テレビ石狩」の報道部アナウンサーであり、洞察力が高かったのだ。しかし、真犯人も気づかれたことを察知し、正体を伝えられる前に佐知子を殺害、死体の発見者である悟を犯人に仕立て上げる。悟は死体を発見後、リバイバルで殺害を阻止できないかと試みるが失敗。さらに強く念じたところ、それまで経験したことがない長期間のタイムリープが発生し、1988年にいることに気づく。2006年で母親を殺害した犯人と1988年の連続誘拐殺人事件が同一人物であると確信した悟は、2つの時代を往復しながら真犯人に立ち向かっていく。

 

長所と短所

  • ○練られたストーリー展開
  • ○バタフライ・エフェクトが上手い
  • ○登場人物に無駄が無い
  • ○全8巻でまとまりが良い
  • △終盤にワクワク感がない

 

はじめに

この漫画のことはチラホラ耳には入っていました。アニメ化したのも知っていました。しかし録画だけして見てはおらず、また興味があるのに見ないパターンかなと自分でも思っていたのですが、たまたま先日他に読む物が無かったので読んでみたら…凄く面白くてはまりました。

 

今回はこの『僕だけがいない街』の感想を書いていきたいと思います。ちなみに、近いうちアニメも全部見ます。細部やラストが漫画と違うようですが…。

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バタフライ・エフェクトとデッド・ゾーン

あらすじを読んでいただければピンと来る方もいると思いますが、この『人生やり直し物語』って『バタフライ・エフェクト』に似ていますよね。自分に特殊な能力があり、過去を弄って人生を修正する。しかし、修正したからと言って上手く行くわけではなく、かえって悪くなったりややこしくなったり…。そしてまたやり直しをする。一方の人生の選択肢を変更すると、その余波で意外なところで意外な人の人生が曲がってしまう…。話の展開としてはバタフライ・エフェクトに似ています。しかし、この両者はあくまで話の展開が似ているだけでパクリとかそう言うレベルではありません。

 

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僕だけがいない街 バタフライ・エフェクト 備考
能力の詳細 身の回りで何か悪いことが起こると数分巻き戻る 日記を読むとその時点にタイムリープする
能力の制限 自分でコントロールできない 日記が無いとタイムリープできない
目的 殺された母親を救う
過去に救えなかった友達を救う
自分の人生を良い方向へ変える

 

取り敢えずバタフライ・エフェクトを観て面白いと思った人は、この僕だけがいない街を読んではまる適性は十分にあります。

 

そしてもうひとつ、僕だけがいない街を読んで思い浮かんだのが、スティーブン・キング原作の海外ドラマ『デッド・ゾーン』です。これは誰かに触れるとその人に起こる重大なでき事や過去のことが見えるいわゆるサイコメトリーの話です。

 

僕だけがいない街はサイコメトリーではないのですが、自分の周りで『何か悪いこと』が起こると突如再上映(リバイバル)と言われる現象が起こってしまい、なし崩し的に事件や事故に巻き込まれていきます。

 

この両者の共通点としては、自分に分かることはごく僅かで、その僅かなヒントからその状況を打破しなければいけないところ。

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もう少し詳しく書くと、デッド・ゾーンの場合、人や物に偶然触れてしまうとフラッシュバックのように、断片的にその人物がこれから巻き込まれるであろう事故や事件の映像が流れ込んでくるので、その僅かなヒントからその人を助けるべく奮闘します。

 

一方、僕だけがいない街では、自分の周りで何か悪いことが起こる場合、数分巻き戻るリバイバルが起きるので、その風景にある違和感を観察して取り除くべく奮闘します。

 

両者とも限られた僅かなヒントから解決策を探っていくんです。この突如襲ってくる感じと、僅かなヒントから解決策を探していく様にデッド・ゾーンを思い出しました。

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ちなみに、この海外ドラマのデッド・ゾーンはメチャクチャ好きです。今まで数え切れないほど海外ドラマを見てきましたが、その中で未だにトップ5に入るくらい好きです。そして更に補足すると、このアニメの八代先生の声はデッド・ゾーンの主人公の声もやっていた宮本充さんです。

 

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リバイバルの目的

主人公の能力であるリバイバルは自分でコントロールできないのですが、母が殺されたことによる強い思いから、その根本的な原因である18年前に突如飛んでしまいます。このように大人の自分が子供の頃に戻ってやり直したいってのは誰にでもある願望ですよね。大人の知力、知識、経験のまま子供時代に戻り、間違った選択肢をやり直したい。これをしているのがこの僕だけがいない街です。ゲームでクリア時のステータスを引き継いで最強の状態で2周目をやるみたいな感じでしょうか。

