今回レビューするのは、めぞん一刻の第17話です。
思うところがあり、今回アニメ全話レビューの大幅な加筆修正に着手します。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
先の展開のネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。
目次
あらすじ
響子さんとこずえちゃんが偶然会い、こずえちゃんの初恋の話を聞くと初恋の相手が五代君にそっくりだとか。同時に自分が高校の時に惣一郎さんに恋をしていたことも思い出します。五代君にこずえちゃんの初恋のイメージを壊さないように言う響子さん。五代君はこの前まで自分にヤキモチをやいていたのにと悶々とするのですが…。
みどころ
- こずえちゃんの天然ぶり
- 高校時代の響子さん
- 響子さんの初恋の様子
初登場人物
- なし
感想
五代君の初恋の様子
サブタイトル前、アニオリですが五代君の大学出の様子から高校時代の回想となり、五代君の初恋の様子が描かれていました。雨の日はろくなことがないとかで、雨の日に初恋相手が他の男性と仲良く相合い傘をしていることを目撃したようです。つまり、告白もしていないけど失恋したってことです。この初恋相手はこずえちゃんと似ています。
五代君は小学校入学式で車に水を掛けられたり遠足で転んだりしていて、雨の日に良い思い出はないようです。このときの1シーンでは五代君が通った小学校の名前が出てきていました。『第二山田第学校』とのこと。ただ、これはアニオリなので公式設定ではありません。名前からしても適当ですしね。
このとき水を掛けた車のナンバーを見ると『新潟』となっていました。五代君の実家が新潟だと言うことは、漫画だともっとずっとあとになってからわかることなのですが、この辺りはアニメの強みで、伏線とまでは言えませんが情報の先出しで整合性を取れます。
サブタイトル前のアニオリパートでは坂本も登場。2千円貸しているから返して欲しい、返せないなら代返で…とのこと。坂本は雨の中彼女と消えていきました。アニメの坂本の方が漫画よりも彼女といるシーンが多いです。アニメの坂本は彼女が途切れない印象。
響子さんとこずえちゃんが偶然出会う
サブタイトルからシーンは変わって時計坂商店街。傘を持っていないので雨宿りする響子さん。そこに偶然現れたのはこずえちゃん。傘を持っていたこずえちゃんは響子さんを傘に入れて上げることに…。話題がないのでなにを喋るか悩む響子さんですが、人見知りしないこずえちゃんは自分からどんどん喋り…。
この2人の共通の話題と言えば五代君しかないので必然的にそうなるのですが、こずえちゃんが五代君はどうしているのか訪ねると、五代君の帰宅時間を全て響子さんは把握していました。
- 【日曜】言及されず
- 【月曜】夕方帰宅
- 【火曜】夜8時頃帰宅
- 【水曜】夕方帰宅
- 【木曜】家庭教師のバイトで夜10時頃帰宅
- 【金曜】夜8時頃帰宅
- 【土曜】帰宅時間定まらず
五代君の帰宅時間は漫画と全く同じでした。五代君は毎週木曜日に夜の10時前まで郁子ちゃんの家庭教師をしているようです。しかし、こずえちゃんと徒歩で商店街で出会うなんて、こずえちゃんの家は一刻館から近そうです。
響子さんは管理人なので当たり前。他の住人のことも把握していると言うのですが、実際にはそこまで把握していませんでした。まあ、このときはまだ手の掛かる弟くらいの認識に近かったのかもしれないので、危なっかしくて放っておけなかったのでしょう。
今回の林原めぐみ
今回も林原めぐみさんが登場。今回は響子さんとこずえちゃんが同じ傘に入って帰っているとき、目の前で先生と別れる女子高生3人組の1人でした。今回はセリフにもならないような短いものです。このシーンはアニオリだったのですが、このあと響子さんが自分の高校生の時を回想するので入れたのでしょう。
