今回レビューするのは、アニメの『推しが武道館にいってくれたら死ぬ』です。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
未視聴の人が知らない方が良いネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。
目次
あらすじ
フリーターのえりは、岡山県で活動している7人組の地下アイドルグループ「ChamJam」の人気最下位メンバー・舞菜の熱狂的ファンで、自他ともに認める舞菜トップオタ。そんなえりに対して舞菜も好意を抱いているのだが、押しが強すぎるえりと不器用な舞菜の間では上手く会話が成立せず、結果として塩対応だと勘違いされている状態が続いていた。お互いに想い合っているのにすれ違い続けるえりと舞菜の様子を軸に、ChamJamに加入する前かられおを応援していたくまさ、ファンになったのは最近ではあるものの空音に対して本気で恋をしている基など、様々なアイドルとファンの様子が描かれる。
長所と短所
- ◎絵が綺麗
- ◎女の子が可愛い
- ◎皆心が綺麗で嫌な話が一切ない
- ○百合要素が綺麗
動画
感想
『推しが武道館にいってくれたら死ぬ』とは
まず始めに、『推しが武道館にいってくれたら死ぬ』とはどんなアニメなのか大まかに説明します。
岡山の地下アイドル『ChamJam(チャムジャム)』と、それを応援するいわゆるドルヲタの話です。ドルヲタって世間一般的の認識だとキモイですよね。私も元ドルヲタでした。まあ…その認識はだいたい合ってます。ただ、この推しが武道館にいってくれたら死ぬは、嫌な部分を全くと言って良いほど描いていません。
地下アイドルとドルヲタの話なので、アイドルのドロドロした足の引っ張り合い、男にはまって…なんて要素があっても良いのですが、そのような要素はゼロです。とことん地下アイドルとドルヲタを綺麗に描いています。嫌な奴は基本的に出てきません。皆良い奴ばかりです。
アイドルはファンのことを本当に想い、ドルヲタも良い距離感でとことん応援しています。そんな地下アイドルとドルヲタの関係を綺麗に、そしてコミカルに描いたアニメです。
私もまさかこんなドルヲタアニメには填まるとは思いませんでした。放送前は全く名前を記憶すらしておらず、チェックも当然していませんでした。なんとなく暇潰しに見てみたら予想外に面白くて…。
以降は推し武道の魅力を細かく解説していきます。
とにかく絵が綺麗
なんと言っても分かりやすいのは絵が綺麗なこと。アイドルアニメなので、その肝心のアイドルが可愛くなければ成立しません。その点で言えば完璧です。ChamJamが物凄く可愛く描かれています。
監督のツイートを見ると、どうもこのアニメは完パケと言って、放送前に全てでき上がって納品しているようです。昨今のアニメは供給過剰でスケジュールが厳しく、放送中にもまだ制作中とのことが多いです。さらに酷いと制作が間に合わず、放送延期なんてこともチラホラ見ます。
推し武道は完パケなので、かなりスケジュールに余裕があったようです。そのためか作画の崩壊は皆無です。ダンスシーンも手書きで滑らかに動いていたり、その綺麗な絵を見ているだけでも価値があります。
ChamJamの女の子の描き込みは、とても毎週やるTVアニメとは思えません。OVAと言ってもわからないくらいです。髪の毛はきちんと手抜きなしでふんわりした感じで丁寧ですし、特に瞳の描き込みに作画の良さやスケジュールの余裕を感じます。瞳の中の光など複雑に描かれていて、これがTVアニメのクオリティなのかと驚きます。
舞台は岡山なのですが、背景は水彩画のように淡くて綺麗です。実際の岡山を舞台にしていて、アニメの中に出てくる道やお店なんかは名前は違いますが実在するようです。
百合要素が強い
