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終わりが見えてきた「大奥/よしながふみ(第11~13巻)」レビュー

あらすじ

大奥 第11巻

遡ること実に百五十年。
家光以来絶えて久しかった男性の将軍として誕生した、第十一代将軍・徳川家斉。
だが実勢を握り権勢を振るうのは、田沼意次を失脚させた、実母・徳川治済だった──。
江戸城内から一掃された蘭学研究者たち。
だが、市井にあっても黒木良順と青海伊兵衛は、田沼の、青沼の、そして平賀源内の赤面疱瘡に立ち向かう想いを、その胸に、しかと受け継いでいた…!!

 

大奥 第12巻

医療編、衝撃の結末! 田沼意次、青沼、平賀源内、黒木、伊兵衛、そして十一代将軍・家斉…。連綿と受け継がれた赤面疱瘡撲滅への強い意志。その想いが辿り着いた場所は──。 そして、新しい時代が始まる───!

 

大奥 第13巻

激動の幕末編がスタート! 篤姫の登場で再び大奥に激震!?

 

はじめに

以前、10巻までのレビュー記事を書いたのですが、先日久々に溜まっていた続きの第11巻から第13巻を読んだのでまとめてその感想を書いていきたいと思います。

 

 

大奥は以前なんとなしに読んだら物凄く面白くて填まってしまったのですが、今回はその11巻から13巻の感想と言うことになります。

 

確実に話が進んでいる

このような大人気漫画の場合、人気作を続ければ続けるほど出版社の儲けになるので、無理矢理引き延ばして話が薄くなってしまうことがよくあるのですが、今回第11巻から第13巻までを読むとわかるのですが、確実に終わりに向かって話が進んでいますね。しかもかなりサクサク話が進んでいます。

 

一応この大奥は、実際にあった歴史をなぞりつつ、その史実を男女逆転社会で起こる様々な出来事に改変していく漫画なので、始まりも終わりも大筋分かっています。なので、その途中経過が重要なのですが、さすがにペリー来航や鎖国終了など、幕『末』が描かれ始めると終わりを感じざるを得ません。とは言っても、この漫画の場合、第13巻の冒頭でもあったように、一旦時代が進んだ後、『時は○○年遡る』なんて話の飛び方があるので、あと2,3巻で終わるかは予想が出来ませんが…。

 

第11巻

各巻の話を書いていきたいと思います。

 

この第11巻では以下の話が繰り広げられています。

 

  1. 将軍・家斉(いえなり)が母・治済(はるさだ)の命令に徐々に背き、隠れて赤面疱瘡の根絶に奔走する話
  2. 母・治済が気に入らない孫娘や幕閣を毒殺していく話
  3. 治済の暴虐に一部大奥の女性たちが気付き不満がくすぶっていく話

 

この辺りの話がメインとなります。将軍の母・治済への猜疑心、反抗心が徐々に広がっていき、今後起こるであろうなにかを予感させる巻でした。

 

男性が表向きの将軍になっても後ろで政(まつりごと)を操っているのは母親の女性・治済だったのですが、将軍である息子の家済は操り人形から段々と脱却し、赤面疱瘡撲滅に母親の命令を無視して動いていくところが面白いです。

 

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治済がとことん嫌な奴に描かれていまして…。気に入らない孫娘たちを次々毒殺したりと好き放題。それでいて罪悪感を全く感じずと言う凄いキャラになっていました。大抵こう言う悪役にもそのような行為に及ぶには悲しい過去があったりする物なのですがそれも無し。ただひたすら権力欲に取り憑かれた人物となってました。

 

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また、この治済の毒殺に大奥の母親たち数人が気付いていくのですが、この課程も丁寧で細かく感心します。なにか切っ掛けがあり、疑い0から疑い100に一気に飛ぶのではなく、疑いが0から10へ、10から20へ、20から30へと徐々に高まっていく様が丁寧な描写なんです。大奥はこのような『徐々に』何かが変わっていく様を描くのが上手いです。

 

第12巻

この12巻では以下の話が繰り広げられています。

 

  1. 日本を苦しめていた赤面疱瘡が完全に撲滅される話
  2. 暴虐の限りを尽くしてきた将軍の母・治済に毒が盛られる話
  3. 男女の数が同じになり正常な世の中のパワーバランスになる話
  4. 元に戻りつつあるパワーバランスの中で男女が苦労する話

 

面白いと言うか感心したのは、今までの男女逆転の物語は、外国に知られると弱みになり攻められてしまうと危惧した幕府が、男がほとんどいない世の中になってしまったことを後世に語り継ぐべく制作されるあらゆる公式文書から抹消したこと。つまり、「これまでの鎖国時代、ずっと世界と同じように男女の数は同じで栄えていましたよ」と歴史を書き換えてしまうんです。

 

今までこの大奥はパラレルワールドの世界だと思い、ユニークな設定だなあと読んでいたのですが、前述のように歴史を捏造したとの設定が出たので、『実は今私たちが知っている江戸の歴史は嘘で、本当はこうだったんですよ』と真実味を持たせてきました。

 

勿論、漫画のお話なので創作物なのは分かっているのですが、この男女逆転の大奥の話が本当にあったとしても、今の歴史が成り立つように話が動いたことにより、なんとも言えない不思議な気分で「そう来たか」とニヤッとしてしまいました。この話の持って生き方は上手いなと感心せざるを得ません。ただの漫画の面白い妄想話からまた1つ存在感が大きくなった感じです。

