カラーになって読みやすくなった「ジョジョの奇妙な冒険 Part1 ファントムブラッド/荒木飛呂彦」レビュー 評価はまだありません

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長所と短所

  • ○奇妙な冒険譚
  • ○前振りが丁寧
  • △絵柄が個性的

 

はじめに

アニメで第四部が制作されることが発表されたのを機に、今更ですがジョジョの奇妙な冒険を全巻読破しました。勿論、既に読んでいる漫画なのですが、今回読んだのはカラー版です。カラー版があることを知らず、たまたまAmazonを見ていたら全巻カラーになっていることを知り今回再度読むに至りました。非常に今更ではあるのですが、折角全80巻読破したので感想を書いておこうと思います。

 

ジョジョの奇妙な冒険の思い出

連載開始当初からきちんと読んでいたかは忘れましたが、子供の頃ジョジョの奇妙な冒険を少年ジャンプで読んだ私は、巻来功士さんのゴッドサイダーと同じカテゴリーに入れていました。絵柄が劇画調で話が怖く、そしてジャンプの最後の方に載っている不人気漫画、だけど何故か長いこと終わらない。こんなざっくりとしたカテゴリーです。

 

ゴッドサイダーは子供の頃の自分には強烈で、エログロがあり、ストーリーも陰鬱で怖く、絵柄も劇画調なのが更に怖さに拍車を掛けていました。ただ、小学生の自分にとって、少ないお小遣いから毎週ジャンプに払う170円~180円は馬鹿にできない額で、高いお金を出したからには勿体ないので全部読んでやる精神があり、怖くてもつまらないと思っても、載っている漫画は全部読んでいました。正直、ゴッドサイダーは半ば嫌々(怖くて嫌々と言う意味)読んでいましたよ…。

 

ジョジョの奇妙な冒険はゴッドサイダーほど恐怖に駆り立てられるわけではないものの、大雑把に見ると子供の自分は似たような物として捉えていました。ジャンプの最後の方に載る漫画は不人気漫画が定説になっていたので、それなのにいつまでも続くジョジョの奇妙な冒険に、「なんで不人気なのにいつまでも続くんだろう」と不思議にも思いました。

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子供の頃は面白さがいまいち分からなかったのですが、中学生、高校生くらいになると、ジョジョの奇妙な冒険の面白さが分かるのか、はたまた第三部辺りから個人的には劇的に面白くなったと感じたので、そこから自分の中で再評価したのか、今となっては自分の気持ちの動きは思い出せませんが、いつの間にかジョジョの奇妙な冒険が大好きになっていました。

 

絵柄の変遷

今読んで改めて思うのは、絵柄が時期によってだいぶ変わっていることです。この第一部は北斗の拳に影響を受けているのが絵柄からもわかり、筋骨隆々の男らしい登場人物と絵柄ばかりです。ところが第四部以降中性的なキャラが多くなりました。なよっとしたキャラやゲイっぽいファッションが多くなり、第三部までと第四部以降ではガラッと絵柄やキャラが変わっています。この辺りも続けて読むと興味深いですね。

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以下の画像なんてまんま北斗の拳ですよね。北斗の拳の一コマだと言われても気付かないんじゃないでしょうか。

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あらすじ

12世紀から16世紀のメキシコ。そこでは、太陽の民アステカの一部族の族長(オサ)が奇妙な石仮面をかぶり、生贄の血を浴びるという儀式が行われていた。血を浴びた石仮面は何本もの骨針を族長の脳に打ち込むが、彼は死なずにより強い力を得る。彼らはその力で世界を支配しようとしたが、目的を遂げず歴史から姿を消した。

 

舞台は19世紀、1880年のイギリスに移る。病で床に臥せっていたダリオ・ブランドーは息子のディオ・ブランドーに、「名門貴族ジョースター家の当主ジョージ・ジョースターの養子となって一番の金持ちになれ」と薦める。ダリオは12年前、ジョージが乗る馬車が転落事故を起こした際に金品を奪おうとしたところ、彼に命の恩人と勘違いされており、自ら亡き後はディオの面倒を見てくれると考えていた。

 