百合要素は結構強いです。百合が苦手な方は多分合いません。ChamJamはメンバー内で明らかに付き合っているような描写があったりします。
一番わかりやすいのは伯方眞妃と水守ゆめ莉。これは隠す気がないと言うか、臭わせているを超えてガチです。
その他にも五十嵐れおと松山空音。寺本優佳と横田文。この2組も友達の関係以上の描写があります。眞妃とゆめ莉はともかく、この2人は友達以上の親友や尊敬の描写とも受け取れますが、どちらにしろ百合と受け取れる描写は多いので、このあたりが苦手な方は無理かも…。
直接的な描写まではないので、レズではない百合の範疇には収まっています。レズとかそういうことではなく、このようなソフトな百合描写が好きな方には、アイドル要素抜きにしてもストライクだと思います。
アイドルの鏡
地下アイドルのChamJamはアイドルの鏡のような言動をします。ステージ上だけではなく、楽屋やプライベートの話もたくさんあるのですが、ファンを本気で大事に想いますし、アイドルなんだから男なんて作らないと本気で言います。アイドルの汚い、見たくない裏側が一切ありません。私たちが理想とするアイドル像そのものです。
芸能ニュースなどを見ていてもそうですし、アイドルがしばらくしてからする暴露話でもわかりますが、実際のアイドルは仲が悪い人がグループ内にいたり、ファンを馬鹿にしたり、隠れて男と付き合っていたり…。そんなことがこのアニメには一切ありません。綺麗な部分しか描かれていないので、嫌な気持ちになることは全くありません。
ドルヲタの鏡
一方、ChamJamを応援するドルヲタも良い人たちばかりです。ドルヲタでもストーカーをしたり、節度を守らないマナーの悪いファンがいたり、時々問題になりますよね。そんなことは一切ありません。
これから紹介する主要キャラ以外にも、モブよりちょっと格上程度のセリフのあるキャラがいるのですが、その人たちですら皆本気でアイドルを応援し、なにかあると泣いて喜んでしまいます。
古参ヲタのくまささんに対しては、れおの聖誕祭で皆が最前中央にどうぞどうぞと勧め、くまささんも感激。皆が理想的なドルヲタです。原作ではアイドル食いで有名なヲタが出てきたりして、ちょっと嫌な奴も出てきますが…。アニメではその部分は今期は入りきらなかったようでカットしています。もし2期があるならこのあたりのエピソードも入るかもしれません。
魅力的なキャラ
ChamJamの7人もキャラが立っていて面白いのですが、特にドルヲタ3人衆のキャラが強くて面白いです。
えりぴよ
ドルヲタの主要キャラを解説すると、まずは主人公に女性ヲタの『えりぴよ』。本名不詳で20歳。見た目は綺麗なのですが、たまたま舞菜にライブのチラシを貰って見たことによって人生が変わってしまいます。
服を全て売って舞菜に投資。高校時代の赤ジャージを着てライブに参戦するほどの有名ヲタになってしまいます。舞菜以外は一切目もくれないガチヲタで、えりぴよが強烈すぎるため、他のヲタは舞菜推しにならない説まで…。
言動自体は物凄くキモイです。ただ、それが突き抜けているため、もしかして純愛なんじゃと思わせる突き抜け方です。この辺りが推し武道の面白さ、ギャグ要素になっています。おそらくこれを男性がやったら…アウトなのでしょう。くまささんも言っていました。「女性だから許されているところがあるんですよ」と。
くまささん
れおが以前のグループにいた頃から追い掛けていた三十代半ばの『くまさ』さん。言いづらいですが、『くまさ』が名前で、そこに敬称のさん付けで『くまささん』です。作者も語っているように最良のドルヲタです。
会社を辞めてフリーターになってまでドルヲタをするのはどうかと思いますが人格者です。男性特有のいやらしい目でアイドルを見ることもなく、とにかく推しのれおが頑張っているところを応援したい、武道館に立つところを見てみたい。純粋にそれだけで応援しています。えりぴよが暴走しそうになると諫める役割も果たしています。
