目次
あらすじ
裸一貫から莫大な財をなした、川手家に一家皆殺しの予告状が届く。予告通り第一の殺人が実行され、次女が変わり果てた姿で発見される。現場には奇怪な三重渦状の指紋が残されていた。明智小五郎は、犯罪研究家の宗方隆一郎と協力して事件の解決に乗り出す。だが、この事件には恐るべき過去の因縁が隠されていたのだ !
放送日
- 1978年4月8日
今作の美女
- 松原智恵子
はじめに
今回レビューするのは、『死刑台の美女』です。
今回の美女は松原智恵子さん。このときの松原智恵子さんは33歳。1作目の三ツ矢歌子さんが40歳、2作目の夏樹陽子さんが25歳。そして今回、33歳とまた年齢が上がりました。しかし、やはり美女シリーズと銘打つだけあり物凄い美人です。
ちなみに、脇役として後に長く活躍することになる、かたせ梨乃さん、伊吹吾郎さんも出ています。
このとき、天知茂さんは57歳で、伊吹吾郎さんは32歳です。作中、終始ため口ですし、対等な立場で推理合戦をするのですが、15歳も年が離れていたんですね。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
放送内容
やっぱり美女の依頼は断れない明智先生
今回は伊吹吾郎さん演じる宗方隆一郎博士からの依頼だったのですが、妻の松原智恵子さん演じる宗方京子を見た先生は、断り切れないと覚悟をします。やはり依頼を受けるかどうかは依頼主や関係者が美女かどうか一点突破なんですね。でも先生、京子は人妻なのですが…。
京子は車椅子で登場したのですが、妻の勤めも果たせないと嘆いていました。妻の勤めとは…。
世界犯罪学会?
宗方博士は香港で開かれる世界犯罪学会に出席するとのことで、自身以外入れないという隠し部屋へと先生を案内するのですが、そこには入れ墨をした人間の皮を剥いだ標本や、世界の拷問具を集めたコレクションがあり…。嫌な予感しかしません。
先生は本来宗方博士が出席するはずだった香港の世界犯罪者学会へと赴きます。
2つめの依頼
今回はこれまでと違い、最初の宗方博士の依頼と同時に、波越警部経由の依頼も飛び込んできます。川出家に掛かってくる脅迫電話の事件です。しかし、前述のように明日香港へ発つ先生は依頼を引き受けられないので、犯罪心理を専門とする先ほどの宗方博士を波越警部と川出家へ紹介。
ちなみに、このとき出てきたのが、若き日のかたせ梨乃さんです。三姉妹の長女、民子役のかたせ梨乃さんはこのとき20歳です。いやあ若いですねえ。
第1の殺人
川出家を皆殺しにするとの脅迫電話が掛かってきていたのですが、予告の順番通り、最初に末娘の雪子が犠牲になります。犯人がプールで泳ぐ雪子に電話を掛け、犯人が近くにいるので刑事を迎えに行かせるからそいつと一緒に外に出てくれと言いくるめ、まんまと拉致に成功してしまいます。
しかし、このとき迎えに来た刑事は全身を黒のコートで纏い、帽子にマスク、サングラスといういかにも怪しい風体。しかも一言も喋りません、何故こんな怪しい男に付いていくかなあ…。
その後、パトロールをしていた警官は、マネキンを運ぶトラックを発見。そのトラックからマネキンが一体落下したので確認したところ、雪子の死体でした。この運転手は何も知らずに運んでいた様子。また、この事件を分析した波越警部や宗方博士は、死体に残っていた奇妙な指紋に着目。宗方博士が三重渦状紋と判断します。
三重渦状紋(さんじゅうかじょうもん):一つの指紋の中に三つの渦が巻かれているという想像上の指紋。江戸川乱歩が推理小説『悪魔の紋章』において創作した。北園龍子という女性の指だけに存在する事になっている。乱歩の影響を受けた次の作品にも登場する。
1つの指に三重に渦が巻かれているとの物で、江戸川乱歩さんがこの原作で創作した物だそうです。その後、いくつかのミステリーでも登場したようで、江戸川乱歩さんの影響の大きさを伺わせます。
犯人を持ち上げる宗方博士
若い娘を裸にして殺し、マネキンの中に放り込むなんて、犯人は精神異常者だなと浪越警部は評するのですが、宗方博士は「ひょっとしたら、犯罪の天才かもしれない」と高評価。…これもう犯人分かりますよね。犯人(=自分)を酷評されたり馬鹿にされるのが気に入らないから、第三者として反論し、犯人は頭が良いと褒める。このパターンもサスペンスあるあるですね。この美女シリーズでも何回かこのようなパターンが出てきます。実にわかりやすいです。
