目次
掲載情報
掲載雑誌
- ビックコミックスピリッツ 1985年7月30日号
アニメでは
時系列とでき事
- 1985年7月26日 五代裕作、響子さんに決別宣言
この頃のでき事
- 7月〜8月 - 毒入りワイン騒動
- 7月1日 - 大阪地裁が豊田商事の破産を宣告。
- 7月1日 - カシオ計算機が電子辞書「カシオワード」を発売。
- 7月3日 - 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がアメリカで劇場公開。
- 7月9日 - 徳島ラジオ商殺し事件再審にて、徳島地方裁判所、被告人無罪の判決を下す(7月19日結審)。
- 7月9日 - マレーシアの自動車メーカー・プロトンが「サガ」を発売
- 7月10日 - フランス対外治安総局、ニュージーランド・オークランド港でグリーンピースの船舶「レインボー・ウォリアー」を爆破撃沈。
- 7月11日-国鉄能登線古君駅 - 鵜川駅間で、能登線列車脱線事故。
- 7月13日 - ライヴエイドコンサートが開かれる。
- 7月13日 - 電波法改正、電信級アマチュア無線技士に電話系電波型式が、電話級の資格者に画像通信系型式が開放される。
- 7月17日 - アメリカ合衆国カリフォルニア州アナハイムにあるディズニーランドが開園30周年。
- 7月19日 - ヒョウとライオンの雑種・レオポンの「ジョニー」が死亡。
- 7月25日 - 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約を日本が批准・発効。
あらすじ
響子さんと三鷹さんの抱擁を偶然目撃してしまった五代君。ショックのあまり坂本の家に逃げ込み、保育園のバイトも休み、響子さんから逃げてしまいます。そこに追い打ちを掛けるように、響子さんと三鷹さんが結婚するとの情報をこずえちゃんから聞き、遂には響子さん本人に決別宣言をしてしまいます。
みどころ
- 五代君が響子さんと別れる決意をする
- 響子さんの涙
はじめに
前回のタイトルは「開けられた扉」、今回のタイトルは「閉じられた扉」です。非常に上手いタイトルです。
前回の開けられた扉とは勿論、三鷹さんと響子さんの抱擁を目撃してしまった開けられた扉の様。そして今回の閉じられた扉は、五代君の部屋の扉の前で、響子さんの必死の言い訳にも閉じられた扉の様。前回と今回で話の内容もタイトルも対になっています。
めぞん一刻のサブタイトルの付け方のセンスは結構独特です。このように伝わる人には伝わる捻ったタイトルだったり、作者の高橋留美子さんの造語だったり。めぞん一刻はそのサブタイトルの意味を考えるだけでも、ちょっとした楽しみになりします。
困ったら坂本
五代君の友人として作中に登場するのは、主に坂本のみと言っても良いので当然なのですが、五代君は困るとすぐ坂本の家に逃げ込みます。初期に大学受験で中々合格が出なかったエピソードや、響子さんと三鷹さんが結婚するとの噂が流れたエピソードでもそうでした。
今回の坂本は五代君が今までに無い程落ち込んでいるのを見て失恋だと悟り、余計な詮索はせず黙って家に迎え入れていました。響子さんもそこは今までも坂本の家に逃げていたのを知っているので、坂本の家で電話をして話そうとするのですが五代君は拒否。受け入れた当初とは違い、坂本はこの辺りから逆に明るく振るまい、五代君を元気付けようとしていたらしく、ちょくちょく茶化したりしていました。
坂本も五代君が逃げ込むのはうちしかないとわかっていて、どうせ響子さんに嘘をついてもバレるであろう事をわかっているらしく、五代君の居留守要求に対し響子さんに「いないと言ってくれ、と言っとります。」と伝えていました。五代君と響子さんは同じ屋根の下に住む管理人と住人ですからね。嫌でもいずれ顔を合わせなければならない関係なので、逃げ切ることはほぼ不可能です。これも五代君と響子さんの特殊な関係のひとつです。
私の場合、嫌なことは早く終わらせたい、例え悪い結果だろうと不明確なことは気持ち悪いので一刻も早く確かめたい性分なので、ここは五代君と性格は真逆で、こんなことがあったら、多分即刻響子さんに説明を求めていると思います。ウジウジしているところや逃げ癖は五代君と似ていて共感するのですが、このように不確かなことをそのままにする性格だけは五代君と真逆です。
