二つの顔を持つ男「ダブル・フェイス/細野藤彦」レビュー 評価はまだありません

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あらすじ

街角の小さな街金融「月影ファイナンス」に勤める春居筆美は、気弱で押しも弱く今日も取引相手にすら馬鹿にされるダメな営業平社員。手品好きが高じて職場で下手な手品を披露しては上司には小突かれ、同僚にはからかわれ、挙句に新入女子社員には同情される日々。更に、貧乏の子沢山で生活にも汲々としているらしい。

 

しかし、彼にはもう一つの顔があった。実は春居は、「月影ファイナンス」の影のオーナーである魔術師・Dr.WHOOでもあった。彼は、悪党に騙され、苦しめられている弱者を救うべく、得意の手品を駆使して悪党に制裁を加えるのだった。

 

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裏と表の顔

細野不二彦さんお得意の「裏と表二つの顔を持つ主人公」の話です。太郎も電波の城もギャラリー・フェイクもそうでしたね。本当にこの手の二つの顔を持つ主人公の話を描かせたら上手いです。

 

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このダブル・フェイスの主人公、春居筆美の表の顔は零細街金「月影ファイナンス」の営業マン。裏の顔はその月影ファイナンスの影のオーナーであり、マジックを駆使して悪に正義の鉄槌を下すクロブチ機関のエージェントです。

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街金

私は今までの人生でお金を借りるという行為をしたことが一度も無いので、街金のことをよく知らなかったのですが、このダブル・フェイスで結構勉強になりました。街金と闇金の違いも恥ずかしながらよく知らなかったのですが全く違うんですね。また、当時の法定金利29.2%は高すぎるとやり玉に挙げられていましたが、これはこれで上手く世の中回るために必要だってことなどもわかりました。法令遵守している街金が利益を上げられなくなり、潰れて数が減ってしまうと、違法な闇金に客が流れてしまい、結局消費者が苦しむ事態になったり…。世の中単純じゃありませんね。

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ダブル・フェイスの話に戻ると、表の話は街金の営業マンとして、お客にお金を貸し付けたり、回収しに行ったりの話です。当然お金を借りる人にもそれぞれ事情があるわけで、そこから色々ドラマが展開していました。生活費のために借りたい人、事業拡大のために借りたい人。返したくても返せない人、返せないそれぞれの事情。時には悪質な客に当たり、クロブチ機関エージェントとして、正義の鉄槌を下したり、時には同情すべき理由があり温情措置を取ったり。「街金の話」としても凄く面白かったです。

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クロブチ機関

裏の顔は、日本を操るフィクサー黒淵深海が設立したクロブチ機関の情報網や資金力をバックに、悪に正義の鉄槌を下すエージェントなのですが、前半は街金としての春居筆美から発覚した悪に対して正義の鉄槌を行っていたのですが、後半は黒淵深海とは?黒淵機関とは?そしてクロブチ機関を潰そうとする敵対勢力との戦いなど大きな話になっていきました。

 

個人的には、後半のこのような大きな陰謀の話より、前半の街金の話の方が人間模様やドラマ精が色濃く出ていて面白く感じました。

 

終わり方

細野不不二彦さんは素直に終わらせないと言うか、一捻りして素直にハッピーエンドで終わらせないのですが、このダブル・フェイスの終わり方は、ほぼハッピーエンドと言って良いと思います。近年の細野不二彦さんでは珍しいかなと思います。

 

ただ残念なこともあって、それまで物語に出てきた月影ファイナンスの同僚や表向きの社長の事が、後半全くと言って良いほど描かれなくなり、彼らがどうなったのかさっぱりわからないまま終わってしまいました。私は脇役のその後って凄く気になってしまう質なので、このように脇役があっさり退場して、全く触れないまま終わられるのは好きじゃないんですよね…。まあそれでも全体的に面白く、最後もハッピーエンドなので良い漫画ではあったのですが、脇役の処理に関しては唯一残念な点でした。

 

こんな人にお勧め

  • 裏と表の二つの顔を持つ話が好きな人

 

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