異世界版戦国自衛隊「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」レビュー

長所と短所

  • ○ユニークな設定
  • ○現実的なミリタリー描写
  • ○現実的な政治描写
  • ○しっかりと順を追っていくストーリー
  • △ハーレム過ぎる
  • ×最終回に終わった感がない

 

※○長所/△人による/×短所

 

はじめに

ここまでガッツリアニメに填まったのは、ここ数年では2011年のシュタインズゲートと2015年のワンパンマンくらいです。そんな私ですが久々にアニメに填まってしまいました。シュタインズゲートのような謎があったり、バラバラのパズルが段々ピタッと填まっていく快感とは違う方向の話なのですが、純粋に物語として非常に面白くて目が離せませんでした。

 

 

 

私はいつもパソコンを弄りながら横のサブモニタでアニメやドラマを見るのですが、ごく希に集中してきちんと見たいアニメやドラマが出てきます。その時はパソコンの作業を辞めて集中して見ます。これが私がそのアニメやドラマに填まったサイン。この状況になったら自分でも『今これに填まっているな』とわかるのですが、それがこの『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』でした。そのようなアニメやドラマが出てくるのは年に1回あるかないかです。面白い物は他の雑念や情報を遮断してそれのみに没入したくなってしまいます。

 

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日本にとってデリケートな自衛隊がテーマとのこともあり、若干面倒くさい話題になることもあるようですが、今回は久々に填まったこのGATEの魅力について書いていきたいと思います。

 

あらすじ

 

筋金入りのオタクな自衛官「伊丹耀司」が某大規模同人誌即売会に向かおうとしていた20xx年8月、銀座に出現した「門」により異世界の軍団が東京に侵攻して多数の日本人および外国人が惨殺される「銀座事件」が発生した。

 

日本の政治中枢が奇襲をうけた状態で指令が発せられない為に自衛隊は即応できず、警察も状況を把握する事が出来ずに被害が増えていく中で、伊丹は半蔵門を開いて皇居の中に通す事で多くの一般人を救出した為、7日ほどで敵軍が撃退・捕縛されると、功績により昇進すると共に自衛隊員として特地へと入った。

 

現地の情報収集の為に編成された第三偵察隊隊長となった伊丹は、古代龍と呼ばれる特地では災害と同じ扱いの巨大なドラゴンがエルフの集落を襲っているところにでくわし、全焼した集落でエルフ娘のテュカを救出する。そしてドラゴンの出現により逃避行する事になったコダ村の人々を援護しつつ、村人を襲う為に現れたドラゴンの左腕をパンツァーファウスト3で吹き飛ばす事で撃退し、伊丹達は「緑の人」と言われる存在となった。

 

 

OPとED

 

 

 

 

下地は戦国自衛隊

このアニメの特徴としては第一にユニークな設定ということが挙げらるでしょう。『自衛隊が異世界(ファンタジー世界)へ行く』ですからね。まずはその設定で食いついてしまいました。特に期待もせずなんとなく見始めたのですが、気が付いたら填まっていました。しかしこれってストーリーボードを考えると実は似た話は古今東西あり、その一つが邦画だと『戦国自衛隊』です。

 

 

戦国自衛隊を見ていない方に少しストーリーを説明すると、タイトルの通りなのですが、自衛隊の一個小隊が戦国時代にタイムスリップしてしまう話です。当然、近代兵器を所有する自衛隊は戦国時代では無敵です。不思議な人間や兵器が突然現れて戸惑う戦国時代の人々。威力を知らないので無謀にも戦いを挑む武士たち。簡単に一掃されて未知なる技術に恐れ戦きひれ伏す諸侯。そして自分たちはこの武力で天下取りが出来るのではないかと夢見る主人公たちの暴走が始まるのですが…。とまあこんな話なのですが、乱暴に言ってしまうとこの舞台を異世界である魔法と剣と獣人がいる中世ヨーロッパ風味のファンタジー世界へと移した物、それがGATEです。

 

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たまたま異世界とのゲートが現れて開いてしまい、自衛隊が異世界へ行けるようになり、そこで圧倒的技術格差で戦闘に圧勝。そこから異世界の人々との戦闘だけではなく、交流や交易、和平交渉や議会工作など、自衛隊が異世界に行ったらどうなるのかをかなりしっかりと考証し、現実にありそうな展開がどんどん出てきます。政治物が好きな人にも合うでしょう。