また、響子さんの回想シーンで出てくる、響子さんと一緒にいた女子高生2人組の茶髪でポニーテールの方も同じく林原めぐみさんでした。こちらはきちんとセリフもあり。漫画にもあったシーンですが、少しアニメでは膨らませていました。
響子さんの部屋にこずえちゃんが上がる
こずえちゃんにスリスリする惣一郎さん。汚れてしまったので一刻館に寄ってもらい、その間に服を洗って乾かします。三鷹さんほどではありませんが、こずえちゃんが一刻館に上がるのも珍しいです。こずえちゃんが一刻館に上がるのはこのエピソードと、アニメではカットされてしまいましたが八神と張り合うエピソード、そして五代君にプロポーズされたと思ったエピソードの3回だけです。
服を乾かしている間、響子さんのスカートを借りて着るのですが、こずえちゃんにはウエストが細くてキツイとのこと。こずえちゃんは思っていることをなんでも口に出してしまう天然なのですが、このシーンでスカートがキツイと口に出さなかったのは女心が現れていて面白いです。スタイルが響子さんより悪いと言うことは冗談でも言いたくなかったのだろうな…と。この辺り作者が女性だからこそかもしれません。男性作者なら口に出して笑いどころにしていたと思います。
初恋相手が五代君にそっくりとは…
部屋で2人きりになって話題に困る響子さん。しかし、こずえちゃんはそんなことは関係なく、自分から勝手に喋り出し、五代君に付き合っている人は他にいるのか聞いてきます。響子さんは付き合っているのはあなただけみたいよと言い、こずえちゃんは喜ぶのですが、結構これってこずえちゃんが五代君に執着する理由を後押ししていますよね…。
どうもこの頃まだ五代君と正式に付き合っているのかどうか、他に付き合っている女性がいるのかどうか揺れている時期だったようで、響子さんが五代君はあなたと付き合ってますと背中を押したことに…。
こずえ「五代さんね、私の初恋の人にそっくりなんですよ」
響子「へ~面白い人だったんですか」
こずえ「素敵な人でした~」
響子「(だって、五代さんにそっくりだなんて…)」
ちなみに、こずえちゃんのこの初恋は中学生のときのようです。アニオリで『時計坂第二中学校』と言っていました。漫画だと初恋の時期は言及されていなかったので、私は勝手に高校時代だと思っていました。何故かと言うと、五代君が初めて付き合ったときの話も高校時代でしたし、響子さんが惣一郎さんと出会って初恋したのも高校時代だったからです。アニメだとこずえちゃんの初恋は中学時代ということになっていました。
このとき、五代君の見方は響子さんは『面白い人』で、こずえちゃんは『初恋の人に似ている素敵な人』だったようです。こずえちゃんがどこで素敵な人と思ったのかはわかりませんが…。
響子さんの初恋の様子
こずえちゃんの初恋話を聞き、響子さんも自分の初恋の様子を思い出します。響子さんの初恋は高校時代で、のちに結婚する惣一郎さん相手だったとのこと。初恋相手と結婚するなんてとこずえちゃんは驚いていました。
のちに八神の時にこの同じ高校が舞台になるのですが、そんなことで話が繋がるとは思いませんでした。このときに八神の話を考えていたかどうかは分かりませんが、このような話の繋がり方はたまりません。
今でこそ響子さんはお姉さん的落ち着いた性格になっていますが、高校の頃は積極的だったようで、雨の日に自分が傘を持っているにもかかわらず、背中に隠してまで一緒の傘で帰ろうとするなど、若さゆえの無謀とも言える積極性が垣間見えて面白いです。最初から『大人の響子さん』なわけないですからね。このように若いときはこんなんでしたという話も面白いです。
ちなみに、響子さんも言っていましたが、惣一郎さんはこのとき正式な先生ではなく講師のバイトでした。なぜ惣一郎さんは講師のバイトなのか…。それはのちに五代君が教育実習に行くときにわかります。これもこのときから考えていた設定なのか気になりますが、やはりこのような細かい繋がり方は嬉しいです。以前の話や設定を忘れてしまう漫画家もいますからね…。
