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漫画全話レビュー「めぞん一刻 第100話「桜迷路」」

掲載情報

掲載雑誌
  • ビックコミックスピリッツ 1985年4月15日号

 

アニメでは

 

時系列と出来事
  • 1985年4月 五代裕作、しいの実保育園でアルバイトを始める

 

 

この頃の出来事
  • 4月1日 – 日本電信電話公社(電電公社)が日本電信電話株式会社(NTT)に、日本専売公社が日本たばこ産業株式会社(JT)に民営化。
  • 4月1日 – 伊奈製陶、INAX(現、LIXIL)へ社名変更。同時にCI導入。
  • 4月1日 – ヤマハ発動機が「FZ750」を発売。同じ日には本田技研工業が「DJ・1」を発売。
  • 4月1日 – フジテレビで夕方のバラエティ番組『夕やけニャンニャン』が放送開始。同番組から秋元康プロデュースによる「おニャン子クラブ」が誕生し大人気となる(1987年8月31日終了)。
  • 4月1日 – 放送大学開学。
  • 4月5日 – 大阪市営地下鉄中央線の深江橋駅 – 長田駅間が開業。
  • 4月7日 – 第57回選抜高校野球大会は高知・伊野商業高校が大会初出場で初優勝。桑田真澄・清原和博の「KKコンビ」を擁する大阪・PL学園高校は準決勝で同校に敗退。
  • 4月15日 – 南アフリカ共和国、異民族間の結婚を禁止する法律を廃止。
  • 4月17日 – 甲子園球場の阪神-巨人戦で巨人・槙原寛己からランディ・バース・掛布雅之・岡田彰布のバックスクリーン3連発。
  • 4月19日 – ソビエト連邦、東カザフスタンで核実験を行う。
  • 4月23日 – コカ・コーラが味とロゴマークを一新した「New Coke」発売(カンザス計画も参照)。
  • 4月26日 – 東京ディズニーランド〜成田国際空港(当時の名称は「新東京国際空港」)間直通バスの運行開始。

 

あらすじ

内定していた霞商会が倒産し無職になってしまった五代君。大学時代の人形劇部の黒木さんの紹介で、しいの実保育園のバイトを始めます。心配になった響子さんは五代君の様子を見に行くのですが…。

 

みどころ

  • 五代君と響子さんの心情

 

はじめに

今回は五代君が就職浪人が決まっての初めての回で、今までのめぞん一刻からすると珍しくシリアス一辺倒で、ほとんど笑いの無い回でした。この就職浪人1回目で五代君と響子さんの気持ちや立ち位置を全て確定させた回なので重要な回です。ちなみに、今回で100話目です。区切りの良い記念すべき100回目が、就職浪人決定後初めての話とは偶然でしょうか。この桜迷路から作風がだいぶ変わるので、そう言った意味でも区切りの回です。

 

黒木小夜子再び

五代君が無職になって困っていたところ、大学の人形劇部で一緒だった黒木小夜子がこのしいの実保育園を紹介してくれたのですが、アニメだとこれがこずえちゃんの紹介と改変されていました。これは少し引っ掛かるんですよね。五代君はこずえちゃんの紹介から保育園でバイトをし、そして保父が一生の仕事になるわけですが、つまり自分の一生の仕事は、別れた彼女(のような存在)であるこずえちゃんが決定付けたことに…。まあ人生でこんなことはあることなのでしょうが、一生五代君と響子さんの頭の中からこずえちゃんの存在が消えなくなってしまったのでは…。

 

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しかし桃色電話近辺と、ちょっとした単発の話でしか出てこなかった黒木さんが、こんな重要な立ち位置で復活するとは思いませんでした。勿論、作者の高橋留美子さんが最初からここまで役回りを決めていたとも思えないので、話の途中に成り行きで考えたことなのでしょうが、こうやって過去キャラを使い回してくれるのは読者としては有り難いです。

 

 

惣一郎さんとの比較

響子さんは落ち込んでいるであろう五代君の様子を見にしいの実保育園へ行くのですが、そこであろうことか亡夫惣一郎さんの名前を出し、「惣一郎さんは落ち込んでいなかったから五代さんもそんなに気にせずに…」と言ってしまいます。

 

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響子さんは今まで特に気にせず五代君の目の前でも亡夫惣一郎さんの話をしていたのですが、今回五代君が「ぼくは惣一郎さんじゃありませんから」とキッパリ言ったことで、初めて五代君が惣一郎さんの話についてどう思っていたかハッと気付いたようです。響子さんは自分の経験から説得力のありそうな慰め方を選んだだけだと思うのですが、五代君がどう受け止めるかまでは上手く想像出来ていなかったみたいです。

 

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また、今回は惣一郎さんの命日のお墓参りでしたが、これまでのお約束であった、響子さんvs響子さんの両親や、再婚をしつこく勧められる話は無く、完全に五代君と響子さんの話になっていました。これも今までと少し変わったところです。話の比重が、惣一郎さんのお墓参りより五代君へと移っています。

 

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そして郁子ちゃんはこの4月で高校2年へと進学。五代君の学力では高校2年生への家庭教師は無理とのことで、郁子ちゃんの家庭教師のバイトはここで終わったことが示唆されています。しかし郁子ちゃんは登場当初から比べると成長しましたねえ。めぞん一刻はこの登場人物の成長も楽しみであり面白さのひとつです。ちなみに、「高校2年生への家庭教師は五代君の学力では無理」との話は伏線となっており、のちの八神への家庭教師エピソードへと繋がります。

 

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迷路は大事!

