今回レビューするのは、この世の果てで恋を唄う少女YU-NOの第26話です。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
ちなみに、YU-NOの解説・考察は別記事にまとめましたので、気になる方はご一読ください。
先の展開のネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。
あらすじ
圧倒的な強さを見せつける龍蔵寺=次元犯罪者に苦戦するたくや達。
そこに現れたのは次元監査官エィッリィクと、意外な人物であった…
果たしてデラ=グラントの衝突を免れることができるのか!?
そしてたくやとユーノが導かれる運命は!?
みどころ
- エンディング
- 神奈はどうなるのか
感想
遂に最終回
今回は遂に最終回でした。昨今は2クールアニメもなかなかない中、さらにそれをフルに使用した全26話という珍しいものでした。そんな最終回の最初は前回と同じく、おさらい+αの構成。アマンダが次元の間に吸い込まれそうになり、たくやが必死で捕まえているシーンからでした。
原作だとたくやがアマンダの手を掴んで踏ん張るシーンはなく、あっと言う間に次元の間に飲み込まれて転移されてしまいました。このアマンダの扱いを見ても異世界編では完全にアマンダがヒロインです。
龍造寺は事象衝突を起こさせようとしている最中、「さて、あと何人死ぬかな」と亜由美に言っていましたが、脅しにしてもこれから事象衝突と言う、2つの宇宙を消滅させようとしているときに、そんな小規模な脅しをしなくてもと思ってしまいます。原作だと当然公開イベント化はしてないので観衆はおらず、そもそも密室劇なので主要キャラ以外人はいないのでこんなセリフはありませんでした。そして、ここでOP。
OPはこれまで通り普通に入れてきました。後述しますがEDも普通に入れてきましたし、このアニメは特殊OP、EDを全くと言って良いほど使いませんでした。やったのは初回と総集編の17.5話だけだったと思います。昨今のアニメでは映画のようにOPやEDを凝るようになっており、ここで盛り上がれることが多いです。特殊OPやEDを最終回ですら使わないのは非常に珍しいと思います。
アーベル大活躍
龍造寺と次元の間から出てきた思念体の群れに逃げ惑う民衆。バリアは人間が素通りできるのに、何故か相変わらずバリアの中に入ろうとしないたくやたち。そして、案の定龍造寺は亜由美を人質に取り、バリアを壊せとたくやに迫ってきます。そして、絵理子先生が気絶しているシーンへ変わります。
絵理子先生は龍造寺の壁ドンの川流れでずっと気絶していたようです。アニメでは絵理子先生は結構間抜けというか、ミスの多い人になってしまっています。原作だと龍造寺を何回も逃がしたり、気絶させられているシーンなんて1度もありませんでした。
意識を取り戻した絵理子先生に襲いかかる思念体だと思ったら、なんとそれは元恋人のアーベルでした。アニメでは現代編の早い段階でアーベルのことを語っていた絵理子先生に驚きました。さらにはっきりとアーベルの顔まで描いていたのですが、またここでこうもハッキリ描くとは思いませんでした。
原作だとどうだったかと言うと、たくやたちにアーベルの姿は見えず、ただ龍造寺の思念体に干渉している様子でした。突然龍造寺が苦しみだし、「アーベルか…」とその存在を仄めかしている感じです。
アーベルは事象の間に飲み込まれて消えた有馬広大のような存在になってしまったのですが、ここで龍造寺を人間の体から引きずり出す役割を担います。
アニメだとアーベルは思念体と言うか幽霊みたいな存在になっており、姿形はハッキリ周囲の人間に見えますし、果ては龍造寺の中に入っていた思念体を引きずり出し、「俺と一緒に撃て!」と…。絵理子先生は涙しながら特殊な銃で撃ちあっさり龍造寺は消滅。ついでにアーベルも消滅。少し安っぽい話になってしまいました。
ここも少しおかしくて…と言うか、今回色々おかしいところがありましたが、最初に絵理子先生が広場に登場してすぐ龍造寺の中の思念体を特殊な銃で撃っていました。このときは全くダメージを与えていない様子。しかし、その後アーベルが龍造寺の中の思念体を捕まえたあとに同じ銃で撃つと1発であっさり消滅していました。
最初の銃で撃ったシーンはなんなのでしょうか。あれで龍造寺の中の思念体が消えていないとおかしいです。2発目は銃のモード(?)を変えたのでしょうか。なら何故最初の無防備な龍造寺の中の思念体を攻撃する余裕があるときに、そのモードで片を付けないのか…。雑です。