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一応…と言うと殺された母の存在が軽くなってしまうのですが、目的は殺された母を救うためです。その母が殺された原因は、18年前から未解決であろう連続児童殺人事件であるとの強い思いから18年前に飛んでしまうんです。そこで主人公の藤沼悟は、そもそも連続児童殺人事件が起こらなければ犯人もいない、被害者もいない、イコール母親も殺されないと行動していきます。

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ここで前述したバタフライ・エフェクトのような展開があります。まあバタフライ・エフェクト単体と比較してどうこうより、古今東西タイムトラベル、タイムリープではお約束のバタフライ・エフェクトと言う現象のことで、あっちを変えればこっちが変わる…と言うものです。名前の通り、蝶がはばたくと地球の裏側で嵐が起こる理論のアレです。当然ながらこのバタフライ・エフェクトが起こりまくります。

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最初の被害者を救うべく行動し、当初殺されるはずだった日付には生きているもののやはり後日…なんて展開は勿論、一方を救うと新たな被害者候補が現れたり…。正しいと思った行動が1人を救い、別の1人を不幸にしてしまい…なんてこの手の一筋縄ではいかない話が沢山出てきます。この辺りの『行ったり来たり』感がタイムリープ物ではたまりません。

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人生やり直し物語の面白さ

このような人生やり直し物語は、前述もしたように誰もがやってみたいと思ったことがあるはず。そしてそれが自分を重ねやすく、面白い要因の1つでもあるのですが、もうひとつはスポーツ漫画の成功していく階段を上がっいく高揚感もあるからだと思います。

 

スポーツ漫画の場合、例えばボクシングだと無名の選手から段々の勝ち上がっていき、やがては日本王者に、そして世界へ挑戦と言う成功していく話が実に高揚感をもたらします。一言でいうとサクセスストーリーです。感情移入していればいるほど、主人公が成功していく快感は自分に跳ね返ってきます。実はこの人生やり直し物語のジャンルもこれに似てるんです。

 

人生をやり直してより良い方向に持っていきたいと言うことは、スタート時点が最悪の出発地点と言うこと。そこから人生をやり直そうと過去の選択肢を弄り、段々と良い方向へと成功していったり、時には失敗して挫折したり…。最悪の時点から段々物事が良くなっていくこの様は、実はスポーツ漫画のサクセスストーリーと同じなんです。

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また、この僕だけがいない街では、単純な人生やり直し物語で自分の人生を利己的に良くしたいわけではなく、あくまで他の人を救うことが第一目標と言うのが興味深いです。しかしそれだけではなく、加代を救えなかった過去をいつまでも悔やんでいる自分のためでもあり、この辺りの『他人を助けるため』と、『自分の後悔を取り除くため』と言う、他人のためと自分のためと両方の動機が混在している人間らしさも共感でき、感情移入の割合が高くなる一因でしょう。

 

小学生編は楽しいが大人編は暗い

この僕だけがいない街は小学生編が読んでいて凄く楽しいです。小学生編での目的は連続児童殺人事件に巻き込まれるとわかっている被害者を救うこと。それはつまり1人にしないこと。

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この犯人は狡猾に、いわゆるぼっちの小学生を狙っているので、教室で孤立している子供と色々な手を使って友達になり、仲間に引き込み、本来誘拐される時間帯に1人にさせないことに奮闘します。本来の人生では彼女らと仲良くなっていないので、ここで人生の選択肢を変えていくんですね。

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どうやって本来仲良くなかった子たちと仲良くするのか、友達にどう協力して貰うのか、本来誘拐される時間帯に1人にしなければそれで解決なのか。また、そこまでに様々な想定外のことや悪意の無い妨害も入ります。本来仲良くなかった子供と仲良くしていく様は、悪い方向だったでき事が良い方向に向かっていく希望に満ちていて読んでいて楽しく、また次に何が起こるのか全く予想が付かないので、次がどうなるんだろうとページをめくる手が止まりませんでした。

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子供時代の楽しくワクワクする展開とは逆に、大人編は希望が持ちづらくちょっと話が暗いです。母親を殺した殺人犯としての逃亡だったり、信頼していた人に裏切られたり、挙げ句の果てに3周目では…ね。それでも勿論ストーリー漫画として凄く面白いのですが、少年時代のワクワク感、高揚感はありませんでした。

