慣れない小説も最高に面白かった「ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり/柳内たくみ」レビュー 評価はまだありません

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あらすじ

20XX年―白昼の東京銀座に突如「異世界への門」が現れた。「門」からなだれ込んできた「異世界」の軍勢と怪異達によって、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した銀座。この非常事態に、日本陸自はただちに門の向こう側『特地』へと偵察に乗り出す。第3偵察隊の指揮を任されたオタク自衛官の伊丹耀司二等陸尉は、異世界帝国軍の攻勢を交わしながら、地形や政体の視察に尽力する。しかしあるとき、巨大な災龍に襲われる村人たちを助けたことで、エルフや魔導師、亜神ら異世界の美少女達と奇妙な交流を持つことになる。その一方、「門」外では『特地』の潤沢な資源に目を付けた米・中・露諸外国が、野心剥き出しに日本への外交圧力を開始する。複雑に交錯する「門」内外の思惑―二つの世界を繋げる「門」を舞台に、かつてないスケールの超エンタメファンタジーが、今、幕を開ける。

 

長所と短所

  • ○軍や戦争の描写がリアル
  • ○アニメや漫画の続きを見られる
  • △作者の思想がキャラクターを介して強く出る
  • △政治色が強い

 

 

はじめに

今回レビューするのは、柳内たくみさんの小説『ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり』です。

 

それでは早速レビューを書いていきたいと思います。

 

慣れない小説を読むことを決意

ゲートのアニメに填まったのは以前の記事で書きましたが、そのアニメの終わりがどうにも中途半端で、まだ原作小説の半分ほどまでしか消化していないと知り、どうしても続きを知りたくなり、読み慣れない小説に手を出しました。

 

 

どれくらい読み慣れないかと言うと、以前読んだ小説はもう遙か昔、中学の読書感想文で書いたときに嫌々読んだ、村上春樹さん著の『ノルウェイの森』以来です。

 

あとはかすかな小説を読んだ記憶を辿ると、宗田理さん著の『ぼくらの七日間戦争』あたりか…。本当にこれくらいしか小説を読んだことはありませんでした。

 

では、何故そこまで縁の無い小説を読むに至ったのかというと、ひとえに『続きが知りたい!』という欲求一点です。これが、コミカライズされていて、小説の話を全て消化している、もしくは近いうちに全てやり終えるとの状況なら小説は読んでいません。本当に読み慣れていないので、きちんと読める自信が無いですから…。しかし、コミックの方もアニメと進展具合が変わらず、原作小説の半分行くかどうかの所。勿論、前述したようにアニメも途中で終わっているので全くの未完です。こちらはコミックよりも続きが作られる希望は薄く、また、やったとしてもコミックが進んでからでしょうから、早くて3,4年後か…。そうなると、世間はゲートのことを忘れてしまいそうですし、アニメ化はまたハードルが高くなります。

 

色々考えてみても、アニメの第2期(第3期)をやる可能性は非常に低く、やったとしても早くて3,4年後。コミックの方も月刊連載なので、ゲートを消化しきるまでやはり3,4年か…。となるとそれまで待てないんです。大抵は自分がこのように続きが知りたい状態になっても、時間と供にその意欲は失われ、なし崩し的に「まあいっか」となっていたのですが、このゲートは続きが見たい欲求がいつまでたっても収まりませんでした。

 

結論から先に書くと、本編の全5巻読み切りました。最高に面白かったです。こんな小説に不慣れな私でも読めたので、ゲートを好きな方で、まだ小説を読んでいない人にはお勧めしたいです。

 

と、言うことで、今回はこのゲートの小説版のレビューを書いていきたいと思います。

 

各巻のあらすじ

まずは軽く各巻のあらすじと感想を書いていきたいと思います。

 

