目次
あらすじ
前作「破」終盤で描かれた「ニアサードインパクト」から14年後。葛城ミサトをはじめ旧NERV職員らは、反NERV組織「ヴィレ」を結成し、NERVのエヴァを殲滅すべく活動していた。ヴィレは、式波・アスカ・ラングレーの乗るエヴァ改2号機と真希波・マリ・イラストリアスの乗るエヴァ8号機の2機によって、衛星軌道上にNERVが封印していた初号機を強奪する「US作戦」を実行する。改2号機は Evangelion Mark.04「コード4A」数体から妨害を受けるが、8号機の援護射撃でそれを突破。さらに初号機とともに格納されていたMark.04「コード4B」の迎撃により窮地に陥るも、一時的に覚醒した初号機によって助けられ、初号機とともに地球へと帰還する。
まーた難解な話始まったよ
面白いかどうか以前に、「まーた難解な話始まったよ」が率直な感想です。
確か庵野秀明監督は、今回の新劇場版はわかりやすくすると言ってたはずなのですが、無茶苦茶分かり辛いです。で、調べたらこんな物がやっぱりありました。監督ではないのですが、監督と意思疎通を密にして、一緒に作品を作るプロデューサーのインタビューですね。序のインタビューではありますが言っていましたね。これは序だけのインタビューだよと言うなら、Qで方針が大転換したと言うことです。
大月俊倫プロデューサー インタビュー
「以前とはまったく別物。誰もが楽しめる完全なエンターテインメントです」
誰もが楽しめる完全なエンターテインメントです
そしてもう一つ。こちらは正真正銘庵野秀明監督のインタビューですね。
2013年7月25日の週刊文集より。
・前のエヴァは、まずTV版を見てくださいという一見さんお断りな作り
・当時は「よくわからない」とか言われた
・一見さんが見ても大丈夫なのが今の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ
言っていますね。一見さんが見ても大丈夫なのが今の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズって。
今回のQは一見さんが見ても分からないですよ。完全に旧作を見ている前提で、しかもかなり詳しいだろと言う前提で作られています。なにせ何がどうなっているのか、説明がさっぱりありませんから。
あれでもわかるだろと言われるかもしれませんが、少なくとも庵野秀明監督が言っているように、「一見さんが見ても大丈夫」な話、作りではありませんでした。
新劇場版前2作の序と破のストーリーは、ほぼTV版の再編集とは言え、作画が物凄く綺麗になり、話をわかりやすくシンプルに纏めていて、思わせぶりな台詞や用語、宗教色が薄く抑えられていて、非常に面白かったんですけどね。
ところが3作目のこのQでは、また旧作の「難解なエヴァ」に戻っちゃいました。今回の新劇場版は、きちんとケリを付けるつもりだと思っていたのですが、俄に怪しくなってきました。
旧作でアニメオタクに辟易したのでは?
旧作劇場版のラストは、アスカの「気持ち悪い」の台詞で終わったり、映画を見ている観客の画を使ったりして、「アニメばかり見ていないで現実に戻れ」と言うメッセージを庵野秀明監督が込めていたのは、本人も語っているので有名な話ですが、当時から私は違和感を感じていました。
2012年7月14日の朝日新聞インタビューより。
・「旧作の「エヴァ」では、僕が「娯楽」としてつくったものを、その域を越えて「依存の対象」とする人が多かった。そういう人々を増長させたことに、責任をとりたかったんです。
私は別にアニメに人生を賭けている訳ではないですし、数多くある趣味や楽しみの一つとして、アニメを見ていただけなのに、アニメオタクに現実を知らせてやる、冷や水をぶっ掛けてやる。そしてそれが庵野秀明監督はサービスだとまで言っていました。いやそんな事言われても…って感じでした。
で、今回の新劇場版では、アニメオタクが好きそうな設定や深読みできる話を排除して、わかりやすいエヴァを作るのかと思いきや、Qでまた突然難解なエヴァに戻ってしまいました。
旧作でそのアニメオタクを多く生み出したのが、この難解なエヴァなのですが、それをわかっているのでしょうか。また旧作と同じようにエヴァで論争が起こり、失敗を繰り返してしまいますよ?こんな事をやっておいてアニメオタクは嫌い、アニメオタクを突き放すなんて、言動が矛盾しています。
しかし、金儲けを考えた場合、こうやってファンが勝手に盛り上がり、論争してくれることが、いかに美味しいかを制作サイドは認識しているはずなんですよね。旧作エヴァが綺麗にわかりやすく終わったのならば、その後の議論や論争や検証は起こらず、新劇場版どころか旧作の劇場版も無かったことでしょう。
分かり辛さの原因
このQは難解…と言うか非常に分かり辛いのですが、何故かと言えば、それは圧倒的に説明不足だからです。と言うか、説明する気無いですよねこれ。
先ほど挙げた庵野秀明監督のインタビューとは真逆で、完全に一見さんお断りです。旧作をじっくり見て、エヴァの思惑通りに動かされ、考察サイトも見まくった私でも、なんだこりゃ状態です。旧作を観
ていない人が付いて行けるはずがありません。
理解不能な点の一つが、14年ぶりにエヴァ初号機からサルベージされたシンジに何の説明もしないことです。結局この説明不足がミサトらへの不信感に繋がり、ヴィレを飛び出して、現在敵であるネルフにシンジは寝返ってしまう最大の要因となってしまいます。いくらサードインパクトを起こした張本人だとは言え、今後の地球の命運が掛かっているのですから、懇切丁寧に説明して信頼を得て、味方に付けておくのが一番なはずなのですが…。
ちなみにこのQで14年後に時間が飛んだとの情報は、シンジと同じく観客もこの時初めて知ったことなので、観客とシンジのこの世界への理解力はほぼイコールです。つまりシンジへの説明が一切無いと言うことは、観客への説明も一切無いと言うことです。そりゃわかるわけがないんです。
実はQも新作とは言えない?