 

少なからずアニメを毛嫌いする層はいすし、美少女が出てくるファンタジー世界ですから、これらに拒絶反応を示す人だと楽しむのは厳しいかと思いますが、そうでない人なら単純にストーリーそのものがしっかりしているので楽しめると思います。少なくとも先ほど挙げた戦国自衛隊とストーリーボードや空気は同じなので、アニメやファンタジー世界に拒否反応さえなければ、戦国自衛隊を面白いと思った人は一見の価値ありです。

 

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日本版スターゲイト

戦国自衛隊と似ていると前述しましたが、アメリカ映画でも似た話があります。それは『スターゲイト』です。アメリカ映画のスターゲイトの場合、星間移動装置であって行き先はファンタジーの異世界ではないですし、GATEのような数万人規模の戦争は無かったのですが設定は似ています。GATEを実写化なんてしたら150億円くらい制作費が掛かってしまいそうです。これはアニメの大きな利点で、数万人単位の戦争なんて事も手軽に表現出来ます。

 

 

アメリカ映画のスターゲイトとこのGATEの違いを大雑把に書くと、GATEは民間人の死者が出たことで戦争になってしまいましたが、スターゲイトは民間の死者が出なかったこと。GATEはこちらの技術が圧倒的に進んでいましたが、スターゲイトは逆で向こうの技術が進んでいたことなどでしょうか。勿論、前述もしたように異世界と他の惑星との違いもあります。GATEスターゲイトに似てはいるのですが、また逆に結構違う部分もあります。

 

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ご都合主義?

このGATEへの文句で聞く代表的な声が二つあります。一つは『俺つーえだけじゃないか』ということ。もう一つは『自衛隊に戦争させるなんてけしからん』です。ここでは前者の俺つえーについて少し説明をしたいと思います。

 

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『俺つえー』とは何か。言葉の通りなのですが、主人公側が敵よりも圧倒的に強く力を持っているため、主人公側が勝ちまくって優越感に浸るだけの自己満足と揶揄として使われることが多い言葉です。

 

俺TUEEEEとは、勘違いであり厨二である。具体的には以下のことを表す。

  1. 対戦型ゲームやネットゲームにおいて他のプレイヤーを圧倒し、悦に入るような状態のこと。
  2. 漫画やラノベ等の創作物において主人公の強さや能力が超越していること。

 

上記から転じて、創作物において「完全無欠な最強主人公」や「一方的に力を誇示して戦う主人公」を差す言葉としても使われるようになった。所謂「厨設定」や「メアリー・スー」と同列の揶揄であるが、後者と違って一次創作が対象になることが多い。

 

この俺つえーとは悪いことなのでしょうか。このGATEだけなのでしょうか。これは答えがハッキリしていて否です。前述もしたように邦画で有名なところでは戦国自衛隊がありましたし他にも当然あります。また、日本だけの特有な物かといえばそれもまた違い、前述したアメリカ映画のスターゲイトの他に、『ファイナル・カウントダウン』なんて戦国自衛隊とそっくりのストーリーです。これは、原子力攻撃空母が第二次世界大戦の真珠湾攻撃前日にタイムスリップしてしまう話。これはマイナー映画でも日本で人気があっただけでもなく、名作として挙げられる映画の一つです。

 

 

また、映画だけではなく最近のドラマ化もされた漫画だと、現代の医者が江戸時代にタイムスリップして医療無双する『JIN-仁-』や、現代の料理人が戦国時代にタイムスリップして料理で人々を驚かせる『信長のシェフ』なんかも大枠ではこの俺つえー系統の話でしょう。自衛隊という日本にとってデリケートなテーマを扱っているため、このように他にいくらでも例があるのに、必要以上に俺つえーと揶揄されていることはおかしな話です。更に言えばこの俺つえー系統の俳優もジャンルとしてしっかりと存在していて、シュワルツェネッガー、スタローン、セガール、ヴァンダムと枚挙に暇がありません。俺つえーだって面白ければ良いんです。そこは文句をいうところではないでしょう。

 

 

このように、日本だけではなく古今東西俺つえー系の話はあります。これだけジャンルとして確立しているのですから、人は少なからず俺つえーを見たい、やってみたいとの願望があるのだと思います。現実問題、自分(人間一人)なんて非力で何も出来ません。創作物の中でくらい、現実で出来ない俺つえーを楽しんでも良いのではないでしょうか。勿論、この俺つえー系が嫌いで楽しめない人もいるでしょう。それもまたひとつの意見で正しいです。しかし、自分が楽しめないから馬鹿にする、認めないというのは姿勢として違うのではないでしょうか。

 

自衛隊に拒絶反応を示す人も?

