今回レビューするのは、めぞん一刻の第18話です。
思うところがあり、今回アニメ全話レビューの大幅な加筆修正に着手します。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
先の展開のネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。
目次
あらすじ
響子さんが一刻館に来てから2回目のクリスマス。なけなしのお金で響子さんへイヤリングを買うのですが、ひょんなことからこずえちゃんにプレゼント。しかし、部屋で見付けた去年買ったブローチを見付け、1年越しに渡すことに成功。五代君は響子さんから手編みのマフラーを貰い、自分だけ特別扱いだと喜ぶのですが…。
みどころ
- こずえちゃんにいやいやプレゼントを渡す五代君
- 響子さんの八方美人
初登場人物
- なし
感想
響子さんが一刻館に来てから2回目のクリスマス
今回のエピソードは響子さんが一刻館に来てから2回目のクリスマスです。原作の漫画だと1981年12月です。響子さんが管理人に就任したのが1980年10月。響子さんが一刻館ンに来てから1年と2ヶ月となります。
アニメの放送日は1986年7月23日なので、真夏にクリスマスのエピソードをやったことになります。めぞん一刻のアニメはこのあと、放送時期と季節を合わせるようになるため、原作の漫画と季節を変えたり、そのおかげで話が変になったりが出てきますが、この時期はまだ放送時期と季節の整合性は気にしていなかったようです。
五代君は貧乏
おんぼろアパートの一刻館に住んでいるくらいなので五代君は貧乏です。今回は冒頭、五代君が金勘定をしており、家賃や生活費を除いた2千円ちょっとが響子さんへのクリスマスプレゼントに使えると言っていました。このとき、アニオリで朱美さんが勝手に部屋に入って来て、茶々丸でのパーティー参加料を徴収。
響子さんはここ2,3日全く姿を見せていない様子。五代君が帰ってくるとお出迎えしてくれることも少なくないのですが、そこでも姿を見せず。電話の取り次ぎで五代君の部屋をノックしても、姿を見せないくらい素早く部屋に戻ってしまっていました。
この頃の五代君は取り敢えずの口実がないと、プライドなのか恥ずかしいのか管理人室をノックできない様子。まあ、まだ友達と言うのも微妙な関係ですからね。一の瀬さんが会いたければノックをすれば良いじゃないと言うのですが、用事がないもんと五代君。
このときの電話はこずえちゃんからで、明日会う約束をしていましたが、桃色電話の回ではあれだけ怒っていた響子さんも普通に電話を取り次いでいました。やはり前回でこずえちゃんの立ち位置が、響子さんの中でも作中でもハッキリ変わったのだと思います。こずえちゃんはライバルではない…と。
管理人室をノックする理由のためにプレゼントを買う
五代君は響子さんにここ数日会えていないことや、一の瀬さんに言われたように、理由もなく管理人室へ行けない自分の性格を考え、管理人室をノックする理由のためだけに、響子さんへのクリスマスプレゼントとしてイヤリングを購入しました。価格は2千円とのこと。これでもう今月の余分なお金はゼロになったようです。
響子さんへのプレゼントを買ったあと、こずえちゃんとの待ち合わせの喫茶店へ行くのですが、初期の五代君お約束の白昼夢がまた出ました。アニメの方がアニオリで白昼夢をたくさん入れているのですが、ここは漫画の方でもあった白昼夢です。
響子さんとの都合の言い妄想をし、キスをしそうになって電柱やドアや壁にぶつかって目が覚める…とのパターン。今回のアニメでは通行人が「またやってる…」と言っていました。また、五代君は自分でも白昼夢を自覚しているようで、「なおさなくちゃ…」と言っていました。五代君は自分の夢想癖がわかっていて、治さなきゃと思っているようです。
こずえちゃんにいやいやプレゼントを渡す五代君
こずえちゃんと約束したので喫茶店で待ち合わせをして会うことになった五代君。このとき、24日なのか25日なのかは言及がありませんでしたが、メリークリスマスとこずえちゃんも言っていたので、そのどちらかだと思います。
この状況は恋人とは言えません。クリスマスやクリスマスイブは日本だと恋人と過ごすのが定着しているのに、五代君はこずえちゃんから電話が掛かってくるまで約束すらしておらず、急に明日の24日か25日に会うことになりました。こずえちゃんから呼び出されて喫茶店で会っている状況です。
本来恋人同士なら、前もってその日に会うことを約束し、どこかへデートすることが普通です。五代君からクリスマスになるで誘われなかったのに、こずえちゃんは五代君を恋人と思っているようです。これも『こずえちゃんは天然だから』で説明はつきますが、その天然キャラ設定のおかげで前回の記事でも書いたように、響子さんのライバルではなくなってしまいました。
このときのこずえちゃんの状況を列挙すると以下のようになります。