原作は原作でアーベルの姿形も出ず、苦しんだ龍造寺が体から思念体を出したところを、突然現れた絵理子先生が銃で撃って退治するので、どちらも唐突ではあるんですけどね。まさか事象の間に消えたアーベルがここまでハッキリ姿形を見せて戦うとは思いませんでした。これもおそらく物語を簡単に見せるためだと思います。
原作だと前述したように龍造寺が何故か突然苦しみ、アーベルのことを仄めかす地味な展開でした。これをアニメ的に見せる改変そのものは良いのですが、さすがに「俺は消滅しても良いから一緒に撃て!」との少年漫画的ベタな展開はどうかと…。
アーベルは消滅してしまいましたね。原作だとただ龍造寺の中の思念体を引き釣り出すだけで消滅はしませんでした。アニメではアーベルが犠牲に…。
ナイアーブは万能
亜由美を人質に取った龍造寺ですが、バリアを壊せとたくやに迫ったものの、たくやは事象衝突とは比べられないからその要求は飲めないと突っぱねます。それはそうなのですが、亜由美を助けない宣言をそんなハッキリ言わなくても…。亜由美も現代編3人のヒロインの1人であり、淡い恋心を抱いていた女性なのに…。自殺ループを意地でも救ったのに…。
龍造寺はここでどうしたかと言うと、亜由美の側近だった隻眼の男アッシュにナイアーブを掛けあっさりバリアを破壊。アニメだと一瞬で人を自由自在に操れる万能な物になっています。
原作だともう少し自分の意思が残っていて、催眠術の強化版といった感じなんですけどね。しかし、そんな簡単に人を操れるならたくやと交渉しなくても良かったのではないでしょうか。このアッシュもいまいち活躍しませんでした。有能な側近のようにいつも亜由美の横にいたので、アニオリでもっと活躍するのかと思っていましたが、重要な役どころはここくらいでした。
アッシュが龍造寺の思念体を封じるバリアを壊した後、何故か次元の間も消えてしまいました。何故なのでしょうか…。一生懸命物語を簡単にして説明を提示するようにしているこのアニメなのですが、所々こうやって雑なところが見受けられます。
ところで…龍造寺の中から出てきた思念体がマザーに物理攻撃していましたね。もっと簡単に言うとマザーをガンガン殴っていました。次元の間から出てきたミニ思念体には剣での攻撃が効きますし思念体とは…。
これまで以上に前回から雑と言うか展開が投げやりになっているような気がします。このあたり思念体の捉え方なんか、原作通り密室でやれば矛盾はなかったはず。良くできた原作を改編したことによりアラが出てしまった悪例です。
アニメ監督は良くできた原作を俺がより良くできると思いがちなのでしょうが、そんなことをできるのはごく希です。アニオリを入れるなとはこれっぽっちも思っていないのですが、さすがにYU-NOの改変は回数、質ともにやりすぎです。異世界編なんて4割か下手をしたら5割くらいアニオリと言っても過言ではありません。
亜由美死亡
人質に取られた亜由美は龍造寺にサクッと刺されてしまいました。原作でもまあそうでしたが、刺されるシーンがあっけないですね。ここまでアニメは改変しているのですから、こういうところはもうちょっと衝撃的な重い演出をしても良かったのではないでしょうか。変えるならこのような所だと思います。原作で薄かった描写の補足、補完。話の根本を変えるのは危険すぎます。
アニメでは亜由美自殺ループで冗談のようなキャラになってしまいましたが、原作だと1回しか自殺はしないので、そんなネタキャラではありませんでした。そして、これも衝撃的な展開で、プレイヤーは試行錯誤して亜由美を救いました。
普通に進めると亜由美は多くの方が最初にトゥルーエンドを見るキャラなので、ここで『YU-NOってゲームすげえ』となったのではないでしょうか。そんな印象深い話でやっとの思いで救った亜由美がまたここで死んでしまい、今度はどうしても救えないことに震えました。しかし、アニメは現代編の自殺ループから冗談のようなキャラになってしまったので、この辺り少し軽くなってしまいました。
この亜由美は大変な人生だったんですよね。突然わけもわからず異世界に飛ばされ、世界を救うためにマザーを操作し、龍造寺の悪巧みを知ってしまい政争で追い落として神帝になる。その後数年頼る人は誰もおらず、孤独に世界を救うために悪く思われようと頑張る。そこでやっと現れた親密なたくや。
苦労した亜由美がやっと救われるかと思ったら死んでしまい…。現代編では影が薄いヒロインなのですが、異世界編も合わせて考えると、アイリアと同じく報われないキャラで非常に切ないです。
