今回レビューするのは、北条司さん原作『シティーハンター』の世界に転生してしまうと言うユニークな漫画、錦ソクラさんの『今日からCITY HUNTER』です。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
ちなみに、未読の人が知らない方が良いネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。
目次
あらすじ
青山香、40歳、独身。ある日電車に轢かれて死んだと思ったら、高校生の姿になって大好きな「シティーハンター」の世界に転生してしまう。まわりに頼れる人は誰もおらず、困り果てた香が向かった先は新宿駅の伝言板…。すがる思いで書き込んだ文字は「XYZ」。シティーハンターの世界で、獠や香との新しい人生が始まる!
長所と短所
- ◎シティーハンターそっくりの絵柄
- ◎もしもシティーハンターの世界に自分がいたらを投影できる
- △シティーハンターを好きでないとネタが分からない
- △シティーハンターのエピソードがそのまま出てくるので知っているシーンが多い
- ×単行本発刊ペースが遅い
感想
登場人物紹介
まずはこの『今日からCITY HUNTER』の登場人物紹介。オリジナルのシティーハンターと同じなのですが、どれくらい似ているのか確認用に。
今日からCITY HUNTERの主人公『青山香』。シティーハンターオタクの40歳派遣勤め。シティーハンターの世界へ転生してからは、香と同じ名前は不味いと何故か思い、咄嗟に漫画家を目指していた頃のペンネーム、西園寺沙織を名乗ります。
シティーハンターの世界に転生した主人公の青山香は、シティーハンターの時代に合わせ、当時の15,6歳であろう女子高生の姿に戻ってしまいます。
今日からCITY HUNTERの冴羽リョウ。北条司さんのシティーハンターと絵柄で見分け付かないでしょ?
今日からCITY HUNTERの槇村香。
今日からCITY HUNTERの海坊主。
今日からCITY HUNTERの美樹。
今日からCITY HUNTERの野上冴子。
この後も続々シティーハンターのキャラが出てきます。
◎シティーハンターそっくりの絵柄
まずなにが驚くって本家である北条司さんのシティーハンターそっくりの絵柄だって事です。勿論、似た絵柄を描ける人を探したのでしょうし、似せようと努力しているのでしょうが、当時のシティーハンターの絵柄にそっくりです。まずこの似ていると言うか、そのままの絵柄にガツンとやられて興味を持ちました。まるで北条司さん本人が描いているようです。
昨今は人気が出るとスピンオフ漫画がよく出る傾向にありますが、絵柄が本家と全然違ってコレジャナイ感することが良くある…と言うかほとんどです。しかし、今日からCITY HUNTERはこれはコレジャナイ感が全くありません。シティーハンターの絵柄が好きな人、話が好きな人は、すんなり違和感なくこの世界に入れます。これだけでも大きなプラスポイントです。
◎もしもシティーハンターの世界に自分がいたらを投影できる
ストーリーを簡単に説明すると、40歳独身派遣勤めの青山香(女)が、大好きなシティーハンターの世界に転生するとのものです。いわゆる昨今流行の異世界物と流れは同じです。現実世界でパッとしない主人公が、死んだと思った瞬間、もしくは死んで次に気が付いたら異世界にいた…ってジャンルです。この『異世界』が『漫画の世界』に変わっただけなので、異世界転生物でジャンルは良いと思います。
シティーハンター好きならやってしまうであろう言動を主人公はするので、男女問わず感情移入することができると思います。ただ、逆にシティーハンターオタクがシティーハンターの世界に入ってする言動なので、見ているこっちがこっぱずかしくなることも…。
一般的な異世界転生物と違うところは、主人公が無双しないことでしょうか。主人公はただの女子高生になってしまいますし、家も両親も存在せず、リョウと香りの家に居候の身となり、話の展開を知っているだけなので、今のことろ無双するような展開はありません。ただ、無双はしないものの先の展開を知っているので、ちょくちょく事前にピンチを食い止めたり、「なんでそんなこと知ってるんだ?」と怪しまれたりってことはあります。
△シティーハンターを好きでないとネタが分からない