ここで声を大にして言いたいのですが、この話は凄く大事です。そして名作です。それだけにこの迷路をアニメ化しなかったことは残念で仕方がありません。正確に言うと、アニメでは五代君は就職浪人をしなかったので、アニメ化「出来なかった」が正しいですね。それにしてもこの話をアニメで見られなかったのは残念です。

 

と言うのも、ここは就職浪人をした五代君と響子さんの気持ちがきちんと読者に提示され、どれだけ五代君が本気で落ち込んでいるのか、悩んでいるのか。そして響子さんも真剣に心配しているのか。これが丁寧にわかりやすく描かれています。

 

もしこの話が無く就職浪人のパートに入っていたら、めぞん一刻の作風上、一刻館住人が五代君の就職浪人を茶化し、五代君が怒り、そして響子さんが戸惑うなんて、今まで通りのコメディチックな描かれ方が始まってしまうため、就職浪人の大変さや、五代君がどれだけ本気で悩んでいるのか、いまいち伝わりづらかったんじゃないかなと思います。ところが、この迷路はそのような今までのめぞん一刻の作風とは外れ、この1話だけまるで違う作品のようで、ギャグや笑いはほとんど無く、終始五代君と響子さんの辛そうな心情、表情、会話で成り立っていて非常に特殊です。これは、四谷さんら笑いに持って行ってしまう一刻館住人たちが出なかったことも理由で、おそらくわざと出さなかったんだと思います。

 

ここで五代君と響子さんの辛さを完全に描いたので、この後の五代君の就職浪人エピソードは、この迷路の2人の気持ちをベースに読者は読んでいくことになります。ギャグや笑いの中にも、「ああ五代君辛いな」、「響子さん心配してるんだろうな」と、読者の立ち位置がぶれずに済むので大事です。簡単に言うと、「就職浪人で五代君と響子さんは本当に苦しんでいるんだぞ」と読者に植え付けた回で、これがあるからこそ、この先の話は笑いながらもどこか真面目に、そしてちょっと考えながら読んでしまうんです。

 

これが凄く大事で、五代君の就職浪人を茶化しながら笑って読むか、それとも五代君大変だな…と感情移入して読むか、この迷路で決まったのだと思っています。迷路が無ければ今までと同じように、「五代君大変そうだなw」と笑って読んでいたと思うのですが、迷路があったからこそ「五代君大変だな…(頑張ってくれよ)」と思いながら読んでいました。これは小さいことに思えて、作風を決定づける非常に大きな違いだと思います。

 

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迷路の前と後で作風が変わる

話の中身も迷路のタイトル通りの内容で、並木の迷路のようなところで五代君は響子さんを一旦見失うのですがすぐに見付けます。これはこの場の話だけではなく、五代君と響子さんの大局的な関係も表しています。就職浪人してしまい先が見えなくなり、響子さんと結婚したい五代君は、響子さんを見失ってしまいそうとの人生の立ち位置に重ねており、この話は文学的でもあります。ここまで真剣に最初から最後まで通した話は、今までのめぞん一刻では無かったので、ここから先の作風が変わるターニングポイントにもなっている話でもあります。

 

実際、この迷路前と後ではだいぶ作風が変わっており、それまでは楽しい話が多かったのですが、このあとは辛い話が多くなってきます。辛い話が多いと気が滅入り、読むモチベーションも下がるかと思いきや、それでもやはり食い入るように読ませてしまう辺り、高橋留美子さんは凄いんだなと実感もします。

 

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シリアスな中にも笑いあり

先ほどほとんどシリアスな話だったと書きましたが、一刻館住人は出てこないものの、要所にクスッとする小さな笑いがあります。めぞん一刻はこの先、それぞれの登場人物の人生に決着が付いていくので、シリアスな話もたくさん出てくるのですが、その中にも要所に小さなクスッと笑える1コマを入れてバランスを保っています。このシリアスとちょっとした笑いのバランス感覚は絶妙です。

 

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おわりに

改めて読むと、本当にこの迷路の前と後で別の作品のように作風が変わっていますね。これまで培ってきた笑いパターンは随所に出てくるので、辛い話一辺倒ではなく滑稽な話もあるのでバランスは取ってはいるのですが、五代君の苦労と響子さんの心配が数多く出てきて、感情移入して読む身としてはハラハラしてしまいます。

 

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