漫画とは違う結末「僕だけがいない街」レビュー 3/5 (2)

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あらすじ

売れない漫画家・藤沼悟は、「再上映(リバイバル)」と呼んでいる特殊能力を持っていた。その能力は、直後に起こる「悪いこと(事件・事故等)」の原因が取り除かれるまで、その直前の場面に何度もタイムスリップしてしまうというものだった。自分の意思とは関係なく発動する上に、能力が発動した結果「マイナスだったことがプラマイ0になる(悪いことが発生しなくなるだけ)、もしくは自分にとってマイナスになる(未然に防ごうとした結果、自分が労力を使う)」というこの能力に不満を持ちながら、悟はピザ屋のアルバイトをこなす日々を過ごしていた。

 

ある日、ピザの配達中に交通事故をめぐるリバイバルを経験した悟は、事故の被害は減らせたが自身は負傷し、二日間入院することになる。これを機会に、ピザ屋で一緒にアルバイトをしていた愛梨と親しくなり、また事故の知らせを受けて上京した母親・佐知子とアパートで暮らし始めることになる。

 

後日、佐知子との買い物中にリバイバルが発生、このとき子連れの男の挙動に注目した佐知子は誘拐を未然に防いだことを確信し、同時に1988年に北海道で起きた誘拐殺人事件の真犯人と同一犯であることにも気付いた。佐知子は、以前「テレビ石狩」の報道部アナウンサーであり、洞察力が高かったのだ。しかし、真犯人も気づかれたことを察知し、正体を伝えられる前に佐知子を殺害、死体の発見者である悟を犯人に仕立て上げる。悟は死体を発見後、リバイバルで殺害を阻止できないかと試みるが失敗。さらに強く念じたところ、それまで経験したことがない長期間のタイムリープが発生し、1988年にいることに気づく。 2006年で母親を殺害した犯人と1988年の連続誘拐殺人事件が同一人物であると確信した悟は、2つの時代を往復しながら真犯人に立ち向かっていく。

 

長所と短所

  • ○練られたストーリー展開
  • ○バタフライ・エフェクトが上手い
  • ○登場人物に無駄が無い
  • △終盤にワクワク感がない
  • △原作漫画と結末が違う
  • ×犯人のスケールダウン

 

はじめに

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先日、原作漫画の僕だけがいない街を読み終わりました。そして余りにも面白かったのですぐにアニメの方を見たのですが、今回はそのレビューを書いていきたいと思います。

 

原作漫画とアニメの結末は違うとは聞いていたのである程度覚悟はできていましたが、違うのは概ね第11話後半から第12話のラストシーン直前までですね。第11話の前半まではほぼ原作漫画準拠の話となっており、そちらの感想は原作漫画のレビューをご一読いただければ、それがそのまま私の感想ととなります。

 

 

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原作漫画がある場合、それとアニメを過剰に比べるのは原作厨と言われ、一部からは忌み嫌われる存在となってしまうのですが…。その辺のスタンスについても後ほど。

 

原作厨は駄目なこと?

漫画を原作にしたアニメが始まると必ずと行って良いほどこの論争が出てきますね…。

 

ニコニコ大百科には次のようにあります。

 

原作にこだわり過ぎるあまり、他媒体・派生物・二次創作での展開に対し否定的な感情を持ち、その場の空気を弁えず批判・ネタバレ・暴言に走る者の蔑称。

 

概ね合っていると思います。ただ、最近は原作の方をアニメより愛する人全てを原作厨で一括りにする風潮もあるようで、それはさすがに違うのではないかと感じます。

 

原作が好きかアニメが好きかは人それぞれなので、どちらか一方の方を好きで、どちらか一方の方を認めないのを○○厨と付けるのはただのレッテル貼りです。そして前述の引用にもあるように、原作を好きで相手に迷惑を掛けることのみが原作厨だと考えます。ただ話の中で原作とここが違うよね、ここは変えないで欲しかったよねと言うのは原作厨にあらずでしょう。

 

人気で完成された作品であればあるほど、アニメ化したときに「あの完成された物を超えられるのか?」と比べられる物。そして大抵はそれを超えることは困難です。必然的に原作を知っている人からすると『駄目な部分』を書かざるを得ないわけです。

 

