「銀河鉄道999/松本零士」レビュー ~寓話が多く考えさせられる漫画~ 評価はまだありません

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今回レビューするのは、松本零士さんの漫画『銀河鉄道999』です。

 

古い漫画なので読んだことはあるのですが、すっかり忘れてしまったので久々に全巻読破しました。

 

それでは早速レビューを書いていきたいと思います。

 

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あらすじ

舞台は、銀河系の各惑星が銀河鉄道と呼ばれる宇宙空間を走る列車で結ばれた未来世界(テレビアニメ版では第1話冒頭のナレーションで西暦2221年と設定)。宇宙の多くの裕福な人々は機械の身体に魂を移し替えて機械化人となり永遠の生を謳歌していたが、貧しい人々は機械の身体を手に入れることができず、機械化人の迫害の対象にされていた。そんな中、機械化人に母親を殺された主人公の星野鉄郎が無料で機械の身体をくれるという星を目指し、謎の美女メーテルとともに銀河超特急999号に乗り込む。

 

長所と短所

  • ○変わった宇宙観が満載
  • ○差別や格差などの社会問題を面白さにしている
  • ○漫画版ロードムービー
  • ×アニメに比べると1エピソードがが短く蛋白

 

変わった宇宙観が満載

アニメや映画は観ていたのですが、漫画版をきちんと最後まで読んだ記憶に、いまいち自信が持てませんでした。そこで、先日銀河鉄道999を読破しました。漫画史に残る物ですからね。このようなずっと語り継がれる伝説の漫画やアニメは一通り読んでおきたい、見ておきたいんです。この手の物だと、あとはイデオンとか銀河英雄伝説とか、ボトムズ当たりもきちんと見たことがないのでいずれ見るつもりです。

 

普通に考えると、星は丸く、重力があり…など常識的な考えに囚われて星やその生活を描きそうなものですが、銀河鉄道999の場合、そもそも星が球体ではないことも多かったです。まずここから発想がぶっ飛んでいて面白かったです。また、宇宙の中にポツンと一軒家があってそこで生活している人がいたりと、とにかく常識に囚われていては考えつかないような星、宇宙観が満載で驚きました。銀河鉄道999の特徴の1つだと思います。

 

物理法則から考えると絶対にあり得ないので、お世辞にもリアルな宇宙とは言えません。しかし、リアルであれば物語は面白いかと言うとそれは違います。昔のキン肉マンやキャプテン翼などを見てもわかりますが、これらって全然リアルじゃないですよね。

 

キン肉マン達は空を飛べるのに普通にリングアウトしちゃったり、キャプテン翼だとサッカーのフィールドが地平線見えるくらい大きかったり…。今では大人になったので、思い出話とセットでネタとして良い意味で笑われますが、この無茶苦茶さのパワーが面白さの一因でもありました。矛盾など吹き飛ばすくらいのパワーがあれば物語ってリアルじゃなくて良いんです。

 

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『リアルとかけ離れているけど、矛盾を忘れさせるほどのパワーで面白い』というのは、昔よくありました。銀河鉄道999もその1つだと思います。今の漫画はリアルさを無理に追求して、破天荒な面白さは失われつつあるように感じます。ただ、リアルな漫画は漫画で、面白さは間違いなくあるので、どちらを否定するわけでもありません。理想としては同時に存在すると良いのですが、今はネットで突っ込みが簡単に差k須屋に届いてしまうので、作者自身が気になって破天荒な話を描けないのかしれません。

 

昔のような、『リアルさなんてどうでも良い、面白ければ良いんだ』的な今の漫画だと、『彼岸島』とかがそうですかね。まあ作者は大真面目に描いている気がしますが…。

 

話は飛びましたが、銀河鉄道999もリアルさを追求して小さく話がまとまっている漫画ではありません。あくまで描きたい話があり、そこに宇宙を当て嵌めると言った感じでしょうが。これがリアルさが先に来てしまうと、リアルな枠組みの中に描きたい話を押し込めてしまうため、小さくまとまってしまうことが多い気がします。

 

印象的な話だと、ひたすらネジを作る星のが挙げられます。その星の住人は全員生まれてから死ぬまでネジを作ることしかしません。そのネジを全宇宙に出荷して生活しています。そのため街中ネジが使われた独特の建築様式でアリ、雨と一緒にネジが振ってくる始末。しかし、その星野住人はプライドを持ってネジを作っており、周りからおかしいと思われても貫き通す職人魂を描いていました。

