目次
あらすじ
日比野光は、物心ついた時からいつも身体に違和感を覚えていた。中学3年生になった始業式の日に一社高蔵が転校してくるが、不良少年・亀島俊夫に女顔を指摘されたことが元で乱闘を始める。光の眼前で机を振り上げる一社だが、机の脚が突然切断され、バランスを失った一社は机を取り落とす。その日の放課後、一社に呼び出された光は、光の机の中で見つけたと言う鉄環を見せられる。一社はそれが机の脚を切り取った中間部分だと言い、彼の口から「自分の近くにあるものと目標をキューブ状に入れ替える」能力があることを知らされる。その能力を一社に買われ、光は彼と共に世の中の間違いを正すことになるのだが、まだ中学生に過ぎない彼らには思い通りにいかないことばかりで、すぐに壁にぶつかるのであった。
これまでの感想
終わりやがった…
「終わりやがった…」。率直な感想がこれです。4巻まではその独善的な理屈や、中二病MAXさにビリビリ頭が痺れる感じがして、結構好きで、この先の展開に期待していたんですけどね。全部ほっぽり投げて無理矢理終わらせてしまいました。
この無理矢理終わらせた漫画で頭をよぎったのが高橋留美子さんの「1ポンドの福音」です。これは長い間放置していて、もう続きを書かないのかなと思っていたら、突然思い出したかのように集中連載を始め、無理矢理終わらせてビックリしました。高橋留美子さんはこういったことをしないので、その分非常に印象に残っています。これと無理矢理な纏め方がそっくりでした。
ただ、このなにかもちがってますかは、隔月連載だったみたいで、元々長く続ける予定はなかったのかも知れません。まあ、予定通りでこの終わり方なら、更に酷いとの見方もできるのですが…。
「俺たちの冒険はこれからも続く」ですらない
打ち切り漫画で、「俺たちの冒険はこれからも続く」終わりがよくあるのですが、正直これにすらなっていません。突然それまで広げた風呂敷(謎や目的)を、たった数話で無理矢理…本当に無理矢理決着を付けさせ、「はい終わり終わり」のような投げやりな感じでした。「打ち切りだから仕方なく纏めた」だったらまだ納得もできるのですが、もしこれが予定通りなら何を考えているんだとしか思えません。
独善的で身勝手な理屈を恥ずかしげもなく披露し、それを力によって無理矢理行使して、どう着地するのか見物だと思っていたのですが、まさかこんな着地をするとは…。4巻までの話だと、少なくとも10巻はないと話に収拾が付きそうにない展開で、もっと言えば4巻まではまだ前振りの段階で、これから物語がやっと展開するんだろうなとの流れだったんですけどね。それが突然5巻で全て終わってしまいました。
言ってみれば、本来物語には起承転結があるべきなのですが、起承転結の「承転」が省かれ、物語の立ち上がりから突然完結した感じです。つまり「起結」って感じでした。
**き しょう てん けつ【起承転結】(名)
①漢詩、ことに絶句の組み立て方。はじめの句〔=起句〕でおこし、次の句〔=承句〕で うけ、第三の句〔=転句〕で一転し、最後の句〔=結句〕で全体を むすぶ。
②〔物語などで〕はじまり・ひろがり・どんでん返し・むすびの構成。
三省堂国語辞典 第七版 (C) Sanseido Co.,Ltd. 2014
物語を振り返ると変
主人公の日比野と一社は、この物語の中で何をしたのかを振り返ってみると、やはりこの漫画は凄く不自然です。
世直しをしたいと思い立ち、超能力をたまたま持っていた日比野と、それを利用する一社で、車の運転中に携帯電話をする人を殺し、ゴミの不法投棄する人を殺すと脅す。この二つのことしか起こっていません。空間を入れ替える超能力との派手な力があるにも関わらず、物語中こんなくだらないことをしただけで終わってしまいました。
また、新キャラとしてサイコメトリーのニコも出てきたばかりで、これからなにか大きな意味を持つのだろうなと思ったら、これもなにもせずに終わってしまいました。なんなんでしょう。そしてその「世直し」結果どうなったかと言えば、特に何も変わっていません。なので、「これから」のはずだったのですが…。
終わり方も酷い
打ち切りにしても終わり方も酷くて、伏線をたった2,3話で無理矢理回収したのは勿論、車の運転中に携帯を使っていた人を何人も殺し、級友をも殺してしまったにも関わらず、主人公たちは一切何の報いも痛みも受けず、特に苦悩もせず、「よーし高校受験だ!頑張ろう!次はもっと世直し考えてるからね!」とのほのぼのエンドですよ…。
このようなカタストロフィを感じさせる話は、正義の為と思ってやった行為にもきちんと反撃を受け、報いを受け、そうやって混沌とするのが一つの楽しみでもあると思うのですが、それが一切ありませんでした。そしてそのカタストロフィや混沌、正義の押しつけ合いでなにがなんだかわからなくなる話こそ、この鬼頭莫宏さんの漫画の大きな特徴でもあったのですが、それらは一切無く全て放り投げてしまった印象を受けました。
どう考えても中二病全開の独善的な正義で人を殺しまくっていたので、その報いで仲間が死んだり追い詰められたり悩んだりして、ドロドロになっていくのが定石であり、鬼頭莫宏さんの漫画だったんですけどね。
まあでもこれは普通に考えれば打ち切りですよね。話の広げ方と纏め方がどう考えてもおかしいです。独善的な正義を演説する中学生ってキャラは受けなかったんですかね。私はもはやこういうのは一周して楽しめるようになりましたが、今回の結果を見ると受けが悪いみたいですね。
本当はここから「自分が神(特別)だと思っている、本来は馬鹿な子供が痛い目を見る」ことこそが見所のはずだったのですが、それを描く前に終わってしまいました。
面白く読んでいたからこそビックリした
誤解のないように書いておくと、前回のレビュー記事を読んでいただければ分かると思いますが、面白く読んでいて期待していたからこそ「ええ~」となったんです。この5巻だけのレビューを読むとぼろくそに書いているように見えるでしょうが決してそんなことはなく、本当に面白く読んで期待していた漫画だったんです。なので、唐突に終わってガッカリしたと言うのが率直な感想です。決してつまらないからぼろくそ書いているわけではありません。そこはできたら以前のレビューも併せて読んでいただけると助かります。
こんな人にお勧め
- 鬼頭莫宏漫画が好きな人
- 中二病理屈が好きな人
- 打ち切りのような終わり方でもいい人
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