ちなみに、私はめぞん一刻のアニメと漫画の全話レビューをこのブログにも書いていますが、どちらが好きかと言われれば原作漫画です。その全話レビューの中で原作漫画との比較もたびたびしてきました。しかし、だからと言ってアニメは嫌いか、アニメは駄作と思っているのかと問われれば全力で否定します。アニメはアニメで素晴らしいんです。

 

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素晴らしいと言っても100点満点でない限り、なにかしら減点理由はあります。それが原作の良かったところの改変中心になるのは、原作付きアニメをやる場合には宿命なんです。勿論、憎らしいとまで行ってしまえば論外ですが、その比較も含めて楽しんでいる人がほとんどではないでしょうか。

 

繰り返しになりますが、比較で誰かに迷惑を掛けてはいけませんし、アニメ好きな人を否定するようなことを書いてもNGだと思います。原作を好きな人もいればアニメを好きな人もいるでしょうからね。

 

乱筆乱文で話が散らかってしまいましたが、何が言いたいのかと言うと、つまりは『原作厨の範囲を絞って欲しい』と言うことです。穏やかに原作との比較や違い、こうして欲しかったと書くだけで原作厨のレッテルを貼られることが珍しくありません。

 

原作漫画との違い

お話自体の感想については以前書いた原作漫画の記事で書いているので、ここからは原作漫画との違いを中心に感想を書いていきたいと思います。

 

悟の逃げ方が違う
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これは第11話、および第12話の話ではなく第1話の話。悟が母親殺しの犯人にされそうになって逃げるシーンが改変されていました。

 

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原作漫画では、部屋から隠れている犯人を見付けて追い掛けたところを大家に目撃され、それを『犯人を追い掛ける』ではなく、『犯行現場から逃げる』と受け取られてしまい、悟が容疑者になってしまいました。一方、アニメはと言うと、母親の死体の前で狼狽する悟を夕ご飯のお裾分けに来た大家に見られ犯人と思われると言うもの。

 

これは別にどちらでも良いのですが何故変えたんでしょうね。前述しためぞん一刻でも、こんな感じの何故変えたのかよく分からない微妙な改編が至る所にありました。時にはセリフの一部が、時にはちょっとしたことの成り行きが。素朴な疑問として何故こう言う細かいところを変えたのかと言うのは制作者にその意図を聞いてみたいです。理由無く適当に変えたわけでもないでしょうから…。

 

今回変えた理由として想像できるのは、犯人との追いかけっこの素早いアクションシーンを入れるのが面倒(制作時間の節約)だったか、漫画の8巻をアニメの12話に収めなければならないので、時間の短縮を狙ったのか…と言うところでしょうか。

 

中西彩のキャラデザインが違う

これは単純な話で、第2の被害者である中西彩の見た目が変わっていました。これはアニメで動かしづらい(面倒くさい)髪型とかもあるので仕方がないですかね。または美里と髪型のツインテールが被っていることが理由かも知れません。

 

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私は原作漫画のツインテールの方が可愛いと思いましたが…。

 

賢也が有能な理由
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小学生時代の仲間で1人だけ異質な人がいますよね。そう、賢也です。もしかしたら賢也も悟と同じようにタイムリープしてきたのかと思わせるほど頭が良く、冷静で物事をよく見ていて大人びています。何故賢也がここまで大人びているのかにはきちんとした理由があるのですが、アニメではその背景を全てカットしてしまいました。

 

具体的に書くと賢也の父は弁護士で、冤罪事件と信じて疑わない裁判で負けてしまい、その雪辱を父に代わってはらすため、人一番勉強して弁護士になることをこの頃からハッキリ目指していたので、他の子供たちより1つ上の大人の階段にいたんです。ところが、アニメではこの背景を全てカットしてしまったので、賢也は単なる大人びた不思議な子となってしまいました。

 

愛梨の存在感が薄い

ここからは11話後半以降の改変についてです。

 

やはりここはどうしても気になります。原作漫画を読んでいる人は、おそらく10人中9人は気になるところではないでしょうか。アニメを見ていて最初に驚いた改変でもありました。

 

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パパラッチが15年の植物状態から目覚めた悟と、同じ病院で闘病生活に励む9歳の久美が並んで話しているところを、中身は小学生の大人だからロ○コンなんだと報道しようと相談しているところに現れ追い払ったのが…八代でした。これは原作漫画だと愛梨でした。そして、それを見た悟が失っていた記憶を取り戻していく重要な出会いだったのですが…。

