今回レビューするのは、めぞん一刻の第22話です。
思うところがあり、今回アニメ全話レビューの大幅な加筆修正に着手します。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
先の展開のネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。
目次
あらすじ
一刻館をコソコソ伺う怪しい中年男性。五代君が響子さんに報告したところ父親だとのこと。響子さんの両親は管理人なんてやめて実家に帰ってくるように説得するのですが響子さんは折れず。遂には響子さんに無断で管理人室の勝手に荷物を引き払ってしまうのですが…。
みどころ
- 響子さんと両親の関係
- 管理人響子さんと実家響子さんのギャップ
初登場人物
- 千草律子(響子さんの母)
- 千草氏(響子さんの父)
感想
初期では珍しい続きもの
このエピソードは初期では珍しく続きものです。それだけ初期では重要な話であり、アニメではこの4話を2話に詰め込んでいるので内容が凝縮して濃いです。週間連載の漫画は1話20ページくらいなので、これを30分に引き延ばすのは厳しい場合があります。ただでさえテンポが良くポンポン進む漫画なので、これを30分に引き延ばそうとすると、どうしてもアニオリの話を間に挟まなければなりません。
なぜその漫画がアニメになったかと言えばそれは人気だからです。この時点で話が完成されている場合が多いです。そこに作者でもない第三者がアニオリを入れると、勿論例外はありますが、クオリティが低くなることが多いです。めぞん一刻もこの例と同じで、やはりアニオリは原作の漫画を超えられません。
めぞん一刻の場合、今回のように漫画の2,3話をアニメ1,2話にするくらいがちょうど良いと思います。ただ、初期のめぞん一刻は基本1話完結なのでこれが難しいです。AパートとBパートで全く別の話をやるのも統一感がなくなりますし…。
なにはともあれ、今回は4話を2話に収めているので話の密度が高く、アニオリを入れる余地がないので面白いです。原作めぞん一刻の魅力がいかんなく発揮されています。
変質者と間違われる響子さんの父
コインランドリーから帰る五代君。一刻館への道中、挙動不審なサングラスを掛けた中年男性を見掛けます。一刻館に着いてものぞき込むような仕草をしています。明らかに不審者です。当然五代君は怪しみ、管理人である響子さんへ報告。
響子さんも様子を見に行きその姿を確認するのですが…。この不審者は響子さんの父さんでした。五代君は散々怪しい、不審者だ、下着泥棒に違いないと言っていただけに気まずくなりその後フォローしていました。
アニメや漫画の場合、親がストーリーに絡んで来ることは少ないです。さらに高校生なのに全く親の描写がされないことも珍しくありません。しかし、めぞん一刻は五代君、響子さん、三鷹さん、八神、明日菜、アニメには登場しませんが二階堂など、主要登場人物の親がしっかり描写されます。しかも、姿形が見えるだけではなく、しっかりとストーリーの中核に絡んできます。
最終的には主要キャラが結婚していくので、さすがに本人たちだけの話では収まらないからなのでしょうが、初期から両親を出したのは良かったです。結婚の話になってからいきなり出てくるよりずっと現実味があります。
めぞん一刻では四谷さんに下の名前はありませんし、一の瀬さんの夫に名前はありません。それと同じで響子さんの父親にも名前がありません。かと言って四谷さんは勿論、響子さんの父親もモブキャラではなくかなり重要なキャラです。それなのに1度も作中で名前が出ることはありませんでした。
家庭の事情があることがすぐに分かる
響子さんは娘なのだから普通に会いに行けば良いのに、サングラスを掛けて火をバレないようにし、一刻館の前でコソコソ様子をうかがっていました。また、響子さんが確認に行って見つかるとそそくさと逃げてしまいました。
親子なんだから普通に会いに行けば良いのにとは、視聴者は皆そう思ったはず。しかし、同時に『それができない関係なんだな』と理解します。響子さんと父親が口げんかしたたわけでもなく、回想でトラブルを見せたわけでもなく、なんの言葉の説明もないのに、この状況(絵面)だけでこの関係を読み取らせてしまう表現は上手いです。
