「シュタインズ・ゲート ゼロ」レビュー ~終盤の盛り上がりは無印を越えた~ 5/5 (1)

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今回レビューするのは、アニメの『シュタインズ・ゲート ゼロ』です。

 

それでは早速レビューを書いていきたいと思います。

 

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ちなみに、未読の人が知らない方が良いネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。

 

あらすじ

2010年11月 β世界線――― 主人公・岡部倫太郎が数々の苦難、悲哀を乗り越えた果てに 「彼女」を救うことをあきらめてしまった世界線。失意の底にある岡部倫太郎。 彼を心配する仲間たち。 救われなかった「彼女」はどうなったのか? 新たなキャラクターを迎えて描かれる「ゼロ」の物語。

 

長所と短所

  • △全体的に話が暗い
  • ×前振りが長い
  • ◎補完作品としては完璧
  • ◎終盤の盛り上がりは無印を越えた
  • ◎曲の入れ方が素晴らしいので盛り上がる
  • ◎原作の補完で原作を超えた
  • ◎ 無印で敵だった萌郁とブラウンが味方になる熱い展開
  • △無印をかなりのレベルで理解してないと話が分からない
  • ×原作で描かれていた部分をカットしていて一部意味不明なところがある

 

感想

△全体的に話が暗い

つい先日、シュタインズ・ゲート ゼロのアニメを3周目見終わりました。それくらいはまったのですが、原作であるゲームはやっていませんでした。何故かと言うと、紅莉栖を救うことを諦めた世界なので、話が暗いことは分かっていましたし、終わり方も無印と繋がるのでわかっていたからです。なので、アニメも期待していなかったんです。

 

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確かに全体の話は暗いです。主人公のオカリンが終始鬱状態ですからね。所々その『暗さ』を中和するため、無理に女性キャラの萌える話を持ってきてはいるのですが、それでもやっぱり全体としては暗いです。

 

詳しくは後述しますが、紅莉栖やタイムマシンを作ることを諦めたオカリンが16話くらいまで続くので、そこまでに視聴をやめてしまった人が多いかもしれません。この話全体の暗さは想像通りでした。

 

×前振りが長い

無印の前作『STEINS;GATE』も盛り上がるまでの前振りが長かったです。具体的に書くと、よく考えもせず安易に過去にDメールを何通も送った結果、秋葉原の街そのものが激変してしまった9話までが前振りでした。ここで事の重大さにオカリンが気付き、そこから怒濤のように伏線を回収していきました。そして、このシュタインズ・ゲート ゼロは、オカリンが紅莉栖を救うこと、そしてタイムマシンを作ることを諦めた16話までが前振りで、その後考えを改め、再びシュタインズ・ゲートを目指す17話からが本編です。

 

  • STEINS;GATEは9話までが前振りである
  • シュタインズ・ゲート ゼロは16話までが前振りである

 

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つまり、正直なところシュタインズ・ゲート ゼロは16話までは盛り上がりに欠けるんです。以前、無印の記事でも書きましたが、基本的に無印をお勧めする文言としては、「9話まで我慢して見ればその後物凄く面白くなる」でした。と言うことは、今回だと「16話まで我慢して見ればその後物凄く面白くなる」になってしまいます。我慢という表現は正しいのかどうかわかりませんが前振りが長いんです。

 

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無印もシュタインズ・ゲート ゼロも、この『前振り段階』で振り落とされる視聴者がかなりいると思います。その後は本当に面白いんですけどね…。この前振りは伏線を散りばめ、その後回収するために必須ではあるのですが、なんとなく見ていた視聴者を振り落としてしまうかもしれないネックにもなっています。

 

今回のシュタインズ・ゲート ゼロの場合、無印を見た方がほとんどだと思うので、STEINS;GATE独特の前振りの長さ、その後の回収の面白さという特徴はよく分かっていると思うので、前振り段階で振り落とされる方は少ないとは思いますが、もしシュタインズ・ゲート ゼロから見ている方がいるとしたら、なにが前振りなのか、どこが伏線っぽいのかすらわからないと思うので、16話の前振りは相当厳しいでしょう。

 

◎補完作品としては完璧

シュタインズ・ゲート ゼロ無印の23話βからの続きになります。無印で紅莉栖を救えたのが正式な23話で、その後最終回の24話に繋がります。しかし、今回は23話βからの続きで、紅莉栖を救うことを諦めたところからの続きです。時系列で並べると下記のようになります。