 

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八代が現れてパパラッチからカメラを取り上げていたのにはビックリしてしまいました。ここから最終回のラストシーン直前まで、ほとんどアニメオリジナルの展開となります。

 

加代が戻ってこない
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原作漫画では加代が祖母の家に引き取られた後、小学校は残り1年ですし本人の希望もあり、悟たちの学校に戻ってくるのですが、アニメでは加代は戻って来ず、母親から引き離された時点が別れとなってしまいました。その後の加代の役割は重要ではなく、美里と和解しようとすることくらいだったのですが、『その後も確実に無事だったこと』がわかって良かったんですけどね。

 

久美の出番大幅減

同じ病院で闘病生活を送る新キャラの久美も、愛梨と同じくアニメで一気に出番が少なくなってしまいました。

 

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後述しますが、本来久美は八代との最終決戦で重要な役割…と言うか人質になるのですが、八代が愛梨に変わって悟の前に登場してしまったことにより、久美の役割は8割方なくなってしまいました。本来はもっともっと出番があったんですけどね。

 

最終決戦の花火大会がない

ここは誰々の存在感が薄いとか言う抽象的な話ではなく、丸々1巻分くらいのエピソードがカットされてしまうと言うことが…。全8巻中の1巻丸々ですからね。原作漫画の最終巻である8巻は、愛梨との1度目の再会と、最終決戦の花火大会のエピソードが主だったのですが、この8巻の9割がカットされてしまいました。前述もしたように愛梨の登場シーンもカットされてしまったため、8巻で生かされたのはラストシーンで愛梨と再会するシーンくらいです。これはかなり大胆。

 

ただ、これはこうなるよな…との予感はありました。11話の前半まで丁寧にやり過ぎていたんです。もう少し具体的に書くと、小学生編の加代とのエピソードに力も時間も使いすぎ、単純に時間(話数)が足りなくなったものと思われます。この8巻の大幅なカット以外に、第6巻で語られていた八代の子供時代のエピソードも全カットですし、前述した賢也の背景も全カットです。基本的に第11話前半までは原作漫画準拠なのですが、カットしたエピソードを数えると、おそらく丸々2巻分くらいになるかと思います。

 

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加代のエピソードは大事なので、ここを丁寧にじっくり時間を掛けてやってくれたのは有り難いのですが、その影響で重要なエピソードを丸々カットしたり、大幅な改編をせざるを得なくなったのでは、賛否両論あって仕方がないと思います。

 

また、この花火大会は本当に重要で、八代がいかに完璧な犯罪者であるか、強敵であるのかががわかるエピソードでもありました。八代は児童を誘拐して殺害しても別の犯人を周到に用意し、警察の捜査を煙に巻いてしまいます。これだけの犯罪を完全に遂行する完璧な犯罪者なのですが、アニメの悟と八代の最終決戦では小悪党のようになってしまいました。

 

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悟の記憶が戻っていてその場で暴れられるかも知れないのにのこのこ現れ、突然連れ出して屋上から突き落とす。原作漫画を読んでいる人は、この八代のスケールダウン感が一番納得いかなかったのではないでしょうか。

 

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そして悟が講じる対策も適当で、屋上から落ちるところに落下用クッションを置くというもの。何故屋上に連れ出されることを何日も前に予想できたのか…。それに車椅子ごと落とされたら、落下用クッションがあったとしても大怪我をする可能性は大いにあると思うのですが…。この悟と八代の最終決戦のしょぼさばかりはいかんともしがたいと感じました。

 

人物の背景描写が薄い

ここまで原作漫画とアニメ代表的で大きな違いを挙げてきましたが、特に勿体ないと思ったのは、やはり『その人物がどうしてそうなったのか』を描いているエピソードのカットで、このおかげでその人物の大きさがスケールダウンしてしまっていたり、単なる不思議な奴となってしまいました。

 

賢也が何故大人びているのかの背景。八代が何故連続殺人鬼になったのかの背景。この辺りの重要な登場人物の背景を丸々カットしてしまったのは残念でした。

 

アニメはアニメで良い
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お話自体のレビューは以前記事にしているので、原作漫画との違いを中心に書いてきました。そのフォローと言うわけでもないのですが、本心からアニメはアニメで良いできだったと思いますし好きです。特に絵柄は万人受けするように見やすくなっていたのは良かったです。原作漫画の絵はちょっと癖がありますからね。また、動いて喋るぶっきらぼうな加代が可愛い…。

