アニメ全話レビュー「寄生獣全話レビューを終えて」 評価はまだありません

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全話レビューを終えて

めぞん一刻に続き、今回も「寄生獣 セイの確率」全話レビューを無事完走することができました。後半は不満が多くなってしまって、原作漫画未読のアニメを楽しみに見ている人には申し訳ないです。とは言っても、自分の感想に嘘をつくわけにも行かず…。

 

「寄生獣 セイの確率」全話レビュー中でも書いていますが、アニメはアニメで楽しもうと思っていましたし、実際前半までは楽しめていました。しかし、加奈が殺されたあとの13話から様子がおかしくなり、18話の田村玲子死亡の区切り方のおかしさでハッキリ違和感を覚え、市役所戦からの手抜き感があからさまで、触れずにはいられなくなってしまいました。その辺のことも含め、最後に寄生獣というアニメについて総括していきたいと思います。

 

アニメになって気になったところ

時代

原作漫画の連載時期は1990年頃だったので、時代背景や舞台も当然その時代でした。建物や時代背景や社会的背景、流行りも変わってしまっているため、時代をどうするかで選択肢は二つありました。1990年のままやるか、それとも舞台を現代に置き換えるか。このアニメでは後者を選びました。その結果、それぞれのキャラクターが今風になってしまい、そのせいで岩明均さん独特の人物の影や不気味さがほぼなくなり、みんな爽やかな今風の若者になってしまいました。

 

原作漫画のままアニメ化しろなんて言いませんし思ってもいませが、もうちょっと表情の陰影や、不気味な作風は投影できなかったんでしょうか。残念なことの一つです。

 

BGMの少なさ、合わなさ

まず始めにオープニングの曲でビックリしました。何を言っているのかわからない雑音のような言葉に騒がしい曲。まるでカイジのオープニングです。変化球を狙いすぎじゃないでしょうか。

 

アニメに限らず、よそと違ったことをして目を引きたいとの手法は、古今東西あるのですが、王道と呼ばれるやり方が確立したのには、それなりに理由があるわけで、あまりにもそこから離れた変化球を狙うのは冒険だと思います。特に作風や絵柄が特異なカイジならば、作風自体が変化球なので、曲が変化球なのもまだマッチしようもあるのですが、人間とは何か、地球をどうするべきかなど、シリアスなテーマを扱う寄生獣でこれは変化球が過ぎたように思います。

 

また、作中のBGMも数が少なく単調で、シーンに合わないことが非常に目立ちました。シリアスシーンや戦闘シーンで、アップテンポな軽妙で踊りたくなるような音楽。しかもファミコンのゲームミュージックのような単調さ。BGM無しで良いようなシーンですら、BGMを無理矢理流すセンス。アニメのBGMに五月蠅く何かを言う方ではないのですが、さすがにこのBGMのセンスにはついていけませんでした。

 

季節が一冬

これは「寄生獣 セイの確率」全話レビューで何回も書いているのですが、このアニメでは、最初から最後まで一冬のでき事でした。。田宮良子が赴任してきたのが、周りの景色や服装を見ると、冬かもしくは冬に近い秋。月にするとおそらく11月くらいでしょう。そこから殺人鬼Aが学校を襲い、島田秀夫が暴れ、田宮良子が妊娠、退職。そしてその後田宮良子が出産。赤ん坊が少し育ったあと、田村良子が死亡。市役所戦、後藤戦。これら全ての事が起こったのが、おそらく11月から翌年3月くらいまでの、たった4、5ヶ月の間に起こってしまっているんです。無茶苦茶です。田村玲子死亡の時に雪を降らせる演出をしていることから、確信的な犯行です。わかってやっているんです。

 

理由はおそらく単純で、アニメの放送時期の冬に合わせたに過ぎません。真冬に真夏の話をやるというのを避けたんでしょう。この手の季節改変は昔からあったことなのですが、そんなことを気にする視聴者はもはやいないと思うのでやめて欲しいです。昔はアニメ=子供が見る物だったので、現実と違う季節をアニメでやることは、視聴者のハートを繋ぎ止めるマイナスになったのかも知れませんが、今や深夜アニメ全盛ですからね。少なくともこの枠でやるアニメには適用しなくて良いでしょう。まあこのアニメの随所にある手抜き、適当さを見ると、単に服のデザインや背景を変える手間を惜しんだだけの気もしますが…。

 

ちなみに原作漫画では3年間のでき事でした。それは田宮良子の妊娠から出産まで考えれば当たり前なんです。もしかしたら、アニメしか見ていない人は、たった2、3ヶ月で赤ん坊を産んだのだから、赤ん坊は人間じゃないんだなんて誤解した人がいるかも知れません。時間経過なんてどうだって良いじゃないかと言われるかも知れませんが、パラサイトが産む赤ん坊も、パラサイトの首から下も、極めて普通の人間だって事を示す重要な要素なのですから、この時間経過の無視は本来致命的なんです。

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原作漫画が超有名作品なので、それぞれ脳内補完したでしょうし、原作漫画未読の人も、簡単にネットでどういうことか検索したり、掲示板で意見を聞くことができるので、そのような誤解は最終的にはしないと思うのですが、時代が時代ならとんでもない大誤解のまま見ている人がいたかも知れない致命的な欠陥なんです。

 