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また、貧乏人は地上には住めず、地下深くに住むと言う格差社会を表した話もありました。

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仇敵を最初に倒して解決しちゃうところが面白い

まず読んでいて面白いと思ったのは、鉄郎のお母さんが機械伯爵に殺されるのですが、その仇敵を最初に片付けてしまうところ。このような仇敵って、1話完結型の話でも、大抵物語の縦軸として残しておき、少しずつ謎が解け、主人公が強くなり、段々と仇敵に近付いていき、最後は倒す…との流れですよね。しかし、この銀河鉄道999は最初にその仇敵を倒してあっさり最大の敵を倒すとの課題が解決。

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と、言うのも詳しくは後述しますが、この銀河鉄道999はロードムービーだからなんですね。ムービーではありませんが、ジャンルとして確立しているのでこの言葉を使いましたが…。

 

地球を出発すると、とてつもなく長い道のりを鉄郎は真っ直ぐ行くことになります。気が向いたから帰る…なんてことはぜったにできない物語の制約があるので、地球にいる仇敵は今倒さなければいけなかったんですね。もしこの機械伯爵を仇敵として縦軸に残してしまうと、それが解決するのは最終回で戻ってきたときだけですからね。それではあまりに先すぎますし、地球から離れていく一方なので、機械伯爵関連のエピソードなんてのも作れません。

 

実際、地球を出た後は機械伯爵の話なんて、それこそ数巻に1回程度思い出話として出てくるくらいでした。最初に倒してしまうことは正解でした。

 

差別や格差などの社会問題を面白さにしている

無茶苦茶差別の激しい話や、貧乏人が虐げられている話など、社会問題に通じる話が多かったです。いわゆる寓話ってやつですね。宇宙などのディテールを変えると、日本昔話ですよと言われてもわからないくらい、寓話性や教訓性が高いです。しかし、ともすればこの寓話性や教訓性は説教句作なりがちなのですが、きちんと面白いエンターテイメントとして成立させていたのは凄いです。

 

前述したように、貧乏人は地中に住む星そうですが、特に印象に残っている話だと、生まれながらに人間が光る星では、まだら模様に光ってしまうと、それだけで下層階級となってしまうなんてのもありました。見た目や生まれと言う、自分の努力ではどうしようもない部分で差別される話ですね。現代でも黒人の人種差別や、今ではすっかり見なくなりましたが部落査閲なんかを思い起こさせます。

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このように、結構社会的な話もあるのですが、最終的には貧乏だったり差別されている人も、努力してこれから頑張る的に、未来に希望を抱く話で終わることが多かったです。ただ逆に、結局救われないまま死んじゃいました…なんて話もあるので、読んでいてもどっちに転ぶか最後までわかりませんでした。

 

漫画版ロードムービー

前述もしたように、銀河鉄道999は完全にロードムービーですね。これは名前からもわかるように、映画の定番ジャンルなので、アニメに言って良いのかわかりませんが、ストーリーは完全にそれです。

 

ロードムービー(road movie)は、映画のジャンルである。旅の途中で起こるさまざまなでき事が、映画の物語となっている。演劇では歌舞伎や浄瑠璃における「道行」(みちゆき)、文学における東海道中膝栗毛などの「旅行記」「紀行」「旅行記」「道中記」にあたる。

 

銀河鉄道999に乗った鉄郎とメーテル。その道中立ち寄る星でのでき事が物語のメイン。完全にロードムービーですよね。映画のロードムービーはまったりしていて結構つまらない物もあるのですが、銀河鉄道999は突拍子もない星の連続飽きませんでした。

 

ロードムービーと言えど、ただだらだら旅を続けるわけではなく、1話ごとに駅に止まり星に降り、その独特な星での物語が展開していくので、きちんと区切りがあるのでわかりやすいです。映画のロードムービーの場合、ずーっと話が繋がったまま2時間行くので、ともすればだれてしまいます。このようなことはなく、1話ごとに物語はキチッと切り替わります。

 