くまささんのセリフで一番心に残ったのは下記になります。
くまささん「僕は誰の1番にもなれないことがわかっているから、せめてれをを1番好きでいたいんだ」
まさかこんなドルヲタのアニメを見て、キモヲタであるくまささんの言葉でちょっと感動するとは…。推し武道はこんな心の綺麗なドルヲタやアイドルの話です。
基くん
見た目は普通の基くん。20代前半で塾でアルバイトをしていて空音推しです。いわゆるガチ恋勢で、空音と付き合いたいと本気で思っています。ハロプロのヲタを10年以上やっていた経験から言うと、このタイプは本当にいます。
ガチ恋勢は結構危険な思想なのですが、基くんも綺麗な推し武道のキャラなので、そんな危険は感じず、空音と握手したりチェキのときはほどよい距離感を取り紳士的です。しかし、そこはガチ恋勢。ネットで空音が男と歩いているとの目撃情報が流れただけで、その場で倒れ、ChamJamの現場引退を考えるほどショックを受けてしまうことも。
ドルヲタ側の主要キャラはこの3人ですが、基くんには空音似の妹がいます。たまたまガールズフェスタに行くときに付き合ってもらったことを切っ掛けに、妹の玲奈も3枚CDを買ってしまうほど舞菜ヲタになってしまいます。学生生活が忙しいので、3人ほど現場には来ないので準レギュラーと言ったところ。
音楽が良い
アイドル側の物語と、ドルヲタ側からの物語がありますが、そこで外せないのは歌です。アイドルのChamJamが歌って踊るシーンは外せません。OPもChamJam(の声優たち)が歌っていますし、作中にも3曲ほど曲流れます。さらにはEDではえりぴよが歌う松浦亜弥さんの『桃色片想い』のカバー。
劇中歌にはアイドルソングらしいメンバー紹介ソングがあり、そこには合いの手を入れるコールもあります。アニメではヲタがやっているコールを、CDではChamJamメンバーがやっているところが面白いです。
コールの部分はドルヲタならニヤッとしてしまいます。実際のアイドルでも、色んな曲でメンバーごとのユニークなコールがあります。
桃色片想いをえりぴよが歌うのは目の付け所が良いと言うか、歌詞にピタリだなと感心しました。桃色片思いは女の子の淡い片思い気持ちを歌ったものなのですが、えりぴよも舞菜に片想いです。まあ、舞菜もえりぴよのことが好きなので本当は両想いですが…。また、舞菜のイメージカラーはサーモンピンクなので、ここも桃色と掛かっています。この曲を選んだ人は上手いです。
ドルヲタあるあるも
ドルヲタあるあるも作中には色々あって、同意したり、または同意できなかったり。同意できない部分は私が知らないだけだったり、思想が相容れない部分なだけです。
くまささんやえりぴよの言動も分かるところが多いですし、ガチ恋勢の気持ちもわかります。私のドルヲタだった経験でもいまいちわからいのは、単推しがあそこまで極端かな…と言うこと。えりぴよもくまささんも基くんも、自分の推し以外がスキャンダルを起こそうがなにも興味なし。
私の周りの人は一推しもいて二推しも三推しもいましたし、ずっとグループを見ていれば他の子にも好感を持つことが多かいです。一推し以外のスキャンダルでも少なからず動揺していましたし、握手の時も一推し以外で緊張していました。まあ、これは前述のように、私の回りにそういうヲタがいなかったというだけでしょう。
なぜ面白いのか
おそらく、ここまでアイドルやドルヲタの話をしても、ドルヲタの経験がない方には面白さがいまいち伝わっていないと思います。簡潔にまとめると下記の要素が面白いところかなと。
- えりぴよのガチヲタすぎる言動が突き抜けていてギャグになっている
- くまささんをはじめとする理想的なドルヲタの良い話がある
- 理想のアイドル像であるChamJamの綺麗な話がある