唯一の救いは最後亜由美が信頼できるたくやに出会って死ねたことでしょう。いわゆる不幸中の幸いではあるのですが、誰も知り合いがいない、頼る人がいない世界で最後に信頼できるたくやに見守られて死んでいったので最後笑顔だったのでしょう。
限界衝突半径と絵理子先生
前回は完全シクロまで何秒とのカウントダウンだったのですが、今回は原作と同じく限界衝突半径まで何秒とのカウントダウンが始まりました。デラ=グラントが地球に衝突するまでのタイムリミットです。完全シンクロと限界半径衝突が同時刻となっており、シンクロした瞬間に事象衝突を避けられない距離になってしまうとのこと。
アニオリで地球から見た様子も描かれており、半透明になったようなデラ=グラントが視覚的に見えていた様子。そのまま絵にするとB級パニック映画のようですが、一応これは原作の設定でも実体化するとなっているのでおそらくこうなのでしょうね。
そして、龍造寺を退治した絵理子先生は強制的に元の自分の次元に転移され始めます。これは絵理子先生の意思に関わらず、次元監査局が目的を達成したと判断したため強制的に発動されたもので、他の次元に干渉しすぎてはいけないからです。まあ、これまで散々干渉して色々な人や物を変えてしまっていますが…。ドラもんのタイムパトロールみたいなものですね。
原作をプレイしているときは、異世界編で困っているたくやを突然助けてくれ、この世界のことや次元のことを詳しく説明してくれた頼りになる絵理子先生でした。そんな絵理子先生とのここでお別れは悲しく、そして不安にもなりました。ここも個人的には切ないシーンとして印象的です。
絵理子先生とここでお別れすると言うことは、そもそも次元が違う世界の人間同士なので、おそらく今生の別れでもう2度と会うことはないでしょう。絵理子先生もまた別の次元で会えれば良いなと言っていましたが無理でしょう。まさに戦友との別れです。このあとたくやは事象の根源に旅立つので、そもそも誰とも会えなくなると言うのは、現時点では誰にも分からないので置いといて…ですが。
私はこのような今生の別れになるであろうシーンに凄く弱いです。これまで凄く仲良くしていた友人や恋人、仲間との永遠の別れになるであろうシーンです。喧嘩したわけでもない、嫌いになったわけでもない。しかし、どうしてもやってくる2度と会えなくなる別れ。めぞん一刻だと五代君とこずえちゃんの別れ。バック・トゥ・ザ・フューチャーだと最後のマーティとドクの別れ。このようなシーンは本当に胸が締め付けられます。
絵理子先生はまさに仲間であり戦友でした。たくやも絵理子先生も目的は違いましたが、それぞれ必死に戦ってきて、その結果共通の敵が現れ共闘。ふざけながらも運命をともにする。
YU-NOはたくやがひたすら運命に抗い戦う主人公で間違いないのですが、じゃあ1人で戦っていたのか、ここまで来られたのかと言うと違います。この物語で仲間と呼べるのは誰かと考えると絵理子先生なんです。絵理子先生も辛い過去とやるべき重大な使命がありました。
そして2人になった
アニメでは儀式が公開イベント化されてしまったことにより、最後にたくやとYU-NO2人になるところも少し雰囲気が変わってしまいました。
原作では密室にたくや、ユーノ、亜由美、絵理子先生、龍造寺の5人しかいませんでした。平川監督がインタビューで語っていたように、最後は世界規模の話なのに狭い密室で行われることを嫌って広くしたい。だから広場で公開イベント化…との考えのようですが、最後にたくやとユーノの2人きりになるところも良かったんですけどね。
最初は5人いたこの場の登場人物が、龍造寺が倒されて退場して4人に。次に亜由美が死亡して3人に。そして最後には絵理子先生が元の次元に強制転移され、たくやとユーノたった2人になってしまいます。
次々と登場人物がいなくなり、最後は世界を救う壮大な話でありながら、狭い密室の中親子たった2人になる寂しさと怖さ、そして不安な気持ち。これは狭い密室だからこそ表現できたのだと思います。しかし、公開イベント化でアニメでは周囲に何百人何千人といたわけです。親子たった2人の静かな時間や空間。そこでおそらく助からないと分かった上での最後のお別れ。このしんみりした空気感がなくなってしまいました。
やはりアニメの演出を見ると、公開イベント化は失敗だったと思います。密室での『緊張感』がまるでなくなってしまいました。
この密室劇の面白さや、次々人数が減っていく不安感は、少しテイストが違いますが、殺人事件もののミステリーで良くありますよね。密室や孤島で登場人物が犯人に次々殺されていき、人数がどんどん減っていく不安感や緊張感。
