今回レビューするのは、この世の果てで恋を唄う少女YU-NOの第17話です。
それでは早速レビューを書いていきたいと思います。
ちなみに、YU-NOの解説・考察は別記事にまとめましたので、気になる方はご一読ください。
先の展開のネタバレについては、このようにオレンジ色のマーカーで、ネタバレの始まりと終わりを注意します。重要なことを強調する黄色のマーカーとは別なのでご注意ください。
あらすじ
神奈を守る決心をしたたくや。
そんな中、龍蔵寺と北条の企みにより、神奈が命の危機に。
神奈を救うため、たくやは異世界に旅立つことを決心するのであった…
みどころ
- 神奈死亡
感想
本当に切るところがおかしい
神奈退学の話題が学園に流れ、慌てて神奈のマンションに向かうたくや。マンションの扉をどんどん叩き、ゆっくりと開くドアからのぞき込む神奈。そこでOP。
何回か書いているのですが、やはりこのアニメは切るところが本当に独特というか…。言葉を選ばずに書くとセンスがないです。普通、OPに入るところや、Aパートの終わり、来週へ続くED前は、毎回とは言いませんが続きが気になるように、いわゆるクリフハンガーで切ることが多いです。しかし、今回のようになにもない、なんのワクワク感もなく、続きが気になるところでもないシーンで切るので次への盛り上がりや飢餓感がありません。
平川哲生監督は原画上がりで、監督経験はほぼないのでこのようなことになっているのでしょうか…。YU-NOは謎が多く、時間や世界を移動する衝撃的な話なので、ここで切れば盛り上がると言う『切りどころ』はたくさんあるはずなので残念でなりません。
たくやと神奈は小さい時に会っていた?
今回はたくやのおぼろげな記憶の回想があり、小さい頃に海岸で神奈と出会っていたとか。ずっと神奈は境町付近にいたのでさもありなんですが、これは原作ではありませんでした。完全にアニオリで、過去回で母親かと思われたペンダントをしていた女性は神奈だったんですね。ミスリードにすっかり引っ掛かりました。ただ、別にこれがこの後膨らむわけでもないので、だからなんだと言う話でもありますが…。
また、今回も神奈に対して「家族のように感じる」と、前回に続きしつこくたくやが言っていました。これも以前書いたのですが、伏線を余り際立たせると伏線の意味がなくなってしまうような…。誰でもわかるものはもはや伏線ではありませんよね。
わかるかわからないか微妙な情報であり、勘の良い人にはなんとなくわかる程度であり、その後伏線が回収されると、「やっぱりあれは伏線だったんだ!俺はちゃんと見ていたからわかったぞ!」との達成感が醍醐味だと思うんです。また、「なるほど!今思い返すとあれが伏線だったんだ!良くできてるな~」と感心するのが伏線なのではないでしょうか。
しかし、ここまで何回も特定のワードを強調されると、嫌でも頭にハッキリ残り過ぎ、伏線が回収されても、「ああやっぱりあれ伏線だったんだwそりゃわかるよw」となってしまうと思うんです。
ちなみに、原作では「家族のように感じる」なんてセリフは一切ありませんでした。このセリフ自体アニオリです。個人的にはこのセリフは必要なかったと思います。原作だと文章の端々やたくや態度から、『恋愛感情とは別に、何故か神奈が気になる』と仄めかす程度でした。これで良かったはずなんです。
この伏線の埋め込み方はさじ加減は難しいと思うのですが、原作でそれが折角上手く言っていたのですから、そこからさらに強調しなくても良いと思うんです。シュバルツシルト半径、ナイアーブ、そしてこれと、これでもかというくらい強調するんですよねこのアニメ。
神奈の過去が神奈自身で語られる
今回は神奈の過去が神奈自身の口からやっと語られました。
- 神奈がほぼ不老であること
- 母親もそうであったこと
- 母親は既に他界していること
- 1人になってからは施設に入ることを拒否し1人で生活していること