第2の殺人
川出氏には腹違いの妹北園竜子(りゅうこ)がいるのですが、雪子のお葬式で財産を巡って争いがあることが明らかになります。
確執のある竜子を怪しむ川出家次女ハル子は、あとを付けて探ろうとします。しかし、竜子の『良い人』が犯人で、その犯人に殺されてしまいました。川出家を皆殺しにするために竜子に近付いて取り入っていたんですね。
雪子に続いてハル子もまた全裸で晒されており…。この美女シリーズは油断していると無駄に視聴者サービスします。例えそれが死体だったとしても…です。死体のオッパイを見せられてもなんかなあ…と思いますが…。
助っ人に文代君登場
香港で川出家の現状を知った先生は、文代君を助っ人として寄越します。役に立つのかはなはだ疑問ですが…。
宗方博士、波越警部、文代君、警察で屋敷の周りや中を警護し、万全の体制…だったのですが、文代君も波越警部も宗方博士も一睡もしていないのに侵入され、民子が誘拐されてしまいます。娘達の遺品の箱の中に、犯人も民子も入っていたとのこと。
このとき、娘の遺品を野焼きするシーンが出てきましたが、今は完全に禁止になりましたね。昔は自宅の庭で燃やせる物はなんでも燃やして良かったんですよね。このときはギリギリで気が付いた波越警部たちに救出されました。
明智先生帰国、合流
浪越警部は竜子が怪しいと思い踏み込むのですが、ここで先生とバッタリ遭遇。先生は香港で開かれていた犯罪者学会から帰ってきて、すぐさま竜子の家へ来たところでした。文代君から毎日報告を受けていたとか。
竜子を犯人と思っていた浪越警部達ですが、コップに付いた指紋を調べたところ、三重渦状紋ではなかったため、そそくさと退散します。
しかし、竜子は指先に透明のジェル状の物を付けており、実は三重渦状紋は竜子の指紋だったんです。てっきり三重渦状紋は男の犯人の物だと思いましたよ。
民子誘拐される
川出家の三人娘は残り1人となってしまいました。川出家を皆殺しにすると犯人は言っているので、次に狙われるのは民子なことは明白。そこで先生と宗方博士らは、民子を誰も知らない場所へと隠してしまい、犯人に手の届かないところで保護しようとします。しかし、そこは宗像しか知らない場所なのですが、案の定民子はさらわれてしまいます。
謎の寸劇が始まる
川出氏と娘の民子が匿われた家に、白装束の女がやってきて、庭へ行くよう促されます。そこでは何故か目の前で寸劇が始まってしまいます。
今回は生の寸劇でしたが、前回は再現Vでした。前回と今回、どのような因縁があって復讐をしたのか、対象者にわかりやすく見せる親切で犯罪者の鏡です。今回は目の前で生の寸劇なので、台本を作り、演技の練習をし、川出氏らが現れるのを待って演技し始めたんですよね。また、この寸劇には犯人の幼少期役の子役もいました。犯人が雇ったこ役者だそうですが、この観客というか、拉致されて脅されている川出氏らを見て何も思わないんですかね。このような色々な絵を想像すると笑います。
そして、これも前回と同じなのですが、復讐の理由は川出氏の父にありました。川出氏の父は犯人の両親を殺していたんです。前回とほぼ一緒の動機ですね。前回は50年越しの復讐。今回は30年越しの復讐でした。
北園竜子指を切断
三重渦状紋と大男、小男のコンビが手掛かりだったのですが、切断された三重渦状紋の指を警察が発見します。竜子は自ら指を切断して警察の追求から逃れようとしたようです。しかし、ここはサスペンスの常で、相棒が追い込まれたらもう一方の相棒に殺されるもの。案の定竜子は大男に殺されてしまいました。
今だとDNA鑑定で切断された指と、竜子のDNAを照合すれば1発で犯人わかるんですけどね。このドラマが放送されたのが1978年ですし、原作はもっと前なので、DNA鑑定なんて影も形も無かったみたいです。
1984年にはレスター大学の遺伝学者アレック・ジェフェリーズ(英語版)が、科学雑誌「ネイチャー」に論文を発表した。彼は多くの研究者が関心をもった“遺伝子の働き”でなく、“DNAによって個人を区別できるか否か”の観点に着目したといわれる。その結果「ヒトのDNA型は十分に個性があり不同性がある。そして、終生不変である」こと、したがってDNAで「個人の特定ができる」ことを説いた。この発表により、DNA型鑑定は個人特定の切り札として飛躍的に発展していく。
犯人は自殺して解決?
