まんが道ならぬ1980年代のアニメ道「アオイホノオ」レビュー 評価はまだありません

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あらすじ

舞台は1980年代の初め、大阪の大作家(おおさっか)芸術大学。主人公、焔燃(ホノオモユル)は漫画家を目指していた。「自分の実力ならいつでもプロデビューできる」と自信過剰な性格をしていたが、豊かな才能に恵まれた同校の学生達や、あだち充、高橋留美子といった若手漫画家の台頭を目の当たりにして自信を揺るがされる。それでも焔はプロの漫画家になるため歩み始めるのだった。

 

 

監督

  • 福田雄一

 

出演者

  • 焔モユル - 柳楽優弥
  • 森永とんこ - 山本美月
  • 津田ヒロミ - 黒島結菜
  • 村上 - 川久保拓司
  • 岸本 - 大水洋介(ラバーガール)
  • 高橋 - 足立理
  • 矢野ケンタロー - 浦井健治
  • 南マサヒコ - 遠藤要
  • 大学教授 – きたろう
  • 庵野ヒデアキ - 安田顕
  • 山賀ヒロユキ - ムロツヨシ
  • 赤井タカミ - 中村倫也
  • 岡田トシオ - 濱田岳
  • 武田 - ぎたろー(コンドルズ)
  • 凩マスミ - 小嶋陽菜
  • ミノムシミノコ - 上地春奈
  • MADホーリィ - 佐藤二朗
  • 岩瀬ジュン - 市川由衣
  • みゆき - 竹富聖花
  • 山賀の妹 - 葵わかな

 

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長所と短所

  • ○アニメ、漫画制作に掛ける青春物語
  • ○GAINAXメンバーが多くいる
  • ○当時の漫画家やアニメーターの凄さの解説
  • ○オリジナルの声優や漫画の絵や実名が出てくる
  • ○演技や演出が大袈裟でコミカル
  • ○キャラが皆濃くて面白い
  • ○女の子が可愛い

 

はじめに

今回レビューするのは、『アオイホノオ』です。

 

久々に日本のドラマにはまりました。ファミ劇で放送していた物をたまたま暇だったから見ただけなのですが、こちらもたまたま第1話からだったことで見るタイミングとしてはベストでした。そのあとすぐに出掛ける用事があったのですが、見始めて15分後には急いで録画を開始して帰宅後に見ました。当然その後もどっぷりはまって全部見たので、今回はその感想を書いていきたいと思います。

 

それでは早速レビューを書いていきたいと思います。

 

放送内容

 

アニメ、漫画制作に掛ける青春物語

この『アオイホノオ』は80年代のまんが道…ならぬアニメ道だと思います。

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まんが道は言わずと知れた藤子不二雄Aさんの自伝的漫画で、藤子不二雄さんを中心に、トキワ荘に集まった赤塚不二夫、石ノ森章太郎、寺田ヒロオ(敬称略)などとともに、一人前の漫画家を目指す青春物語です。現在、巨匠や伝説と呼ばれる人たちの若き日の生活を描いています。

 

 

一方、このアオイホノオは、島本和彦さんの自伝的漫画で、偶然にも同じ年代に大阪芸術大学に集まった、庵野秀明、山賀博之、赤井孝美、武田康廣、岡田斗司夫(敬称略)などとともに、アニメや漫画の世界で成功してやろうとする人たちの物語です。アニメ業界に詳しい人でも、庵野秀明さんと岡田斗司夫さん意外は馴染みがないかも知れませんが、多くはGAINAXに関わった人たちです。アニメが好きな方からすると、手掛けた作品などを見れば「おぉ」と唸るような人たちです。

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この、何物でもない人たちが身を立てて成功していくまでの話が描かれているのですが、ドラマ版は残念ながら原作の初期で終わっているので全て描き切れていません。それでも、今巨匠と呼ばれる方たちが、若いときにどうしていたのか、どうやって成功していったのかが垣間見られるので、非常に興味深い物語でした。

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アニメに詳しくない人でも、単なる立身出世の物語として面白く見られるかも知れません。私は知った上で見ているので、そちら側の感情は推し量りかねますが…。ただ、私も島本和彦、庵野秀明、岡田斗司夫(敬称略)以外は知らない人ばかりだったのですが楽しめました。

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基本的にこのアオイホノオの展開としては下記の通りの流れになります。

 

  1. 自信満々のモユル
  2. 才能溢れる作品や人物を見て絶望する
  3. 考え方によっては負けていないと立ち直る

 