GATEへの文句でもう一つ、『自衛隊に戦争させるなんてけしからん』について。これはもう真剣に書く気にもならないのですが、「創作物でしょ?」の一言で終わってしまいます。これがけしからんというのなら、映画やドラマでの殺人事件を扱う話、ナイフや銃を扱う話、もっといえば不倫の話だって自殺する話だって駄目でしょう。日本の歴史上、戦争へのアレルギーがあるのはわかりますが、創作物までけしからんといっていたらキリがありません。ただ、このGATEの作者は元自衛官なので、自衛隊が憲法に縛られて出来ない事を創作物で思う存分やった感じはします。ただこれも含めて創作物なので別にそれで良いと思います。

 

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ちなみに、日本凄い、日本強いとの部分にも拒否反応を示す人がいるようですが、これも別に目くじら立てる必要などなく、おかしなことはありません。洋画が好きな人なら当然知っていると思いますが、「USA!USA!」の大合唱をする、もしくはそういった系統のアメリカ無双の映画やドラマは当たり前のようにありますし、それに対して拒絶反応を示すアメリカ人はあまり聞きません。それはそれで一つのジャンルですし、現実世界で誰かを相手に武力や暴力を振るって「USA!USA!」なり、「日本!日本!」をやるよりは、創作物でやってストレス解消出来るならこんなお手軽話はありません。『自分たち(日本人)が楽しみたいから自分たち(日本の自衛隊)を活躍させる』。この願望はどこの国でもそうですし、創作物の作り方、楽しみ方としてなんら間違いではありませんし、非難されることでもありません。

 

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作者が元自衛官なので、確かに自衛隊を美化しているのでしょうし日本を持ち上げてはいるのでしょう。一部で自衛隊のプロパカンダだとの声もあるようですが、元々これはWEB小説であり、漫画化やアニメ化してここまで人気になることは想定外だったはず。また、自衛官に愛国心がなければ逆にそちらの方が問題ではないでしょうか。

 

現実的な物語

自衛隊が異世界へ行く。この要素に現実的な要素など全くないですよね。ところがこのGATEは物凄く現実的に話が進んでいきます。そこがこのGATEを私が面白いと思った大きな理由です。

 

今まで異世界物といえば、中世のようなファンタジー世界を舞台に魔法と剣の世界に獣人などがいて、この現実とは全く違う舞台を楽しむとの物語が多かったように思います。ところがこのGATEでは元自衛官が作者だけあり、戦術的なことや武器などの描写が実にリアルです。私はミリタリー知識は全くといって良いほどないのですが『リアルに見える』ことが重要で、極端に言えば現実はどうこうよりも、『そう見えている』だけで良いんです。また、政治部分もしっかりしていて、和平交渉や議会工作、講話派と好戦派の対立、王族の後継者争い、捕虜問題などなどの細かいことまでしっかり現実的に描いていますし描こうとしています。先ほども書きましたが本当はどうかではなく、『現実的に描こうとしていること』が大事なんです。そう見えれば良いんです。その点GATEは間違いなく現実的に描こうとしていますしそのように見えます。

 

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今までの異世界物といえば剣と魔法のファンタジー世界ばかりだったのですが、GATEはもし自衛隊が異世界に行ったら戦い方はどうなる?武器は何をどうやって使う?その時の戦闘の様子は?圧倒的な戦力差の相手の場合政治的にはどうなる?占領?講和?講和するとしてどういうルートでどう説得してどのような条件で?相手はそれを呑む?などの細かい疑問を丁寧に一つ一つ潰していくんです。この辺りの細かさには感心してしまいました。

 

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少し話はずれますが、私はこの世界がゾンビの世界になったらどう行動して生き残るのかを考えるのか好きです。少し前にこんな話がバラエティ番組のアメトーークでやっていましたが、このずっと前からこんなことを一人で考えるのが好きでした。…変ですかね。当然ゾンビの世界なんて現実的にはあり得なく、そこに現実的も何もないのですが、もしあの世界に放り込まれたら…なんて考えると楽しいんです。

 