小男に変装していた竜子が死に、その兄と称する犯人も自殺。そして犯人の遺書が発見され解決…なわけないですよね。
一応、竜子は犯人山本の妹で、警察に追い詰められた妹は自殺した、だから自分も後追い自殺するとの遺書を残して犯人は死んだことになるのですが、案の定というか、美女シリーズのお約束、『顔が判別できないほどグチャグチャになった死体』でした。
文代君の体を張った追跡
先生の助手の文代君は時々体を張った追跡などをするのですが、今回は病院に川手氏を殺しに来た犯人の乗って来た車のトランクに潜り込んでアジトを突き止めます。しかし、案の定文代君は捕まってしまい、拘束され、拷問の餌食に…。そこには既に連れ去られていた民子もいました。
民子ことかたせ梨乃さんが拷問具にブラジャーを破られるシーンがあるのですが、こちらも前回と同じくボディダブル。別人の体なので、かたせ梨乃さんのヌードはありませんでした。
しかし、文代君を追跡にやったのは良かったんでしょうかね。結構ギリギリだった気が…。まさに寸前のところで波越警部たちが到着し、チャイムに驚いた犯人が拷問具のスイッチを切ったから良かったものの、チャイムを無視するとか、チャイムに反応して玄関に出るとしても、拷問具のスイッチ切らなかったら、ここで文代君とはさようならだった気が…。
人形にすり替えられた!
浪越警部が立ち去った後、犯人たち…というか、もうわかっているので書きますが、宗方博士と妻の京子は、再び拷問具のスイッチを入れ、民子の胸が刃物で裂かれ、文代君は四肢を引き裂かれ死んでしまいます。…が、ここは波越警部が来て時間を稼いでいた間に、先生達が人形にすり替えていたのでした。これって1作目の氷人間のときと全く同じですね。
民子と文代君2人ともロープをほどいて救出し、人形にすり替えて同じ姿勢にするとの離れ業。更に言えば、民子と文代君の人形はどこで用意したのか…。今回は特注品ではなくマネキンのようですが、着ていた服は同じだったので、あの短時間で着替えさせたのか…。
そして、ここでやっと犯人が分かりました。当然宗方博士なのですが、もう1人は奥さんとは名乗っていましたが、実の関係は妹の京子でした。車椅子で足が不自由なのも嘘だったんですね。
明智先生危機一髪
先生は宗方博士を追い詰め、人質も救出するのですが、宗方博士に拳銃を突きつけられてしまい危機一髪に。丸腰で来るとは…。この辺は対策していないんのでしょうか。波越警部達も傍観ですし、ここはあと一歩で先生死んでいました。
しかし、ここではなんと妹の京子が後ろから兄の宗方博士を撃ちます。京子は先生を愛してしまったため、殺すのはできないとのこと。これがなければ先生ここで死んでいました。結局愛が物語の行方を左右するという愛憎劇らしい終わり方でした。
その京子も自分の持っていた寿で拳銃自殺。復讐に生きてきた京子は、先生を愛することが生きていた中で唯一の救いだったと打ち明け、先生が香港から京子のために買ってきたお土産のネックレスが散乱する中息を引き取ります。切ないですねえ。
しかしですよ。これで3作連続犯人に目の前で自殺されてしまいました。波越警部よくクビになりませんね。
総評
今回登場した伊吹吾郎さんは、1作目に出てきた松橋登さんと同じく、今後先生の敵役として幾度となく登場します。その名は黄金仮面。おそらくシリーズ上同じ敵として出てくる唯一のライバルと言える存在です。役者さんが同じだけで、今回の宗方博士とは全く関係ないですけどね。
美女役は松原智恵子さんだったのですが、小顔でシャープな顔立ちなので、十分今でも通用する美しさですね。また、かたせ梨乃さんも出てきており、今見るとこの2人だけでも十分豪華なキャストに見えます。
お色気シーンが売りの美女シリーズなのですが、今回は残念ながら入浴シーンはゼロでした。前回のあからさまなタイトルから一気にお色気路線、入浴路線に走るかと思いきや、まだ悩みがあるのか、そっち方面へ突っ走れない迷いが見えます。ただ、死体としてはいっぱいオッパイが出てきました。個人的には死体のオッパイ見せられても反応に困るのですが…。
天知茂さんの迫力や存在感が凄いのはわかっていたのですが、今回出た敵役である伊吹吾郎さんの存在感と迫力も凄かったです。後に何回も出るのも頷けます。
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