当然ですがシティーハンターを知らないと全く楽しめない漫画です。シティーハンターを全巻読んだことある人用です。そう言う意味ではゲームのファンディスクと同じ立ち位置です。ファンコミックと言えば良いのでしょうか。さらっと適当に「昔ジャンプで読んだことあるな~」程度では多分半分くらいしか楽しめません。少なくともコミックを全部読み、シティーハンターが好きですと胸を張って言えるくらいの好き度がないと、細かいネタやオリジナルのシティーハンターとのシンクロ、違いはわからないものが多数出てきます。
逆に言えば、シティーハンターが好きな度合いが深ければ深いほど、今日からCITY HUNTERは楽しめます。私はオリジナルのシティーハンターのレビュー記事を書き、全エピソードの紹介もしているほど好きなのでガッツリ楽しめています。
△シティーハンターのエピソードがそのまま出てくるので知っているシーンが多い
これは一長一短あるので、長所なのか短所なのか微妙なところなのですが、今日からCITY HUNTERのエピソードは、オリジナルのシティーハンターのエピソードがそのまま出てきます。どういうことか言うと、最初に出てくる今日からCITY HUNTERのエピソードは、美樹初出で海坊主と結婚を賭けて勝負するエピソードです。
この海坊主と美樹のエピソードに、主人公の青山香が絡み、「あ、この後どうなるか知ってる!」と傍観者になったり、美樹がリョウを狙うところを阻止して「話が変わっちゃう!?」と当事者になって戸惑ったり…と言うことを繰り返します。
シティーハンター好きならあらゆるシーンでシンクロするので面白くはあるのですが、半分くらいは構図も話も同じなので、オリジナルのシティーハンターを読んでいるのかと錯覚しちゃう部分もあります。つまり、『新しい部分』が結構少ないです。
今日からCITY HUNTERを読む前は、シティーハンターの世界に入るだけで、全く新しい物語が展開するのかと思っていたのですが、『オリジナルのシティーハンターのエピソードに、その話しを知っている主人公が絡む』との展開でした。
シティーハンター既存のエピソードをファン目線から参加してかき回すのは面白いのですが、知っているエピソードをもう1度読んでいるこの感覚は、新鮮味は少し薄くなっちゃっているかなと…。
×単行本発刊ペースが遅い
内容に関係はありませんが、月刊連載のため進みが遅いです。そして当然発刊ペースも遅く、1巻に6,7話収録なので、半年に1度発刊すれば良いところです。月刊で40ページでもやってくれれば良いのですが、残念ながらこの今日からCITY HUNTERは、月刊でありながら掲載ページ数は30ページくらいです。週刊漫画は1話20ページくらいなので、その進みの遅さはわかりますよね。
個人的には物凄く面白いと思っただけに、発刊ペースの遅さは結構痛いです。また、シティーハンターの世界に転生したらとの企画物の域を出ない漫画なので、10年続くとも思えません。と、すると、3年で6巻、5年で10巻が良いところです。それでどうやってまとめるのか…。少し不安でもあります。
総評
後半はチクチク短所を挙げましたが、前述もしたように個人的には凄い面白くて大好きな漫画になりました。ただし、どれくらい面白く感じるかは、シティーハンターを好きな度合いと完全に比例します。シティーハンターを好きなら好きなほど、詳しければ詳しいほど面白く、そしてニヤニヤしちゃいます。「あのシーンでこう絡むか~」、「好きならここ一言言いたいよな~」とか、ファンディスクのような物です。
シティーハンターが好きなら断然お勧めします。絵柄が違うとか、話の展開がシティーハンターじゃないとか、リョウや香りはそんなこと言わない、しないなんてことは全くないので、シティーハンター好きは読んで損はないはずです。絵柄も話も話の運びもキャラの動きも、まるで北条司さん本人が描いているのではないかと錯覚しちゃうくらい、しっかりとシティーハンターしています。
追記:20年ぶりのCITYCITY HUNTER劇場版を観てきた
20年ぶりにアニメ化されたCITYCITY HUNTERの劇場版を観てきたので感想をアップしました。
こんな人にお勧め
- シティーハンターが好きな人
- 異世界転生物が好きな人
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