 

  • 無印22話まで→無印23話β→シュタインズ・ゲート ゼロ無印24話

 

MXだったかで無印を『再放送』していたときになんとなく見ていたのですが、なんとそれは厳密には再放送ではなく、23話で紅莉栖を救えなかったとの終わり方でした。そしてこの放送は23話で完結して驚きました。このときはただそういう世界の話があって、それが「2025年からDメールを送ってきたオカリンと繋がるんだなあ」くらいにしか思っていませんでした。ところが、この続きをガッツリ作り、果ては2クールのアニメにするとは想像もできませんでした。23話βを作った時点で、シュタインズ・ゲート ゼロの構想はあったんですかね。だとしたら凄いの一言です。

 

シュタインズ・ゲート ゼロは当然無印の補完作品であり、タイトルのゼロが示すように、無印最終話の前日譚です。どうやって無印の23話から24話に繋がったのか、未来のオカリンはどのような人生を経て執念オカリンになったのか…。これが描かれています。

 

大抵このようなゼロとタイトルが付くような前日譚は、無印と比べてかなり質が落ちるのですが、シュタインズ・ゲート ゼロは違いました。STEINS;GATE特有の伏線と回収が凄まじく、シュタインズ・ゲート ゼロと無印の繋がり方も凄く、これを見終わった後は無印シュタインズ・ゲート ゼロで1本の作品だと思えるでしょう。

 

ここまで前作と新作がリンクして繋がったのは、過去にバック・トゥ・ザ・フューチャーしか私は記憶にありません。バック・トゥ・ザ・フューチャーもSTEINS;GATEと同じく、1作目が完結した時点で続編は考えられていませんでした。しかし、人気が爆発したため後付けで続編を作ったのですが、後付け作品とは思えないくらい、話の繋がり方が完璧で感嘆しか出てきませんでした。大袈裟と言われるかもしれませんが、私はこのバック・トゥ・ザ・フューチャー並にSTEINS;GATEは無印とシュタインズ・ゲート ゼロで繋がったと感じました。後付けでこれだけ細かい部分まで辻褄を合わせて作るなんて凄いとしか言い様がありません。

 

 

◎終盤の盛り上がりは無印を越えた

16話までが前振りで、その後が本編と前述しましたが、その終盤の本編がとんでもなく面白かったです。正直、それまでの流れで最後まで行っていたら、「やっぱり後付けの前日譚はいまいちだな」で終わっていたと思います。しかし、17話から23話までの7話がそれはもうとんでもない展開で、この終盤だけで評価が一変しました。世間の評判を見ると、やはり無印の方が面白かったとの意見が多いですが、私はこの終盤の盛り上がりだけで無印を超えたと思っています。

 

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では終盤のなにが凄いって、伏線と回収、そしてその密度なんです。タイムリープものなので、伏線と回収は面白さの肝なのは当たり前ですが、シュタインズ・ゲート ゼロの特徴として、2種類の伏線と回収があることが挙げられます。これはバック・トゥ・ザ・フューチャーでもそうでした。

 

  1. シュタインズ・ゲート ゼロ作品内での伏線と回収
  2. シュタインズ・ゲート ゼロ無印を繋げる伏線と回収

 

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(1)についてはそのままですが、シュタインズ・ゲート ゼロの中で出てきた伏線を、シュタインズ・ゲート ゼロの中で回収する。一般的な伏線と回収です。具体的に例を挙げると、かがりのウーパ、神様の声などです。きちんとシュタインズ・ゲート ゼロで出てきた謎を回収します。…が、一部原作からカットした部分があるので、意味不明な部分もあります。詳しくは後述します。

 

ここから次のオレンジ色のマーカーまで若干のネタバレが含まれます。オチに関する重大なことではありませんし、終盤の話でもありませんが、未視聴の方は注意してください。

 