例えばこの場合、最初に悩むことはゾンビの世界になったら真っ先に家から出て食料や武器を確保しに行くか、それとも生き延びるることを第一に考えて家に閉じこもるか。このスタート地点の二択でいつも悩みます。打って出た場合のメリットとしては、成功すれば食料や武器が手に入るので、先のことを考えた場合は有利でしょう。しかし当たり前ですが成功する保証などなく、この時点で死んでしまうかも知れません。その危険性を顧みず先のことを考えて打って出るか…。

 

一方、家に閉じこもった場合のメリットとしては、当面の安全が確保出来ることがあります。ゾンビは基本的に力がないのでドアを破って入ってくる事は出来ないでしょうし、騒がなければ集まってくることもないはず。しかし家の食糧が尽きた場合や、電気、ガス、水道などのインフラが止まった場合、せいぜい閉じこもっていられるのは1週間から頑張って2週間というところ。さあどうするか…。

 

そしてもう一つゾンビ世界の妄想で楽しいのは、なんといってもホームセンターやショッピングモールで立て籠もること。しかしこの場合、ゾンビ映画のお約束として、大抵人間同士の仲間割れでゾンビが侵入して壊滅、もしくは派閥争いでゾンビより人間の方がよっぽど怖いよねなんて状況になってしまいます。この危機を回避するためには、この人間グループの中でどのポジションでいるべきか。リーダーは目立ちすぎて失敗したら非難されるので得策ではないかも…。ではモブのように息を潜めていた場合はどうか。役立たずと思われて真っ先に命の危険があるかも…なんて考えてしまいます。ここはどの立ち位置に納まるとしても、武器や食料を仲間に隠れてどこかへ隠しておき、いざとなったらすぐに逃げられる体制を整えておきたいところ。しかしそれはそれで、そんな姑息なところが仲間にバレて「お前とは仲間でいられない、ここから出て行け」なんて言われるお約束のシーンが見えすぎますが…。

 

…横道に逸れましたが、ゾンビ物かどうかは置いておいて、誰しもこんな『あり得ない世界が現実だったらどうするかなあ』なんて妄想をすることがあると思うのですが、それが具現化された物がまさにこのGATEなのです。ゾンビ世界が現実に来たらどうしようなんて妄想が好きな私としては、このGATEに填まる要素ガッツリあったのでしょう。

 

言語の処理が上手い

現実的な物語の側面として一つわかりやすい例を挙げると、こちらの世界と異世界では言葉が違うため最初は話が通じません。最初は簡単な単語から覚えていき、徐々に会話が出来るようになる描写があったり、会話が通じなくてお互いハテナなんて描写もしっかりとあります。また、話せない人との間には通訳が入ったりもしています。この辺りは大雑把な漫画だと、言語の違いをすっ飛ばして当たり前のように話が通じてしまいます。このような言語の齟齬は本筋ではないので飛ばしても問題はありませんが、現実的な物語を目指しているGATEではなければおかしいですからね。

 

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例えば日本語を話す者と英語を話す者の場合、この辺りのことをすっ飛ばしても、日本語も英語もこの世界で使われている言葉ですから、母国語でなくても喋れる人がいるので、一方が一方の言葉を喋れるんだなと思えます。しかしGATEの場合は日本語と異世界の言葉ですからね。お互い言葉を理解している人が最初は絶対にゼロなんです。この状況で言語の齟齬をすっ飛ばすことは出来ません。

 

この言語の処理は本当に上手くて、伊丹たち日本人側も全く喋れないところから徐々に上手くなっていく段階を見せていますし、異世界側のレレイたちも話が進むにつれて段々と上達していく様が分かります。また、レレイは通訳としても活躍するのですが、視聴者には両方の言葉がわかりつつ、それでいて話の中では違う言葉が話されていて、その間にレレイが通訳に入り「…と」の一言で全てを表していました。ここは一見するとコミカルな部分なのですが、言語の違い、お互い通じていない様子、その間に入る通訳、しかし視聴者には全て日本語で理解出来るとの矛盾する部分を全て上手く処理していて感心しました。

 

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その時世界は

自衛隊が異世界に乗り込んで戦闘や政治をしている一方、日本以外の国はというと、日本のおこぼれを狙う国があったり、今は日本にやらせておいてあとから利益を貪ろうとする国があったり、こちらの描写もしっかりされています。ただ、この部分は少なくともアニメ化された部分ではそれほど深く掘り下げられておらず、もっとそちら方面の話があっても良かったかも知れません。私は原作の小説を読んでいませんし、今回のアニメ化では小説全5巻のうちの3巻までなので、このあと国際政治の濃い描写があるのかも知れませんが。