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モユルが上記の繰り返しをしながら、少しずつ夢のプロデビューへと向かって行く話です。また、その裏でライバル…とモユルが勝手に思っているだけの庵野ヒデアキ(GAINAX勢)の話も進んでいくという、2本立てのストーリーです。

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モユルは前述のように、自信満々と挫折を繰り返すのですが、この立ち直り方が非常に面白いのです。才能溢れる作品を見て打ちひしがれるモユルは、「いや…待てよ…他人の才能を認められるということは…俺の器はでかい!負けてないぞ!」といった感じです。大抵このパターンで、『相手を凄いと認められる俺凄い』系です。

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モユルは非常に人間らしく、面白い作品を見て素直に凄いと認めません。自分より面白い作品を作るな、見たくないなんて人間らしい側面が非常に強いです。綺麗な人間で相手を認めてめでたしめでたしではありません。相手の才能に嫉妬し、自分以外の作品は褒めるなというスタンスです。本来、これは醜くなると思うのですが、モユルのキャラ、作風、大袈裟な演技で全てコミカルな笑いになっています。

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GAINAXメンバーが多くいる

前述もしたように、島本和彦さんの自伝的作品とはいっても、物語の半分ほどはGAINAXメンバーの立身出世物語となっています。

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新世紀エヴァンゲリオンを作ったGAINAXを知っていれば、通常の3倍は楽しめると思います。GAINAXのメンバーを個別に知らず、そういうスタジオがあり、エヴァというヒット作を生み出したことがある程度の知識でも、十分に「ああ、GAINAXってこうやってできたのか」と興味深く見ることができます。

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当時の漫画家やアニメーターの凄さの解説

島本和彦役の柳楽優弥さんが、漫画やアニメのなにが凄いのかという解説をドラマ中に時折挟むのですが、それが実に詳しく的確で面白いです。知っている作品は勿論ですが、古くて知らない作品もそうだったのかと思える解説があって目から鱗です。アニメや漫画好きにはたまりません。

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そして…モユルはあだち充が好きすぎです。島本和彦さん本人が本当に好きだったのでしょう。何故かモユルが上から目線であだち充を論評し心配します。

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「あだち充は野球漫画というものをわかっていない!?」、「野球漫画ではない…学園漫画だっったんだ!!」などなど、あだち充愛が溢れんばかりです。そして当然、そのあだち充さんへのアドバイスや心配は本人には届きません。単なる熱狂的な1ファンです。本人は「お前の面白さ、俺にはわかるぞ」と上から目線ですが…。

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しかし、これを見ても当時あだち充さんの『勝負しないスポーツ漫画』、『野球をだしにした学園漫画』とのスタイルは独特だったことが伺えます。

 

また、モユルは高橋留美子さんも好きでよくチェックしています。高橋留美子さんがおかしな方向に行くことを心配したり、大人の恋愛漫画『めぞん一刻』を描くことになったら、悪い編集者に手込めにされているのではないかと心配し、「俺に力がなくてなにもしてやれなくてスマン!」と何故か悶絶する始末。

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このように、島本和彦さんが当時好きだった漫画家、認めていた漫画家などが丸わかりの側面もあります。また、そこから当時の漫画を取り巻く状況や勢力図なども見えてきて、漫画好きにはたまらない描写が満載でした。

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オリジナルの声優や漫画の絵や実名が出てくる

アニメや漫画の解説が出てくると前述しましたが、そのアニメの映像や漫画の画像はオリジナルのものを使用していました。この辺りは権利関係が多岐にわたって難しく、大抵は架空の名前にしたり、似せた画像やアニメを別途作って映すことが多いのですが、なんと高橋留美子さんの漫画やサイボーグ009などのアニメの映像まで流していました。この辺りは島本和彦さんの人間関係が影響したのだと思われます。島本和彦さんの話なら…ということで、通常よりはスムーズに許可が取れたのでしょう。

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ちなみに、モユルの高橋留美子さん評では、「面倒くさい絵は嫌だ。高橋留美子のように一筆書きでチャッチャと描けるような絵の方が楽だ」だそうです。

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また、登場人物でも庵野秀明さんを初め、岡田斗司夫さんなどほぼ皆実名なので実に分かりやすかったです。

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このようなシーンで、架空の名前や絵を使われると、個人的には非常に萎えてしまうので物凄く嬉しく、そしてニヤッとしてしまいました。これまではこんなことがなかっただけに嬉しさ爆発でした。また、漫画の画に付く音声もオリジナルの声優を使う拘り具合。素晴らしいです。

 

演技や演出が大袈裟でコミカル

元々オーバーなリアクションや、暑苦しいテンションが特徴の島本和彦さんの漫画が原作なので、実写化を違和感なくできるのか疑問だったのですが、全く以て違和感がありませんでした。