殺人事件とはまた違いますが、『遊星からの物体X』もそうでした。次々と消えていく登場人物。最後は自分一人になってしまう不安。見ているこっちがドキドキするほど緊張感がありました。原作のYU-NOはこのテイストもありました。だからこそ密室で良かったんです。
世界を救う規模の話なのに密室なのは世界が狭い。だから世界を広くして広場で儀式をやろう。こうする前に、密室劇の面白さを追求して欲しかったです。
デラ=グラントの衝突は避けられず
肝心のデラ=グラントはどうなったかと言うと、結局地球との衝突は避けられませんでした。アニメだと絶対に避けられない現代の地球に事象衝突しそうになるところを、マザーとYU-NOで協力して8千年前の地球に物理衝突させていました。アニメでは前回のシンクロからやたらマザーが絡んできます。原作だとマザーの姿形は一切出ませんでした。
アニメではYU-NOの力で現代の地球に落ちるはずだったところを8千年前に飛ばしたとなっていましたが、原作だとYU-NOは無力で因果の渦に巻き込まれて偶然8千年前に落ちていました。
このアニメは偶然や視聴者が想像で補完する部分をどうも嫌う傾向にあるようで、この辺を意味付けしたり理由を作ることが多かったです。わからないことはわからないでも良いんですけどね。そこに無理矢理な理由付けをしてしまうと余計理屈に合わないことも出てきてしまいます。
今回は事象衝突を避けるために、無理をして8千年前の地球に物理衝突にさせていたので、これまでの巫女とは違い、ユーノは事象オーダーの逆流を始めるとのこと。つまり、これまでの巫女が次元の彼方に飛ばされたことよりも予測不能となり、ブリンダーの木を遡り始めてしまいどうなるのかわからないようです。
結局、アニメではYU-NOの頑張りのおかげで現代の地球に事象衝突せず、知る人ぞ知る史実通り8千年前の地球に物理衝突し、デラ=グラントは消滅してしまいました。
龍造寺のことで重要な説明がカットされていた
今回は最終回だったので、これまでの伏線や謎を全て回収しなければならないのですが、原作であった龍造寺の思念体(面倒なので今後は全て龍造寺に統一)に関する説明で、重要な部分をカットしているところがありました。ここではそのあたり少し補足したいと思います。
龍造寺はデラ=グラントと地球が事象衝突したらどうなるのか。驚くことにこの説明が完全に抜かされていました。前回、亜由美は「事象衝突が起きたらあなた(龍造寺)も死ぬでしょ」と言っていましたが間違いです。死にません。アニメだけ見た方は龍造寺は自殺願望があるキ○ガイに見えているかも…。
では原作だとどうだったのかと言うと、きちんとこのあたりを龍造寺が語ったり、絵理子先生からの説明がありました。本体は龍造寺の中の思念体です。龍造寺の体が滅びてもなにも問題がありません。そして、この思念体は永遠に近い時間を生きることができます。寿命がありません。それこそ何億年だろうが何十億年だろうが…。
2つの世界(宇宙)の事象衝突が起き、そこが『無』になったとしても、また新たなる世界ができるのを、その場で何十億年だろうと待てば良いのです。ブリンダーの木で説明するとどこかで事象が発生し、そこにいつか根が張るのを待てば良いのです。そうしたら龍造寺は誰かの体を乗っ取って活動再開し、また暇潰しに事象衝突でも起こしてやるぜってことです。
事象とか世界とか分かりづらかったら、これを宇宙に変換しても大体概念は合っています。2つの宇宙を消滅させて無になる。龍造寺の中の思念体は寿命がなく永遠に生きられる。事象衝突が起きても生きられる。龍造寺はその場で新しい宇宙ができるまでひたすら待つ。新しい宇宙ができたらまた新たな体を乗っ取って事象衝突を起こしてやる。原作ではこんな説明がきちんとありました。
これはいかに龍造寺が恐ろしい存在であって、生かしておいたら駄目なのかということ。とんでもない能力があること。頭のおかしさがぶっ飛んでいること。これらがわかりますし、『龍造寺が何を考えているのか』がわかる重要な描写でした。ここをカットしたのはさすがに理解できません。前述したように、これではアニメの龍造寺は自殺願望のあるキ○ガイではないですか。
神奈が出てくる大改変
異世界編に行くたくやの目的は『神奈ちゃんを救うため』と大改変をしていましたがここで神奈再登場です。
デラ=グラントが8千年前の地球に落ちたあと、現代編最後のたくやと神奈のシーンへ飛びます。そこで神奈を救うために異世界に行ってくると駆け出すたくや。母との写真を見て思いにふける神奈。この写真で視聴者は神奈の母親がアマンダであることを明確にわかるような作りになっていました。