 

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国内政治の描写では、自衛隊を非難する野党が主人公の伊丹と異世界の人間を国会に招致して質問したりと、この辺りもきちんと描いています。この時野党側で意地悪な質問をして自衛隊を悪者にしようとしていた女性議員のモデルは蓮舫議員ですね。蓮舫議員は白いスーツがトレードマークなので多分そうでしょう。政治に詳しくなくても、一般的に話題になるニュースをここ数年追っていれば、現実とリンクした部分があるのも面白いところ。また、与党側だと何かあるとすぐに変わってしまう日本の首相という役職の軽さ、責任を取りたくない日和見で選挙で勝つことだけしか考えていない政治家などの描写も「あるある」と笑ってしまいます。

 

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他にも細かいところだと、戦争反対、自衛隊けしからんの市民デモの描写もあったり、最初から自衛隊を悪者にしてやろうとする記者も出てきたり、今の世界情勢や日本の情勢を事細かく描写しています。このような細かい描写こそが、目の前の世界が本当に起こっているような錯覚を引き起こし、没入感が高くなる要因なのでしょう。

 

棍棒外交

このGATEの政治部分をもう少し書くと、日本が帝国に対してやっている外交は、アメリカのルーズベルト大統領(任期1901年~1909年)がやっていた棍棒外交に似ています。西アフリカのことわざ「でっかい棍棒を持って、静かに話せ、それで言い分は通る」から棍棒を引用した棍棒外交。これはこの諺と棍棒外交との言葉だけでイメージ出来ると思うのですが、棍棒で威嚇しながら交渉して相手を説き伏せる外交政策で、のちのアメリカの外交に大きな影響を与えました。

 

GATEの政治部分は、基本的に自衛隊の圧倒的武力を見せつけつつ交渉のテーブルに着かせて和平交渉を進めるというスタイル。勿論、綺麗事だけでなく日本に有利な条件を引き出すためでもあり、鉱物の採掘権や租税の免除なんて話も自然に出てきます。

 

自衛隊がファンタジーの異世界へ行くという突拍子も無い非現実的な話でありながら、一方でこのように非常に細かい現実的な部分も描く。これがGATEの大きな魅力なんです。

 

ドラゴンも当然いる

ここまで日本の自衛隊と異世界の帝国の戦争や政治の話をしてきましたが、ファンタジー世界のお約束といえばやはりドラゴンも欠かせません。ということで、ドラゴン退治なんて話も重要な位置付けとしてあります。異世界物ではドラゴンが大きな敵として立ちはだかり、剣と魔法で戦うのはお約束なのですが、GATEのでは当然ながら自衛隊vsドラゴンであり、戦闘機やミサイルvsドラゴンとなります。

 

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またドラゴンとの戦いも人を襲う害獣駆除の側面が強く、本来の異世界物のように、勇者がドラゴンを伝説の武器で倒すなんてロマンではありません。あくまで近代兵器vsドラゴンなんです。ここもまた、ファンタジーと現実がバランス良く描かれていてユニークです。

 

個性豊かなキャラクター

GATEは出てくるキャラも個性的です。主人公はオタク自衛官の伊丹耀司(いたみようじ)33歳。この年齢設定もちょうど良く、ティーンエイジャーの主人公ではこの話は成り立ちません。経験がある程度あり、部下を従えることも可能で、それでいて視聴者が投影出来る程度には普通のキャラになっていました。まあレンジャーだSだと、話が進むと実はスーパーマンでしたとなってしまうところは、やや余計だったかなと思いますが…。

 

この主人公伊丹を取り巻く主要キャラは、エルフの娘テュカ、魔法使いのレレイ、亜神のロゥリィの3人。この伊丹+3人が物語で最も登場が多くスポットが当たるキャラたち。そこから一歩下がって自衛隊と戦争中の帝国の皇女ピニャ。少し話が進むとここにダークエルフのヤオが加わり、伊丹の取り巻きは5人となります。

 