めぞん一刻は会話の妙が魅力で貼るのですが、逆に言葉がない絵だけで状況をわかりやすく提示することも上手いです。
こずえちゃんに相談する五代君
よりによって五代君は響子さんの家庭の事情をぼかしながらではあるのですが、こずえちゃんに相談してしまいます。父親とこんな関係だったらどうする…と。しかし、五代君のことを好きなこずえちゃんに、五代君が好きな響子さんの相談をしなくても…。
こずえちゃんはこの話の流れでまた誤解してしまいました。
五代「たとえば、たとえばだよ…、娘が親の反対を押し切って結婚したとするよね」
七尾「う、うん」
五代「気味のお父さんならどうすると思う?」
七尾「うちのパパなら大丈夫よ、きっと五代さんと気が合うわよ」
七尾「パパはね、恋部とができたら絶対うちに連れてこいって言うの、娘を任せられるか観察するんだって」
五代「だ、だから、それでも気に入らなかった場合ね…」
七尾「そうねえ…難を言えばふたりとも若すぎるってことかしら」
五代「誰と誰の話じゃ」
そりゃあこずえちゃんも勘違いするよな…と。こずえちゃんは五代君と付き合っていると思っているので、これは他人の状況の相談、例え話なんて思いません。
響子さんの母親登場
昼間に不審な行動をする父親を見ていたため、実家に電話しようかどうか迷う響子さん。どうせ家に帰ってこい、再婚しろと言われるに決まっているとのことで、一旦電話するのをやめるのですが、その次の瞬間実家から電話が掛かってきます。
響子さんの父親には名前がないのですが、母親には律子との名前があります。離婚するわよと脅された父親が「そんな…律子さん」と言っていました。ここだけを観ても両親の力関係や性格が分かります。
母親の口ぶりからすると、父親が一刻館に行くことは母親もわかっていたようです。もしかしたら母親に言われて行ったのかもしれません。しかし、父親は母親に響子さんは不在だったと嘘を言っていたようで、逃げて不審者に間違われて恥ずかしい思いをしたと響子さんに言われ、その嘘がバレてしまいました。
響子さんの結婚には大反対していたらしい
響子さんが両親の反対を押し切って結婚したことは仄めかされていましたが、今回はその当事者である両親が出てきました。この短い実家の描写で色々なことが分かりました。
- 響子さんは実家にほとんど帰ってこない(母「あんたがそういう態度だから響子が帰ってこられなくなったのよ」)
- 大反対していたのは父(母「あれだけ反対されて結婚したんだからさ」)
- 年の差婚に反対していたこと(父「もっとイキの良い若いもんを選べば良かったんだ」)
- 今でも不満に思っている(母「すんだことをいつまでもウジウジと」)
- 母は今は結婚のことをグチグチ言っていない(同上)
響子さんは家族と惣一郎さんとの結婚で相当な角質があり、実家にもほとんど帰ってきていないようです。以前の話でお正月も実家に帰りませんでしたが、この話はあらかじめ決まっていたのでしょうか。
響子さんは実家に全く帰っていないのとは違うと思います。その理由は、一応響子さんから実家に電話しようとしていたことが1つ。母親から日曜日に帰ってきなさいと言われてあっさり帰ったことが1つ。本当に断絶状態なら電話したり、帰ってこいと言われてあっさり返るわけはありません。一応ごくまれに帰ったり連絡はしていたのだと思います。
響子さん実家に帰る
響子さんはめぞん一刻が始まって以来、初めて実家に帰りました。実家は『高嶺(たかみね)ハイツ』。おそらく響子さんは『高嶺の花』から取っているのだと思います。
**たかねの はな【高×嶺の花・高根の花】(名)
ただ ながめるだけで、手に取ることのできないもの のたとえ。
→ たかね【高嶺・高根】三省堂国語辞典 第七版 (C) Sanseido Co.,Ltd. 2014
両親と確執がある響子さんは、どんな顔をして会えば良いのか悩み、その予行演習としてエレベーターの中で笑顔で挨拶をします。しかし、エレベーターが開いたところに偶然迎えに来た父親がおり…。結果的にはこれで久しぶりの帰宅であるはずだったハードルは越えました。
