今回レビューするのは、めぞん一刻の第4話です。
思うところがあり、今回アニメ全話レビューの大幅な加筆修正に着手します。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
先の展開のネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。
目次
あらすじ
共通1次試験も終わり、遂に五代君の大学受験がスタート。合格できるか心配する響子さんですが、その心配通り、五代君は受験を切り上げて逃げてきているところに遭遇。お酒を飲んで酔っていた響子さんは、心配なので次はついていくと宣言してしまいます。すっかりそのことは忘れている響子さんですが、約束は約束なので受験について行き、「頑張ってくださいね!」と送り出すのでした。
みどころ
- 五代君の逃げ癖
- 響子さんの必殺技「頑張ってくださいね!」
- 駄目な弟扱いの五代君
初登場人物
- なし
感想
五代君、遂に大学試験
響子さんにも浪人さんと言われ、住人にも浪人を弄られていた五代君ですが、遂に五代君の受験シーズン到来。第1話で響子さんが管理人に就任した時期が10月。第2話が12月のクリスマスパーティー。前回の3話が年が明けて1月の共通1次試験。そして今回、2月に入り大学受験開始です。
なぜこのように時間が飛ぶかというと、漫画全話レビューの方にも何回か書いていますが、雑誌連載時に時間経過をリアルタイムで描いたからです。そして、連載雑誌のビックコミックスピリッツは当初月刊誌でした。そして、めぞん一刻の作中の時間もこの時間経過と同じにしていたため、このようなことになっています。その後、ビックコミックスピリッツは隔週、週刊となり、それにともないめぞん一刻の話の刻み方も細かくなりました。と言うわけで、1話目が10月だったのですが、4話目であっと言う間に2月になりました。
五代君の受験に挑む姿勢はどうやら『下手な鉄砲数打ちゃ当たる』です。毎日のように受験があることが壁の張り紙で分かります。どの大学に行きたいなど明確な目標があるわけではなく、大学ならどこでも良い、大学生になれればそれで良いようです。しかし、当時は受験戦争と言われるほど競争率が激しいので、今のような大学全入時代とは違うので、この感覚は今の人だとわかりづらいのかもしれません。
アニオリではありますが、一の瀬さん、四谷さん、朱美さんは五代君の受験でどこが受かるか賭けをしている様子。朱美さんは全落ちを予想しており、一の瀬さんと四谷さんも本命(受かるところ)がないと悩んでいました。
必殺技「頑張ってくださいね!」の功罪
基本的に響子さんは世話好きのようで、この頃はただの『浪人さん』扱いの五代君のことですら、毎回見送りに出て忘れ物はないか、受験票に間違いはないかなどを確かめています。案の定、このときの五代君は、N大を受験するはずなのにK大の受験票を持って出掛けようとしていました。
響子さんは頭を抱えてため息を付いていましたが、実際に響子さんが色々世話を焼かないと五代君はまともにに受験すらできていません。ところで、響子さんのしゃべり方って現実ではほぼ見ませんよね。「~ですわ」なんて喋る女性を見たことがありません。
もう既に何回か響子さんはやっていますが、五代君に必殺技の「頑張ってくださいね」と声を掛けていました。しかし、漫画だと響子さんの回想で五代君を見送ったことがちょっと出てきただけで、最初のお見送りの時にこれはありませんでした。ただ、五代君が「あれをやってもらわないと落ち着かない」と言っていたので、漫画で描かれていないだけで実際はやってもらっていたのかもしれません。
今はまだこの「頑張ってくださいね」は五代君のエールになり勇気になっているのですが、終盤、五代君が追い詰められていくと、真逆でプレッシャーになってしまうのも面白いところ。頑張ってくださいねの意味や受け取り方が変わってしまうんです。
響子さんは五代君を好き?
