今回レビューするのは、めぞん一刻の第13話です。
思うところがあり、今回アニメ全話レビューの大幅な加筆修正に着手します。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
先の展開のネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。
あらすじ
季節は秋。大学で初めて会った黒木さんに人形劇部へ誘われ、うやむやのうちに籍を置くことになった五代君。五代君の部屋には電話がないため、電話は管理人室に掛かってくるのですが、人形劇クラブの女の子からたびたび電話が掛かってきて響子さんはイライラ。喧嘩をしてしまう五代君と響子さんですが、誤解を解くため五代君は新しく入った共同電話を使い…。
みどころ
- 黒木小夜子初登場
- お洒落なオチ
初登場人物
-
- 黒木小夜子
- 人形劇クラブ部長
- 神坂(人形劇クラブ女性)
- コイズミ(人形劇クラブ女性)
感想
ストーカーみたいな黒木さん
当時ストーカーなんて言葉はありませんでしたが、黒木さんは五代君をつけ回している様子がアニオリで描かれていました。時には男子トイレの中にまで…。
五代君は誰かに見られている、それも女性の気がすると坂本に相談するのですが取り合ってもらえず。溜まっていると誤解した坂本に、なんらかの風俗であろう割引券をもらっていました。午後7時まで1900円ポッキリだとか。
黒木小夜子初登場
坂本が去ったあと黒木さんが初登場。曖昧な誘い方で五代君を人気のないところへ誘導。五代君は告白されるのかと思いきや、黒木さんが所属している人形劇クラブを手伝って欲しいとのこと。理由はずっと見ていて暇そうだったからとか。
五代君は黒木さんに付き合ってくれと言われ、「いいよ、2時間くらいなら」と言っていましたが、2時間とはいわゆるラブホテルの休憩時間です。『2時間』は男女がことを致す比喩として使われるワードです。五代君は初めて会った女性に、なにを期待しているんだとの突っ込みどころです。
アニオリですが、先ほど坂本に貰った風俗のサービス券が捨てられていたので、黒木さんと2時間ほど休憩するかもしれない五代君に、風俗のサービス券はいらないとのことでしょうか。五代君がなにを考えているのかがよく分かります。
久々に出た五代君の白昼夢
黒木さんに人気の無いところへ誘われる五代君ですが、ここで久々に白昼夢がありました。黒木さんに告白され、キスくらいなら…と。五代君は響子さんを好きなのですが、前回もあったように、こずえちゃんにも『キスくらいなら』と少しだけ手を出そうとしていました。このあともあるのですが、五代君は響子さんが好きでも、キスくらいなら他の子にも…と考えがこの頃はあるようです。
このときは秋になっており、去年同時期に19歳だった五代君は20歳になっているかもしれません。20歳童貞だとそんなもんかな…と。
今回の林原めぐみ
今回も林原めぐみさんが登場。人形劇クラブには2人の女性部員がいるのですが、その黒髪の方を演じていました。名前は漫画では出てきませんでしたが、アニメではコイズミと名前が付けられていました。
モブキャラではありますが、通りすがりとかではなく、きちんと物語に絡んで来るモブキャラに1つレベルアップ。この部員はこの後の話でも少しだけ出てきます。
結局手伝う五代君
初めて会った人に強引に手伝って欲しいと言われただけなので、断っても良いはずなのですが、流されやすい五代君は結局手伝ってしまいます。そこに現れたのはこの人形劇クラブの部長。大男で人形劇クラブの部長をやっているような人間には思えません。
黒木さんや部長はこのあと頻繁に出てくるわけではないのですが、要所で重要な役割を果たします。ずっとあとに五代君の就職先の保育園を紹介してくれます。ただ、これは漫画での話。アニメではなぜかこの黒木さんの役割がこずえちゃんに取って代わられてしまい、少し黒木さんの存在感が薄くなっています。
面白がって五代君に電話を掛けまくる
漫画だと黒木さんから人形劇クラブのことで電話が最初掛かってきて、そのあと他の部員からも連続で掛かってくるとの流れでした。なぜ連続で掛かってくるのかは、読者が『おそらくからかわれてるな』と想像する部分で、明確な描写はありませんでした。しかし、アニメはこの部分を映像化。人形劇クラブの部員たちが面白がって電話を掛けているシーンが描かれていました。ここはわかりやすくて良かったです。