高橋留美子さんは自分が描いた話や設定を事細かく覚えているのか、あとからも見返すのかはわかりませんが、このように自分の話を自分で拾うのは好きです。あとから見れば読者にとっては立派な伏線になり、気付くとニヤッとしますからね。
初恋の思い出
こずえちゃんが帰ったあとの夜に五代君が帰ってきて、こずえちゃんが来ていたことを伝える響子さん。こずえちゃんとはなんでもないと言いたい五代君は、関係ないと言いつつ、響子さんが見えなくなったら共同電話でコソコソこずえちゃんに電話を掛け…。一の瀬さんはこうなることをわかっていたようで、共同電話に一番近い部屋に響子さんを招き入れ、その様子を面白そうにうかがい、響子さんに全部聞かれていました。
翌日、五代君がこずえちゃんに会うと知っていた響子さんは、こずえちゃんが忘れていった傘をついでに返すように頼まれます。それでもこずえちゃんに会わないと誤魔化す五代君。なんで知っているのか聞いたら「管理人ですから」。前半にこずえちゃんに言った言葉「管理人ですから」と全く同じ言葉です。
以前の記事でも書きましたが、めぞん一刻はこのように前とあとで同じ言葉を使うものの、相手や意味が変わる面白さもパターン化されています。今回の場合だと、最初にこずえちゃんに使った「管理人ですから」は、詳しく知りすぎていて疑問に思うこずえちゃんに、管理人だから当然だとの苦しい理由付け。後半の五代君に言った「管理人ですから」は、疑問に思う五代君に、有無を言わせず圧力を掛けるためです。
こずえちゃんには苦笑いしながら「管理人ですから」と言い、五代君には無表情の中に怒りを込めて「管理人ですから」。同じ言葉なのにシチュエーションが違って面白いです。
自分が初恋のひとじゃなくてガッカリする五代君
五代君は響子さんからこずえちゃんの初恋相手に似ているから、イメージを壊さないように言うのですが、それを知った五代君は自分が初恋の相手じゃないのかとガッカリ。五代君は響子さんが好きなのに、こずえちゃんにも好かれたい、嫌われたくないんですよね。浮気こそしないものの、五代君は清廉潔白な主人公ではありません。非常に人間くさいです。キスするチャンスがあればしそうになりますし、こずえちゃんもキープしておきたいんです。
こずえちゃんに響子さんの初恋の話を聞いた五代君は、今の大人しい響子さんがそこまで大胆なことをするのかと驚きます。また、こずえちゃんは五代君に「死なないでね」と。五代君もこんなこと言われたらこずえちゃんを無碍にできないですよね…。
五代君は雨の中、傘も差さずに帰り、響子さんの中にまだ惣一郎さんがいたのか…と思いにふけります。しかし、まだ惣一郎さんが死んでから1年半ですからね…。まだまだいるよな…と。
今回のキーはそれぞれの相合い傘
雨に濡れる五代君を偶然響子さんが見付け、傘に入るように言うのですが、響子さんの今では考えられない初恋の時の積極性や、まだ惣一郎さんのことを思っていることに悶々とし、それを拒否してスタスタ歩いて行ってしまいます。
五代君は結局雨の冷たさに負け(アニメでは車に水を掛けられてくしゃみ)、響子さんの傘に入れてもらいます。「ほらごらんなさい」とお姉さんな響子さん。今回はこの相合い傘がキーになっていました。
今回出てきた相合い傘は以下の4点になります。
- 五代君の初恋相手と男性の相合い傘(アニオリ)
- こずえちゃん→響子さんの相合い傘(雨宿りしていたので親切心)
- 響子さん→惣一郎さん相合い傘(初恋の相手に強引に相合い傘)
- 響子さん→五代君相合い傘(雨に濡れていたので優しさで)
1つ目はアニオリなのであまり深く考えなくて良いのですが、2つ目の響子さん&こずえちゃんは男女ではありませんし、他の恋とは違うのですが、切っ掛けがこの相合い傘でした。
3つ目の響子さん&惣一郎さんは高校時代の響子さんが初恋相手の惣一郎さんに積極的にアタックしてのもの。今の響子さんからは考えられないので、そこに面白みがあります。昔の響子さんはこんなに積極的な子だったのだな…と。