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一人一人見ていくと、テュカは典型的なファンタジー世界のエルフで耳が尖っている金髪美女。もはやこの手のエルフがいないと異世界物は成立しないでしょうとの象徴的な存在。GATEは戦争や政治の現実的な部分も色濃く出ているのですが、一方でファンタジー世界のお約束もしっかり抑えているのが素晴らしいです。現実とファンタジーの両方の抑えるべき部分を抑えているところも魅力。

 

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レレイは多様な種族がいる中の人間族で魔法使い。一番まともなキャラで一番真面目。この声を充てている声優さんの演技がピッタリで気持ち良いです。ぶっきらぼうな演技がキャラにピッタリ。

 

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ロゥリィは半分人間、半分神の亜神との存在で、見た目は亜神になったその時で成長が止まっているのでロリキャラ。名前と掛かっているのでしょう。このようなロリキャラも異世界物ではよくいますね。

 

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基本的にこの3人が主人公の伊丹に好意を持っているハーレム状態なので、ハーレム状態苦手な人には厳しいかも知れません。とはいっても普段は伊丹好きなんて話は出ないので、その辺が心配な人も多分大丈夫かなと。なんといってもGATEは自衛隊と異世界の戦争、そしてその影響を受ける政治がメインにあることはぶれません。

 

この他にも騎士団の女性や伊丹の部隊の部下、元奥さん、帝国の皇帝や息子のゾルザルなんかも出てくるのでキャラはいっぱいです。美少女キャラばかり目立ってしまいますが、キャラの数でいえば自衛隊が舞台の話ですから男性も沢山出てきます。伊丹以外の男性はキャラが薄いのであまり目立ちませんが…。

 

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美少女キャラがいっぱい出ては来るのですが物語的には結構硬派です。美少女キャラが出ている時点で美少女物だといわれてしまえばそれまでなのですが…。この辺は良く「今はハーレム物多いな」、「やり過ぎ」と思うこともあるのですが、ふと冷静に自分を顧みると、『らんま1/2』なんかはまさにハーレム物で、私はそれを楽しんでいたんですよね。偉そうなことは言えないなと。

 

 

続きは?

アニメのGATEはこれで一旦終了です。原作の小説は全5巻でアニメは3巻終了まで。続きの部分は残り2巻あるので、3期4期を小説原作なら出来るのですが果たして…。

 

GATEは漫画版もあるのですが、こちらはもう話の進捗具合はアニメに抜かれてしまいました。漫画版でやっていない部分もアニメ化出来ていたわけですから、やろうと思えば小説を元に続編が作れるはずなので今すぐにでも続きをアニメで見たいです。しかし実際はGATEの続きがアニメ化される保証は全くありませんし、漫画版でアニメの続きが描かれるのも随分先になると思うので小説版買ってしまおうかな…。漫画版は既刊全て読んでいるのですが填まってしまったためとても待てそうにありません。

 

お約束を破った

このGATEは何か謎があり、それが次々と解かれていくような話でもありません。痛快なアクションがあるわけでもありません。人間ドラマがや恋愛物がテーマでもありません。かと言って自衛隊だから戦争物かと問われればまたそれも違います。『自衛隊が異世界へ行ったらどうなるか』を『全体的』に描いたユニークな話です。このような点で戦国自衛隊スターゲイトと似て非なる物なんです。戦争だけではなく政治的な駆け引きもしっかり描かれているので戦争がメインでもないんです。寧ろ戦闘シーンは全体の割合からすると少なく、戦力差を盾にどう交渉するか、相手を説き伏せるか、屈服させるかの方がメインといっても良いでしょう。

 

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基本的には前述もしたように戦国自衛隊の舞台を異世界にした話なのですが、永続的に異世界に物資やエネルギーを補給出来るので、戦い方や交渉などの面では戦国自衛隊とはまったく違うともいえます。この辺りの戦国自衛隊との違いも興味深いです。戦国自衛隊は物資の補給、弾薬の補給が出来ないため追い込まれてしまいました。また、かわぐちかいじ作のジパングでもそうでした。補給が出来ない事が枷であり、それが物語のキーになっていました。ところがこのGATEでは補給が可能なんです。

 

 

現代の自衛隊や軍隊が過去に行って無双するも、弾薬やエネルギーの補給が出来ない、衛星とリンクが出来ない。だからこそ戦力差のある現地部隊でもある程度戦えてしまう。これがこれまでの軍隊(自衛隊)タイムスリップ物の基本になっていたのですが、GATEの場合は戦力差があるだけではなく補給まで自由に出来てしまうところに目新しさがあります。本来、これでは無敵すぎて話が成立しません。だからこそ戦国自衛隊でもジパングでも補給が出来ない状況に持って行ったんです。このお約束を破ったのがこのGATEです。

