自転車How to漫画「のりりん/鬼頭莫宏」レビュー

概要

のりりん

イベント企画兼広告代理業を営む地元の零細企業に勤めるノリこと丸子一典は自動車好きで公私ともドライブするのが日課であったが、ある日、交差点を右折する際に対向車線をタイムトライアルバイクで走っていた女子高生、織田輪をあやうく轢きそうになり、警察沙汰を避けたかったため免許証を輪にあずけてしまう。その後、呼び出されて合コンに参加した友人達を乗せているときに杏真理子に酒を口移しされ酒気帯びとなり、その直後に警らに遭遇。定員超過と免許不携帯で免許証取消が確定してしまう。

 

ノリは、それまで早く走れないという理由づけ、その実は高校時代の友人三ツ渕進との確執で、自転車には乗らずにいたが、織田家に唆されて自転車に乗る(ポタリングする)ハメになる。

 

やがて、織田家の営むラーメン屋「輪」の常連客、等々力潤との自転車勝負などを経て、丸子の仲間たちも自転車に乗りだし、ツーリングやロードレースに参加して行く。

 

三ツ渕進との再会をきっかけに、輪の好きな人の秘密、ノリが自転車に乗らない理由の秘密を賭けた、輪とノリの競争が行われる。輪は自身の初恋の相手が三ツ渕だと思っていたが、それが実はノリだったことに気付く。ノリの後ろを走っていることが楽しいと、賭けを忘れかけていたが、ドマチの余計なひと言で我に返り、一気に抜き去っていった。

 

夏休みが終わり、自身の身の丈にあったスピード、それを他ならぬ自分の肉体が産み出しているという快感。ノリと倫は相変わらず2人で自転車通勤/通学をする。

 

How to本

こののりりんは、鬼頭莫宏さんの自転車を題材にした爽やかなHow to漫画です。鬼頭莫宏さんの爽やかな漫画というのが信じられないかも知れませんが、実際にドロドロした話は一切出てこず、世界が混沌とすることもなく、誰も死にません…。珍しいです。

 

実際にはHow to本とは謳っていないのですが、読めば読む程How to本です。漫画で読む日本史、漫画の偉人伝、アニメで言うとまんがはじめて物語など、ああいった類いの「読むと知識が入ってくる」系です。とは言っても、説教臭いわけではなく、漫画としての体や面白さのまま、気付いたらロードバイクの知識がガンガン入ってくるので、結果論で言うとHow to漫画ってことなので、肩肘張らずに普通に漫画として面白かったです。

 

ロードバイクってパソコンの自作みたい

物語中盤で主人公の丸子(まりこ)一典が、ロードバイクを自作(バラバラのパーツを組み立てる)するのですが、これを見て思ったのがパソコンの自作みたいだなと。私の一つの趣味がパソコンの自作なのですが、これもバラバラのパーツをいくつか組み上げますし、規格によって組み合わせが出来る物と出来ない物がありますし、メーカーによって特徴がありますし、これにはこれで組めとのパターンもありますし、「プラモを組むより簡単」とのフレーズも一緒でした。

 

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分かりやすく説明させたらピカイチの漫画

こののりりんを読んで、鬼頭莫宏さんは分かりやすく説明させたらピカイチの漫画家だなと再認識しました。

 

過去の漫画でも、現状の説明やキャラクターの考えを、漫画の吹き出しの限られた文字数で、わかりやすく伝えるのが凄く上手くて、引き込まれることがありました。この妙にキャラクターの台詞に引き込まれる一つの要素として、説明上手だって事があったんですね。How to本にもなっているこの漫画では、説明と言うより解説レベルの台詞が必要になっているのを読んで、その説明の上手さに納得しました。

 

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読者と一緒の目線で主人公が成長していく

このパターンはよくあるのですが、こののりりんは、ロードバイクに関して何も知らない主人公の丸子が、徐々にロードバイクの知識を付けていき魅力にはまっていくので、完全に読者の生き写しと言うかクローン状態です。おかげで主人公と自分をダブらせる事が出来るので、主人公が理解していく=自分も理解していくとの流れが見事マッチしていて、錯覚なのですが、まるで自分もロードバイクの全てを知ったかのような気持ちになってしまいます。