第1巻 接触編

20XX年―白昼の東京銀座に突如「異世界への門」が現れた。「門」からなだれ込んできた「異世界」の軍勢と怪異達によって、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した銀座。この非常事態に、日本陸自はただちに門の向こう側『特地』へと偵察に乗り出す。第3偵察隊の指揮を任されたオタク自衛官の伊丹耀司二等陸尉は、異世界帝国軍の攻勢を交わしながら、地形や政体の視察に尽力する。しかしあるとき、巨大な災龍に襲われる村人たちを助けたことで、エルフや魔導師、亜神ら異世界の美少女達と奇妙な交流を持つことになる。その一方、「門」外では『特地』の潤沢な資源に目を付けた米・中・露諸外国が、野心剥き出しに日本への外交圧力を開始する。複雑に交錯する「門」内外の思惑―二つの世界を繋げる「門」を舞台に、かつてないスケールの超エンタメファンタジーが、今、幕を開ける。

 

この第1巻は当然全てアニメで消化しました。アニメを見ていて面倒なら飛ばしても良いかも知れません。

 

第2巻  炎龍編

圧倒的な軍事力を後ろ盾に、『特地』を統治する帝国との講和に乗り出した日本政府。その一方、冴えないオタク自衛官伊丹耀司ら特地偵察隊は、異世界住人たちとの絆をますます深めていく。そんな中、心を病んだエルフのテュカを救うべく、伊丹は異世界で猛威を振るう巨大炎龍の撃退を決意する。やがて近代兵器を駆使した壮絶な戦いが幕を開けた―。

 

アニメの分割2クールの後半では、この炎龍編を中心に物語が展開され、それに後述する第3巻のゾルザルが帝都を脱出するまでが描かれました。

 

第3巻 動乱編

帝国で起こった大政変を憂慮した日本政府は、帝都に空挺団を派遣し、大規模な特殊軍事作戦を決行する。上空を無数の落下傘が舞い、瞬く間に帝都を制圧する自衛隊。一方、冴えないオタク自衛官伊丹耀司と異世界美少女達も、皇城で孤立する皇女ピニャの救出に乗り出す!かつてないスケールの超エンタメファンタジー!驚天動地の第三章、開幕。

 

アニメはこの第3巻の動乱編の終わりまでやりました。分割2クールの後半は炎龍編と銘打っている物の、炎龍編は半分くらいで終わり、残り半分くらいはこの動乱編を付け足していたんです。

 

ゾルザルが帝都を脱出し反抗を決意。そして内乱になる予感をさせたところで終わりですからね。物凄く中途半端でモヤモヤ感が凄かったです。とは言え、アニメはアニメで尺や話数の制限もあるでしょうし致し方無いとは思いますが、ここまで面白い物の続きがあるのに自分は知らないと言う事実が、どうしても頭の片隅に出てしまうようになりました。

 

アニメは無理矢理終わらせるため、オリジナルストーリーとしてピニャを牢獄に閉じ込め、そこから救い出し、最終的には皇太女となっていましたが、小説では少し違っていていました。この辺は無理矢理完結とさせるために仕方が無かったんでしょうね。この巻の途中からはアニメでは見たことのない話だったのでワクワクして読みふけってしまいました。

 

第4巻 総撃編

20XX年。東京銀座に突如現れた「異世界への門」。門の向こう側『特地』には、手付かずの潤沢な資源、そして、栄華を極める巨大帝国の存在があった。特地で無差別ゲリラを繰り返すゾルザル軍に対し、帝国正統政府との講和を締結した日本政府は、これを契機に自衛隊を総動員して殲滅作戦に乗り出す。一方、世界各地では『門』を原因とする天変地異が観測されはじめる。にわかに巻き起こる『門』閉鎖論。事態打開の鍵を握るのは、唯一『門』を開く能力を手にした魔導師レレイだけだった―国内外のあらゆる思惑から『門』を死守する日本政府。そして、レレイを護衛する異世界美少女達と伊丹。果たして『門』はどうなってしまうのか―?陰謀巡る第4章、開幕。

 

この第4巻の総撃編からはアニメでは全くやっていなかったストーリーでした。

 