位置付けとしては、序と破が旧作の再編集。そしてこのQから新作とのことですが、果たしてそうなんでしょうか。実はこのQも旧作の焼き直しと言って差し支えのない内容になっていました。
破から14年後との設定や、新たな登場人物、ネルフとヴィレの対立など、本筋のストーリーとは少し離れた所で、「物語の背景」は変わっているのですが、結局やっていることは、旧作の渚カヲルのエピソードでしかありませんでした。
14年時間が飛んだのを見たときは、「おお完全新作だ!」と思ったんですけどね。旧作の渚カヲルのエピソードを肉付けを変えてやっているだけでした。
面白いかと言われれば面白い
と、まあ色々文句を書いてきましたが、面白いかと言われれば面白いです。そこはやはりさすがと認めざるを得ません。旧作エヴァと同じですね。この謎は何なんだ?なんだこれは!とモヤモヤしながらも結局面白い。正道ではなく邪道な面白さだとは思いますが…。
絵の綺麗さや動き、特に戦闘シーンは凄かったです。予算の関係もあるのでしょうが、このレベルのアニメを作れるのはエヴァだけでしょうし、現在日本で一番凄いアニメであることは間違いないでしょう。
ところで突然ですが、このシーンはガンダムのランバ・ラルのシーンを思い出しました。
気になったキャラクター
Qは14年時間が経っていたので、新たなキャラや14歳年を取ったキャラがいましたね。
気になったのは鈴原トウジの妹鈴原サクラ。あとはミサトやリツコも14年経っているので+14歳。ミサトは43歳ですね。伊吹マヤも38歳。伊吹マヤは若い男が使えないと文句を言っていました。この辺までは完全新作だと思ってワクワクしていたのですが、結局旧作の渚カヲルのエピソードをやるだけでした。
葛城ミサト(43歳)
赤木リツコ(44歳)
伊吹マヤ(38歳)
青葉シゲル(39歳~43歳※年齢不詳で14年前は20代だったがマヤよりは年上だと思われる)
碇ゲンドウ(62歳)
冬月コウジ(74歳)
面白さの指標
物凄く個人的な話になるのですが、映画を見ていてこれは面白いのかつまらないのかを計る指標が私にはあります。それは、映画を観ている最中に他のことを考えてしまうかどうかです。
つまらない映画だと映画に集中できていないので、観ている最中に明日の予定のことを考えたり、買わなければいけない物を考えたりしてしまいます。逆に面白い映画だと、そんな事を考えている暇が無いほど映画に集中してしまいます。
このQはどうだったかと言うと、シンジとカヲルがピアノを弾いたりするところ以外では、概ね他のことを考えずに集中して観ていられました。つまり概ね面白かったんです。それだけに結局難解なエヴァに戻ってしまってガッカリしました。
エヴァの難解は煙に巻くと言うこと
今まで何回難解という言葉を使ったでしょう。すいません。ギャグじゃないです。
難解でも良いじゃないかと思われるかも知れませんが、エヴァで言うところの難解とは、結局は視聴者を煙に巻くと言う意味なんです。何となくな答えも提示されませんし、説明する気も、理解して貰おうとすらしていないんです。
感じ方の違いはあるとは思いますが、旧作にはまった人は少なからず私のように「またか…」と思ったのではないでしょうか。
サードインパクト、リリン、リリス、ガフ、ロンギヌスの槍。言葉遊びなんですね結局。私は旧作で懲りたので、ある程度以上は考えるのを辞めました。
こんな人にお勧め
- エヴァンゲリオンが好きな人
- 大風呂敷を広げるアニメが好きな人
考察しても無駄ですから程ほどにしましょう
旧作をリアルタイムで視聴して、まんまとエヴァの謎にドップリはまり、あれはなんだろう?これはどういうことだろう?と考え、考察サイトも数多く読み込んで、エヴァに時間を割いてしまいましたが、結局視聴者が明確な答えを導き出せるような仕組みにはなっていないので、考察や設定を深読みしたり、考えすぎるのは程ほどにしましょう。旧作ファンからのアドバイスです。
提示された思わせぶりな謎をあーだこーだ考えるのが楽しいのは分かりますけどね。深みにはまりすぎると逆にストレスになるだけです。この辺は浦沢直樹の20世紀少年でもそうでした。あれも終わってみて納得できましたか?できていませんよね。大風呂敷をとにかく広げる話は、古今東西得てしてこうなんです。
一応漫画版でエヴァでラストの方向性は提示されていますし、渚カヲルの台詞からも、ループ世界であることはまず間違いがなく、細かいところは違っても、おそらく漫画版に沿った終わり方になりそうな気はしますが、ラスト1作を待ちたいと思います。
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