原作だと勿論ここで神奈は出てこないのでこのようなシーンはなし。アマンダが次元の間に放り出され、マザーが誤差を計算し、龍造寺が現在の時間に換算し直して「ざっと50年と言ったところか…」と言うこの言葉で、アマンダと神奈の親子関係がわかるようになっていました。これも前述したように物語をわかりやすくするための改変でしょう。
原作ではこの言葉とこれまでの神奈の話や写真を思い出してプレイヤーが自ら応えを導き出す造りだったのですが、アニメではその答えをきちんと明示していました。
神奈が写真を見たあとふと横を見ると、そこには異世界から戻ってきたたくやがいました。過去のたくやが立ち去り、その後すぐに未来のたくやが現れるシーンは、バック・トゥ・ザ・フューチャー2のオープニングまんまですね。パクリと言うつもりは全くありませんが、おそらくこれを参考にしていると思います。
原作だとたくやはデラ=グラントと地球が衝突した際、おそらくカオスの矯正が発動。三角山の洞窟に飛ばされ記憶をなくしていました。アニメだとユーノが次元の間に飛ばされた時に冷静にリフレクターデバイスをポチッと押して神奈の所に戻ったのでしょうか。ちょっとこのあたり不思議です。
ここでたくやはやはりしつこいほど神奈は自分の娘だと視聴者に提示していました。「繋がった」、「アマンダ」などとハッキリわかるワードをいくつも出し…。原作だと強制転移されたアマンダを見て、龍造寺は誤差ざっと50年かと言うだけでした。しかし、これだけで神奈のことが思い出され、娘と分かる人には分かるよねと言う洒落た演出。このくらいの仄めかす程度で良かったんですけどね。
たくやは収容所で填められていた首輪にあった超念石を神奈に渡します。デラ=グラントに行って持ってきたんだと全てを悟って涙する神奈。たくやも神奈が見ていた写真を見て自分が神奈の父親であることを理解します。…が、すぐに「俺には行かなくちゃいけないところがあるんだ」とその場を去るたくや。
異世界に行く目的が神奈を救うためであり、4~5年ずっとそのことで頭がいっぱいだったのに…。一緒に住もうと約束までしたのに…。ちなみに、たくやの消え方を見ているとカオスの矯正でこの世界から放り出されたようでした。
神奈はこれで良かったのだろうか?
少しここで疑問なのですが、神奈はこれで良かったのでしょうか…。思い出せば、神奈は『ただ生きることに疲れた』状態であり、そのため毎日無為な生活を送っていました。その結果、『ただ死なないだけ』のために生きていました。つまり、人生に何の目標もない状態でした。そこにこれまで出会った人とはどこか違う、自分を本当に想ってくれるたくやが現れ、『この人(たくや)となら生きることも辛くない』、だからこそ『これからも生きよう』となりました。
ところが今回、たくやは超念石だけを神奈に渡し、「これからも頑張って生きろよ、きっと良いことがあるさ」と、その場から消えてしまいました。それどころか数千年待っている人がいると、他の女性の存在まで仄めかし…。これって神奈の『死なないためだけに無気力に生きる虚しい人生』を解決していないような…。神奈も何故か笑顔で送り出し幸せそうでしたし…。たくや無責任すぎないかい。
生きるのが辛いとあれだけ言っていた神奈が、これから先も生きられる超念石だけを渡されても、なにも問題が解決していないような気がするのは私だけでしょうか。またしても自分のことを気に掛けてくれる人がいない虚しい人生が始まる気がするのですが…。
まあ、この辺は原作も同じようなものだったのですが、他に待っている女性がいることは言いませんでしたし、カオスの矯正でたくやの記憶は消えました。
ところてん方式に他の世界線のたくやが来るので良いんですかね。一応この世界線は神奈とたくやが仲良くなっている世界ですし…。
他のキャラのその後
ここからは暫くアニオリの『その他のキャラの様子』をざっと見せていました。
豊富はどこの誰とも知らない女性に社内でビンタされていました。このことから、豊富は変わっていないんだなとわかりますし、社内だったことを考えると、またなにか出世のために悪巧みでもしていたのかなと。これは想像を駆り立てられるので良かったです。
シュバルツシルト半径(運命)に囚われて死を免れられなかった美月は、龍造寺邸をキャリーバッグを持って出た様子がありました。このことから、もしかしたら美月は死の運命から逃れたか?と想像を駆り立て垂れるのでこれもアリです。
アリなのですが、原作の設定からすると絶対に変えられない運命だったので…整合性としてはどうなのでしょう。気持ちとしては嬉しいのですが…。まあそんな世界もあるかもねと言う、シュタインズゲートで言うと、ダイバージェンスメーター1%を超えた完全に別の世界線だと思うことにします。