ゾルザルの反攻、テューレ裏切りのシナリオ、きな臭い国際情勢、中国の工作、門と世界の異変、そしてゾルザル軍との全面対決へ…。

 

この巻では色々なことが起こるのですが、特に中心となっているのが、異世界とゲートが繋がっていることで、世界に歪みが発生し、大きな危機が迫っていること。その調査や議論が行われました。この辺りのゲートをどうすべきかのそれぞれの思惑は非常に面白く、やはりここはアニメで見たかったなあと思ってしまいました。

 

アルヌスの人々は、自衛隊がいるからこそ潤っている街なので、自衛隊に撤退されたら困る、物資が向こうから来なくなったら困る、俺たちの生活はどうなるんだ。イタリカや帝国正当政府は、自衛隊が居てこそゾルザルを討伐できるので行かないでくれ、行くなら討伐してからにしてくれ。そして、こちらの世界の中国は、抱えきれない国民を異世界に移民させたい、そのためには手段選ばず、などなど、それぞれの思惑がぶつかり合い、絡み合い、この先どうなるのか非常に楽しく読めました。

 

この辺り、ゲートでは一部政治的ことや思想が強いので賛否両論出ることがあるのですが、私はこのような複雑な思惑の絡み合いは非常に面白かったです。それぞれの思惑を丁寧に描写し、説明されるので、ハッキリと誰が何をしたいのか、何を思っているのかわかるんです。この辺り非常に描写や話の進め方が上手いと感じました。

 

第5巻 冥門編

20××年。東京銀座に突如現れた「異世界への門」。門の向こう側『特地』には、手付かずの潤沢な資源、そして、栄華を極める巨大帝国の存在があった。『門』の影響による天災を懸念し、『門』封鎖を決断した日本政府。ところが、諸外国陣営は『門』の管理権を巡り日本に圧力をかけ、『門』封鎖を阻止すべく銀座を占拠する。時を同じくして、『門』開閉の鍵を握るレレイが何者かに攫われてしまう。一方で、特地では、ゾルザル軍掃討まで後一歩のところまで迫った日本自衛隊に対し、まさかの撤退命令が下る。それは特地の治安維持を見棄て、直ちに帰国準備せよという非情な指令であった。それぞれの隊員達が下した決断は?『門』の行方は?そして、伊丹と異世界美少女達の運命は―?超スケールのエンタメファンタジー、ついに完結!狂瀾怒涛の最終章、開幕。

 

そして遂に最終巻…。ネタバレしないようにできるだけ書くと、門を閉じるか閉じないかの問題に決着が付き、ゾルザル軍との戦争に決着が付き、伊丹の身の振り方、異世界の女性たちとの関係にも決着が…ついたようなついていないような。一応その辺は小綺麗にまとめたなと言った感じでした。

 

ハッキリ決着を付けず、でもなんとなく物語のクライマックスを作り、チャンチャンと言うオチ。終わったような、それでいてこの後も物語が新たに始まりそうな、そんな良くある終わり方でした。良くある終わり方と言っても貶しているわけではなく、良い終わり方だったと思います。惜しむらくは伊丹たち以外の『その後』を見たかったこと。まだ外伝が5巻まだあるので、そちらで語られているのかも知れません。そちらは現在鋭意読書中です。

 

ページ数が多い!

まずびっくりしたのがページ数が多いことでした。全ての巻で500ページを超えています。小説に疎いことは散々書いてきましたが、これってライトノベルでは普通なんですかね…。普通じゃないような…。

 

小説に慣れていない私は、最初の1巻を読むのに1週間以上掛かってしまいました。定期的に新しい漫画などを発掘して読んで、レビューをこのブログに書いているのですが、ここ最近それができなかったのは、実はこのゲートに掛かりきりだったからなんです。さすがに読んでいるうちに慣れて、段々と読むペースは上がっていきましたが、それでも500~600ページ×5巻ですからね。読み切るまでに凄く時間が掛かってしまいました。

 