よくめぞん一刻で言われることのひとつに、「携帯があったらあの物語成り立たないよなあ」とのことがあるのですが、今回のエピソードもまさにこれです。もしこの世界に携帯電話があった場合、響子さんが五代君の携帯に連絡を取り直接説明するか、それを拒否されたとしても、メールで事細かく説明を文章で書いて送ればすぐに誤解は解けたのでしょう。ただ、携帯があったらあったでこのようなすれ違い劇は演出可能ではあります。メールで説明を送られても読まずに削除…とかね。
よくスポーツで、ベーブ・ルースが今の時代生きていたら活躍できたか、マラドーナが…なんて仮定の話が出ることがありますが、おそらく今の時代に生きていたらいたで、彼らレジェンドの能力なら、その時代の実力や戦術に適応して成長し経験から学び、やはりレジェンドになるのではないかと思っています。これと同じで、時代や背景が変わったとしても、同じような話は作者の能力やアイディア次第で、困難になるのでしょうが作れるのだとは思います。
結婚の噂
今回ばかりは完全に三鷹さんと響子さんがくっつき振られたと思い込んで落ち込んでいる五代君。こずえちゃんと会った際、響子さんと三鷹さんが結婚すると噂を聞いたとこずえちゃんから聞き、決定的な打撃を受けてしまいます。…。こずえちゃん、あんたどこからその話を…。ショックを受ける五代君はフリーズしてしまい、こずえちゃんに誰から聞いたのか、それは確実なのかなど問い詰めることもできず、またしても誤解が雪だるま式に膨らんでしまいます。
何度も何度も誤解を修正するチャンスは五代君にあったんですけどね…。ただ少しだけ五代君が勇気を出して響子さんにもこずえちゃんにも「どういうこと?」と聞けば良かっただけなのですが、毎度のことですが五代君はいつもそれを放棄し、勝手に誤解を膨らませ、そして突っ走って最悪一歩手前の事件を引き起こしてしまいます。こずえちゃんもおそらくは怪しい情報を信じているだけなので、ちょっと問い詰めればおかしいと気付いたでしょうに…。
五代君帰宅
五代君はもう大学生ではなく、フリーターとは言え社会人であり、いつまでもアルバイト先のしいの実保育園を休むわけにも行かず、いずれ響子さんに捕まってしまうのはわかっているからか、いつまでも坂本の家にいるわけでもなく、今回は坂本の家に2泊しただけで一刻館へ帰宅していました。
帰宅した五代君にすぐに事情を説明しようとした響子さんですが、五代君は真実(三鷹さんとの結婚)を響子さんの口から聞くのを恐れ頑なに拒否。響子さんの説明を遮って、心にもない「(結婚)おめでとうございます。」と言ってしまいます。なおかつ響子さんに対して、「もうあなたのこと……なんとも思っていませんから……」と直接決別宣言まで…。
今までも五代君は響子さんを諦めようと思ったことは何度かあるのですが、響子さんに直接こんな決別宣言をしたのは後にも先もこれだけで、一歩間違えればここでジ・エンドでしたね。昨今はハッピーエンドだけではない漫画やアニメもあり、切ない終わり方をして「良い思い出だったなあ」と締める物語もあるので、作者のさじ加減ひとつでこれもあり得たのでしょうね。
響子さんの涙
五代君に決別宣言をされた響子さんは、五代君が扉を開けて出てきたとき、一筋の涙を流していました。結局この響子さんの一筋の涙で五代君は、あの意味はなんだったのか、振った男のために涙を流すのか悩むことになります。
響子さんも既にだいぶ前から五代君を選んでおり、五代君を好きなわけで、響子さんから見ると好きな五代君に振られた(諦められた)ことになるわけですから、悲しくて、そして泣いて当たり前です。
面白いのは…、とこのエピソードで表現するのも違和感がありますが、とっくに五代君と響子さんはお互いにお互いを選んでいるのにも関わらず、いつまでたってもこのようにすれ違いが起こり、波瀾万丈な事件が起こることです。お互い好きとわかってお付き合いしましょう、恋人になりました、恋人同士で喧嘩しました、ではないのです。恋人にすらなっていないこの関係性と不思議さ、滑稽さ、ユニークさ。めぞん一刻の面白さを挙げるとキリがありません。
総評
この頃の話を読んでいると胸が痛くなりますね。切ない話や悲しい話を、きちんとそのままその通りの感情になって読める漫画と言うのは、改めて凄いと感じています。
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