銀河鉄道999事故、事件一覧

銀河鉄道運行会社は完璧で、その最先端の列車が999と物語中何度も言われているのですが、何回も事故や事件が起こっている気が…。読んでいて、「また事故かよ…」と何度思った事か。気になってしまったので、作中何度、そしてどういう事故や事件が999を襲ったのかまとめてみました。ちなみに、アニメ版と漫画版は途中まで一緒なのですが、アニメの方が先に終わってしまったため、その先は漫画でしか読めない話がたくさんあります。要は漫画版の方が話数が多いです。なので、トラブルの数もアニメ版とは全く違います。また、私の手持ちが文庫版のため、巻数も文庫版に沿った物となりますのでご了承ください。

 

サブタイトル 詳細
1 大盗賊アンタレス 大盗賊アンタレスにトレインジャックされる
2 枯れ葉の墓標 枯れ葉の星のプラズマで999号が狂う
化石の戦士 列車妨害に遭う
好奇心という名の星 好奇心という星は無理矢理999号を停車させる
重力の底の墓場 999号が脱線する
3 海賊船クィーン・エメラルダス エメラルダスのアンドロイドに999号が襲われる
4 次元航海惑星 無限空間軌道が破壊され脱線する
停時空間のかじられ星 空間軌道が消滅したため脱線
5 幽霊世界のフィラメント 銀の谷で幽霊に乗車されて緊急停止
卑怯者の長老帝国 列車がバラバラになる
6 C62の大反乱 機関車だけがどこかへ行ってしまい動けなくなる
フィメールの思い出 フィメールの操作で脱線事故
ワルキューレの空間騎行 ワルキューレにトレインジャックされる
7 亡霊トンネル 亡霊トンネルに住むイローゼに999号が囚われる
透明海のアルテミス 透明海のアルテミスに突っ込んで動きが取れなくなる
8 宇宙僧ダイルーズ 宇宙僧ダイルーズの鳴らす鐘の音で999号が壊れる
大暗黒星雲アフリカ ゴーストホッパーに遊星キリマンジャロに不時着させられる
水の国シャイアン 強制着陸させられる
9 ヤーヤーボールの小さな世界 妨害工作でヤーヤーボールの小さな世界に停車させられる
10 アンドロメダ千夜一夜 攻撃されてアリババに墜落する
幽霊駅13号 予定にない幽霊駅13号に停車させられる
マカロニグラタンの崩壊 デンドロビュウム兄弟が爆発して客車1両吹っ飛ぶ
メーテルの旅 未来の999号と交錯して事故を起こす
サルガッソーの底なし沼 宇宙の底なし沼に999号が落ちて身動きが取れなくなる
11 マグネット 星のマグネットに吸い寄せられて墜落する
12 メカニックの弟子 ボルガニック教授に鉄喰虫に影響され墜落

 

調べてみるとやはり999号の事件や事故は多いですね。完璧、最新のシステムで、事故なんて起こるはずがないと言われていたのですが…。合計26回の事故や事件がありました。

 

気になるところ

最後に使用してみて気になったところを挙げていきます。

 

アニメに比べると1エピソードがが淡泊

漫画版で思った事の1つに、1話1話が淡泊だなということです。アニメの場合、30分じっくり1話を消化するのですが、漫画版は通常の単行本では1話で終わったり、3話続いたり、1エピソードの長さが違うので、短い物だと本当に2,3分で読み終わってしまいました。先に漫画版の方を読んでいれば違和感はなかったのでしょうが、じっくり同じ時間で描いていたアニメ版の方を先に見てしまったため、漫画版は意外と淡泊だなと…。

 

また、アニメは例えば会話と会話に間が上手く表現できたり、無言のシーンでもきちんとその無言の時間を描けるのですが、漫画の場合は吹き出しのないコマはすぐに流してしまいますからね。この辺りのアニメは間も上手かったんだなと感じました。

 

総評

すっかり過去に読んだ記憶は失っており、特にアニメではやっていない終盤の話は完全に忘れていました。後半はほぼ新作を読むような気持ちで読むことができました。適当な長さで1つのエピソードが終わるロードムービーなので、手軽に読むことができました。

 

寓話的なアニメや漫画、映画は、説教臭くなることもあるのですが、銀河鉄道999はきちんとエンタメになっており、やはり今読んでも面白かったです。

 

こんな人にお勧め

  • ロードムービーが好きな人

 

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