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登場人物に無駄が無い

僕だけがいない街で何が一番驚いたかと言うと登場人物に無駄がないこと。ほとんどの登場人物に意味があるんです。

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悟の目的は連続児童殺人事件を未然に防ぐこと、そしてその真犯人を見付けること。となると、読者も犯人は誰なんだろうと注視しながら読みますよね。するとあの人も怪しい、この人も怪しいって人が一杯出てくるんです。犯人を絞らせない程度にそれぞれに怪しい設定を作るのが上手いです。人間、清廉潔白な部分ばかりではなく、誰しも人に言えない趣味や顔をしかめられる部分はあるもんです。この現実的な要素をきちんとこの漫画は入れています。

 

例えば最初に連続児童殺人事件の犯人として逮捕されたユウキ。彼は今で言うロ○コンもののビデオなどを所有していて、そのような性癖があることがハッキリ描写されています。しかし、じゃあそれを持っていたら犯罪者なのか?そう言う趣味は犯罪か?と言われればNOです。しかし世間や警察はこれをも証拠にユウキを犯人として捕まえます。また、先生のなにげない児童を見る1コマだったり、ユウキの父親の怪しい言動など、登場する大人たちのどこかしらに信用できない部分があります。ただ、この手の話をよく読んでいる人だと、犯人は十中八九あの人だなと分かるとは思いますが…。

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僕だけがいない街には結構登場人物が出てきます。全8巻の漫画としては結構多い方だと思います。小学生時代の仲間たち。殺される3人。犯人候補の大人たち。母親。愛梨。そして主人公。この他にもまだいるのですが、それぞれにきちんと役割があり、「あの人は何だったの?」と言う登場人物がほとんどいません。

 

終盤は少し残念

このパートはネタバレを含みますのでご注意ください。

 

ラスト…と言うか終盤は少し残念な部分もありました。

 

やはり引っ掛かるのは、子供時代の2周目以降で付き合っていた加代が、15年の昏睡状態から目覚めたら他の男と結婚していたこと…。リアリティがあって悪くはないんですよ。実際、子供時代の恋人を15年待つ方が珍しいでしょう。なので文句でも怒るわけでもなく、本当に残念とかガッカリという感想。これは、自分がこの漫画にはまって入り込み、主人公に感情移入していたからこそ起こる感情なんでしょうね。

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ただ、ここも多分…と言うか確実に考え抜かれた話で、加代が結婚した相手が広美であると言うことがどう言うことか…。愚問ですね。この2人は本来の1周目の人生では両者とも犯人に殺されておりこの世に存在していないんです。つまり、この2人は悟が頑張って助けたからこそ2周目以降のこの人生で生き残っているわけです。悟るが助けたことにより本来死ぬはずだった2人が生き残り、そしてその2人結婚したんですね…。こう考えると感慨深い物があります。

 

そもそも1周目の本来の人生で加代は殺されていたので、当然悟ともくっつくわけはないので、本来殺されるはずだった2人がくっついたのは当然なのかも知れません。とは言っても、小学生編のあの一生懸命な悟と、苦しんでいる加代を見てしまうと、この2人にくっついて欲しかったとの思いはぬぐいきれませんが…。現実的な視点で見ると、悟と加代が親密にしていたのは2,3週間の話です。一方、広美は悟が眠っている間の15年一緒に過ごしたわけで、やはりこの両者がくっつくのは必然ですかね…。

 

もう1つは3周目の最後のルートのこと。悟が15年間植物状態だったのは悲しい…。この3周目で終わりなので、この人生が悟の人生として確定したんですよね…。悟は1周目で29歳までの人生を過ごしているので、3周目で15年植物状態だったからと言って、トータルで見ると人生の経験で損しているわけではないのですが…。それにこの植物状態で15年自分が街に存在していない時間があったからこそ、本書のタイトル『僕だけがいない街』が成り立つので、この展開は最初から決めていたことなのでしょう。

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前述しているバタフライ・エフェクトだともっと足掻いており、全ての登場人物が幸せになる最良のエンディングまで粘りました。ちょっとこれを期待してしまっただけに、それぞれの人生にどこか幸せと言い切れるんだろうかとのわだかまりが残るラストは残念と言うか…。

 