人形劇クラブの黒木さん、神坂さん、コイズミさんと連続で電話が掛かってきてイライラする響子さん。五代君は人形劇クラブの子で…と説明しようとするのですが、次に掛けてきたのはこずえちゃん。こずえちゃんは人形劇クラブと関係ないどころか、説明しようとすると前回のデートの件でややこしくなるので、この時点で人形劇クラブの説明はできなくなりました。
この流れは上手いです。こずえちゃんから電話が掛かってこなければ、この時点で人形劇クラブのことを言って誤解は解けていたはず。しかし、弁明しようとした瞬間に、その弁明不可能になるこずえちゃんを出してきました。
色ガキ
五代君が謝っても響子さんは「仕事ですから」と眉間をピクピクさせながら言うのですが…。その割に五代君が管理人室から出て行った途端、「なによあの色ガキ!」と編んでいた毛糸と雑誌をドアに投げつけます。『響子さん好きじゃあああ』の回で、覗きをする四谷さんに本を投げつけたのと同じく、また響子さんは良い投球フォーム。
色ガキなんて言葉は初めて聞きました。ここで以外見たことはないので造語だと思います。色ボケと同じで、発情しているガキ=五代君との最悪の罵詈雑言。この響子さんの…というか声優の島本須美さんの「色ガキ!」との怒声が凄く好きです。なぜかは分かりませんが…。
五代君はこのときまだ管理人室の前にいて全てを聞いていました。響子さんがいかに怒っているのか、誤解しているのか五代君は目の当たりにします。
こずえちゃんとの話も並行して進む
先ほどの電話で話があると呼び出された五代君。一緒に喫茶店に入るところを噂話大好きな一の瀬さんに見つかってしまいます。一の瀬さんは面白そうだからと賢太郎を連れて同じ喫茶店へ。
こずえちゃんはコンタクトをしている目にゴミが入り痛くて泣いたのですが、ちょうど会話が聞こえないくらいの位置にいた一の瀬さんは勝手に誤解し、そのまま響子さんへ報告。一の瀬さんは誤解したまま五代君や響子さんに伝えて騒動を大きくすることがよくあります。四谷さんや朱美さんはわざとの場合が多いのですが、一の瀬さんの場合は自身が本当のことだと思って伝えるので、下手をしたら余計たちが悪いです。
強情な響子さん
一の瀬さんは誤解したまま五代君とこずえちゃんが痴話げんかしたと、わざわざ管理人室に出向いてまで伝えていました。これを聞いた響子さんは私には関係ないと強がるのですが…。リンゴの皮を剥いている響子さんは動揺が現れ、食べる部分が無くなるほど削っており…。言葉ではなくてこのような動きで感情や動揺を説明するのは好きです。言葉と行動が違っている面白さです。
一の瀬さんは冷静それを突っ込み、もう食べる部分が無いからと帰るのですが、強情な響子さんは「まだ食べる部分はあるわよ」とガリッとリンゴの芯をかじっていました。
賢太郎に聞いて全てを悟る
五代君は賢太郎に今日あったことを聞き、管理人さんに伝わってないわけがないと青ざめます。この場にはアニオリで四谷さんと朱美さんが居合わせ、四谷さんは「そんな面白いこと話さないわけないでしょ」と。皆が一の瀬さんの性格から行動を完璧にわかっていて笑えます。
ハッキリ一の瀬さんが響子さんに伝えたとの情報はなくても、伝わっていないわけはないんです。それを皆わかっています。
無表情になる響子さん
前回の電話攻勢の時、響子さんは感情が出て明らかにイライラしていましたが、次に電話攻勢が掛かってきた今回、無表情になって無機質な様子になっており…。感情を出して怒りが分かるより、この静かな怒りの方が怖いです。
このときも五代君は響子さんに言い訳をしようとするのですが、響子さんの空気に気圧され言えずじまいでした。ズバッと短く一言言えば良いだけなんですけどね。五代君と響子さんの場合、空気を読んで言わず、それがより騒動を大きくすることも多いです。
初期の中で最も印象深い話
人形劇クラブの電話攻勢にイライラしている響子さんは、なんとそのためだけに共同のピンク電話を設置。下手をしたら10万円くらい掛かるでしょうに…。よっぽどだったみたいです。
五代君は響子さんに謝るのですが、イライラする響子さんと喧嘩になってしまいます。五代君と響子さんがこうやって正面から喧嘩するのは非常に珍しいです。
響子「あなただって聞かれたくないお話があるでしょう」
五代「そんな、僕は後ろ暗いとこないですよ、電話掛けてくる女の子は関係ないし」
響子「あなたが誰と関係持とうが私には関係ないでしょ」
五代「関係持つってあのね、やっぱり変な誤解してますよ!」
響子「私がなにをどう誤解してるって言うんですか!」
五代「わ、わかんない人だな!」
響子「もう!どうせ私は意固地な後家です!」
五代「ちょ、ちょっと、話せばわかるっちゅーに!」
一の瀬「まったく、はたで聞いてると痴話げんかだねまるで」