一の瀬さんにお尻を触られ、「五代さん!なんてことを!」と怒っていましたが、響子さんはこの時点だと、五代君がそういうことをする人だと思っているということです。ただ、五代君は前々回で響子さんの胸をどさくさに揉んでいますし、前回は気絶している響子さんにキスをしようとしますし、この扱いは仕方がありません。お尻を触る犯人は四谷さんより五代君と思っているんですよね。
のちに五代君は響子さん結婚するのですが、スタート地点の好感度はかなり不味いことになっていた模様。恋愛SLGなら落とすのに超難しいキャラ扱いだったはず。
一の瀬さんは響子さんの部屋を訪れてお見合いを勧めていました。今だと信じられませんが、21歳の響子さんに対して「あんた適齢期だよ」と。昔は今よりずっと結婚が早かったんですよね。
一の瀬「どうして?あんた適齢期だよ、好きな人もいないのかい?」
響子「さあ、いるような」
一の瀬「まだ決心が付いてないってことかい?」
響子「と言うか気持ちの整理がまだ…」
一の瀬「その男どこにいるの?」
響子「すぐ側にいます、いつでも私を愛してくれています、私だって…(言ってしまおうかな惣一郎さんのこと)」
一の瀬「そんなに浪人が好きなのかい…」
響子「な、なんでここで五代さんが出てくるんです?」
一の瀬「話聞いてるとなんとなくぴったりくるじゃない?いつも浪人のこと気にしてるみたいだし」
ここもめぞん一刻らしい会話のすれ違いです。響子さんは亡夫の惣一郎さんのことを考えながら喋っているので、一の瀬さんと噛み合っていません。会話が噛み合っていないのに、噛み合っていないことに本人らが気付かず、話が最後まで進んでしまいます。
遮音性皆無の一刻館
管理人室での響子さんと一の瀬さんの会話を、受験から帰ってきた五代君が玄関で聞き、部屋の前に貼り付いて聞き耳を立てるのですが、玄関まで管理人室の普通の会話が聞こえる遮音性の低さ…。一刻館は誰もがノックもせずにズカズカ入りますし、1階の端っこの部屋の会話が玄関まで聞こえますし、プライベートはなきに等しいです。
この会話で一の瀬さんは五代君を将来性性皆無、上手く転がり込んでも二流大、特技はない、意志が弱い、年下で頼りがないとぼろくそに…。響子さんはそこまで言うことはないと、優しさから反論します。優しくて良い人、なんと言っても男は心とのこと。実はこれって五代君を擁護しているように見えて惣一郎さんのことを言っています。惣一郎さんはこのあとイメージとしてぼんやり出てきますがそんな人でした。逆に言うと五代君は惣一郎さんに似ているということでもあります。
当然これを聞いた五代君は、響子さんが自分を評価してくれた、好きなんだと誤解。玄関の前で小躍りしてしまいます。単に一の瀬さんは言いすぎですよというだけの話なんですけどね。しかも、その五代君の擁護は実際は五代君だけに向けたわけではなく、惣一郎さんから来た男性全般の評価すべきところを一般的に語っただけです。五代君が優しいとの部分は響子さんの五代君に対する評価なんですけどね。
一の瀬さんは管理人室の前にへばりついて聞いていた五代君を注意するのですが、その注意の仕方がまた誤解を生み…。響子さんは大学受験中の五代君に気を使い、愛しているからこそ秘密にしておきたかったと…。めぞん一刻は勘違いすれ違いが多いですが、一の瀬さんは人の話を勝手に曲解し、良かれと思って伝え、その結果余計に誤解を大きくしてしまうことが多いです。
逃げ癖のある五代君
五代君はすっかり響子さんに愛されてると思い舞い上がってしまいます。一方、響子さんはそんな誤解をこれ以上されてはたまらないと、五代君本命の受験日だったのですが、五代君をお見送りすることをやめます。しかし、響子さんはやはり気になるようで、五代君が出て行った直後に管理人室から出てきていました。
その後、時計坂商店街で一の瀬さんと偶然会った響子さんは豆蔵に寄って食事をすることに。この豆蔵はのちにまた出てくるあの豆蔵です。ここには受験で「こりゃあかん」と途中で投げ出してきた五代君がいて鉢合わせしてしまいます。
響子さんがお酒を飲んで酔っ払ってから五代君を見付けたため、逃げ出した五代君を叱責。次の受験には付いていくと言い出します。響子さんはこのあともお酒に酔うことが何回かあるのですが、どうも酔うとお姉さん風を吹かせるようです。
