「百舌谷さん逆上する/篠房六郎」レビュー ~ツンデレが難病の世界での話~

今回レビューするのは、篠房六郎さんの漫画百舌谷さん逆上する』です。

 

それでは早速レビューを書いていきたいと思います。

 

 

ちなみに、未読の人が知らない方が良いネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。

 

あらすじ

勉強も運動もダメでなんの取り得も無い樺島番太郎のクラスに、ある日転校生がやってくる。彼女の名は百舌谷小音。「ヨーゼフ・ツンデレ博士型双極性パーソナリティ障害」の持ち主、いわゆる「ツンデレ」の少女だった。小音のツンデレの症状は様々な事件を引き起こしていき、流されやすい番太郎も否応なしにまきこまれていく。

 

長所と短所

  • ○ツンデレが難病のユニークな世界
  • ◎絵や構図が物凄く上手い
  • △説明セリフが多い
  • △ツンデレの旬を逃すと面白さ半減か

 

○長所/△人による/×気になるところ

 

感想

○ツンデレが難病のユニークな世界

この漫画はストーリーが実にユニークです。少し前に流行ったツンデレがテーマなのですが、これが本当に病気なんですよって設定なんです。

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「初めはツンツンしている(敵対的)が、何かのきっかけでデレデレ(過度に好意的)状態に変化する」、「普段はツンと澄ました態度を取るが、ある条件下では特定の人物に対しデレデレといちゃつく」、「好意を持った人物に対し、デレッとした態度を取らないように自らを律し、ツンとした態度で天邪鬼として接する」ような態度である。

 

このツンデレって、漫画やアニメの世界のいわゆるネタでありジョークなのですが、このツンデレが本当に病気だったら、難病だったら…とのifの世界の話です。

 

この百舌谷さん逆上するの主人公は、当然ツンデレの百舌谷さんこと、『百舌谷小音(もずやこと)』。男性側の主人公が、山下清画伯よろしくの『樺島番太郎』。そして、その周りのキャラが物語を展開していきます。主人公は小学生の女の子ですし、小学校を中心に話が回ることが多いのですが、女子高生や大人も出てくるので、普通に大人も読める漫画だと思います。

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ツンデレを大真面目に病気と設定すると、好きなのに嫌いな態度を取る、嬉しいのに相手を殴っちゃう、いたぶっちゃうなんてことになります。で、これをツンデレ病患者の悩み、葛藤として描いています。こう書くとシリアスな話なのですが、男性側の主人公が、裸の大将の山下清画伯よろしくな小学生のため、適度にシリアスになりきらないラインをウロウロします。

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ただ、ツンデレという病気が主題のため、結構なDVがあります。それを喜んで受け入れるマゾッ毛のある番太郎との描写はあるのですが、女性の暴力が苦手な方は受け付けないかも…。

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以前、別の漫画の記事で書きましたが、私の女性の暴力は嫌いです。もっと厳密に書くと、女性だから反撃されないのをわかって、意味のない暴力をする描写が嫌いです。一応、この漫画は前述もしたように、ツンデレという病気だから、好きだったり嬉しいときに手が出ちゃうとの『理由』があるので、一応許容範囲でした。

 

◎絵や構図が物凄く上手い

作者の篠房六郎さんは絵が物凄く上手いです。と言うか、私個人的に好みの絵柄です。高橋留美子さんや鳥山明さんもそうですが、輪郭の線が太く、適度に角張っている絵柄って言葉で説明してわかりますかね。このタイプの絵って物凄く『見やすい』んです。線が細くて、細かく描き込んでる絵も凄いですし上手いと思うんですけどね。『見やすさ』と言う点で言うと、前述したような『輪郭線が太い』、『ある程度角張っている』のが好きです。

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また、構図も芸術性を感じます。下から見上げた魚眼レンズの絵だったり、美術的ななにかを感じるなあと思って調べてみたら、案の定美術大学出身でした。こういう魚眼レンズのような絵だったり、上や下など極端な視点の絵を描く人って美術大学出身が多いんですよね。

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篠房 六郎(しのふさ ろくろう)は、日本の男性漫画家。東京都出身。武蔵野美術大学造形学部卒業。

 