前述もしましたが毒の全くないアニメです。嫌な奴も出てきませんし、アイドル内での足の引っ張り合いやスキャンダルもありません。アイドルもドルヲタも皆心が綺麗なので、世間一般ではキモイと言われるドルヲタをフィーチャーした話なのに、なぜか心が洗われる不思議なアニメです。
最後はかなり原作を飛ばした
ラストの話や原作の話がここから次のマーカーまであります。知りたくない方は飛ばしてください。
最後はかなり原作の話を飛ばしました。アニメでは最後に突然東京に行き、武道館にChamJamが行ったので唐突だと思った方も多いはず。しかし、原作では東京に行くことも武道館に行くことも、ちゃんとそれまでの丁寧なストーリーがありました。
東京でのリリイベにChamJamが行くことになり、そこで小さなイベントを開いたり、お金がないので車中泊をし、せっかっく東京に来たんだから武道館見て行こうとの流れがありました。3人のヲタもChamJamの東京でのイベントに遠征。彼らもついでに武道館へ…となっていました。しかし、アニメでは全11話で全部収めることはできず、このあたりをバッサリとカット。
さらに言えば、アニメでは完全にカットされましたが、アイドルと繋がろうとするイケメンヲタが出てくるのですが、これは存在そのものがアニメから消えました。まあ、このヲタはその後特に話が広がらなかったのでカットしても良いのですが、個人的にはこのあと繋がりヲタが痛い目見る話が原作で出てくるのかなあと…。ただ、しばらく原作でも出てこないので、このヲタはこのまま退場なのかも…。
アニメの最終回は既刊6巻中の5巻最後の話です。もし2期をやるとすると原作のストックが足りません。前述の繋がりヲタのエピソードと、東京に行くまでの過程をなんとか上手く改変。フェスもあんな短い話ではなかったので改変。それに6巻以降の話をプラスし、原作漫画の連載も1年ほどしてキリの良い話を作って…なら可能かもしれません。かなり可能性は低いですが…。
ネタバレここまで。
人による部分も…
私は非常に面白かったのですが、おそらくかなり人を選びます。面白いとは言っても、気持ち悪いドルヲタを面白おかしく、そして綺麗な部分だけを見せて描いた特殊な話です。
いくら綺麗な部分を描いているとは言え、ドルヲタの奇怪な言動だったり生態が頻繁に出てくるので、その部分がどうしても受け付けられない方は少なくないと思います。こればかりは好みによるとしか言い様がありません。これを許容して楽しめるか、いくら面白そうな話でもドルヲタを気持ち悪いと思う感情が勝つか…。
総評
私はもうドルヲタが長かったので、『ドルヲタ視点で見る自分』からは離れられないので、ドルヲタではない方がこのアニメを見てどう思うのかわかりませんが、アイドルとドルヲタの知らない世界の話としても見られるのではないかと思います。
逆にドルヲタだったり、元ドルヲタはニヤッとするようなネタもあるので楽しく見ることができると思います。そして私も驚いたのですが、キモイと言われる世界の話をこんなに綺麗に描くことができるのか、こんな切り取り方があったのかと驚くはず。漫画家って想像力が凄いなと感心します。
まさかこんなドルヲタをフィーチャーしたアニメに自分が填まると思いませんでした。2期はありますかねえ。填まったので原作も既刊分は読んだのですが、2期をやるにはエピソードのストック的に厳しいかな…と。
1期はイケメンのアイドル食いのヲタをカットしたので、その話しと1期終わりからの続きと…。それでもキリの良いところまで行かないと厳しいので、1年後2年後か。しかし、間が開くと好きだった人も熱が冷めて人気に陰りが…なんてことが当たり前の世界なのでどうなるか…。
こんな人にお勧め
- アイドルが好きな人
- ドルヲタの人、もしくはドルヲタだった人
- 百合が好きな人
- 毒のない話を見たい人
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