五代君は本命の大学受験を投げ出すという暴挙に出たんですね。1年このために頑張って準備してきたのに…。この五代君の逃げ癖は終盤まで変わりません。私も嫌なことから逃げ出したい気持ちがすぐに出てくるので他人事とは思えません。誰でもそうですよね。嫌なことから逃げたい、現実逃避してしまいたいって気持ち。こんな等身大のところも、視聴者が五代君に感情移入しやすい1つの要因かもしれません。
今回の林原めぐみ
第1話以来だと思いますが、今回久々に林原めぐみさんがモブの声優として登場。お見送りして貰えなかった五代君が、ショックでボーッと電車に乗っているところ、前に座っていた女子高生2人組が「見て見て、典型的な受験生ルック、キヒヒヒ」と笑っていました。絵で見ると結構整った顔をしていますが、五代君は端から見ても冴えないのでしょうね。
この時点での五代君の扱いは『駄目な弟』
響子さんは酔っ払っての放言なので、五代君の受験に付いていくなんて言ったことはすっかり忘れていた様子。しかし、五代君が「言いましたよね、さあ付いてきてください」とでも言ったのでしょう。渋々響子さんが付いてきたようです。
受験会場の大学前では坂本が再登場。漫画だとここが坂本の初登場回でした。五代君と坂本は、漫画でもやはり予備校からの友達だったようです。そして、坂本は「おい、この人誰だよ」と言っていたので、坂本と響子さんの初対面もここです。坂本は五代君の親友で、おそらく結婚のあとも付き合いは続くでしょう。つまり、響子さんともおそらく今後何十年の付き合いになると思われます。
10年後、20年後は良い思い出話で笑い話になるでしょうね。「お前の奥さん受験に付いてきたんだよな」と。
横道にそれましたが、このときは五代君からお願いし、響子さんの必殺技『頑張ってくださいね』をやってもらっていました。その後、受験に向かうもカバンを置き忘れ、響子さんが必死で呼び止めるシーンがあり呆れる響子さん。「駄目な弟を持ったみたいだわ…」と呆れていました。
響子さんの五代君への認識は、最初『浪人さん』でした。名前も覚えられていませんでした。そこから4ヶ月。ランクアップ(?)して『駄目な弟』にジョブチェンジです。ランクアップ…で良いんですよね。ただ、これって『弟』ではなくてその前に『駄目な』と付いているところが味噌ですね。五代君のランクは下記のように上がっていきます。
- 浪人さん
- 駄目な弟
- 五代さん
3番目の五代さんについては、この中でもランクが細分化されるのですが、それはまたの話。
実はこのシーン、漫画とアニメでは少し描写や意図が違います。漫画の場合、最後のコマは響子さんは本当に呆れ怒っている表情でした。しかし、アニメの場合はちょっと笑って『仕方がないわねやれやれ』的な表情で終わりました。
めぞん一刻ファンの間ではよく言われているのですが、漫画の響子さんよりアニメの響子さんの方が性格が柔らかく穏やかになっています。このあとも漫画からの響子さんの性格が改編されたようなシーンがちょくちょく出てくるので、その都度紹介したいと思います。これもその1つでした。
原作漫画では
総評
遂に五代君の大学受験が始まりました。しかし、五代君らしくただ受験するだけなのに一筋縄にはいきません。受験票を間違えそうになる。本命の受験を投げだす。それを見つかって響子さんに怒られる。呆れた響子さんが受験に付いてくる。
今回、ただ五代君が受験するというだけの話です。本来、そこにドラマチックな要素はないはずです。しかし、めぞん一刻は本来なにもないところに物語を生み出すことが非常に上手いです。何もない日常の話なのに、そこに面白い話を生み出す。めぞん一刻はこれも大きな魅力だと思います。
視聴者たちにも当たり前に起きる日常の中に面白い話があるので、自分の生活とシンクロさせやすいです。自分もこんなこと起こるかもしれない、もしくはそんな可能性がある、あったかもしれない。こう思えるだけで世界が楽しくなってくる気がします。
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