ダリオの死後、彼の遺言通りにジョースター家の養子となったディオは、ジョージの実子にして跡取りであるジョナサン・ジョースター(通称「ジョジョ」)を精神的に追い詰めてジョースター家を乗っ取ろうと画策するが、彼の初恋の相手であるエリナ・ペンドルトンの唇を奪ったことで激昂したジョジョに激しく殴られる。皮肉にもジョジョはディオの策略によって精神的に成長し、ディオはジョジョの有する爆発力と自身の精神的な弱点を踏まえ、方針を変える。

 

ディオが来てから7年。大学生になったジョジョは考古学で優秀な論文を発表し、石仮面の研究を行っていた。また、ディオとのコンビネーションによってラグビーでも活躍していたが、どうしても彼との間に友情を感じられずにいた。そんなある日、偶然ジョジョはジョージがかかっている病がダリオのものと同じ症状であることを知る。ディオがジョージに毒薬を盛っているのではないかとの疑惑を持ったジョジョは、その調査に向かう。

 

ディオは7年前、エリナを巡ってジョジョに殴られた際の飛び散った血に石仮面が反応したことを覚えていた。これを使えばジョジョを殺害できると考えたディオは、実験に街中のゴロツキを用いたことで石仮面の本当の目的を知る。石仮面は人間を若返らせて強靭な肉体に作り変え、さまざまな特殊能力を持った吸血鬼に進化させる道具だったのだ。朝日でゴロツキが消滅したことにより、ディオは間一髪で助かる。ジョジョは薬の調査中に出会った青年ロバート・E・O・スピードワゴンとの協力で薬の正体をつかむが、彼らに追い詰められたディオは自分に石仮面を使って吸血鬼と化すとジョージを殺害し、ジョジョと戦う。炎上するジョースター邸にディオは取り残され、ジョジョは重傷を負いながらも勝利し、生還する。

 

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前振りが丁寧

このジョジョの奇妙な冒険の第一部は全5巻とコンパクトに収まってはいる物の、前振りの話が凄く丁寧です。その後のディオとジョジョの、『敵でありながら友情がある』複雑なシチュエーションを際立たせるためには、ディオとジョジョが仲良く過ごす話だったり、ディオを信じて良いのか葛藤するジョジョの心の動きなんかを、丁寧に描かないと面白さがきちんと伝わりません。昨今の漫画は、人気が出ないと即打ち切りの危険があるからか、こういった丁寧な前振りが中々できない傾向にある気がします。

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このような『その後の話をより面白くするための前振り』は、それ自体は決して凄く面白いわけではないのですが、「あ~あれは必要だったんだな」、「あれがあったから面白いんだな」と、後にわかるんです。それだけに前振りを読者の評判に関わらず根気よく描くのは難しいのですが…。

 

カラーは素晴らしい

日本の漫画は基本的に白黒漫画が当たり前です。週刊連載で20ページ載せるにはどうしても時間的にカラーは無理ですからね。これは必然ですしそこに文句を言うつもりはありませんし、何より生まれてからずっと白黒漫画と接してきたので何も違和感もありません。白黒なりにトーンで濃淡を付けたり、色を想像させるような描き方になっていたりと、白黒漫画ならではの進化もしているので、これはこれで素晴らしいのですが、やはりカラーになると見栄えが良いというか単純に見やすいですね。

 

私たちが見るこの世界は白黒ではなくカラーの世界なので、その肉眼で見る世界と漫画の色が同じというのは、やはり単純に違和感なく目に飛び込んできて見やすいです。どんな感じかというと、サンプルとして白黒とカラーの比較画像を以下に少し載せておきます。

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上の画像はジョジョが紳士として見ず知らずの少女を見返り無く助けたシーン。

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そして上の画像はジョジョとディオが初めて対面する運命のシーン。この因縁がのちの子孫たちにも受け継がれ、128年間続くことになります。

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特にカラーの威力が発揮されると思うのは動きのあるシーン、もしくは線が多いシーンです。

 

白黒の場合、いくら動きを描写する線を多くしても、結局白と黒の線でしか表現できないのですが、カラーだとご覧のように白黒以外に青、濃い青、水色、紫などで線が表現されているのがおわかりいただけると思います。左の白黒の線の場合、二色しか無いので線が渋滞を起こし、ゴチャゴチャした感じに見えるのですが、右のカラーだと色々な色が使えるので、線の渋滞感がだいぶ解消されたように見えます。簡単に言うとスッキリして見えるってことですね。スッキリして見えるので当然目に優しく見やすくなっていると思います。