 

原作厨と言われるのが嫌で、エクスキューズとして「アニメはアニメで良い」と書いているわけではなく本心からそう思います。それは何故か。アニメのよくやったところを少し挙げていきたいと思います

 

12話でよくまとめた

僕だけがいない街の原作漫画は内容が濃く、引き延ばしや無駄な話が全くと言って良いほどありません。また、セリフやシーンに意味があり、のちの伏線となるようなことも至る所に散りばめられています。その原作漫画8巻をアニメの全12話に収めるのはかなり困難だったと思います。と言うか、普通に考えると無理です。しかし、このアニメではなんとかかんとか収めきりました。

 

アニメの最終回放送日が3月25日で、原作漫画の最終回が雑誌に掲載されたのがその21日前の3月4日でした。ハッキリ言って無茶苦茶なスケジュールです。これが日常系のアニメだったり、コメディ、ギャグなら終わり方のハードルも随分下がるのですが、僕だけがいない街は明らかな謎があり、その『真相を求める』話ですからね。ただ、このような話を完結前の連載中にアニメ化するのは正直無理があると思います。

 

…と、アニメほ褒めるつもりの項目で方向性がおかしくなってしまいましたが、本当にアニメは遂行不可能ないわゆるミッション・インポッシブルなことをやり遂げたんです。これは素直に凄いと思います。

 

なんとか最後にも整合性を保った

そして、12話になんとか収めきったこと以外にもう1つ感心したことがあります。11話の後半からは完全にアニメオリジナルなのですが、それでも取り敢えずそれまでの登場人物のキャラや物事の伏線に整合性を取ったことです。

 

八代の犯罪者としてのスケールダウン感など、原作漫画を読んでいる者としては残念な部分もあるのですが、それでもある程度整満足できるほどには整合性が取れていたと思います。

 

例えば久美の存在。久美の出番は8割方カットされたと前述しましたが、これは一歩間違うと久美の存在意義がなくなるところでした。ところが八代が久美に筋弛緩剤を注入する対象にしたことで、なんとか久美の存在意義は保たれました。これがなければそれこそ久美の存在意義はゼロに近くなっていました。

 

そして肝心の八代についてですが、犯罪者としてスケールダウンしてしまった感は否めないのですが、八代の犯罪の鉄則である『変わりの犯人を用意する』との部分は、アニメオリジナルでもきちんと拾われていて、久美を殺す犯人が悟であり、そして悟は久美を殺した責任を取って自殺との設定にしていました。つまり、今回用意した身代わりの犯人は悟だったんです。

 

どう考えても原作漫画を全て消化するにはアニメ12話では足りないので、終盤はどうしても原作漫画のストーリーをそのまま採用することはできませんでした。しかしながら、残り僅かな時間でなんとか原作漫画のキャラ設定や八代の犯罪法則をきちんと踏襲しつつ終わらせたことには感心しました。

 

総評

最近は放送するアニメの本数が多いので、未完の漫画だったり、まだ3,4巻しか出ていない漫画のアニメ化も珍しいことではありません。アニメ放送のスタイルも変わってきていて、分割放送形式だったり、キリの良いところまでアニメ化し、間をだいぶ開けての2期なんてこともあります。とは言っても、さすがにサスペンスものなどのストーリー性が重要なもので原作が未完のもののアニメ化はやはり厳しいと感じました。

 

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僕だけがいない街は、アニメの最終回放送日から21前に原作漫画が完結したので、ギリギリ最後どうなるかはアニメに生かせはしたものの綱渡りであったことに違いはありません。

 

アニメと漫画でどちらがお勧めかと言われれば、両方を連続して見た結果、やはり原作漫画の方をお勧めします。カットされた話が多すぎますし、八代の完璧な犯罪者のスケール感、愛梨とのエピソード等、改編されるには勿体ないエピソードが漫画にはあるのでどうしてもそうなってしまいます。ただ、アニメはアニメで良かったので、できるなら2つとも見ることをお勧めします。

 

こんな人にお勧め

  • タイムトラベル、タイムリープ物が好きな人
  • 人生やり直し物が好きな人
  • シリアスな話が好きな人
  • バタフライ・エフェクトが好きな人

 

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