そして4つ目の五代君&響子さんは、2つ目の響子さん&惣一郎さんの相合い傘の状況とは打って変わり、大人の響子さんが五代君にお姉さんの位置からどうぞ…と。高校生の響子さんから随分変わりましたね。このときの響子さんはまだ22歳なので、5年くらいしかたっていないんですけどね。
それぞれの相合い傘でそれぞれ違う想いがあり、違ったシチュエーションです。対比が面白いです。
こずえちゃんが天然でライバルにならないことが確定
今回のエピソードでこずえちゃんが響子さんのライバルにならないことが確定したと思っています。今回のこずえちゃんは天然炸裂です。今回のことでわかったこずえちゃんの性格や傾向は以下のようになります。
- 人見知りしない
- 話題をコロコロ変える
- 初恋の話をずけずけ聞く
- 五代君とのことを全く怪しんでいない
- 対抗心がまるでない
響子さんとこずえちゃんが1対1で話をしたのは、今回と最後の方のラブホテルのエピソードの2回のみです。そして、今回はまだ知り合って間もないので、共通の話題と言えば五代君しかありません。五代君の話をこれだけ正面切ってして、恋の話もして、それでもこずえちゃんは微塵も対抗心も嫉妬も、それどころか疑いもしませんでした。この話題で終始ニコニコ。
この話で響子さんとこずえちゃんの関係性が固まりました。この性格のこずえちゃんでは響子さんの心を動かすようなライバルにはなりようがありません。こずえちゃんのキャラ設定のおかげで、のちに響子さんのライバルとなり、心を動かす八神がどうしても必要になってきます。
もしこずえちゃんのキャラ設定をもう少し変え、恋のライバルになり得る立ち位置にしていたら、めぞん一刻はかなり違う話になったのかもしれません。八神も出てくる必要はありませんからね。
軌道修正しなくて正解
こずえちゃんをやっぱり響子さんのライバルにする選択肢もあったと思います。しかし、めぞん一刻でそれはなく、ずっとライバルになり得ない賑やかしキャラの1人でした。個人的にはこれで良かったと思います。
軌道修正をした場合、こずえちゃんの性格が変わってしまうので、『こんな子だったっけ?』と読者は疑問に思うでしょう。漫画で1度発表した物は取り消せないので、読者は過去の話を読み返せます。すると、『やっぱりキャラ変わったな』となってしまいます。こんな漫画は少なくありません。
これが頻出してしまうと話として破綻してしまいます。その結果作品全体の信頼性と言うか、世界観が崩壊するので、のめり込んで読むことができなくなりかねません。
作者自身もこずえちゃんが最も動かしづらいキャラだったと語っています。こういう女の子の心理が分からないからだそうです。なので、こずえちゃんをフェードアウトして消すこともできたはず。それもしませんでした。
動かしづらいキャラだと作者自身が思っているのに、最後までずっと出し続け、キャラ設定も崩壊しませんでした。
原作漫画では
総評
今回はこずえちゃんの初恋話を切っ掛けに、高校時代の響子さんと今の響子さんの対比が見えて興味深いエピソードでした。『あの響子さんでも女子高生の頃は凄いな~積極的だな~』とのひと笑いなのですが、これがのちの女子高生八神の女子高生って凄いなと言う部分にも繋がります。
響子さんとこずえちゃんの関係も固定したエピソードです。これだけここでこずえちゃんの天然ぶりが描かれてしまうと、この後響子さんの恋のライバルにできるわけがありません。なにせこずえちゃんが響子さんを全く疑っていませんし嫉妬もありません。響子さんもそのことを分かっているので張り合うことがありません。そのため、本来は恋のライバルとして登場させたと思うのですが、単なる…と言うとアレですが賑やかしキャラの一員なので、一刻館住人と立ち位置が変わらないんです。
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