区切り方のおかしさ

区切り方のおかしさは前段でも述べましたが、一例を挙げると、田村玲子の死亡シーン。これをなんとAパート(前半)の最後に持ってきて、そこでCMだったんです。これはさすがに違和感を覚えました。更に違和感を覚えたのは、Aパートの最後なのに、特殊エンディングのように曲を流したところです。それも本当にエンディングの曲です。わけがわかりません。そんなことをするなら、素直に田村玲子死亡でBパート終了。特殊エンディングで次回へ続く…でいいじゃないですか…。この辺からも適当さが透けて見えるんです。

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評価の高いアニメは細かいところまで計算され尽くされていて、その一つがどこで終わるかだったりします。これは結構重要で、次回へのわくわく感や飢餓感を煽る、英語で言うところのクリフハンガーです。上手いこと引っ張るんです。多分このアニメはこの区切り方、終わり方を計算していません。適当にできるところまでやっているだけです。もし計算してこの区切り方や終わり方ならば、そっちの方が酷いですけど…。

 

表情と演出の軽さ

表情や演出の軽さも後半特に目立ってきたことです。表情とは少し違いますが、作画について触れると、後半は遠目の人物の顔であからさまに手を抜いています。顔に目鼻口の四つの点があるだけなんてのもありました。アニメ制作は時間が足りなくて大変というのは知っているのですが、それにしてもこの手抜きは凄かったです。

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表情の話に戻ると、驚いた表情や恐怖の表情が実に軽くてチープでした。 大袈裟に驚いた表情で目を見開き、目が上下に揺れ、汗がたらたら。そんなお手軽な表現がやたら目立ちました。原作漫画にあった陰影や微妙な表情はほとんど再現されていませんでした。

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原作漫画は寄生獣の不気味な作風と相成って、岩明均さんの影のある不気味で、どこか人間味のない絵柄が絶妙にマッチしていたんですけどね。残念ながらアニメではこの不気味さの半分も表現できていませんでした。

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アニメになって良かったところ

アニメになった

アニメになって良かったところは…アニメになったところです…。正直、これ以外思いつくことがありません。ゴメンナサイ。ただ敢えて挙げるなら、平野綾さんのミギーはどう考えても駄目だろうと、放送前は思っていたのですが、意外と違和感なくマッチしたところでしょうか。

 

やたら弄りたがるアニメ

もはや原作付きのアニメでは宿命なのですが、原作を色々弄っちゃうんですよね。

 

おそらく理由の一つにはクリエーターとしての創作意欲、悪く言うとエゴもあるんでしょう。もっとシンプルに言えば、原作そのままにアニメ化したんじゃつまらない。この気持ちはおそらく誰にでもあるんだと思います。自分の色を出したい、自分の力で評価を得たい。これは責められません。ただ弄っちゃ駄目なところ、弄って良いところがあると思うんです。大抵文句を言われるのは前者が目立つアニメだと思います。そしてこの寄生獣のアニメも前者が目立ちました。岩明均さんの描くキャラクターが醸しだす不気味さや陰影。そして今までも書いてきましたがいくつかの重要なポイント。弄っちゃ駄目なところを結構弄っています。

 

逆に原作漫画では説明不足だったところをわかりやすく改編なんてのは、評価される改編なんじゃないでしょうか。残念ながら寄生獣のアニメにはほとんど見当たりませんでしたが…。

 

寄生獣全話レビュー終了

原作漫画でアニメを純粋に楽しんでいた人には本当に申し訳ないのですが、アニメの寄生獣への評価はこのような形になってしまいました。アニメしか知らない人は、この機会に原作漫画も読んでみて下さい。アニメとは物語の深みが段違いです。ただ、アニメで物語の展開どころかラストまで知っていて、それでも原作漫画を楽しめるのかと問われれば、正直私にはわかりません。先に原作漫画を読んでしまった事実は消えないので、アニメから原作漫画との順番で見てどこまで楽しめるのか…。

 

私は原作漫画が大好きですが、なにも原作漫画信者というわけでもありません。「寄生獣 セイの確率」全話レビューの初期を呼んで貰えれば分かると思いますが、見る前はアニメはアニメで楽しもうと思っていましたし、前半は確かにアニメはアニメで楽しんでいました。

 

元々、 原作漫画が20年以上たっても語り継がれるほどの名作であり、完成度だったので、どう頑張っても原作漫画を超えることは無理だろうと思い、アニメはアニメで楽しむつもりでいました。原作漫画を100としたら、70で十分だと思っていたんです。ところが後半、回が進むにつれどんどんそのラインを下回っていってしまいました。正直、こんなことになるとは思いませんでした。あれだけ面白い原作漫画なのですから、変な弄り方をしたところで、面白く作れるに決まってると思っていました。例えて言うなら、最高級食材を持って料理人にご飯を作って貰うような物で、これだけ最高級の食材なんだから、誰がどうやったって不味く作れるわけないだろう。不味く作る方が難しい。そう思っていたんです。ところが蓋を開けてみれば…。と言うことで、このアニメのできは未だに信じられません。どうしてこうなってしまったのか…。

 

たまに、アニメにしない方が良かったなんて聞くことはあったのですが、もしかしたらこれがそうだったのかも知れません。大好きな原作漫画がアニメになるのだから、アニメ二ならない方が良かったなんて、そんなおかしな話あるのかと思っていたのですが、その気持ちが少しわかった気がします。

 

一度アニメしたものをまたリメイクなんてまずやらないでしょう。過去にHUNTER×HUNTERや鋼の錬金術師はありましたが、それでももの凄く希少な例です。まずないと見て良いでしょう。だからこそ今回のアニメ化のできがこうなってしまったことが残念でなりません。

 

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後半は愚痴が多くなってしまいましたが、ここまでお付き合いいただき有り難うございました。

 

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