スタート地点が同級生が殺されると言う悲惨な物だっただけに、最後はもっと完全にハッピーな話でも良かったのになとの気持ちは若干ありました。

 

バタフライ・エフェクトに所々似ているシーンがあることは前述してきましたが、大人編でヒロインだった愛梨に関しても少し似た部分がありました。

 

このようなタイムリープ物では、最良の選択をした結果、1周目の人生で仲が良かった人と出会ってすらいなかったなんて切ない展開がままあります。そしてこの愛梨もそうで、途中で必死に会いに行くものの、前の人生で自分と関わったことにより悪い方向へと巻き込んでしまったことが思い出され、結局声を掛けずにすれ違い、この人生では出会わないことにする。この選択もバタフライ・エフェクトっぽいですね。

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しかし、ここからが少し違っていて、一旦別れの選択をした後に再度偶然出会い、またここから新たなストーリーが始まる的なシーンで完結しました。これはバタフライ・エフェクトではなくSTEINS GATEですね。

 

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ヒロインは誰なのか

このパートはネタバレを含みますのでご注意ください。

 

さて、この僕だけがいない街ですがヒロインは誰なのか…。結論から言うと大人編で出てきた愛梨です。個人的には小学生編で出てきた加代とのエピソードが物凄く面白くてワクワクしたので、小学生編の加代がヒロインと言うのが一番しっくりとくるのですが、前述したように最後の最後に出てきた人は誰なのかと言えば…愛梨なんです。

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前の人生で不幸に巻き込んでしまったため、今回の人生では出会わないことを選択するのですが、偶然雪やどりをしているその場所は、前の人生で愛梨と逃亡生活で落ち合った思い出の場所。そしてそこに偶然現れたのは、夢であったカメラマンになった愛梨でした。これはもう完全に愛梨がヒロインってことです。それにしては加代とのエピソードが濃密で面白すぎるのでかすんでしまいましたが…。そう言う意味でも愛梨がヒロインであるならば、もう少し愛梨との濃密なエピソードが欲しかったかななんてことも思います。

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犯人と通じ合ってる面白さ

このパートはネタバレを含みますのでご注意ください。

ラストの犯人・八代との対決は興味深かったです。リバイバルなんて悟の能力は他の誰にも打ち明けておらず、当然誰も知りませんし誰も信じません。しかし、最後の対決で悟は八代に自分の能力をこの物語で唯一打ち明けます。そして八代もすんなりそれを本心から信じてしまうんです。

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これまで一生懸命友達を作ろうと頑張った小学生時代、そして2周目3周目で色々な人とより親密になったときですら、その友達にこの能力のことは打ち明けていません。ところがこの能力を打ち明けたのは作中唯一犯人の八代であり、そして信じてくれたのも八代だけなんです。皮肉と言うかなんと言うか…。

 

練りに練られたストーリー

とにかくこの僕だけがいない街の魅力はストーリーです。タイトルの回収も見事で最初からラストが考えられていたことが分かります。これだけ綺麗に最初から最後まで無駄なく書ききった漫画は珍しいと思います。最初から全部綿密にストーリーを考えていたんでしょうね。そうでなければこの流れるような展開はあり得ません。

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ストーリー漫画として次の話を読みたくなる欲求は相当高い漫画だと思います。

 

総評

僕だけがいない街は全8巻です。人気がある漫画であればあるほどダラダラ長いこと続いてしまい、蛇足に次ぐ蛇足で全体としての印象が薄くなる場合があるのですが、この漫画はコンパクトに8巻で収まっていて好感が持てます。

 

完全なストーリー物なので、ありがちな日常編でワイワイできる類いの漫画でもありませんからね。また、目的がしっかりし過ぎているので脇道に逸れると言うのもやりづらい作風だったとは思います。それにしても最初から最後まで無駄なく話がポンポン進んでいったのには好感が持てます。

 

ちなみに、この漫画はシリアス一辺倒で笑いは極端に少ないです。目的自体がシリアスで、殺された母親を救うこと、連続児童殺人事件を回避することなので当然なのですが、気分転換に軽く読むという物ではありません。目的、展開、作風としっかり方向性があるので私はこれで良かったと思っています。

 

タイムリープ物がや人生やり直し物が好きな人はガッツリはまると思います。

 

こんな人にお勧め

  • タイムトラベル、タイムリープ物が好きな人
  • 人生やり直し物が好きな人
  • シリアスな話が好きな人
  • バタフライ・エフェクトが好きな人

 

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