今回レビューするのは、SONYさんのICレコーダー『ICD-UX560F』です。
最近は講演会やセミナーに行くことが多く、そこではスマホのボイスレコーダーアプリを使用していたのですが、それでは不満になりこちらの専用ICレコーダーを購入しました。
具体的には距離が遠いと声を拾いづらいこと。そして最大の理由はそのセミナーや講演会でVTRが流れると、さらにそのVTRの声を拾ってくれなくなることです。これをなんとかしたく、評判の良いこと、ロングセラーであること、ソニー製であることなどを理由に本ICレコーダーを選択しました。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
特徴
講演会やセミナーなどで便利な、声を狙い録りできる「フォーカス録音」搭載。指向性が強く、前方の録音対象をしっかりフォーカスして録音します。さらに遠 くの音や小さな音を聞きやすい音で録音できる「Sマイク・システム」、ノイズを低減する「ノイズカットフィルター」や「ローカットフィルター」も搭載。大 切なシーンをしっかり録り残せます。
発言者の位置関係を強調して、声が重ならずに聞こえる「ワイドステレオ録音」搭載。また「クリアボイス機能」により不要なノイズも抑えて一人一人の発言がはっきり聞こえます。さらに再生速度の調節などができる「書き起こし用再生」を使えば、インタビューの書き起こしや議事録作成なども快適に行えます。
薄さ約10.5mm、重さ約52gのコンパクトなボディは持ち歩きにも便利。約3分の充電で約1時間の録音ができる「急速充電」にも対応しているので、急な会議などの際もすぐに使えます。
長所と短所
- ◎シンプルで使いやすい操作性
- ◎PCに直接USB接続できるダイレクト接続が便利
- ◎集音性能や音質はスマホアプリと段違いに良い
- ○色々なシーンに対応した録音モードがある
- ○音を感じて録音を開始、停止するVOR(Voice Operated Recording)録音
- ○無劣化のリニアPCM録音形式対応
- ○一般的なMP3形式での長時間録音が可能
- △内蔵ROM4GBは少ない
- ○SDカードで容量増設可能
- ◎バッテリー持ちは192kbps録音で約27時間
- ○意外に便利な専用ポーチ
外観
パッケージ外観
セット内容
パッケージ内容は画像の物で全てになります。
ICレコーダー。
動画
スペック
- 録音形式:リニアPCM/MP7
- 再生形式(リニアPCM):LPCM 44.1kHz/16bit
- 内蔵メモリー:4GB
- 内蔵マイク:ステレオ(Sマイクシステム)
- 対応外部メモリー:microSDHC/microSDXC
- MP3 ステレオ(192kbps):50Hz - 20,000Hz
使用した感想
◎シンプルで使いやすい操作性
操作は非常に簡単です。正面には録音や停止、ホーム、オプションボタンなどが大きなボタンで設置されており、ガイドの文字も日本語でハッキリ書かれていて迷うことはないでしょう。
正面以外の操作ボタンは側面に付いており、こちらでは電源のオン/オフ、音量、USB端子の射出/収納と、ハードウェアな操作ボタンがあります。
特に録音を開始するまでの操作は非常に簡単で、右側面の電源スイッチを下にスライドして電源オン。電源がオンになったら正面の録音ボタンを押す。たったこの2ステップであっと言う間に録音が始まります。
ちなみにスライドを下に下げると1秒で電源が入ります。ICレコーダー購入に当たって他の機種も色々調べましたが、中には電源の立ち上がりまでに時間が掛かる機種もあるようです。しかしこれはあっと言う間に電源が入るので、急いで録音したいときにも問題ありません。1秒で電源が入り、その後録音ボタンを押すだけなので、思い立ってから2秒程度で録音を開始できます。
スマホのように1時間程度はPCのスタンバイモードのような感じになっているようです。2,3時間たってから電源を入れると、「電源を入れています」とのそれまでにないメッセージが表示され、立ち上がりまでに2秒程度掛かりました。とは言え2秒程度なので、ディープスリープに入っても立ち上がりが早いのには代わりがありません。