キャスターの香織は相変わらずTVに笑顔で出ているようだったので、最後に逮捕された世界線とはやはり別のようです。
澪と結城はセットで描かれており、澪が海外に留学することを結城に言い、それを聞いた結城は澪に告白。澪もまんざらでは無い様子とのシーンでした。これもこんな世界線もあるかなと言った感じでしょうね。ちなみに、何故か澪は今回、海外留学ではなく、ナショナルスクールに行くことに変更されていました。つまり、日本国内の学校なので、境町から離れるだけになったようです。これを見ても別の世界線の話なのでしょうね。
YU-NOは並行世界で色々状況が違う世界があるので、これが全て同じ世界線で起きていると言うわけではなく、『こんな世界線もある』との提示かなと受け取っています。この辺りのアニオリは悪くなかったです。ただ、結城は結構澪に酷いことをしたので、この2人がくっつくのは…。まあ、私が澪好きなのですが…。
最初のユーノと再会
そして話は本筋に戻り、カオスの矯正で飛ばされたたくやは最初の三角山に戻ります。そこでユーノの元へ向かうのですが、このときのたくやは高校生の姿に戻っていました。原作だとカオスの矯正でここに来たわけではなく、デラ=グラントの事象衝突で飛ばされたので、姿は異世界のままだったと記憶しています。しかし、アニメはカオスの矯正で元に戻されたので姿も元に戻ったと言うことなのでしょうか。
すぐにその場からユーノの元に向かっていましたが、儀式前夜に渡したリフレクターデバイスの宝玉は使っていませんよね。あれはなんだったのでしょう。原作だと儀式直前にユーノにリフレクターデバイスの宝玉を渡し、三角山の洞窟から出たところでリフレクターデバイスでロード。するとユーノの所へ行く流れでした。
ユーノが宝玉を見て、「これのおかげで会いにこれた」と言っていたので、どうもアニメだとリフレクターデバイス→宝玉へ移動との原作とは違い、宝玉→リフレクターデバイスとの流れのようです。つまり、ユーノが宝玉を持っていたから、リフレクターデバイスを持っているたくやの側に出現できた…と言うことのようです。
確かに原作だとユーノが三角山に現れたのは謎だったので、この辺りの意味づけとしてはアリ…なのかな。しかし、そんな機能は原作でもリフレクターデバイスや宝玉にはありませんでしたし、アニメでもこれまで1度も仄めかしもされていないで、やはり唐突な印象があります。
デラ=グラントの真実
ユーノに再会したたくやは、デラ=グラントがどうなったかを聞きます。8千年前に落ちたことや、この因果がループになってしまっていることなど。ではループってなんでしょう。ここは結構面倒なんですよね。多分合っているとは思いますが、簡潔に書くと下記のようになります。これは原作でも明確に説明してくれるわけではありません。
- 数千万年前(原作だと数十万年前)にデラ=グラントが別次元へ避難する
- 400年ごとに巫女の儀式で事象衝突を毎回回避する
- 8千年前の地球にデラ=グラントが物理衝突(*1)
- リフレクターデバイスを使ってたくやが色々動く
- たくやが異世界に行く
- 異世界でたくやが色々動く(*2)
- *1に戻る
*1と*2が延々ループしています。これが絵理子先生が言っていたブリンダーの木の一部がループ構造をしている仕組みです。この間を延々繰り返しているループ構造です。なので、このたくやとユーノはループ最初の2人ではありませんし、この後も別のたくやとユーノが同じ事を繰り返します。このたくやとユーノの再会シーンの裏ではまさに今、別のたくやが世界線を移動しながら色々動いており、デラ=グラントが地球に接近しています。
このように改めて考えるとループ構造は恐ろしいです。ユーノもいつかこのループを抜け出せると良いなと言っていました。つまり、実は今回もループ構造を抜け出すことに関してや、デラ=グラントを衝突させないことに関しては失敗です。いつか成功するたくやとユーノは現れるのでしょうか…との話です。
このことを事象の間から見て知っていた有馬広大は、衝突を避けるためにたくやにリフレクターデバイスを送りました。マザーもおそらく知っていたので、ユーノを生ませるべくセーレスをボーダーに送りました。セーレスもおそらくその役割を知っていたのでしょう。…と言う流れがこのYU-NOのループ構造の謎になります。まあ、突き詰めるとループ物は最初はどうなっているかの、鶏が先か卵が先かの矛盾に行き着きますが…。その辺はSFなのである程度妥協して納得しましょう。
これまでの伏線覚えていますか?