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そしてなんと言っても鳥肌が立つのが(2)のシュタインズ・ゲート ゼロ無印を繋げる伏線と回収です。終盤ではありませんが具体的に例を挙げると、2011年の紅莉栖が2010年の紅莉栖のDメールを送るのですが、これが無印の22話とリンクしています。無印の22話とは、紅莉栖が自分が生きているα世界線を諦め、まゆりが生きているβ世界線に行きないさいとオカリンを説得する話です。そして、オカリンがエンターキーを押す瞬間、紅莉栖が入って来てなにかを言って…。しかし、エンターキーを押してしまった後なのでそれを聞くには間に合わず、紅莉栖の死んでいるβ世界線へ移動…という話でしたね。

 

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そして、このとき紅莉栖が一瞬早く部屋に入り、オカリンに気持ちを伝えられたため、エンターキーを押せずに紅莉栖が生き、まゆりが死んでしまったα世界線に止まった世界線もあるのですが、それを防ぐため2011年の紅莉栖は2010年の紅莉栖に「ハイルナ」とのDメールを送信。それを見たために数秒部屋に入るのが遅れた紅莉栖が無印の22話の紅莉栖なんです。

 

この繋がり方は無印を知っている方はビックリして感動したと思います。ここまで細かくガッツリ無印と繋がるのか…と。このようなシュタインズ・ゲート ゼロと無印が終盤は怒濤のように襲ってきます。

 

ここまででネタバレは終了です。

 

シュタインズ・ゲート ゼロの伏線と回収。シュタインズ・ゲート ゼロ無印の繋がり方。これが次々の絶え間なく終盤は襲ってくるんです。その密度、満足感たるや言葉では言い表せない気持ち良さがあります。この終盤7話のためにここまでの16話があったんだなと思えます。

 

このような丁寧で長い前振りと、その後怒濤のように襲ってくる伏線と回収の気持ち良さはSTEINS;GATEの特徴なのですが、その濃さはとんでもないことになっていました。

 

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シュタインズ・ゲート ゼロを見る前の私のように、「STEINS;GATEはあれで完結しているし、シュタインズ・ゲート ゼロみたいな前日譚はどうせ蛇足だろう?」と思っている方は、是非シュタインズ・ゲート ゼロを見てください。STEINS;GATEはシュタインズ・ゲート ゼロと合わせて全47話(23話β含めると全48話)で1つの作品だと思えるはずです。

 

◎曲の入れ方が素晴らしいので盛り上がる

無印でも23話の『スカイクラッドの観測者』が劇中最後に入り盛り上がりました。しかし、劇中にOPとED以外の歌が流れたのは無印だとここくらいでしたよね。しかし、今回のシュタインズ・ゲート ゼロは、劇中下記のような歌が入りました。

 

  • Amadeusというシステムの中に紅莉栖のAIがあることが明かされたときの『Amadeus』(第1話)
  • 紅莉栖が自分が死んでいるβ世界線へオカリンを送り出した『ライア』(第8話)
  • まゆりがタイムマシンで過去に飛び立つも破壊された『ライア』(第18話)
  • 2025年でオカリンが敵から逃げるときに掛かる『スカイクラッドの観測者』(第21話)
  • アマデウスが消えたときに掛かる『Amadeus』(第22話)
  • まゆりがビンタしたときに掛かる無印OPの『Hacking to the Gate』(第23話)
  • 最終話最後に掛かる歌詞が付いた『GATE OF STEINER』(第23話)

 

ちなみに、無印だと劇中に歌が入ったのは下記の通りになります。

 

  • オカリンが紅莉栖を諦めようとしたところでまゆりにビンタされ、未来の自分からメールが来たところの『スカイクラッドの観測者』(第23話)
  • 最終話特殊エンディングの『Another Heaven』(第24話)

 

このように、無印だと劇中歌は2回だったのに対し、シュタインズ・ゲート ゼロではなんと7回に激増しました。盛り上がるところにピッタリの歌を流されるとやはり非常にテンションが上がりますね。

 

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特に印象的だったのは、第23話で2011年のまゆりが2010年のまゆりを説得し、オカリンにビンタを食らわせたシーンで掛かる『Hacking to the Gate』です。シュタインズ・ゲート ゼロの目的やコンセプトが『無印と繋げること』ですからね。まゆりがビンタした瞬間に、無印とシュタインズ・ゲート ゼロが繋がったんです。そしてこのときに掛かる曲が無印の『Hacking to the Gate』ですよ。心の中で「繋がったー」とガッツポーズしました。ここは無茶苦茶盛り上がります。

 