逆に電源を切るときはスライドを下に2秒ほど入れっぱなしにします。この辺りの操作性も素早くて便利。このような機器の場合、3秒から5秒くらい押しっぱなしにしないと電源が切れない物もよくあります。
録音中に間違ってボタンを押す誤操作を防止したい場合、このスライドを今度は逆に上にスライドさせると『ホールド』となり、どのボタンを押しても操作を受け付けなくできます。ポケットやバッグの中に入れたまま録音する場合、不意な動作でボタンが押されてしまうことがあるので、ホールド機能はICレコーダーには必須です。ホールドを解除するときは上に固定されたスライドを真ん中に戻すだけです。
このように操作体系は非常に簡単です。説明書を見ていませんが全て触って理解できました。このようなICレコーダーを1度でも触ったことがある方なら説明書要らずなほどです。
◎PCに直接USB接続できるダイレクト接続が便利
ほぼ全てのICレコーダーは、録音したファイルを編集したり保存しようとする場合、PCとUSB接続する必要がありますし、充電の際もUSB充電器に接続する必要があります。この頻繁にやる動作でいちいちUSBケーブルを挿して抜いて…とするのは面倒なのですが、このICレコーダーはUSB端子が内蔵されており、右側面のスライドを操作するとそのUSB端子が飛び出してきます。なのでUSBケーブルは必要とせず、このICレコーダー本体を直接PCやUSB充電器に差し込めます。
地味に嬉しい機能としては、USB端子をICレコーダー内に収納しているときは、きちんと埃カバーがされることです。この埃カバーは自動で開閉されます。
USB端子を内蔵している。たったこれだけのことなのですが、これは物凄く便利です。私は1回録音する度にPCにファイルを移動して保存、編集しています。ちりも積もれば山となるの典型で、この頻繁にやる動作の一部が簡略化されることの恩恵は計り知れません。
USB端子は飛び出させた状態でカチッと固定され、外からUSB端子を押しても戻りません。再びICレコーダー本体内に戻すときは、サイドスライドボタンを操作する必要があります。作りが悪い物だとUSB端子が全く固定されず、外から押すと中に引っ込んでしまう物もあるんです。そうするとどうなるかというと、USBポートに差し込むときに、その差し込む力でUSB端子が戻ってしまうんです。なので、USBポートに差し込む際は指でUSB端子を押さえながら…なんて面倒なことに…。実際、海外製のUSBメモリでこんなことがありました。しかしこのICレコーダのUSB端子は飛び出た状態でカチッと固定されるので、そのまま気兼ねなくUSBポートに差し込むことができます。
直接PCのUSBポートに差し込むと画像のような感じになります。ただちょっと不安定ですね。真っ直ぐはまらずやや斜めになってしまっています。この状態で気を付けなければならないことはここに力を掛けてはいけないこと。ICレコーダを差し込んでいるのを忘れ、間違ってここに上から力を掛けてしまうとバキッと端子が折れてしまうので要注意。他に接続できるUSB端子はないので、ここが壊れたらPCとファイルのやりとりができないどころか充電もできなくなってジ・エンドです。
このICレコーダーにはPCで使用する音声編集ソフトが付属しているのですが、それはCDで付属しているのではなく、このICレコーダー内のフォルダ『FOR_WINDOWS』内にあります。この中にあるファイルをPCにコピーして実行してください。
音声が録音されるとデフォルトだと『REC_FILE』内の『FOLDER01』にファイルが精製されます。ICレコーダーで録音ファイルを聞くことも可能ですが、PCで操作したい場合、ここにでき上がったファイルをPCにコピーなり移動してください。
ちなみに録音フォルダは任意で作成可能ですし、デフォルトの録音先も設定で変更可能です。フォルダの作成や削除はICレコーダー本体でもPCからでもできます。
◎集音性能や音質はスマホアプリと段違いに良い
さて、肝心の録音性能、音質ですが、スマホ(スマホアプリ)で録音するよりハッキリと人の声を録音することができました。少なくとも1万円追加してICレコーダーを購入した価値はありました。