- こずえちゃんから電話をもらって急遽明日(24日か25日)の昼に少しだけ喫茶店で会う
- 24日か25日のどちらか、そして両日の夜は会わない(そもそも約束すらしていない)
- こずえちゃんにプレゼントを買ってない(そもそもこずえちゃんの存在を忘れていた)
- 仕方なくプレゼントを渡す
どう考えても恋人ではありません。五代君はポケットから間違って落とした響子さんへのプレゼントをこずえちゃんに見られてしまいます。それでもまだこずえちゃんにはプレゼントを渡さなかった五代君ですが、手編みの帽子を貰ってしまい、プレゼントを見られたことも考え、期待するこずえちゃんに渡さないわけにはいかなくなり…。
五代君は物凄く困った顔をしてこずえちゃんに渡すのですが、このときばかりはこずえちゃんが可愛そうで仕方がありませんでした。そこまでいやいやプレゼントを渡さなくても…と。こずえちゃんはそれに気付かないくらい天然なのも悲しく…。
漫画やアニメだから良いのですが、現実だと五代君相当酷いことしています。その気もないのに4年(漫画だと6年)もキープ。ハッキリ言う機会は何回もあったのに、自分が嫌われたくないから言えず。早く解放していれば、こずえちゃんにももっと違う出会いがあったかもしれないのに…。これは響子さんと三鷹さんの関係でも同じです。現実なら刺されてもおかしくないくらいのことしている気がします。
五代君はこずえちゃんと別れたあと、自分の優柔不断さに「死ななきゃ治らんのか」と自責しており、悪いことしているとは思っているようです。こずえちゃんの編んでくれた帽子が温かく、いじらしいよなと思っていたので、響子さんがいなければこずえちゃんとくっついたのかもしれません。
救いは五代君が「これで(プレゼントを渡して)良かったんだ」と言ったところでしょうか。響子さんへはプレゼントはできなくなってしまったけど、いじらしいこずえちゃんにプレゼントを渡せたのは、結果的にこれで良かったのだ…と。しかし、五代君が自分で言うように優柔不断ですよね。
今回の林原めぐみ
今回の林原めぐみさんは、五代君とこずえちゃんが喫茶店でのウェエイトレスでした。
響子さんからマフラーを貰う
一方、響子さんと最近全く顔を会わせていない五代君。こずえちゃんに手編みの帽子を貰ったあとに一刻館に帰っても管理人室から出てこない…と思ったら、数日ぶりに響子さんが登場。Aパートで響子さんが全く描かれていなかったのは珍しいです。今回はBパートにして初めて響子さんが出てきました。
響子さんはここ数日徹夜でマフラーを編んでいたそうで、それを五代君にプレゼント。目に隈があり疲労具合が分かります。そこまでして自分にプレゼントを…と感激する五代君ですが、そうすると今度は響子さんへのプレゼントがないことにハッとします。こずえちゃんにイヤリングをあげてしまいましたからね。
さすがに手編みのマフラーを貰ってお返しのプレゼントがなしは不味いです。五代君は必死に部屋の中を探し…。なにを探しているのかと思ったら、去年渡し忘れたプレゼントのブローチでした。
このとき五代君は頭にこずえちゃんから貰った手編みの帽子。首には響子さんから貰った手編みのマフラー。優柔不断さが一目で分かります。しかし、五代君は冴えない三流大学生でモテないはずなのですがモテていますよね。響子さんのマフラーが義理だとしても、好意のない人にはあげないでしょう。
五代君は一刻館のオモチャ
去年のブローチを探している最中、偶然浪人時代の受験票を見付けます。あの頃は…と懐かしむ五代君ですが、あの頃も今も五代君は一刻館のオモチャで馬鹿にされていると断言する四谷さんと朱美さん。
五代君はファンの間でも一刻館のオモチャと言われるのですが、このこのときの発言から来ています。まさに五代君の立ち位置を良く表したピッタリの言葉。
五代君と朱美さんの関係
朱美さんは五代君の部屋で布団に入って横になっていましたが、よく他人の布団に寝られますね。朱美さんが特殊なのだと思いますが、半裸で五代君の部屋に入って五代君の布団に寝るという…。このとき五代君は20歳で朱美さんは25歳。しかし、全く危機感はない模様。
遂には五代君の布団で朱美さんは眠ってしまいます。「寝てる間に犯すぞ(だから部屋に帰れ)」と言う五代君に、「できるもんならやってみい」と返す朱美さん。五代君も「安心しきっとるな」と言うように。朱美さんは五代君を信頼していると言うわけでもなく、『襲うような勇気はない』と思っているようです。実際にその通りなのですが…。
朱美さんの布団がはだけ、足がニョキッと五代君の目の前に出て、半裸の朱美さんが露わになったとき、少しじーっと見たあと、ハッと我に返って布団を掛けてあげるところは男心が見て取れて面白いです。襲いはしませんし恋愛対象ではないものの、やはり半裸の女性が目の前に寝ていたら男は見てしまいます。このあたり男心とか童貞のドギマギする描写など、女性作家が表現できているところも凄いなと感心します。