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このリストには入っていませんが、13話でかがりが監禁され、洗脳されていた場所に行ったときの特殊EDも良かったですし、今回は無印以上に曲が掛かるタイミング、盛り上がり、そして特殊EDに力を入れていたように思います。昨今のアニメは頻繁に特殊EDや特殊OPになりますからね。2011年の無印を放送していたときとは少しアニメのスタイルも変わってきたってことも理由でしょう。

 

◎原作の補完で原作を超えた

シュタインズ・ゲート ゼロはアニメの前にゲームが出ています。これがいわゆる『原作』です。ゲームはアニメ視聴後にやりました。そちらも一長一短あるのですが、個人的にはアニメは原作を超えたと思っています。

 

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何故アニメは原作を超えたかをまとめると下記のような理由になります。

 

  • 原作で描かれなかった、もしくは描写が薄かった部分をアニメオリジナルで補完している
  • 曲が掛かるタイミングや選曲が素晴らしいので盛り上がる

 

逆に原作にはアニメで描かれていない部分があるので、どちらが良いかは好みの問題ではあるんですけどね。ただ、下記のように原作からかなりの部分がアニメで追加されました。

 

  1. ダルと阿万音由季が付き合う経緯が描かれている
  2. オカリンと萌郁がかがりが監禁、洗脳されていた場所を訪れるシーンがある
  3. 2036年の未来の様子やラボ面の容姿が詳細に描かれている
  4. 2025年に敵に包囲されたところから逃げるオカリンの様子が描かれている
  5. 2036年から2011年まで3000回のタイムリープの様子が描かれている
  6. 2011年のまゆりが2010年のまゆりにビンタするようアドバイスするシーンが描かれている(既発のドラマCDの映像化)
  7. 最終話の23話Cパート(エンディングテロップ後)に、原作では描かれなかった最終オペレーションの『その後』が描かれている

 

1つ1つ見ていきましょう。

 

ここから次のオレンジ色のマーカーまで思いっきりネタバレが含まれます。オチに関する重大なこともあるので、未視聴の方は注意してください。

 

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(1)は原作ではちょろっとダルと阿万音由季がデートしている描写があるだけでした。その後どうやって付き合ったのかはわかりません。しかし、アニメではほぼ丸々1話を使い、ダルがどうやって阿万音由季をデートに誘い、どのように告白したのかまで描かれているんです。まあ、これは本筋とは関係ないので、いらないと言えばいらないんですけどね。ただ、それでもこの2人はのちに鈴羽を産む重要な役割があるので、どのようにくっついたのかがわかったのは良かったです。

 

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(2)のかがりが監禁されていた場所をオカリンと萌郁が訪れるのも完全にアニメオリジナルです。これはダルと阿万音由季のデートシーンが原作で少し出てきたのとは違い、これっぽっちも原作では描かれていませんでした。失踪中の12年間どこにいたのかは原作でも謎だったので、このように整合性を取ってくれたことは良かったです。

 

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(3)の2036年の世界ですが、原作ではラボメンの容姿はダル以外一切出てきませんでした。主人公達が年を取った未来の場合、わざと容姿を描かないのはよくあります。主人公達、特に女性陣が年を取った様子を描くとガッカリしちゃうことがありますからね。それと同じく、原作ではフェイリスやるか、真帆の顔なんて全く出てきませんでした。しかし、アニメは全ラボメンの顔がハッキリと描かれました。とは言っても、全員2011年当時と全く容姿が変わっていないのですが…。これはこれで違和感が…。ただ、年を取ったフェイリスや真帆は見たくないわけで…。難しいところです。

 

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勿論容姿だけではなく、2036年でラボメンが戦う姿も描かれていました。原作では2036年や2025年の描写はかなり薄く、物語もあまりなかったのですが、この未来の様子はアニメで相当膨らませていました。

 

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(4)の2025年ですが、オカリンはタイムリープで2011年に戻る途中、どうしても2025年は避けて通れません。しかし、2025年はオカリンが実質死亡した年で、敵に包囲押されている状態から逃げ出さなければ、そこから過去へタイムリープできません。で、この部分をしっかりアニメでやってくれました。ここも原作では全く描写されていませんでした。個人的にはアニメオリジナルのパートではここが1番嬉しかったですし盛り上がりました。なにせここで『スカイクラッドの観測者』が流れますからね。無茶苦茶盛り上がりますし格好良いです。