詳しくはアップした動画に比較音声が入っているのでお聞き頂けばわかると思います。TVの音声を30cmの距離と2mの距離で、本ICレコーダー、スマホ両方同条件で録音してみました。人の声がハッキリ録音できるだけではなく、周囲のノイズが明らかに少なくなっていました。特に距離が遠い2mの時の方が差が顕著だったので、ICレコーダーは距離が遠くてもしっかりと人の声を録音してくれるってことですね。スマホは距離が離れればば離れるほど人の声がわからなくなりました。
ちなみにICレコーダーとスマホの音声ファイルはPCに移動した後、厳密に同条件にするためGainをMP3Gainで89dbに統一させました。MP3でGainを統一する前の素のファイルの状態だとスマホで録音した方はとても人の声が聞き取れない状態でした。
「Gainってなに?」というような、PCや音声の編集に詳しくない方の場合、ここを弄るのも面倒でハードルが高いと思うので、なおさらスマホより本ICレコーダーの使用をお勧めします。本ICレコーダーはでき上がった素の音声ファイルの時点でGainを弄った状態とほぼ変わりませんでした。
簡単に書くと、音声ファイルを弄らずそのままの素の状態を比較すると、前述の動画に挙げた差とは比較にならないくらい声の拾い方に差があります。Gainを弄らないとスマホはとても聞くに堪えない状態だったのに対し、本ICレコーダーは素のままでほぼ動画の状態でした。PCや音声の編集に詳しくない方ほどICレコーダーをお勧めします。なにも弄らなくてもそのままでハッキリ声を拾ってくれます。
○色々なシーンに対応した録音モードがある
基本的には機械任せのおまかせボイスで良いようですが、その他シーンに合った録音モードを任意で選べるようになっています。会議だったり講演だったり音楽だったりインタビューだったり、複数のモードがあるので、自分で使用していく打ちに最適と思われるモードを見付けるのも楽しいです。
ただ『おまかせボイス』だと、他に大きな音が別方向からすると、録音途中でも『そっちの音を録音しやすいように設定が変わる』ようです。例えば講演会を録音していても、自分や隣の人がくしゃみや咳をした場合、そちらをしっかり録音しようとするようで、講演の音は一瞬小さくなったりと変化しました。とは言え、またすぐ講演の音を録音するように変わります。近くで別の大きな音がすると、一瞬撮りたい音が小さくなることもあるかもしれません。
この辺りは要設定でしょうか。ノイズキャンセリングなども影響しているような気がするのでもう少し弄ってみたいと思います。
○音を感じて録音を開始、停止するVOR(Voice Operated Recording)録音
音が出たときのみ録音し、音がなにもしていない時には録音を止める自動録音機能もあります。私はあまり使用しない機能ですが、例えば部屋に据え置きしてこのモードにしておくと、誰かが入って来て喋ったりTVを見ているときだけ録音するなんて使い方が可能です。防犯対策にもなる機能かと思います。
○無劣化のリニアPCM録音形式対応
録音できる音質は下記の通りとなります。
- LCPM
- MP3 192kbps
- MP3 128kbps
- MP3 48kbps(MONO)
LPCMとはMP3が人に聞こえない非可聴部分をカットする圧縮録音なのに対し、人に聞こえない音も録音する圧縮しない無劣化の録音です。音質に拘りがある方や、その後バリバリ編集する方には良いのではないでしょうか。
私はMP3の192kbpsどころか128kbps出も十分です。ちなみに一般的にCDと同等品質と言われているのが128kbpsで、ほとんどの人がCDと聞き分けできないと言われているのが192kbpsです。特に拘りがなければ、音質、録音時間ともにバランスの良いMP3の192kbpsがベストな選択肢だと思います。音質の変更は設定から簡単に変更可能です。
○一般的なMP3形式での長時間録音が可能
前述したようなMP3の192kbpsで何時間録音できるかというと設定から確認することができます。画像のように41時間14分41秒です。これだけ録音できれば十分でしょう。ちなみに私は内蔵ROM4GBを選んだのですが、8GBのバージョンもあります。勿論その場合は当然録音時間が倍になります。