 

やはり独善的なキャラやセリフが

鬼頭莫宏さんの漫画の大きな特徴の一つに、突き抜けた独善的なキャラやセリフの存在が挙げられるのですが、今回は楽しい自転車のHow to漫画であり日常漫画なのですが、それでもこの独善的な理屈を振りかざすキャラやセリフが存在しました。もはやこれ無しでは描けないないんですね。これが好きとの人もいるでしょうが、これが苦手で読めない人もいるでしょうね。

 

勿論今までの漫画のように、その独善的な理屈がメインテーマの漫画ではないので、あくまでたまにさらっと出てくる程度ではありますが、「なに言っちゃってんのこの人」と思うシーンがいくつかありました。

 

恋愛要素は少ない

男女が出る日常の自転車漫画なので、恋愛要素もあるだろうと思われる方がほとんどだと思いますが、恋愛要素は凄く少ないです。あっても、「あの人が好き」、「告白しようかな」、「出来なかった」程度の、恋愛に発展する以前で、ことごとく話が終わってしまいます。

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あくまで自転車How to漫画を重要視しているようで、単純にこういった恋愛要素を入れる時間やページ数が、物理的に足りなかったんだと思います。それくらい終始「自転車とは」の話で埋め尽くされていました。

 

自転車漫画というジャンル

自転車漫画と言えば、今最も人気があるのはぶっちぎりで弱虫ペダルでしょう。こちらはスポ根物なので、自転車の知識があろうがなかろうが楽しめる漫画です。一方こののりりんは、弱虫ペダルとは対極にある自転車漫画です。サラリーマンが仕方なく自転車に乗り始め、周りから「知識」を植え付けられ、生活の中で「趣味」のロードバイクを楽しむ。競技自転車が題材の弱虫ペダルとはだいぶ毛色が違います。

 

言ってみれば、弱虫ペダルは自転車に乗る人間を描いた人間ドラマなのですが、こののりりんは、自転車という道具そのものにスポットを当てた話です。「自転車漫画」との視点で見ると、もしかしたらこののりりんの方が正統派自転車漫画かも知れません。

 

趣味としての自転車

最後までこののりりんは趣味としての自転車の話で終わりました。最後のパートで、1度だけ草レースに出ましたが、それも趣味の域を出ない物で、弱虫ペダルとはまた違った面白さのある自転車漫画でした。

 

最近、自転車への取り締まりが厳しくなり、ロード乗りも増えているので、そういう点からも、ロード乗りはどうするべきなのか、自転車に乗る際のルール、注意点なども、How to漫画であるこののりりんに詳しく出ているので、役に立つんじゃないでしょうか。

 

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その意見に賛成するかどうかは別にして、この鬼頭莫宏さんは、まず最初に結論を出し、そしてそれは何故なのか、どうしてなのかと「説明」させたら、おそらく現在の漫画家の中ではトップレベルなので、自転車そのものについてや、自転車に関する話で、本当に分かりやすく読めました。作者自身も自転車が趣味みたいですね。

 

作者=陽子

多分これは作者の鬼頭莫宏さんが、自転車の魅力を伝えたくて描いた自転車伝道漫画ですね。だからこそ、自分の持っている知識を噛み砕き、わかりやすく主人公の丸子に説明している体を取っているのでしょう。

 

また、その観点から考えると、作者は自転車伝道師と言われる、ヒロイン倫(りん)の母親である陽子ですね。陽子のキャラを借りて作者の鬼頭莫宏さんが、自転車の素人である丸子(読者)に説明する。魅力を伝える。こんなスタイルの漫画なんだと思います。

 

弱虫ペダルは熱いスポ根物でしたが、これは淡々と進む自転車How to漫画で、これはこれで面白かったです。また、世界が混沌に陥らない日常漫画鬼頭莫宏さんが描いているので、そういう意味でも貴重でした。

 

こんな人にお勧め

  • 自転車漫画が好きな人
  • ロードバイクに興味がある人
  • ロードバイクについて知識を得たい人
  • 鬼頭莫宏さんの爽やかな漫画が読みたい人

 

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