男が見たら「あるある」とわかるんです。しかし、それを女性作家で、しかもこのとき24歳の高橋留美子さんが描けていることが興味深いです。編集が有能だったのか、想像力がたくましかったのか…。
朱美さんと五代君の関係は少し不思議です。五代君は朱美さんの半裸を意識しまくりですし、覗いたりもして興味津々なので女性としては見ているはず。しかし、朱美さんを襲う勇気なんて当然ありません。朱美さんは朱美さんで女性として見られていることを知っていながらからかい、襲われることは絶対にない、そんな勇気はないと安心しきって無防備です。
響子さんもこずえちゃんに嫉妬することはあっても、朱美さんに嫉妬することは作中ただの1度もなかったのでそういう存在なのでしょう。ただ、1度五代君と朱美さんが間違ってキスしたときは、嫉妬というか怒ってはいましたが…。まあ、基本朱美さんは五代君からも響子さんからも恋愛対象、嫉妬対象ではありません。大きな一刻館住人ってカテゴリーの1人ですね。一刻館住人だけは特殊です。
1年越しにプレゼントを渡せた五代君
五代君は徹夜で部屋を探した結果、朝になってようやく去年渡しそびれたブローチを発見。包み紙ももうないので、剥き出しのまま響子さんに渡していました。剥き出しでも素直に喜んでくれる響子さんは可愛いです。
1年前の話がまた1年後のここに繋がるとは…。前からここを考えていたとは思えないので、おそらく自分で過去の話を見返したか、覚えていてこれは使えるな…となったのだと思います。
以前の記事にも書きましたが、めぞん一刻はこのように過去の話から拾ってくる話があるのが面白いです。この世界はきちんと話が繋がっているんだなとわかり、よりめぞん一刻の世界に現実味が出ます。
響子さんは八方美人
茶々丸でのクリスマスパーティーに一緒に出掛ける五代君と響子さん。しかし、五代君はこずえちゃんに貰った手編みの帽子と、響子さんに貰った手編みのマフラーを一緒にしています。響子さんの目の前でこれは良い度胸しています。
響子さんは自分で年齢を今回22歳と言っており、五代君もやっと響子さんの正確な年齢を知ったようです。女性に年を聞くのは失礼ですし、これまでそのような話は聞けなかったのでしょう。2歳差なら結婚の障害にはならないなと、このときから五代君は響子さんとの結婚を意識していたようです。まあ、まだ全く現実的な話ではなく、空想に近い段階だとは思いますけどね。
道中、三鷹さんとも会い、一緒に茶々丸へ行くことになるのですが、五代君は自分だけが響子さんから手編みのマフラーを貰ったと鼻高々。ところが三鷹さんはそんな五代君を見て、余裕の様子。鞄から取り出したのは…響子さんから三鷹さんにプレゼントされた、色違いの同じマフラーでした。
同じマフラーを2人にプレゼントするなんてどういうつもりなのか思いを巡らせる五代君と三鷹さん。五代君は両天秤に掛けているのだろうかと思い、三鷹さんは五代君と同レベルってことかと思い…。今の立場のだと仕方がありませんが、三鷹さんは五代君よりずっと上の立場だと思っているようです。
この時点では五代君と三鷹さん両方にだけ手編みのマフラーをあげていると思っているので、そこにどんな意味があるのか悩む2人ですが、実は響子さんは他に手編みのマフラーをプレゼントしていました。全部で一刻館住人全員+三鷹さんで7つも手編みのマフラーをプレゼント。そりゃあ五代君と顔を合わせられないくらい部屋に閉じこもり徹夜の連続なるよなと。マフラーをあげた人は以下になります。
- 五代君
- 三鷹さん
- 一の瀬さん
- 賢太郎
- 一の瀬さんの夫
- 四谷さん
- 朱美さん
このときは漫画だと響子さんですら一の瀬さんの夫の存在は知らなかったので、それ以外の住人全員にあげていました。しかし、アニメでは賢太郎が一の瀬さんの夫にも編んでくれたと言っていました。漫画だともうとっくに一の瀬氏のことは出ていたので、アニメでそれをちょっとだけ情報の先出しをしています。そして、なぜか一の瀬さんだけはショールになっていました。
なぜここまで響子さんが皆にマフラーを一生懸命編んだかというと、この前捻挫したときにお世話になったので…とのこと。響子さんは律儀です。
原作漫画では
総評
今回は響子さんが一刻館に来てから2回目のクリスマスの話でした。そして、可愛い絵柄の音無竜之介さんの作画監督回。
響子さんのマフラーがメインのエピソードではありますが、こずえちゃんがちょっと悲しい立ち位置になっていて切ないです。昔はこずえちゃんの気持ちなんて考えて観ていなかったのですが、観る度に違う立場や角度からも楽しめるめぞん一刻なので、ちょっとこずえちゃんの立ち位置に立ってみると…。
1年前のクリスマスで渡せなかったプレゼントの話が、1年後のここに繋がるなんて本当に面白いですし気の長い作品です。
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