こうやってちゃんと言いたいことを言って喧嘩すれば、仲直りの方法も見えてくるんですよね。実際、今回は言いたいことを言って喧嘩をした結果仲直りできました。三鷹さんとはこのようなぶつかり合いはしていません。五代君はこうやって3歩進んで2歩下がる的にゆっくり関係を進展させていったのですが…。
住人が見ている
漫画ではピンク電話のところにいるのは五代君だけで、他に住人はいなかったのですが、アニメでは一の瀬さん、四谷さん、朱美さんは勿論、賢太郎や惣一郎さんまでいました。住人の行動原理は『面白ければなんでもいい』です。
このとき住人は、邪魔をするよりも五代君と響子さんの仲直り寸劇をただ見ている方が『面白い』と思ったのでしょう。ここは住人の行動原理を壊さず理に適っていて、それでいてほっこりしたので良かったです。
電話の代理受け付けは昔あった
今回、五代君の電話が管理人室に掛かってきて、それを五代君が響子さんの呼ばれて受けていましたが、昔はこんなシステムがありました。
当然、電話の普及は0%から100%になったわけではありません。普及していく過程でまだ無い家庭もありました。しかし、学校の連絡網などでどうしても電話連絡が必要な場合があります。そのようなとき、連絡網には隣の家の電話番号などが書いてあり、そこに『01-23456-7890(代)』と注釈が書いてありました。今では信じられませんよね。
オチがお洒落
このエピソードはオチが凄くお洒落で印象に残っています。イライラする響子さんの部屋にまた掛かってくる電話。どうせまた五代君宛の電話だと思い暫く無視を決め込むのですが、ずと鳴っているので仕方なく取る響子さん。実は電話を掛けてきたのは五代君で、顔を合わせて話を聞いてくれない響子さんに、きちんとこれまでの誤解を話をします。そして、話の途中で響子さんが笑顔になって終了。
五代君の誤解を解く話は途中です。最後まで言っていないので、きちんと誤解が解けたかどうか視聴者にはわかりません。しかし、五代君と響子さんの表情から、話の途中であったとしても、「ああ、これは誤解が完全に解けたな」とわかります。『皆まで言わなくても分かるよね?』的オチです。
私はこのあとのことは視聴者のご想像にお任せします的なものはあまり好きではありません。しかし、このエピソードのように、想像の幅が少なく、完全に答えが分かり、そこを見せないだけの終わり方はお洒落で好きです。
話を視聴者に放り投げているわけではありません。誰もが同じ答えになる終わり方です。このエピソードだと、誤解が解けて円満解決だな…と。逆に、このあとのことは視聴者の想像にお任せしましすとなり、かつ意見が2分、3分するような、本当に視聴者に結論を放り投げたものは好きではありません。
このエピソードでめぞん一刻が凄いことがわかった
これまでもめぞん一刻は楽しく面白いとは思っていたのですが、このエピソードでめぞん一刻は『凄い』ことがわかり震えました。面白いだけではなく、これは特別凄いものなんだな…と。めぞん一刻全体を通しても、好きなエピソードトップ5に入ります。
いつものごとくトラブルが起こり、ドタバタコメディが繰り広げられ、最後はずっこけるオチでクスッと笑って終わる…のだろうなと観ていたら、最後はこれまでと違い、ちょっと感動するような、いつもと違うお洒落な終わり方をしてほっこりしました。めぞん一刻はこんなこともできるのか…と。この先も色々な物語で楽しませてくれるのだろうなと感じることができました。
このアクセントのある話があったおかげで、めぞん一刻を観ていて、『最後はどうなるんだろう』、『お笑いオチだとは思うけど前にほっこりする話もあったし…』と予想が付かなくなりました。お笑いオチなのか、ほっこりオチなのか、最後までわからないので、期待感を持ってワクワクして観られるようになりました。『物語の幅が広がった』1つのターニングポイントになるエピソードなのかもしれません。
原作漫画では
総評
今回は初期のコメディが多い中ではユニークなエピソーでほっこりしました。笑わせる話だけではなく、こんな良い話もできるんだなと感心し、今後の話がより楽しみになった思い出深いエピソードです。また、いつもは思っていることを何も言わず、誤解が誤解を生んで騒動になる五代君と響子さんとは違い、言いたいことをお互い言ったために喧嘩にはなったものの、きちんと仲直りができました。
ピンクの共同電話を一刻館に導入したことにより、五代君と響子さんは分断されたと思いきや、雨降って地固まるなのか、一歩仲良くなったような気がします。
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