 

これが普通の軍隊だった場合、戦力差がある、相手は講和の態度を見せず好戦的、自国民を奴隷にした。こうなれば全面戦争で相手を壊滅させても良いんです。寧ろその方が世界的にはスタンダードでしょう。この自衛隊だって戦力差を考えれば帝国を壊滅させることは簡単に出来ます。ところがそれをしない、出来ないのが自衛隊であり、それこそが無敵の武力を持ってしても話が続く理由です。相手を壊滅させてしまったらそこで話が終わってしまいますからね。これは足枷のある自衛隊という歪な存在だからこそ話が続いているわけです。

 

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ご存じのように日本は戦争を体験して敗戦し、憲法九条もあり、おそらく世界で最も現実的にも心理的にも戦争にストッパーが掛かっている軍隊です。だからこそ異世界に対しては無敵の軍隊を持っていて補給も完璧に出来、戦力格差が中世ヨーロッパと現代くらい違い、相手は好戦的でありながらも、相手を武力制圧せずに話が無理なく続く理由です。一見すると焦れったい話で、さっさと帝国を壊滅させちゃえよと思うかも知れませんが、この焦れったいストーリー展開は自衛隊という特殊な性質を持った軍隊でしかあり得ませんでした。

 

ちなみに見ている人には説明不要ですが、憲法九条で他国への先制攻撃が出来ない自衛隊が、何故異世界で戦争出来たかと言えば、東京の銀座にゲートが開いたので、異世界は日本国内である特別地域、通称『特地』であるとの理屈からです。この辺も整合性を取ろうとしています。

 

足枷があるからこそ面白い

これまでも書いてきたように、自衛隊は世界でも特殊な軍隊で、先制攻撃は出来ないとか、過去の大戦を顧みて非常に消極的な軍隊とか、政治家や市民の戦争アレルギーがあったりと、一般的な主権国家では考えられない武力行使の法的、心理的ストッパーがあります。

 

これは日本や自衛隊を持ち上げているわけでもなく、美化しているわけでもないのですが、一般的な国家の軍隊ならここまで攻撃を躊躇して交渉で済まそうとはしないでしょう。ところが足枷がある自衛隊だからこそ、このように一見すると焦れったくも回りくどい物語になっているのですが、これが棚からぼた餅ではないですが面白い一つの要素になっているのだと思います。

 

ドラゴンボールの悟空が遅れてきたり病気で実力を出せない足枷。キャプテン翼のGK若林君が怪我や仲間割れで実力を出せない足枷。YAWARA!の柔がお爺ちゃんと揉めたりお父さんのことで実力を出せない足枷。足枷は強すぎる主人公を苦戦させるためによく使われる手法なのですが、この焦れったくも面白い足枷の要素がGATEにもあります。

 

 

最終回の感想

このパートは最終回の感想なので終わり方のネタバレがガッツリ入ります。まだ見ていない人はこのパート飛ばしてください。

 

率直に感想を書くと「終わった感じがしない」です。『最終回として』見た場合は正直ガッカリ。3期があるなら今回の話の評価は変わります。本来最終回ではない途中で終わらせるとこうなりがちなんですよね。完結していない話の途中で無理矢理最終回を作るわけですから…。

 

最終回は第1期にあったような数万人vs自衛隊の派手な戦争があったわけでもなく、前回あった空挺部隊による強襲作戦があったわけでもないので、盛り上がりに欠ける感は否めませんでした。続きがあるからこそのこの『区切り』なら全く違う評価になるのですが、この区切りを『最終回』とされると、どうにもこうにも消化不良感が残ってしまいました。

 

あと納得いかない部分を挙げると柳田とデリラがカップルになっていたこと。柳田はデリラに殺されかけたのに…。この辺りも最終回の急ぎすぎ感を感じた部分で、本来なら何故この二人が付き合うようになったのかの顛末をやるべきだと思うのですが、この部分は説明一切なし。ただの一枚画と一言二言のセリフのみで、殺し合った二人が恋人同士になりましたよと言われてもどうして良いのか…。いや、もしかしたら看病しているだけで恋人同士ではないのかも知れませんが、そうだとしたらやはりそこも説明が足りないですし、カップル羅列の中に入っていた意味が通らなくなってしまいます。

