「刑事ゆがみ/井浦秀夫」(第1~5巻)レビュー ~想像も付かない着地点に辿り着く刑事物~

今回レビューするのは、井浦秀夫さんの漫画刑事ゆがみ』です。

 

それでは早速レビューを書いていきたいと思います。

 

 

ちなみに、未読の人が知らない方が良いネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。

 

あらすじ

弓神適当は、かつて警視総監賞を受賞し、本庁捜査1課に所属したりしたことがある優秀な警察官だったが、連続殺人小説家事件で「真犯人は別にいる」と上司に訴えたにも関わらず、無視されたことがきっかけで、名前の通り「適当」な問題刑事になってしまう。現在は、うきよ署で過去に教育した後輩の部下に配属されたが、うきよ署に来てからも、振り込み詐欺グループを一網打尽にして、仲間内のリンチ殺人事件まで掘り起こす、レイプ犯として逮捕された下着泥棒の冤罪を証明、他の警察署の殺人事件に首を突っ込んで謹慎処分を受けるも実行犯を自供に追い込み事件の全容を解明するなどの実績を作るため、上司が難事件を幾つも解決した弓神を使いこなせない上司の問題にされかねない、問題刑事となってしまう。

 

長所と短所

  • ◎話が四転五転するので面白い
  • ◎複雑な人間関係や事件の背景説明が分かりやすい
  • ×絵柄には癖があり人を選ぶ
  • ○縦軸の話もしっかりと存在する

 

○長所/△人による/×気になるところ

 

感想

登場人物紹介

まずはお約束の登場人物紹介。

 

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▲主人公の弓神適当(ゆがみゆきまさ)。名前の付け方も井浦秀夫さん独特でユーモアがあります。普段はのほほんとしていますが、独特の視点を持った優秀な刑事で、過去に解決されたとされるロイコ事件を追っています。

 

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▲弓神の相棒で若手刑事の羽生虎夫(はにゅうとらお)

 

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▲弓神が所属するうきよ署刑事課強行班係長の菅能理香(かんのりか)。弓神の直属の上司です。

 

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▲生活安全課少年係から強行班係に異動してきた立浪才子(たつなみさいこ)。弓神に憧れている若手の女刑事ですがかなり抜けています。

 

◎話が四転五転するので面白い
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▲同作者の前作、『弁護士のくず』もそうでしたが、話が二転三転どころか四転五転します。事件が起こった当初見えていた人間関係や事件の背景からは想像も付かないような着地点に辿り着くんです。これは弁護士のくずでもそうだったので、井浦秀夫さんの得意分野なのでしょうね。弁護士のくずが好きだった方には安心してお勧め出来ます。

 

 

話が四転五転すると書いても、いまいちピンと来ないと思うので、あるエピソードの一例を以下に挙げておきます。一例なので気にしなくて良いとは思いますが、この先読む予定のある方で知らない方は読み飛ばしてください。

 

夜道で『落合揺士(おちあいようじ)』が後ろから誰かに突き飛ばされて階段から落ちる

目撃証言から若い女性の容疑者『呉田詩奈(くれだしな)』が浮かび上がる

弓神以外は呉田詩奈が犯人だと目星を付ける

実は呉田詩奈は落合揺士のバイトしていたスーパーの万引き常習犯だった

落合揺士は呉田詩奈をかばってクビになっていた

落合揺士は呉田詩奈を更生させたくて世話を焼いていた

なにか裏があるのかと思った呉田詩奈は落合揺士を突き飛ばした

呉田詩奈はクレプトマニア(窃盗症)の治療を受けることを決意

 

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ネタバレはここまでです。

 

◎複雑な人間関係や事件の背景説明が分かりやすい

▲話が四転五転するので、脱力系の絵柄からは想像付かないほど話は複雑です。人間関係はこんがらがっていますし、証言の嘘があったり事件背景も難しいです。しかし、この刑事ゆがみのなにが凄いかと言うと、このような複雑な人間関係や事件の背景を実に分かりやすく簡潔にまとめていることです。

 

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▲普通に漫画を読んでいるとスラスラと頭の中に話が入ってきて理解出来てしまうんです。「あれはどういうことだったかな?」とページを戻して読み直すことすら必要なく、1回読んだだけで全て理解出来てしまいます。井浦秀夫さんは漫画で物事を説明させたらピカイチだと思います。弁護士のくずでもこの傾向は強く出ていてわかりやすかったのですが、刑事ゆがみは更にそれに磨きが掛かった感じがします。

 

長くページを使ってじっくり説明すれば誰でも出来るんです。しかし、短いページの中でコンパクトにわかりやすい説明をするのは中々出来ません。悪い例だと今のHUNTER×HUNTERですね…。登場人物が棒立ちでひたすら説明&説明。説明のための説明。ページ中吹きだしばかりで酷いことになっています。物凄く説明が下手です。

 

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▲ちなみに、HUNTER×HUNTERが今どうなっているのかと言うと、この画像のようなことになっています。これは別に特殊な1ページを切り抜いたわけではありません。これが何ページにもわたって続きますし、終始こんな感じです。

 

 

しかし、この刑事ゆがみは今のHUNTER×HUNTERとは真逆で、複雑怪奇な事件を物語を動かしながら順を追って説明するのでわかりやすいんです。説明は長文で全部すれば良いってわけじゃないことがよくわかります。必要ない情報は書かなくて良いんです。しっかりしたセリフ回しや、絵で見せる力があれば、その行間や絵からちゃんと読者は読み取れるんです。

 

×絵柄には癖があり人を選ぶ
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▲絵柄は癖がある…と言うか、ぶっちゃけ下手ですよね…。ただ、読み慣れてくるとちびまる子ちゃんのような脱力系の絵柄なので、その雑な中にかわいらしさを見出せることは見出せます。

 

 

絵に癖があるからと敬遠する方もいると思いますが、『カイジ』と同じように、絵柄だけで読まないのは勿体ない漫画だと思います。

 

 

○縦軸の話もしっかりと存在する

話の構成としては、刑事物に良くある1話完結物です。さすがに1時間ドラマとは違い漫画の二十数ページで事の起こりから解決までは出来ないので、3,4話で1つの事件が起き、そして解決します。なので、途中から読んでも問題ない構成です。また、この横軸の話とは別に、ずっと弓神が追っている事件が縦軸として存在します。1話完結の横軸と、ラスボスを追う縦軸。これは刑事物の鉄板構成です。

 

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▲この縦軸の話を軽く説明すると、十数年前に犯人が死んで解決したとされるロイコ事件があるのですが、弓神は犯人が死んだとは思っておらず、実はずっとこの犯人を追っています。このロイコがラスボスであり縦軸の話で、横軸の1話完結物の中で少しずつ話が進展していきます。

 

総評

絵柄に癖があるので読んでない方もいると思いますが、一風変わった刑事物なのでお勧めです。特に話が何転もするので、最初に読者が予想していた話とはどんどん違っていき、最後は想像も付かなかったところへ着地するのがなんとも面白く、「そう来たか~」と、良い意味で読者を騙してくれる漫画です。

 

 

お勧めとそうでない人

お勧め出来る人
  • 一風変わった刑事物が好きな人
  • 何転もする話が好きな人

 

向いていない人
  • 絵柄重視の人

 

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