 

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(5)は(3)と(4)と被りますが、2036年から2011年に3000回タイムリープするという過酷なミッションが原作ではあっさりと終わってしまっていました。それが(3)と(4)のように、ポイントポイントで一旦止まってきちんと描写されたんですね。これは本当に良かったです。原作だと2036年や2025年の描写はかなり薄いんです。

 

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(6)は過去にドラマCDとして発売されたシーンの映像化です。なので、これも原作にはありませんでした。2011年のまゆりが2010年のまゆりを説得するシーンがアニメになって良かったです。寧ろ原作では何故こんな重要なシーンを入れなかったのかと…。それくらい重要なシーンでした。

 

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(7)は最後の最後に最終オペレーションがどうなったのかの結果の描写です。原作ではこれはありませんでした。オカリンが2011年に行方不明になったまゆりと鈴羽の2人をタイムマシンに乗って探しに行ったところで終了でした。その後どうなったのかはユーザーの想像にお任せしますというよくある終わり方でした。

 

ところがアニメではその後どうなったかがエンディングテロップ後に追加されたんです。これは鳥肌が立ちました。私は終わったらきちんと決着を付けて終わって欲しいので、基本的に『視聴者のご想像にお任せしますエンド』はあまり好きではありません。なのでこの完全決着のエンディングは最高でした。ただ、この後オカリン、まゆり、鈴羽はどうなったの?と言う疑問は残りますが…。この辺りは後述します。

 

ここまででネタバレは終了です。

 

このように、ゲームが原作のアニメではあるのですが、アニメにない描写がかなり追加されています。また、原作では分かりづらかった時間軸も整理されて1本になっているのでわかりやすいです。ゲームはやったからアニメは見なくて良いやと思っている方もいると思いますが、別物と言って良いくらい追加と整理がされているので、是非アニメも見てください。

 

△無印をかなりのレベルで理解してないと話が分からない
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シュタインズ・ゲート ゼロはどんなにできが良くてもあくまで無印の補完アニメです。なので、当然無印を知っていないと100%楽しめません。更に言えばシュタインズ・ゲート ゼロと無印は非常に細かいところまでリンクしています。シュタインズ・ゲート ゼロの何気ないアイテムを見て、「あれは無印ではこうだったな」と思うシーンもいっぱいです。なので、無印をなんとなく見ていたとか、見たけど忘れちゃったなんて方は、もう1度無印を見てから、このシュタインズ・ゲート ゼロを見ることをお勧めします。

 

前述した紅莉栖のDメールのエピソードだけではなく、細かいアイテム、パーツ、シーンが驚くほど無印とリンクするので、終盤なんてたまりません。まさに頭の中でバラバラだったパズルのピースがどっと一気にはまる感覚を味わえます。

 

◎ 無印で敵だった萌郁とブラウンが味方になる熱い展開

ここからはオチに関する致命的なことではありませんが、少しネタバレが含まれているのでご注意ください。

 

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終盤熱かったのはなんと言っても無印で敵だった萌郁とブラウンが仲間になることです。無印で萌郁は本当に厄介でしたね…。しかし、今回利害が一致し、萌郁もブラウンも味方になりました。萌郁は無印でひたすら不幸だったので、ここでラボメンナンバー呼びして味方にする激アツの展開に震えました。

 

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ブラウンとも交渉して利害の一致を提示して完全に味方に…。熱すぎました。

 

ここまででネタバレは終了です。

 

×原作で描かれていた部分をカットしていて一部意味不明なところがある

原作からアニメになり、追加されたことが多いと前述しましたが、逆にカットされた部分もあります。主に原作からカットされた部分は下記になります。

 

  1. レスキネン教授がタイムマシンにこだわる大局的な目的
  2. レイエス教授の正体、目的、所属
  3. フブキの脳炎の正体

 

これも1つ1つ見ていきましょう。

 

ここから次のオレンジ色のマーカーまでゲームのネタバレが含まれます。オチに関する重大なことではありませんが、ゲーム未プレイの方は注意してください。

 

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(1)に関しては一応アニメでタイムマシンを欲しい理由は語られていました。『科学者なら未知の技術を研究したいのは当然』、『科学は慈善事業ではない(金銭の授受)』の2点でした。しかし、原作ではもう1つ、レスキネン教授の大局的観点からの展望があったんです。それは、核兵器と同じで、タイムマシンも大国同士で『持ち合う』ことにより抑止力になる。それで平和が維持されるとの持論です。