原作だとゲームなので時間や文字制限がないため、より詳しい説明が丁寧にされていたのですが、アニメはこの辺り少し説明不足の面もあるので、別途考察記事にまとめるつもりですが、少しここでこれまでの伏線や謎をおさらいしておきます。
デラ=グラントは8千年前の地球、それも境町を中心に衝突しました。そのため、デラ=グラントにしかないはずの超念石の鉱脈が境町の地下にありました。また、ガーゼルの塔も境町に存在します。ガーゼルの塔が機能そのままにそこにあるのは不思議ではあるのですが…。
ただ、原作でもハッキリとは説明されていませんが、アニメのデラ=グラントのように、隕石が衝突するような物理衝突ではなかったと思います。あれでは地球の生物が全滅してしまいます…。
物理衝突とはなっていますが、突然境町近辺に実体化して半分融合するような形になったのだと思います。この辺りSFはあくまで空想科学なので、ある程度は『そんなものかな』で納得してください。科学誌ではないですからね。
最初の頃に出てきた渡来人(高天原民族)の話を覚えているでしょうか。本当の歴史では中国大陸や朝鮮半島から渡ってきた人たちのことで、彼らが日本の礎を作ったと言われています。しかし、有馬広大の仮説は違っていました。400年周期説にも関連するのですが、実はこの8千年前のデラ=グラントの衝突時に生き残った者たちこそが渡来人ことデラ=グラント人だったのではないかと言うことです。
ちなみに、400年前に飛ばされてきた人にはたくやの母親であり、その時巫女だったケイティアこと恵子も含まれています。
アニメでは三角山の地底湖で出てきた幽霊だか思念体は母親の恵子になっていましたが、原作では何故かまだたくやと出会っていないセーレスが三角山の地底湖で出てきました。何故かと言うと、今回の話で明らかになったように、8千年前の地球のデラ=グラントが落ちたので、セーレスのお墓も一緒に地球に落ちました。なので、このときまだ出会っていないセーレスがたくやを救いに出てきたのだと思われます。ここは原作でも明確な説明はないんですけどね。
ユーノとともに事象の根源へ旅立つ
前回ユーノと出会ったときはユーノだけが目の前から消え、たくやは困惑するしかありませんでした。しかし、今回はユーノが誰なのか、この後どうなるのか分かっているので、しっかりとユーノを抱きしめ、今度は一緒に事象の彼方に旅立ちます。そしてここでエンディングです。
ED後のCパートはあったものの、最終回なのに特殊EDは使いませんでした。前述したように、最近のストーリーアニメで最終回に特殊OPやEDを使用しないのは珍しいです。これも平川監督曰くコストカットなのでしょうか…。最終回くらいは特殊OPとEDが見たかったです。
ここは話をぶった切って欲しくなかったです。昔のアニメは最終回でも普通にEDが流れることが普通でしたが、いつからか特殊EDや特殊OPをどのアニメも使う用になりました。これはフィナーレとしての演出が優れていて良いんですよね。いつもと違う特別感も出ますし、話の流れを切らずに最後の1秒まで目が離せませんし余韻も残ります。ユーノは最後の最後に通常のEDを流してしまったので一旦集中が切れてしまいました。
事象の根源に辿り着く
たくやとユーノはどうなったかと言うと、事象をひたすら遡っていき、最終的には事象の根源へと辿り着きます。その途中、事象の間から有馬広大が語りかけてきていました。ここは原作と同じなのですが、有馬広大の横には恵子ことケイティアが立っていました。原作では有馬広大1人しかおらず、まだ恵子を探している途中だったようですが、目的を果たしたのですね。このアニオリはアリかなと思います。
事象の根源とは…。もはや哲学の域に達しているのでわかりません。ただ、宇宙の始まりと言われるビッグバンよりもっと前の物事が無から始まる何か…です。これは科学者は誰もがそこになにがあってどうやってできたのか知りたい永遠の謎です。そこにたくやとユーノは辿り着いてしまいました。有馬広大もそこに辿り着きたいのですができていないので、たくやたちを羨ましいと言っていました。
周囲は真っ暗だったり、ブリンダーの木が芽吹いたシーンだったり、抽象的なシーンで意味わかりませんよね。まあ、ここはさすがに誰にも分かりませんし、詳しく描いても嘘くさくなってしまうので描けないのでしょう。また、描かなくて良いシーンでもあります。たくやたちはなにかを見ているとは思いますが、私たちには理解できないしわからないのでこれで良いんです。
この辺り抽象的だったり哲学的な話はこのYU-NOが発売された時代を見るとエヴァによる影響であろうこと思われます。原作者の剣乃ひろゆきさんも神奈は綾波からヒントを得たキャラだと語っていました。エヴァは少なくともアニメファンの間では一大ブームになったので、その後数年はこんな抽象的な話が多くなりました。
この頃の私がパッと思い付く抽象的だったり哲学的なアニメだと、ラーゼフォン、少女革命ウテナなどそうです。いわゆるセカイ系と言うやつでしょうか。
ちなみに、ブリンダーの木にユーノが名前を決めていて、たくやもなんて名前か分かると言っていましたが、ハッキリその名を言わないところで終了です。ここは視聴者の想像にお任せします的お約束です。
明確に答えがあるわけではないのですが、ここは素直にブリンダーの木かなと思っています。あとはセーレスも候補でしょうか。ユーノとたくやが共通で思うことですからね。ただ、原作のたくやはセーレス一筋だったのを、アニメでは神奈一筋に変えているので、アニメだけ見ている方はいまいちピンと来ないシーンかもしれません。
少なくともここでたくやとユーノは事象の始まる瞬間を見たことになります。時間の概念もないようですし、彼らはもしかしたら神になるのか、はたまた新世界のアダムとイブか…なんて想像をかき立てられます。
あの伏線はどうなった?
