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途中で読むのをやめていたがこんなに面白かったとは
私の悪い癖と言うか、先見の明がない故と言うか、この漫画もワンパンマンと同様、少し読んで面白くなさそうと思い、でずっと放置していました。
最初はただ単に名物ばかりの話で、それに関する知識も興味も無かった私は、安易に面白くないと判断してしまっていたんです。ところが少し話が進むと、歴史上の誰もが知っているような重大なでき事と、主人公佐介の名物の話が絶妙に絡み合い、次第に名物への興味も出てきて、更に戦国時代の漫画としてもかなりしっかりしていて、3巻を読む頃にはどっぷりはまっていました。
織田信長の漫画ではない
織田信長と言う、日本の歴史上最も強烈な指導者が出てくる漫画だったので、てっきり織田信長がずっと出てくる話かと思っていました。ところが織田信長は3巻あたりで退場と言う…。
主人公の佐助の人生を完全にやるとは思っていなかったので、この展開にはびっくりしました。多分歴史上の佐介を知っている人なら当然の展開なのでしょうが、佐介なんて知りませんし、千利休もざっくりとしか知らないので驚きました。
戦国漫画としても物凄く面白い
へうげものは文化人佐介の視点から見た戦国時代の話なので、戦国時代の合戦の話や、信長、秀吉、家康の権力争い、はたまた江戸幕府が開かれるまでの歴史上の大きな話は描かれるのか、もしくはこの辺の激動の時代を上手く描けるのか疑問だったのですが、見事にこの辺の歴史を描いていて、無茶苦茶面白く、そして勉強になりました。
正直このダイナミックさには度肝を抜かれました。あくまで文化面から見た話であり、お茶がどうとか、良い器がどうとか、そういう話が軸の話なのに、その軸が全くぶれず一本筋が通っていながら、こういった大局的な歴史が動く話まできちんと面白く描くなんて、作者は凄いとしか言いようがありません。
なんとへうげた漫画か
しかしよくもまあこんな変な漫画を描こうと思い、そしてここまで面白く描きましたね…。とても常人の私ではこんな話は思いつきませんし、人に面白く伝えることすら難しいです。
この作者の度胸星や他の漫画も読んだことはあるのですが、まあ面白いな程度だったのですが、このへうげものを読んで、私はこの作者を勝手に「天才」のカテゴリに入れました。
そりゃあ変な話は描けます。捻くれた漫画や世の中を斜めに見た漫画なんか描いている漫画家さんもいます。でも重要なのは「変な漫画」を「面白く描く」と言うことです。この二つを両立することは中々できません。狙いすぎて変なだけに特化したり、変な漫画だったものが軌道修正して普通の漫画になったり、そういうことにはならず、変なままとてつもなく面白いんです。
お茶や名物から見た戦国時代
しかしお茶の世界がここまで当時の武将や国勢に影響を与えていたとは知りませんでした。
勿論千利休くらいは学校で習うので知っていますが、あくまで物凄く偉いお茶の先生くらいにしか思っていませんでした。千利休黒幕説なんかは、わずかに耳にしたことはありましたが、ここまで面白く虚実織り交ぜて物語を展開してくれると、すんなり色んな知識が頭に入ってきます。
正直、歪みの「乙」とか言われても、いくらこの漫画を読んでも未だに分かりません。しかしまあ今の芸術作品もわけがわからいものが高値で取引されたりしていますからね。これと変わらないんでしょう。ある種投資の対象だったのかもしれません。名物1個でお城が建つとか平気で言われていますからね。
文化人の下克上
武将の下克上なんかは有名ですが、この漫画はある意味文化人の下克上です。
雑兵と言われた佐介が少しずつ武勲を立てたり、上の人に気に入られたり、人脈を作っていったりして、下克上していきます。
物語で何が楽しいかって、この漫画に限らず下克上なんですよね。もっとわかりやすく言うと、下の者が這い上がって地位を上げていく様と言いますか。スポーツ漫画でもそうです。弱い状態から努力と根性で次々格上を倒していき、実力が付いていき、チャンピオンになる。この過程が最高に好きです。
佐介もこの「登っていく様」が実に爽快でわくわくしましたが、最新巻では相当偉いところまで上り詰めているので、この辺のわくわく感は若干薄れてしまいました。
こんな人にお勧め
- 戦国時代が好きな人
- 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が好きな人
- 一風変わった戦国時代の漫画が見たい人
- 「名物」に興味がある人
多様性のある日本の漫画文化
へうげものを読んで、改めて日本の漫画の多様性に驚嘆しました。
こういった漫画を作り出す作者や周りの関係者も勿論物凄いのですが、こういった漫画を受け入れ評価する読者や社会も凄いんですよね。
どうかこれからもこのような多様性をなくさず、変で面白い漫画を生み出していって下さい。
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