 

そして、もう1つ興味深いことがあります。後述しますが新型脳炎の件です。この件でもレスキネン教授は研究に絡んでいます。何故かと言うと、タイムマシンを使って過去改編されても誰も気付けない。しかし、リーディングシュタイナーを持つ者がいればそれがわかる。だからリーディングシュタイナーの片鱗である新型脳炎を研究している…ってことなんです。このレスキネン教授のタイムマシンを欲しがる大局的観点はアニメでは一切語られていませんでしたね。まあ、ストーリー本筋には関係ないのですが、アニメだとレスキネン教授はただのマッドサイエンティスト、狂人になっていましたが、原作だと未来の展望も持っていたんです。

 

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(2)はアニメで最も割を食ったキャラであるレイエス教授の正体、所属、目的です。アニメだとレイエス教授はたまにふらっと出てきて殺されるとの、意味の分からないキャラクターになってしまいました。

 

原作だと、レイエス教授はダーパの一員と明かされます。目的は今よりも良い待遇…要はお金目的です。ちなみに、レスキネン教授はストラトフォーの一員で、ダーパとは対立関係にあります。

 

国防高等研究計画局(ダーパ)
アメリカ国防高等研究計画局(アメリカこくぼうこうとうけんきゅうけいかくきょく、Defense Advanced Research Projects Agency)は、軍隊使用のための新技術開発および研究を行うアメリカ国防総省の機関である。日本語では防衛高等研究計画局、国防高等研究事業局、国防高等研究計画庁などとも表記される。略称はダーパ(DARPA)。ARPAの時期にインターネットの原型であるARPANET・全地球測位システムのGPSを開発したことで知られている。

 

ストラトフォー
ストラトフォー(英 Stratfor)は、アメリカ合衆国の民間シンクタンクかつ出版社。 正式名は「ストラテジック・フォーカスティング有限会社」(Strategic Forecasting, Inc.)。インターネット・サイトで情報配信を行う。 1996年にテキサス州オースティンにてジョージ・フリードマン(George Friedman、現会長)によって設立された。

 

とは言え、原作でもレイエス教授はレスキネン教授と違って単なる悪者ですし、救いようがない結末を迎えますけどね…。

 

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(3)は無印からチラホラ出てきたシュタインズゲートと脳炎の関係について、シュタインズ・ゲート ゼロで遂に明かされるのか…と思ったら放り投げてしまいました。ここはシュタインズ・ゲート ゼロで唯一残念なところです。ここは頑張ってやって欲しかったです。

 

原作ではどうだったかと言うと、フブキやその他の人が掛かる新型脳炎は、案の定シュタインズゲートの弱い能力の発動でした。極限られた人はこの能力を持っており、わずかに他の世界線の記憶をハッキリした夢のような形で覚えているとのものでした。ちなみに、日本で十数人この能力者がいたそうです。そして、この能力を完璧に持っているのが世界で唯一オカリンのリーディングシュタイナーです。

 

フブキは原作だとこの能力を利用しようとするレスキネン教示に頭を弄られ、廃人になってしまったとの話も出てきました。ここまではともかく、アニメではただオカリンと同じように倒れた、検査入院した…で終わりですからね。原作をやっていない場合、おそらく1番意味が分からない回収しない伏線になってしまったと思います。

 

ここまででネタバレは終了です。

 

アニメとゲームでどちらが上かは好みにもよるので一概には言えませんが、個人的にはアニメの方が上だと思いますし好きです。アニメの方で追加されたシーンと、アニメでカットされたシーンを比較すると、単純にアニメで追加されたシーンの加点が、アニメでカットされたシーンの減点を上回るからです。

 

とにかく原作で足りなかった部分の『補完』が素晴らしいです。しかも原作とクオリティが変わらないどころか非常に高いクオリティでアニメ化されています。大抵原作があるもののアニメオリジナルエピソードってつまらないんですけどね…。シュタインズ・ゲート ゼロはアニメオリジナルエピソードのクオリティが物凄く高かったです。

 

オマケ:シュタインズ・ゲート ゼロの解釈

先日、AT-Xの無印一挙放送を実況していたら理解しておられない方がいたので、少し無印およびシュタインズ・ゲート ゼロの設定や伏線、謎について書いておきます。

 