△内蔵ROM4GBは少ない
前述したように私が購入した本ICレコーダーは内蔵ROMが4GBです。だからこそ1万円を切る安さなのですが、SDカードを必要とせず本体のみで完結させたい方や、ヘビーに使用したい方、PCにファイルを移動させずに使用する方などは8GBタイプを購入した方が良いかもしれません。
○SDカードで容量増設可能
私の場合は前述したように小まめにファイルをPCに移動させるので、40時間以上の音声ファイルをため込むことは100パーセントありません。なので、安い4GBタイプを購入しました。どうしても容量が足りなくなればSDカードを別途購入して差し込めば良いだけです。今時SDカードは32GBを千円程度で購入できます。
◎バッテリー持ちは192kbps録音で約27時間
バッテリー持ちはMP3の録音で約27時間。LPCMの録音で約23時間です。どちらにしても24時間前後持つので十分すぎるほどのバッテリー持ちです。ただしスピーカーで音声を聞くとガンガンバッテリーが減っていきますので要注意。約5時間しか持ちません。ヘッドホンだと30~45時間持つのでスピーカーのバッテリー消費が凄いようです。
スピーカーのバッテリー持ちが悪いのは使用するとある意味納得がいきます。というのも、この小さいスピーカーの割にかなり音が大きくハッキリ聞こえるからです。音質はさすがにこのサイズなのでそれなりなのですが、本ICレコーダーだけで録音したファイルを大音量でハッキリ聞けるようにするためここは無理したのだと思われます。しかしそのおかげでPCにファイルを移動して編集したりせずとも、本ICレコーダーだけで録音、聴取ができ、人の声もハッキリ分かる大音量が可能なので、聞きながらの書き起こしも可能です。PCに疎い方の場合、ICレコーダーだけで全て完結させたい方も多いと思いますが、その要求にもしっかり応えるスピーカーです。
○意外に便利な専用ポーチ
意外と便利なのが付属品の専用ポーチです。写真のように本ICレコーダーがスッポリと入ります。なおかつマイクとスピーカー部分だけはポーチに被らず露出している考えられたジャストサイズ。マイクとスピーカーを邪魔せずこの状態で録音も聴取も可能です。
このような機器の場合、バッグやポケットに入れていると擦り傷でどんどん汚くなってしまうので、私は基本的にポーチに入れた状態で使用しています。
総評
とにかく簡単に使えるICレコーダーです。電源を入れる、録音ボタンを押す。これだけで録音が開始されますし、その時間はたったの2,3秒です。立ち上がりが爆速なので、急いで録音したい場合は勿論ですが、録音する際にストレスが一切ありません。中には起動から録音するまでに20秒や30秒掛かる物もあるのですが、急いでいなくてもこれだとさすがに鬱陶しいんですよね…。
最新のICレコーダーだとスマホとBluetoothで連携し、専用のスマホアプリで録音や停止などの操作ができる物もあるのですが、ICレコーダーにその機能は今のところいらないかな…と思い、コスパが高くロングセラーのこちらのボイスレコーダーを購入しました。
USB端子が内蔵されており、直接PCやUSB充電器に差し込めますし、いかに簡単に使えるか考え抜かれた物だと思います。それでいて安心のソニー製なので、音質もスマホとは比べものにならないほど良く、ハッキリと人の声を拾ってくれ、周囲のノイズもびっくりするくらい低減され、そのおかげで更に声が聞きやすいという好循環を生んでいました。
これまではスマホのボイスレコーダーを使用していたのですが、はるかに人の声を拾ってくれるようになったので良かったです。1万円の価値分は間違いなくあると思います。
こんな人にお勧め
- スマホのICレコーダーの集音性能では不満な人
- 操作が簡単なICレコーダーが欲しい人
- 起動から録音まで2,3秒でできるICレコーダーが欲しい人
- PCに直接USB端子で差し込めるICレコーダーが欲しい人
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