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漫画全話レビュー「めぞん一刻 第146話「出たとこ勝負」」

掲載情報

掲載雑誌
  • ビックコミックスピリッツ 1987年1月8日号

 

アニメでは

 

時系列と出来事
  • 1986年9月29日 音無響子、一刻館を家出

 

この頃の出来事
  • 1月1日 – 中国・北京の天安門広場で学生数百人がデモ。
  • 1月5日 – 日産自動車がパイクカーの「Be-1」を期間限定で発売。
  • 1月17日 – 日本初の女性エイズ患者を神戸市内で確認、同女性は確認3日後に死亡するも、100人以上の男性と性交渉していたことが明らかになり、同市を中心に「エイズ・パニック」が広がる。
  • 1月21日 – 『タイガーマスク』、『あしたのジョー』などで知られる、漫画原作者の梶原一騎が死去。
  • 1月27日 – 関西国際空港着工。

 

あらすじ

五代君がこずえちゃんにプロポーズをしたと思って激怒し家出をする響子さん。実家に帰った響子さんを五代君は説得し、迎えに行くのですが、当然すんなり帰ってきてくれません。そして一刻館は管理人がいなくなったことによりあっという間に荒廃してしまいます。

 

 

みどころ

  • 響子さんの家出
  • ぐうたら響子さん

 

はじめに

この辺りから…と言うか、もう少し前からですが、時間の進みがこれまでとは変わりました。何回も書いているのですが、今までは作中の時間と現実の世界が同じように進んでいました。しかし、数回前から作中の時間はゆっくりと進んでいくようになったんです。そして、この時間の進みが遅くなったのを見計らったかのように、今回から週刊連載が再開。これで1週間の出来事を1話にすることが出来るようになったので、だいぶ物語として小刻みに細かく描写出来るようになりました。結婚までのイベントの密度を考えると、ここでの週刊化は大正解でした。高橋留美子さんは大変だったでしょうけどね…。

 

本気の家出

一刻館から出て行くことは、今までも響子さんはあったのですが、そのときは両親の策略に填まってのことだったり、親の病気の看病との理由から、犬の惣一郎さんは一刻館に置いてけぼりでした。ところが今回、惣一郎さんを連れて行くことにより、響子さんの家出の本気度、(少なくとも長期間)帰ってこないぞとの意気込みがわかりやすく提示されていました。惣一郎さんは愛する元旦那さんの名前の犬であり、思い出が詰まった犬なので、響子さんが惣一郎さんを連れて行くことに事の重大さが現れています。

 

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家出のエピソードは五代君でもありましたね。自分の意思で家出をしたのは、五代君が響子さんと三鷹さんが結婚すると勘違いした時の、大宇宙ホールへ家出したときでした。このときも、五代君は響子さんの説明を聞かず、早とちりで一刻館を出て行ってしまったのですが、今回の響子さんも、五代君の説明を聞かず家出です。のちに五代君が響子さんが帰ってくるように動くのですが、それも含め、これら2つの家出は、五代君と響子さんが入れ替わっただけで、やっていることや経緯は一緒なんです。

 

実は立場を入れ替えただけの同じような話ってめぞん一刻は多いんです。ただ凄いのは、これを読んでいる最中読者にそうとは気付かせず、全く別個の話として読ませてしまう構成の上手さでしょう。また、同じような話だとわかった上で読んでも、「お互い似たようなことやってるなw」と気付いて面白いんです。この構成や話の流れを組み立てる、組み替える上手さは凄いと言わざるを得ません。

 

迎えに行く五代君

響子さんが家出をすると言っても、行くところは実家しか無いわけで、家出の原因を考えると、当然五代君が迎えに行くことになります。都合の良いことに、この頃の五代君は、保母試験全日程が終わり、仕事は夜のキャバレーだけと言う身の持て余しよう。

 

 

ちなみに、結局五代君は響子さん宅に5日間連続で訪問することになります。5日間全部居留守を使うってのも響子さん凄いのですが…。

 

響子さんと律子さんの会話

今回も響子さんが本気で怒って家出との、本来シリアスなストーリーなのですが、そこはめぞん一刻らしく随所に笑いを入れてきており、めぞん一刻の空気を維持していました。そのひとつが響子さんと律子さんの会話の面白さです。この会話は作中の面白い会話5本の指に入ると思っています。

 

律子さん「そうやってぐずぐずしてるから、ふられるのよ」

(三鷹さんのことだと思っている)

響子さん「あたしがふったのよ!!あんないい加減でグズな男!!」

(五代君のことを言っている)