STEINS;GATEの世界線は常に1本である

これは物凄く基本です。タイムトラベルものの場合、世界観、設定は大きく分けて2つあります。それは『単独世界説』か『並行世界説』のどちらを採用しているかです。

 

単独世界説はいくらタイムトラベルで世界を改変しても、世界は1つだけであり、他に平行した世界やパラレルワールドはないというもの。代表的な例を挙げるとバック・トゥ・ザ・フューチャーなどです。ドクが黒板でわかりやすく説明していましたし、マーティの恋人ジェニファーを危険地帯に放置しても、世界が変わるから問題ないと言っていました。

 

そして、並行世界説はタイムトラベルをして改変する度に新しい可能性の世界、パラレルワールドができたり、そもそも世界は無限に並行に存在しているんだとの考え方です。今サラリーマンの自分がいるけど、他の並行世界にはプロスポーツ選手になっている自分が存在する世界があって…なんて感じです。代表的な例で言うとドラゴンボールなどです。トランクスがいくら過去の世界を変えても、未来の自分の世界は変わりませんでしたね。

 

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で、STEINS;GATEは…単独世界説です。世界線は1本しかありません。これは先日、実況で誤解している方がいて驚きました。ちなみに、wikiから引用すると下記のようになります。

 

過去から未来までを含んだ1通り世界の歴史。様々な可能性が重ね合わせになっており完全に決定論的ではないが、別の過程を経ても収束と呼ばれる現象により場合によっては奇跡的な偶然が起こるなどして決まった結果に行き着く。他の歴史の可能性も可能性世界線として存在していて、なんらかの事態で歴史が変わるようになればそれに沿った別の世界線の世界へと再構成される。そのため、可能性が存在しているだけでパラレルワールドは存在せず、世界は常に1つのみとされる。

 

どうもその方は、『世界線を移動』という言葉と、ジョン・タイターが『世界線は複数ある』と作中言っていたことで、並行世界があると思っていたようです。このような誤解をしている方もいると思うので簡単に解説します。

 

まず『移動』という言葉ですが、移動という言葉が使われたからと言って、並行世界であるとは限りませんよね。移動元が消えても移動って言葉使いますよね。

 

例えば池にある置き石。この置き石AからBに飛び移りました。そして置き石Aはその後沈んじゃいました。でも移動したって言いますし全然おかしくないですよね。この移動って言葉はただそれだけの話です。移動という言葉にこだわって並行世界があるというのは無理がありすぎます。

 

そして、ジョン・タイターが作中言っていた、「世界線は複数ある」ですが、これは正確に言うと「世界線“の可能性”は複数ある」です。あくまで可能性の話であって、同時に複数存在しているということではありません。だからこそシュタインズゲートを『目指せ』と言っているわけなんです。

 

新たな世界線ができたら元の世界線は消える…というか新しい世界線に『収束』されます。まとまっちゃいます。まゆりが死んだ世界線になったら、まゆりが生きていた世界線は、まゆりが死んだ世界線に『収束』して消滅します。だからこそ今この世界線が貴重ですし、世界線の移動は慎重に行わなければならないんです。

 

ボーッと適当に見ていたら誤解するのも仕方がないかなとも思います。元々タイムトラベル物は設定や世界観がややこしいですからね。ただ、STEINS;GATEをきちんと見ていれば、至る所に世界は1つしかないとかなり露骨に言っているのでわかるはずです。世界は1つしかないからこそ、オカリンは苦悩し、紅莉栖のいない世界線に変えるときにあそこまで悩んだんです。並行世界があるならあそこまで悩みません。これSTEINS;GATEがなぜこんなにシリアスなのかの肝要な部分です。

 

レイエス教授は何者?

前述もしましたが、アニメでは原作からエピソードがカットされて意味が分からなくなったレイエス教授。ダーパの一員、もしくはその手先です。よりよい待遇を求めてダーパに『転職』しようと、その手土産で紅莉栖の遺産であるノートPCを狙っています。

 

フブキは何者?新型脳炎って何?

こちらもアニメでは原作から大幅にエピソードを削られて意味不明でした。新型脳炎とは、オカリンの持つ別の世界線の記憶を維持するリーディングシュタイナーの弱い能力です。原作ではこの新型脳炎を巡る研究やネタばらしがありました。

 

阿万音由季の右手の怪我はなに?