ちなみに、作者は単行本収録のオマケ漫画で、自身を女性として描いていることも多いのですが男性だそうです。男性を描くより女性を描く方が得意だとか、好きだとか言う理由でしょうかね。調べるまでは女性漫画家だと思っていました。男性のペンネームで女性の場合も最近多いですからね。

 

また、この百舌谷さん逆上するは、月刊アフタヌーン連載だったのですが、絵柄や作風を見て「ああ、アフタヌーンらしいなあ」と感じました。上手く言葉では説明できないのですが、絵の書き込み量の多さ、影、線の多さなんかアフタヌーンが好きそうだなあと。

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△説明セリフが多い

これは長所なのか短所なのか人によると思うのですがセリフが多いです。

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良く言えば、情景描写や説明が丁寧で、小説的な叙事があります。悪く言えば、本来絵の動きやコマの流れで表すべき物語を、セリフで置き換えてしまっているとも言えます。また、セリフが多いので、通常の漫画より読むのに時間が掛かります。これも良く言えば暇潰しに最適です。どっちに受け取るか…ですね。セリフが多くて読むのに時間が掛かる漫画、説明セリフの多い漫画が好きか嫌いかで、この百舌谷さん逆上するの評価も変わるかも…。

 

後半は特に物語が激しく動き、密度も濃いのでセリフが多かったです。個人的にはもう少しセリフを少なくした方がスラスラ読めて良かったかなと…。減点するほどではないんですけどね。

 

△ツンデレの旬を逃すと面白さ半減か

ツンデレって言葉はもう定着しすぎて、もしかしたら今言うと死語とは言わなくても、陳腐に聞こえるかもしれません。

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ツンデレが一般的に使われるようになったのは、Wikiによると2005年頃だそうです。そして、百舌谷さん逆上するの第1巻が出版したのが2008年です。この頃はまだツンデレと言う言葉や概念が頻繁に使われていましたが、最終巻が出版された2013年はだいぶツンデレが使い古されていました。今現在この記事を書いている2018年だともっとその感じがしますね。

 

ツンデレという流行りに乗っかって出来た、言ってみれば時事ネタの漫画なので、旬を逃すと面白さが半減して感じるかもしれません。例えば1960年代の学生運動の漫画を今読んでも、いまいちピンときませんからね。

 

おわりに

ツンデレと言う言葉もスタイルも今はもうだいぶ古く感じてしまいますが、それでも一時流行ったツンデレが、『もし本当の病気だったら』との世界観は非常にユニークで面白かったです。絵柄も見やすく万人受けするものですし、美術的な絵の上手さもありますし、アニメや漫画好きなら、ツンデレは馴染みがあると思うので、読んで損のない漫画だと思います。ただ、前述もしたように、セリフが多いので、飽きっぽい人には向かないと思います。

 

ここから最終回のネタバレが入りますので、これから読もうと思っている方、知りたくない方は、次のオレンジマーカーまで読み飛ばしてください。

 

最終回は…お約束と言うか、悪く言うとありきたりの着地でしたね。百舌谷さんと番太郎が離ればなれになり、数年後高校生になった両者が偶然再会。再会シーンでもやっぱりツンデレの百舌谷さんらしく、嬉しさ余っていきなり番太郎に暴力を振るう…と。

 

最終回手前で離ればなれになり、最後に再会。そしてこれからの新たな物語を予感させて終わる。よくある終わり方です。悪くはないのですが、百点満点とか大満足の終わり方かと言うと少し微妙ですかね…。悪くはないんですよ。本当に。

 

しかし、結局百舌谷さんはツンデレ病が治ってなかったね…と。まあ、だからこそ、またツンデレ百舌谷さんと番太郎の新たな高校生編の物語が、読者の中で妄想出来て楽しいって面もあるんでしょうね。

 

ネタバレはここまでです。

 

絵柄もそうですが、ストーリーもコマの運びも物凄く丁寧です。読んでいて引き込まれる、魅力ある漫画には間違いがありません。

 

お勧めとそうでない人

お勧め出来る人
  • ツンデレが好きな人
  • 絵が上手い漫画が好きな人
  • 美術的構図のある漫画が好きな人

 

向いていない人
  • 飽きっぽい人
  • セリフが長い漫画が苦手な人
  • 女性の暴力が苦手な人

 

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