 

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これまでは、前回の記事でも書きましたが、女が多くなることの社会の変化そのものをテーマに江戸時代をユニークに描いていました。そしてこれこそが話のポイントであり一番の面白さでした。ところが完全に男女の数が半々となり、仕事が本来通り男性の役割となり、政府の重要な役職も男性へと変わりました。…となると…本来話は普通なんですよね。今までの男女逆転ではなく、歴史の通り男性社会になったのですから。ところがそこはここまで人気を博した大奥。これでも面白いんです。

 

ただ男女の数が半々になりめでたしめでたしではなく、半々に戻っていく過程での男女の苦労、変化の過程をきちんと描いています。また、戻った後も所々に女性の実権が残っていたり、どこか遠慮する男性がいたり、大奥の味は残ったままの面白い話が満載でした。

 

また、治済に毒を盛る話の流れや伏線が見事でした。歴史物なので時間がどんどん流れるため、このような伏線は入れやすいのでしょうね。そしてこの第12巻で将軍・家斉が死に、また1つの時代が終わりました。

 

前回の記事でも書きましたが、この大奥は徳川幕府300年の話を描いているので、このようにこれまで主役級の活躍をしてきた人が生まれて死ぬまでが描かれるんです。これがなんとも言えない感じでして…。1つの時代が終わる度に1つの漫画を読み終えたのと同じ高揚感や喪失感を味わうので、2,3巻に1回物語のエンディングを見て感無量になる感じなんです。

 

第13巻

この13巻では以下の話が繰り広げられています。

 

  1. 将軍・家慶が娘の家定に手を出し家定が苦しむ話
  2. 阿部正弘が重用され出世していく話
  3. 瀧山が大奥総取締になる話
  4. 鎖国が終わる話

 

この第13巻では新しい時代、新しい登場人物たちでの新しい物語がまた始まりました。大奥は徳川300年の話なのでこのスタイルが繰り返されます。次々と新しい話が起こり、そして終わる面白さもあるのですが、登場人物が定期的に一新し、なおかつ物凄く多いのでその辺りは混乱して受け付けない人がいるかも知れません。私もどちらかと言えばこの手のタイプだと思うのですが、人物描写が丁寧で、印象的な話を抑えて漫画化しているので、意外と登場人物や相関図は頭の中に入ってきてすんなり読めています。

 

群像劇で明確な主役はいないとは言え、大抵その時代の中心になるのは将軍、将軍周りの幕閣2,3人、大奥の中心人物2,3人、赤面疱瘡を治療しようとする医師関係2,3人です。この辺りを覚えておけば問題ありません。更にその中で本当に話を動かし、登場回数が多いのは3,4人なので、歴史群像劇で複雑そうに見えて実は結構シンプルに読めるような構成になっています。

 

まずこの巻で驚いたのは、将軍・家慶(いえよし)が娘に手を出すこと…。そして将軍の権力は絶対なので、周りが気付いても何も言えないこと。勿論母親さえも…です。そしてその中で娘の家定(いえさだ)が苦しむこと。これが序盤でいきなり出てきました。ただ、成長するにつけ知恵と権力を持っていく家定は、徐々に家慶が手を出せないように周りの人物を使って工夫するのですが、それに対抗するように手を出せるように工夫する家慶…。この辺りの話も男女逆転大奥でしか出来ない話ですね。

 

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また、次の将軍として選ばれた家定に見出された阿部正弘が大活躍します。この時代の話は将軍・家定、老中・阿部、大奥総取締・瀧山。この3人が中心となって話が進んでいくようです。作中にも説明があったように、この瀧山は大奥『最後』の総取締役だそうで、ハッキリ最後と描く当たり、この大奥漫画の終わりを感じます。ダラダラ伸ばさずに終わらせるんですね。

 

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ちなみに、この瀧山は現実でも勿論存在していて、性別は女性ですが本当に大奥最後の総取締だったみたいですね。

 

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そしてなんと言っても歴史的ターニングポイントであるペリー来航、鎖国終了がこの巻では描かれていました。時間軸で言うと、この13巻はペリー来航17年前からペリー来航までの約17年間を描いていたことになります。1巻で17年進めるのは相当早いペースだと思うのですがポンポン時間が進みますね。

 

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この第13巻でも登場人物はたくさん出てきます。しかし、前述もしましたが、将軍・家定(女)、老中・阿部(女)、大奥総取締・瀧山(男)が中心となって物語が進んでいきます。今までの巻よりも随分的にシンプルな相関図の話だと思います。今までと同じようなペースだと、一時代2,3巻でまとめていたのですが、幕末は歴史的にも色々なことが一気に起こる時代なので、ここはじっくり描くかも知れませんね。

 

おわりに

ただ歴史をなぞっただけの漫画ならここまで私ははまっていなかったと思います。勿論、横山光輝さんの漫画のように、歴史をそのまま漫画にして面白かった三国志のような例もあるのですが、心のどこかに『ある程度知っているしな』と、実は知りもしないのに知った気になって歴史物を避ける傾向がありました。しかし、この大奥は歴史をただなぞるだけではなく、漫画として面白そうな『男女逆転大奥』とのユニークな設定で思わず食いつき、読むモチベーションになりました。このようなスタイルは歴史好きからすると邪道と見る人もいるのでしょうが、歴史を知る切っ掛けとして、私のように『知った気になって読まない』層を取り込むには、実に有効な手段なんだなと自分自身の身を以てわかりました。

 

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