実家に帰ると早速父親が一刻館の管理人を辞めるよう話を切り出しました。父親の言い分では下記の通り。
- あんなボロいアパート若い娘のいるところじゃない
- 住人とは言え若い男と一つ屋根の下に住むなんて
母親の言い分は下記の通り。
- 仕事とは言え死んだ夫の実家といつまでも関わっていると困る(再婚に支障が出る)
一刻館の管理人を辞めてほしいのは父親も母親も同じなのですが、『なぜ一刻館の管理人を辞めて欲しいのか』はそれぞれ違います。今回のこの言葉だけでも少しわかりますが、父親は再婚して欲しくないから。母親は再婚して欲しいからです。なぜ父親は再婚して欲しくないのか…。これには大きな事情があるのですが、それが本当に分かるのは物語の終盤です。
結構伏線が散りばめられている
今回の響子さんと両親の話では結構伏線が散りばめられています。前述したように、ずっとあとになってわかる父親が再婚に反対する理由もそうです。
父親が五代君の名前が出たとき、「名前なんてどうだっていいんだよ」と言っていましたがこれもそうです。作中、終盤まで響子さんの父親は五代君の名前を一切覚えませんでした。なぜなら、このとき言ったように、一刻館に住んでいる若い男の名前なんてどうだって良いからです。
伏線とは違いますが、管理人を辞めないと言い張る響子さんに怒鳴る父親。それに対して「親子の縁を切りましょうか!」と起こる響子さん。先日、律子さんに「離婚しましょうか!」と言われたやりとりや関係性と全く同じです。父親は妻の律子さんにも、娘の響子さんにも弱いことがわかります。
母親の律子さんは啖呵を切る響子さんを見て「一体誰に似たのかしら…」と呆れていましたが…。あんただよと。そっくりじゃないかと。響子さんも年を取ったら母親のようになるのでしょうか。
響子さんは一刻館にいるときはきちんとしているのですが、実家に帰ったときはかなりぐうたらだったり横柄になります。このギャップが面白いです。
次々と期待が裏切られる面白さ
父親に『あんなボロアパート』と言われた響子さんは、一刻館に帰ったあと、2階ベランダの修理を始めました。それを見て元が腐っているから治しても無駄なのに…と言う五代君と一の瀬さん。取り敢えず修理が終わり、ホッとして柵によりかかる響子さん。そこが腐っていることを知っている五代君と一の瀬さんは寄りかかるのを静止するのですが…。五代君が必死に響子さんを助けたので良かったものの、柵は完全に崩れ落ちてしまいました。
【差し替え】
修復を失敗した響子さんは玄関を掃除しながら、「でも住人は良い人たちだし…」となんとか精神を保とうとするのですが…。そう思っている瞬間、それを裏切るように一の瀬さんと朱美さんが、先ほどのベランダでのでき事で、響子さんと五代君が抱き合っていたとからかわれ…。家賃の払いは良いしと思っていると、次の瞬間四谷さんが家賃滞納のお願い。
極めつけは、一刻館のある限り管理人は辞めないと、ある意味最後の頼みの綱である一刻館の存在そのものにすがるのですが、シロアリにむしばまれているところを惣一郎さんが見付け…。期待したことが次々裏切られているめぞん一刻らしい展開です。
- ボロアパートも修理すればなんとかなる→ならない
- 住人は考えようによっては良い人たちだし→一の瀬さんと朱美さんからベランダで五代君と響子さんが抱き合っていたとからかわれる
- 家賃の払いだって良いし→四谷さんが家賃滞納
- 一刻館のある限り管理人は辞めない→一刻館自体が崩壊するかもしれない
めぞん一刻は会話の妙でも、このようなすぐに期待を裏切られる描写でもそうなのですが、ダラダラ長いシーンでやるわけではなく、間を開けずに次々襲ってくるのが凄いです。
本格的に修理を始める
響子さんは自分で修理できる状況ではないことを悟り、業者を呼んで本格的な修理を始めます。シロアリ駆除の業者を呼び1階に見付けたシロアリを駆除。左官屋を呼び2階のベランダを修理。