このようなページ数の多い読み物(活字の雑誌とか)の場合、段々と集中力が切れて飽きてしまい、同じようなシーンが続く場合、1行飛ばしたり2行飛ばしたりとザッと読んでしまう場合も少なくないのですが、今回のこのゲートに限ってはそのようなことはなく、丁寧に読むことができたので、内容が面白いのは勿論、文章もしっかりしていたんだと思います。

 

アニメでキャラクターの絵や声、動きを知っていたことが大きかった

小説に慣れていないため、スムーズに入り込めるか心配だったのですが、全く問題無くゲートの世界に入り込めました。理由は簡単で、アニメでそれぞれのキャラの容姿や声、仕草を把握していたからです。小説に慣れていないので、突然「ピニャが~」と言われても、そのピニャの容姿や声や仕草を思い浮かべる想像力は無かったと思います。しかし、アニメを先行して見ていたおかげで、ほぼ全ての登場人物のキャラクターをビジュアルで知っていたので、アニメのあのキャラクターを頭で想像し、動かすことができました。また、異世界なので町並みや風景を文字だけで思い浮かべることも、小説に不慣れな私には困難だったと思いますが、こちらも同じ理由でクリアできました。

 

小説に慣れていない場合、アニメから小説って流れで行くのもありですね。と言うか、この流れは小説に不慣れな私にはベストだった気がします。また、この流れでここまで不慣れな小説をスムーズに読めるようになるなら、今後も原作が小説のアニメを見て面白いと思ったら、続きを見るために小説を読むのもありだとわかったので収穫です。

 

作者の思想が強い

ゲートは物凄く面白いのですが、1つだけ気になる点があります。それは、作者の思想がキャラクターを通して結構ハードに語られることです。例えばマスコミへの嫌悪感、中国の悪辣さなどはその最たる例で、多分これはそのままアニメにはできないでしょうね。それくらいストレートに、過激にマスコミ批判、中国批判をしていました。中国なんて悪者そのものでしたからね。本当はエンタメなのだから、ハリウッド映画のように、ロシアや中国の名前そのままに悪役にして良いと思うのですが、日本はそれができないんですよね。そこで架空の国名などにして悪役にするのですが、それって個人的には映画を観ていて物凄く冷めてしまうことの1つです。どんなに面白くて集中して見ていても、架空の滑稽な名前が出てきた瞬間、「ああ、これ作り話だったな…」と現実にふと引き戻されてしまうんです。

 

横道に逸れてしまいましたが…。このような作者の政治思想が色濃く出ているので、そこに嫌悪感を示す人がいるかも知れません。個人的にはこのような物は、映画にもメッセージが込められている物が少なくないのでOKだと思うのですが、そんな私でもちょっとこの辺りはクドクド続くことがあり、アクが強いかなと思うこともありました。

 

総評

とにかく、あのアニメの中途半端な終わりの続きを見られただけで大満足です。物語自体も、さすがに元自衛官が書いただけあり、戦闘の描写や武器の使い方も説得力があり、本当に異世界に自衛隊が行ったら…と言う妄想が現実になったような気がしてしまいます。

 

しかし、ゾルザルが暴走して反逆者となり、テューレは自分の身を切ってゾルザルに復讐することを誓ったり、重い話になるだろうなと思っていたキャラクターもおり、どう決着するかと思ったのですが…。やはりこのような戦争物、政治物でさすがに全員が全員ハッピーな終わり方にはなりませんね。切なくて悲しくなるような話もあり、しかしそこもまたきちんと話として整合性がとれているので納得できました。まあそりゃそうなるよな…と。

 

一応、ライトノベルとの位置付けだとは思うのですが、話の内容も戦争と政治がしっかりと語られており、言葉の表現も指揮命令系統がしっかりした自衛隊ですから固い物も多く、それでいて1巻500ページ超なのでかなり読み応えがありました。

 

こんな人にお勧め

  • ゲートのアニメやコミックの続きが気になる人

 

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