 

私は『線が多すぎる漫画』は苦手です。これは別にジョジョの奇妙な冒険のことを指しているわけでは無いです。ジョジョの奇妙な冒険は線が太くハッキリしているので、個人的には比較的見やすい絵柄だと思います。線が細く多く、やたら描き込んでいる漫画ってありますよね。ああいうのは個人的な好みの問題ですが見辛くて苦手です。そのような漫画であればあるほど、カラー化の恩恵は計り知れない気がします。

 

今回、このジョジョの奇妙な冒険全80巻を全部カラーにする作業は、いくらデジタル彩色が発達したとは言えさぞ骨の折れる作業だったでしょうね。頭が下がります。と言いつつ、他の往年の漫画もカラー化して欲しいです。今回、カラー版を初めて読んだのですが、色が付くだけでここまで読みやすくなるとは思いませんでした。色が付いて綺麗なのは勿論なのですが、私たちが見ている世界と同じ色彩で慣れ親しんでいて自然なので、本当にびくりするくらい読みやすいんですよ。個人的には『綺麗』さよりも『読みやすい』ことに感銘を受けました。

 

話自体の話

ここまでカラー版の素晴らしさやジョジョの奇妙な冒険の思い出の話が多くなりましたが、話自体も奇妙で面白いです。

 

2巻まではおおよそ前述もしたように前振りで、3巻から本格的なディオvsジョジョの戦いが始まります。この戦いも少年漫画の王道で、ディオを追うもその道中、手下が次々襲ってきてはそれを倒し、一歩ずつラスボスのディオへ迫る展開。その敵も、この当時イギリスを震撼させた切り裂きジャックだったり、16世紀のエリザベス一世時代のメアリー・スチュワートに仕えたタルカスとブラフォードだったりと、イギリス風味たっぷりの敵たちでした。ちなみに、タルカスとブラフォードは、民明書房よろしく、ジョジョの奇妙な冒険の創作で架空の人物です。

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また、後に石油王となり、ジョジョの奇妙な冒険全編に絡んでくるスピードワゴン財団を設立するスピードワゴンや、ジョジョの波紋の師匠ツェペリなんかも良いキャラです。

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そして、今でもネットでよく使われるネタとして普及している名シーンもこの第一部には登場。

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衝撃的な終わり方

今更ネタバレどうこうの漫画ではないと思うのですが、この先は終わり方の壮大なネタバレがあるので、未読の人はこのパート読み飛ばしてください。

 

子供の頃読んだときの衝撃が大きくて思いで補正も入っているのでしょうが、ラストで主人公が死ぬのはびっくりしました。漫画は勿論、映画やドラマのリテラシーも無い無垢な状態だったので、「主人公が死んで終わるなんてありかよー」と思った記憶が鮮明に思い出されます。また、主人公が死んでその子孫に主役をバトンタッチするなんて話も初めてで物凄く新鮮に感じました。

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総評

ジョジョの奇妙な冒険が面白いのはわかっていたのでそれは良いのですが、カラー版になることでここまで漫画が読みやすくなるとは思いませんでした。カラー版はただ見栄えが良く、ビジュアル的な問題だけだと思って読み始めたのですが、目から入ってくる情報が、私たちがいつも見ている世界と同じ色合いになるので、すんなりと目から脳へと入って来るんです。

 

読む際に、セリフを自分の脳内で音声としての声にすることは皆さんしていることだと思うのですが、ビジュアルの面では、脳内でカラー化する作業(想像)もしているのではないでしょうか。例えば海のシーンだったら「この海は青だな」とか、森のシーンだと「葉っぱは青々と茂っているんだろうな」とか。このような脳内でのカラー化作業がひとつ省かれるので、漫画を読む際に一つかクッションがなくなるんだと思います。これがカラー化によってスムーズに目から脳へ入っていく要因かなと思います。

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ただ、見方によっては『想像の余地』がなくなるので、ここに違和感や不満を感じる人もいるかも知れません。好きな漫画がアニメになったら声が想像と違うなんて現象に似ているのかも知れませんね。まあこれを考えても、やはり個人的にはカラー化の恩恵は素晴らしい物があると感じました。

 

こんな人にお勧め

  • ジョジョの奇妙な冒険が好きな人
  • ジョジョの奇妙な冒険をカラーで読みたい人

 

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