律子さん「なに言ってんの、三鷹さんはっきりあんたに意思表示…」

(三鷹さんのことだと思っている)

響子さん「誰の話してんのよっ。」

(三鷹さんじゃなく五代さんの話よと言っている)

律子さん「…誰の話してんの。」

(三鷹さんじゃないの?と疑問に思う)

響子さん「え。」

(しまった、五代さんのこと言ってなかったのにと思う)

律子さん「好きな人いたわけ?」

(三鷹さんの他に好きな人いたの?と思う)

響子さん「…」

(とぼける)

 

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これなんですよ。めぞん一刻の会話の妙、面白さ、テンポの良さ。全てがここに詰まっているので、めぞん一刻の会話の面白さを伝えるには好例の会話です。

 

まず注目したいのが、「お互い思っていることが違うのに会話が(途中まで)成立してしまっている面白さ」です。このような会話は今まで何度となくめぞん一刻で出てきましたよね。本来、思っていることが違えば、すぐに齟齬に気付き、お互い摺り合わせをすると思うのですが、これが何故か妙な歯車の噛み合いで、暫く会話が成り立ってしまいます。このまま勘違いして終わり、後の騒動に繋がる話もあれば、今回のように会話の最中に齟齬に気付き、あんたなに言ってんの、となる場合もありますが、どちらも面白いですよね。

 

そしてもう一つ、「言っていることと思っていることのふたつの意味があること」です。言葉に発していることと、思っていることが少しズレているため、書き起こした会話のように、カギ括弧内の口に出して言っている言葉と、丸括弧内の心の中のセリフの両方があるのです。要は一言発するたびにふたつの意味が出来ているんです。そのたびにズレていく会話に、「そうじゃなくてw」と読みながら突っ込んでしまいます。

 

そしてテンポの良さ。これは説明するまでも無いのですが、めぞん一刻の会話の応酬は、頭にスンナリとポンポン入ってきませんか?私はそうです。その理由のひとつに、画像をご覧いただければわかると思いますが、だらだらと長い説明セリフのような言葉が無く、基本的に1つの吹き出し、もしくは1つのコマに1回分の会話が収まっているんです。1人が1回に喋る量が少ないんです。なので、響子さん→律子さん→響子さん→律子さん→響子さんと、まさにテニスのラリーのようにポンポン会話が進むので小気味が良いんです。これがどちらか1人が長いセリフ、数コマに渡るセリフを言ってしまうと、響子さん→律子さん律子さん律子さん律子さん→響子さん響子さんとなってしまい、「会話の応酬」ではなくなり、テンポも悪くなってしまいます。

 

めぞん一刻の会話は魔力です。この言葉のマジックは凄いと思います。動きで見せているわけでも無い、何か謎があるわけでも無い、そして目的があるわけでも無い、そんなただの会話にここまで没頭出来てしまうのは信じられません。会話の遣り取りだけでここまで面白くなるのかと溜息が出てしまいます。

 

五代君律子さんに認識される

これまで何回か五代君は律子さんやお父さんに会っているのに、なんと未だに名前すら覚えられていませんでした…。これは五代君少しショックでしょうね。三鷹さんは最初に会ったときに名前を覚えられていました。これがどういう事かと言うと、再婚して欲しい律子さんにとっては、三鷹さんは覚えるだけの価値がある結婚相手の候補。再婚して欲しくないお父さんに取っては、結婚されてしまうかも知れない危険な男と思われてたって事でしょう。一方、名前すら覚えられていない五代君はと言うと…響子さんと男女の関係になるなんて、全く思われていなかった、つまり眼中に無かったって事なのでしょう。

 

響子さんの両親が名前を覚えるか覚えていないかだけのことなのですが、実は両親にどう見られていたのかがよく分かります。

 

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そして今回、さすがに迎えに来た五代君、恥も外聞も無く大声で響子さんに言い訳する五代君を見て、「結婚相手なのかも?」と思い、「覚えとこ」と認識を改めていました。しかし、一つ屋根の下に暮らす年の近い男性をそこまで眼中にしていなかったとは…。どれだけ五代君を軽く見ていたのかわかりますね。

 

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おわりに

最初に書きましたが、今回から週刊連載されることになり、1日1日の出来事が細かく描かれています。そのおかげで、それぞれの登場人物の感情の機微が良く伝わり、1日たったら事態が激変なんて急転直下の話も出てくるので、この辺りの時間経過のルールを変えたのは賢明な判断だったのだと思います。

 

そして響子さんの家出による副次的な効果として、5日間響子さん宅に通う事により、両親の覚え目出度くなったので…プラスだったのでしょうか。

 

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