朝っぱらから修理をしているので、一の瀬さん、朱美さん、五代君が出てきてその様子を見ていました。朱美さんは相変わらずスケスケのネグリジェを着ており、左官屋は喜んでいました。朱美さんはこのとき25歳ですし、あの格好で急に出てきたらね…。
左官屋がいることを知った五代君は、部屋に空いた四号室との穴を防いでもらおうと響子さんに頼みに行こうとするのですが、そこで阻止しに来たのが四谷さん。四谷さんは「せっかく空けたのに」と言っていたので、ボロくて穴が自然と開いたとか、元から空いていたわけではなく四谷さん自ら空けたようです。男の五代君を覗いてもつまらないでしょうに…。
せっかく空けた穴を塞ぐのをなんとか阻止したい四谷さんは、夜中に五代君の部屋から響子さんとの生とともに聞こえる怪しげな声のことで脅しを掛けます。響子さんをオ●ペットにしている…と。オ●ペットなんて言葉はめぞん一刻のこれで初めて知りました。しかも、アニメは水曜日の夜7時30分放送です。この過激な言葉を全くぼかさずに放送したのには驚きます。なにも知らずに見お茶の間の空気は凄かったのでしょうね。
四谷さんは「五代君は響子さんをオ●ペットにしている」と叫ぶのですが、どうせ外までは聞こえないとたかをくくる五代君。しかし、響子さんはちょうどそこの会談途中にいて…。ごっだいくんと四谷さんとのやりとりは全部聞いていたようです。
しかし、これは気まずい…。五代君が響子さんをオ●ペットにしていることが本人にバレてしまいました。ここから普通に関係を続けるのは困難な気がするのですが…。響子さんは穴を塞ぐことを良書言うするのですが、四谷さんはそれでも「今話合うべきことはオ●ペットだ」と食い下がっていました。
最低の話ではありますが、これも五代君が響子さんを好きとの情報を補完する形になったのかな…と。「響子さん好きじゃ~」事件から始まり、三鷹さんとのライバル心で「響子さん好きです」と言ったことで、すでに響子さんは知っているのですが、これも好きな響子さんをオ●ペットにしていると言うことなのでその1つなのかなと。
律子さん実力行使に出る
修理が一通り終わって一息つく響子さん。そこにまた母親から電話が掛かってきました。用件はやはり一刻館の管理人を辞めろとのこと。母親は音無家に話を付けると勝手に辞めさせようとしており、これに反発した響子さんと喧嘩になってしまいます。
怒って電話を切る響子さんは「娘をなんだと思ってるのよ!」と怒り、一方で母親は「親をなんだと思ってるのよ!」と怒り…。この親子は性格が非常に似ています。この響子さんvs律子さん、娘vs母親も面白いです。
商店街で五代君は一の瀬さんと偶然会い、最近張り切って修理しているのはおかしい、なにかあると疑問を持っていることを話していました。原作の漫画でこのシーンは響子さんと一の瀬さんでした。一の瀬さんが響子さんに「急にどうしたの?」と聞く展開です。
その後、母親が一刻館を訪れ、突然の響子さん管理人引退宣言。まあ、本人が言ったわけではなく、辞めさせようとした母親が勝手に言っているだけですが、それを知らない五代君、一の瀬さん、四谷さんは呆然としていました。原作の漫画だとここは話の終わりではなく、第28話の途中です。
原作漫画では
総評
今回は色々なことが分かりました。響子さんの両親が初登場し、確執が根深いことが分かりました。また、その両親は…特に母親は異常とも思える強引さで一刻館の管理人を辞めさせたがっていることも判明。
この響子さんと両親の確執を初期から出したことは結果的に良かったです。少しずつ丁寧に親子関係を描写し、最後にそれが解決するのは良い流れでした。ずっとあとに取り敢えず出しとこう的に出てきたわけではなく、初期から話をしていたので、親子関係の複雑さや進展がゆっくりで現実味があります。惣一郎さんとの結婚は大反対され、駆け落ち同然とまで言われているようなことがあったのに、最後にちょっとだけ出てすぐ解決ではおかしいですからね。
今回は初期の中では結構重い話なのですが、可愛い絵柄に定評のある音無竜之介さんが作画監督の回です。絵が丸っこくて可愛く特徴があるのですぐにわかります。
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