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漫画的なリアクションや演出が実に見事に実写化されており、それだけでも感心するほかありません。

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漫画の実写化はほとんどが失敗し、薄ら寒いことになり、ファンに酷評されることが多いのですが、このアオイホノオは真逆です。登場人物のカットや変更はあったのですが、実写化してより良くなったかも知れません。このような漫画的表現を上手く実写にしたらこうなるのだという、お手本のようなものを見た気がします。

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キャラが皆濃くて面白い

漫画的リアクションを実写にして成功している実に珍しいドラマなのですが、その功績は役者が大きいのだと思います。勿論、演出するスタッフ達の功績も大きいのだと思いますが、やはり私たち視聴者が見てわかりやすいのは役者の演技です。

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焔モユルこと柳楽優弥さんの絶望とそこから立ち直る際のリアクション、凄い漫画を見付けたときのリアクション、どれもこれも素晴らしいです。ぶっ飛んでいます。しかも、そのぶっ飛び具合が作風に実に合っているのです。違う作品の中にこの演技では浮いてしまうのでしょうが、アオイホノオの中ではこれがスタンダードなのだとすぐに理解しました。

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ちなみに、この柳楽優弥さんは若いときの織田裕二さんに似ていると感じました。また、他のキャラも全員濃いです。本当に1人もまともな人がいません。この統一感は凄いです。柳楽優弥さんのぶっ飛んだ演技が、他の役者のぶっ飛んだ演技で埋もれてしまうくらいです。

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集英社編集者のMADホーリィこと佐藤二朗さんも凄いです。のちに北斗の拳の担当をするからでしょうが、北斗の拳の登場人物のような服装に色黒、徹夜はモットーだけど昼間は居眠りをするなど、良い意味でキャラが強すぎます。

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山賀ヒロユキことムロツヨシさんの、食いっぱぐれないために人を集め動かすキャラも非常に濃いです。才能を見付けてこいつを抑えておけば俺は食いっぱぐれないと確信する描写はたまりません。

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岡田斗司夫こと濱田岳さんもキャラが強い強い。ふざけているのかという程おかしなキャラなのですが、何故かアオイホノオの中では浮かず、強いキャラの中なのでちょっとしたアクセント程度になっている恐ろしさ…。

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皆熱演していてキャラが強く、それだけで満足してしまいます。

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女の子が可愛い

大学生活の話なので、当然恋愛対象となる女の子も出てきます。ヒロインは森永とんこ演じる山本美月さんです。金髪のわかりやすいカツラを被っていて、おっとりした関西弁です。最初に見たときはやりすぎでコスプレにしか見えませんでしたが、2話3話と見るうちにだんだんと慣れ、結局全く違和感なく見られるようになってしまいました。

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そして、もう1人ヒロインといえるのが、津田ヒロミを演じる黒島結菜さんなのですが、こちらも可愛い…。個人的には津田さんの方が好みです。津田さんもなにかというと相手の体をバチバチ叩いたり、可愛く敬礼をしたり挙手をすることが特徴でキャラが立っていました。

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キャラが濃いと前述しましたが、これは女性キャラにも当て嵌まり、とんこ先輩も津田さんも男性陣とはまた違った個性を発揮しています。

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総評

このドラマは第1話から最終話までずっと面白いです。テンションが高いです。

 

物語は山あり谷ありがオチありが良いといわれていますが、基本的にずっと山です。ハイテンションです。それは場面場面を切り取ってもそうなのですが、1話ごとの面白さについても同じです。なので、第1話を見て面白いと思ったら、このドラマは最後まで面白いはずです。しかし逆に、1話を見てつまらない、合わないと思ったら、その方には合わないドラマです。

 

よく、何話までは前振りで、何話から面白くなるんだよとのドラマやアニメがありますが、私はこの手の助走のあるタイプも好きです。しかし、このドラマは1話が面白ければ間違いなくはまれますし、1話がつまらないと思ったらその後面白いと思うことはまずないと思います。非常に分かりやすいです。ダラダラ何話も見て見続けるかどうか判断する必要はありません。1話だけ見て判断すれば良いのです。

 

久々に最初から最後まで全く飽きることも、中弛みすることもなく、ずっと面白いと思いながら見ることができたドラマでした。

 

こんな人にお勧め

  • アニメが好きな人
  • まんが道が好きな人
  • GAINAXが好きな人
  • GAINAXができるまでを知りたい人
  • GAINAX主要メンバーの大学時代を知りたい人

 

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