ところで、未回収の伏線っぽいものがあるのですが、それはどうなったのでしょう。まあ些末なことなのでどうでも良いと言えばそうなのですが…。
- セーレスの死体を持ち帰ったこと
- バズク所長の棺桶
セーレスの死体を近衛兵が持ち帰ったのには意味があると思ったのですが、そのまま放置でそれ以降一切出てきませんでした。なんだったのでしょう…。
収容所のバズク所長が生存しており、巫女の棺の中に閉じ込められました。その巫女の棺を神帝の側近がやたら取りに行けとせかしていたのですが、こちらもあれ以来放置。バズクは再登場してたくやたちとまた敵対すると思ったんですけどね。
遂に終わった
遂に私の大好きだったYU-NOの2クールアニメが終わりました。個人的な評価から書くと…失敗だったと思います。アニメとして見てアラが目立ち、原作の面白さを半分くらいしか表現できていなかったと思います。アニメだけ見た方はどんな感想なのでしょうね。私は原作を何回もプレイしているほど大好きなので、フラットな立場からはもう見られません。
原作との比較を多く描いてきましたが、決して最初からアニメを貶すつもりでいたわけではありません。面白ければ面白いと書こうと思っていましたし、実際にそうしていたつもりです。ただ、褒めるシーンが単純に少なかったんです。毎回素直に感想を書くと、どうしても原作から劣化した部分が多く、それを書くしかありませんでした。23年前のゲームをこの時代にアニメ化してくれて感謝は勿論しています。まさかのYU-NOアニメ化ですからね。当時は勿論、アニメ化するなんて夢にも思っていませんでした。
完全に予想外だったのは、一本道で選択肢すらない小説状態の異世界編で、現代編を遙かに超えるアニオリを入れてきたことです。現代編も点数にすると40点くらいでした。しかし、異世界編が始まる前は「異世界編は一本道だからそうそう外れないだろう、ある程度持ち直すだろう」と思っていました。ところが蓋を開ければまさかのアニオリばかり…点数にすると20点くらいに下落…。これはさすがに原作プレイ済みの者として予想できるはずもなく…。おそらく原作組の方は皆ビックリしたのではないでしょうか。
現代編は特殊なゲームのシステムをアニメで再現するのは難しいので、そこを色々組み替えてアニオリになるのはわかるんです。ただ、変える必然性のない異世界編まで変えまくったのは正直理解できません。監督のエゴとしか思えません。原作者の剣乃ひろゆき氏も生前語っていたように異世界編が未完成だったのはそうだと思いますが、それは主にゲームシステムの話であって、物語のことではないと思うんですよね。この辺りプレイヤーとアニメ監督の間で捉え方の乖離があったように思います。
総評
見終わって思うこととしては、原作準拠で改変を抑えて作っていたらどうなったのかなあ…というifの念が残ってしまったことです。これだけ改変したら物語の面白さや本質が変わってしまうのは当たり前です。なら、シュタゲのように原作の魅力を損なわないように再編し、丁寧に作られたらどうなってたんだろうな…と。これはもう叶わない夢になってしまいました。
ただ、この特殊なゲームをアニメ化するのが難しいのはその通りです。アニメ化のハードルは相当高いです。なにせゲームのストーリーに、本来プレイヤーが行っていたセーブとロードを組み込んだ話ですからね。さらにそれで並行世界ものだり、タイムスリップ要素もあり、異世界もあります。難しいのは分かるのですが、だからこそ原作準拠でやって欲しかったんです。複雑に絡み合った知恵の輪を一旦バラし、そこに新しい物を加えてまた組もうと思ったら難しくなるに決まっています。
私の中では原作のYU-NOに填まりまくってもう10回以上はプレイしているので評価は揺るぎません。なので、途中からアニメはどんなおかしな改編を入れてくるんだろうか…ドキドキとの気持ちで見るようになったことは否めません。それでもYU-NOは大好きなのでずっと見ていることができました。
半年間お付き合い有り難うございました。おかげさまで全話レビューをすることができました。原作との比較を多く書いたため、アニメを純粋に好きな方や、意見が違う方は不快な思いをされたかもしれません。その点については申し訳ありませんでした。原作好きの1ファンが見ると、こういう見方もあるんだな程度に捉えておいてくれると助かります。
こんな人にお勧め
- タイムトラベル、タイムリープものが好きな人
- 異世界ものが好きな人
- 壮大な話が好きな人
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