これも原作では阿万音由季の偽物が敵である世界線があったのでその名残ですね。アニメでこれを出す意味はなかったのですが…。

 

ラジ館屋上でかがりが死ぬのは収束ではないのか?

屋上で起きるでき事で収束(この世界線によって決まっていること)するでき事は、タイムマシンが撃たれる、レスキネン教授が現れるなどいくつかあるようですが、あれは『かがりが死ぬこと』が収束ではなく、『ライダースーツの女が死ぬこと』が収束だったみたいです。

 

なので、ライダースの中身はかがりだったりレイエス教授だったりしたんです。中身が誰かによらず、ライダースーツの女は必ず死んでいましたよね。

 

最後はどうなったの?

ここからオチに関する重要なネタバレがあるので、未視聴の方は注意してください。

 

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最後のオペレーションスクルドで、2011年に行方不明になったまゆりと鈴羽をオカリンが探しに行き、無事見つけ出したところでアニメは終わりました。凄く感動するのですが、冷静になってみると、「あの後はどうなったの?」と思ったはず。私もそう思いました。その後は公式で語られているわけではないので、あくまで個人個人の想像になるのですが、おそらくそれぞれの時代に戻った時点で存在は消えます…。というかシュタインズゲートの自分と融合します。勿論、オカリンと違ってまゆりと鈴羽はリーディングシュタイナーを持っていないので、この顛末の記憶はありませんけどね。

 

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まゆりは飛び立った2011年。鈴羽も飛び立った2036年。そしてオカリンも飛び立った2025年。もしくは全員が世界線大分岐の年である2010年になった時点で存在が融合するか。この辺りは解釈によって別れると思いますが、前述したようにSTEINS;GATEは世界が1つですからね。

 

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何故融合するのかというと、無印でオカリンと鈴羽が世界を騙して紅莉栖を生きたまま死んだと、3週間前のオカリンに錯覚させた後、鈴羽もタイムマシンも消えましたよね。あれが根拠です。シュタインズゲートに行くと存在が1つになるんです。

 

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アニメだと省かれましたが、原作だとまゆりと鈴羽たちのタイムマシンの燃料を積んでいると言っていたので、その燃料を渡してそれぞれ戻るのでしょう。この3人の存在が消えるというか融合するのは悲しいような…。しかし、元々シュタインズゲートを目指してたわけですし、死ぬこととは違うのでこれで良いのでしょう。

 

ここまででネタバレは終了です。

 

総評

シュタインズ・ゲート ゼロがこんなに面白いとは予想外でした。世間の評判を調べると、やはりオリジナルである無印の方が評判が良いみたいです。「シュタインズ・ゲート ゼロを見たけどやっぱり無印の方が面白いな」なんて意見が多数派みたいです。しかし、私は逆張りではなく純粋な感想として、無印よりシュタインズ・ゲート ゼロが面白かったです。とにかく点と点が線になる、パズルのピースが一気にはまる終盤がとんでもなく面白くて、終盤7話だけで私の中では無印を超えました。

 

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ちなみに、個人的にお気に入りのシーンを1枚。女性2人に守られるオカリンの勝利ポーズ。変な構図のはずなのに、これまで見てきた方は分かると思いますが震えます。

 

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STEINS;GATEのなにが凄いって、挙げたらキリがありませんが、ユニークな点としては、最初「こいつ痛々しいなあ(苦笑)」だったのが、最後には「その痛々しいセリフかっけー」になっちゃうことなんです。前述のシーンもまさにそれで、本来痛々しいセリフに女性2人に守って貰う情けない構図なのに格好良すぎて震えるんです。痛々しい言動がそのうち格好良くなる。これもSTEINS;GATEの特徴です。今回のシュタインズ・ゲート ゼロは無印以上にこれが詰まっていました。

 

そして今、4周目視聴中だったりします。

 

こんな人にお勧め

  • STEINS;GATEが好きな人
  • タイムトラベル、タイムリープものが好きな人
  • 伏線と回収が好きな人
  • 感動して泣きたい人
  • 原作ゲームで足りなかった部分を見たい人
  • 原作ゲームをわかりやすく再構成した話を見たい人

 

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