 

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最終回はゾルザルが帝都を離れ反抗を決意する一方、ピニャが皇太女に即位。これから新しい物語が始まるとのところで終わってしまい、最後のシーンはアニメオリジナルなのか、伊丹が最初に行けなかった同人誌即売会に行くもやっぱり参加出来ないところで終了。この辺りの流れも苦しかったように思います。この同人誌即売会の会場にはテュカ、レレイ、ロゥリィが現れたのですが、こちらの世界に来るということは彼女らにとっても物語にとってもとてつもない出来事で大イベントのはず。実際、全24話中1度しかこちらに来ていませんでしたし、レレィなんて遠い目をして、しかも目を潤ませて「また行きたい」といっていましたよね。ところが軽いノリで「ちょっと来ちゃった」はどうなのでしょう。彼女らがこちら側に来たら、それだけで何話も費やす大イベントになるはずなのに…。ここも最終回に無理矢理を感じた一つ。

 

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また、昨今最終回はエンディング曲が流れた後にCパートが来たり、エンディング自体特殊な物になることが多いのですがそれもなし。一応最終回のEDは第1期のOPが流れ、いつもとは違っていたのですが、流れる画も1期のOPと全く同じで特別感がなく感傷に浸れませんでした。

 

今回は3ヶ月の放送+3ヶ月の中断+3ヶ月の放送の分割2クールでした。公式には第1期、第2期ということになっているので、続きの第3期、第4期が見たいですね。原作小説は残り2冊で外伝も5冊出ているので、上手く外伝を盛り込みながらやればあと2クール出来るのではないかなと。ちなみに、昨今このような分割○クールが多くなっていますね。ジョジョでもそうでした。始まってから完結するまでが長くなってしまう弊害はあるのですが、そのおかげで制作期間に余裕が出来て、いわゆる『作画崩壊』が少なくなる効果があります。このGATEも填まってしまって通して3周は見ているのですが、特に目立った作画崩壊は見受けられませんでした。

 

現実的に考えると3期が来るとしても1年は掛かるでしょうから、続きや本当の終わり方が気になりすぎるので、ここは素直に小説版を読もうかと思います。最終回については厳しめの評価になってしまいましたが、このGATEが大好きであるが故です。そこをご理解いただければと…。

 

填まる人判定

色々と書いてきましたが、このGATEに填まれる人、填まれない人は簡単に分かります。自衛隊が異世界へ行くというユニークな設定ではある物の、ベースとしてはこれまでにあった『現代の技術を持った者が過去に行って無双する』話なので、今までに挙げたように邦画だと『戦国自衛隊』、洋画だと『ファイナル・カウントダウン』、『スターゲイト』、漫画だと『ジパング』、『JIN-仁-』、『信長のシェフ』。これら挙げた物全て好きと言う人も珍しいと思うので、どれかを一つでも面白いと思ったことがある人なら、取り敢えずGATEにに填まれる要素はあります。

 

おわりに

このGATEの魅力を簡単にまとめると、『自衛隊が異世界に行くという非現実的な話でありながら全ての事柄を現実的に描いている』ことです。

 

中世ヨーロッパのような剣と魔法の世界にエルフや亜神がいてドラゴンもいる。そこに自衛隊が行き、剣と魔法の軍隊と戦争をしたり、現地の人々との交流や交易、和平交渉や議会工作、講和派と好戦派の争い、王族の後継者争いなど現実的な要素をこのファンタジー世界で描くことにより、もし現代の人々が異世界へ行ったらどうなるのかをリアルに描いています。

 

最初になんとなく見始めたときにはここまで填まると自分でも思いませんでした。特に戦争物が好きなわけでもなく、異世界物が好きなわけでもないんですけどね。

 

このアニメの評価を調べると、5点満点中5点とか4.5点のように、誰からも面白いと賞賛されるような物ではないようで、合う合わないはあるんだと思います。それでも私はガッツリ填まってしまいました。

 

これまでにこのGATEと似ている作品を挙げてきましたが、どれか一つでも好きな作品があった場合、填まれる要素はあると思うので興味があったら見てみてください。

 

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こんな人にお勧め

  • 戦国自衛隊が好きな人
  • 異世界物が好きな人
  • 戦争物が好きな人
  • 政治物が好きな人

 

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