- 1人で生活するために援交…と言うか売春してること
いくら民放キー局の放送ではないとは言え、援交描写はどこまでやるのかと思ったら、結構ちゃんとやっていました。無駄に腰が動いたり変なところで頑張っているような…。
神奈はお金を稼ぐ目的は勿論そうなのですが、人との繋がりも欲していたようなことも言っているんですよね。ヒロインの1人なのに、お金のためだけじゃないんだ…と当時はちょっと衝撃を受けた思い出があります。
そんな人生寂しく、ただ死なないために生きている神奈が出会ったのが有馬広大と恵子ことケイティア。彼らに保護され、月30万円の仕送りを貰っていました。ただ、仕送りを貰っても援交を繰り返していたようですが…。
vs北条
そんな神奈の独白の最中、北条から神奈の家に電話が掛かってきて呼び出しが…。有馬広大の行方を聞き出すためです。また、このとき北条は学園の張り紙が自分だったことも告白。神奈を学園にいられないように孤立させて追い詰め、自分の要求を飲ませようとしていたみたいです。
このときたくやは神奈に追い返されてしまい、介入することを諦めかけるのですが、そこに発破を掛けて送り出したのが澪でした。原作だと澪と結城は神奈のルートに絡んでこないのでこんなシーンはありませんでした。勿論、神奈と澪、結城も友達になっていませんでした。
たくやのことを好きな澪にとって、前日の海で遊んだ時にお互いの意識を確認して分かっているとおり、神奈は恋のライバルなのですが、それでもたくやを神奈の所に送り出す澪。恋愛ゲームのあるあるです。おそらく原作でもリメイクでも澪が一番人気だと思うので澪をフィーチャーしたかったんですかね。
他のヒロインは年上ばかりで、神奈は身の上から仕方がないとは言え援交少女です。同級生、ツンデレ、金髪縦ロール、お嬢様。澪は唯一ヒロインらしいヒロインです。
そんなたくやがもう1度神奈の部屋に戻り、神奈の居場所がどこか考え、先ほど北条から掛かってきた電話の時にメモしていた台紙を鉛筆でなぞり、文字が浮き出てくる古臭すぎる演出。まあ、舞台が1996年なので良いのですが…。こんな描写見たの何年ぶりでしょうか。
有馬広大の行方
北条は前回龍造寺にナイアーブを掛けられていたことにより凶暴化。神奈を羽交い締めにしたり殴ったりやりたい放題です。
北条に追い詰められた神奈は有馬広大の行方を教えるのですが、それによると妻の恵子ことケイティアを探し求めて異世界へ旅立ったとか。勿論北条は信じませんでしたが…。
北条に捕まっている神奈を見付けたたくやは、何も考えずに北条に殴りかかるのですが、その拍子に神奈のペンダントが地面に落ちて割れてしまいました。神奈が北条に殴りかかるのを止めたのに…。ゲームで言うと『選択肢を間違えた』ってやつですね。これがゲームなら下記のような選択肢が出たはず。このシーンではこのゲーム的選択ミスを表現したかったのだと思われます。
殴りかかる ←
様子を見る
殴りかかった直後、たくやは宝玉セーブをしており、神奈の容態が急変したあとロードしようとするのですが、セーブ時点では既にペンダト割れてしまったあとでどうにもならないことに気付きます。
ただ、前回の海水浴のサービス回で、たくやは犬に襲われる直前にセーブしているはず。そこに戻ればこれは回避できるのでは…。と言うか、あのセーブは何だったのでしょう。
もしかして、アニメではセーブは1つしかできないとの設定なのでしょうか。常に最新のセーブポイントに上書きされると…。もしそうであるなら、他の重要な設定やワードを丁寧すぎる描写で説明していたのですから、これもきちんとやるべきだったのではないでしょうか。
ちなみに、原作だと北条が神奈のペンダントを奪い、噴水に落とすぞと脅し、実際に落ちてしまって神奈死亡との流れでした。この改編の是非は置いておいて、本当にアニメは原作のあらゆる所を改変します。
神奈死亡
ペンダントが割れた神奈ですが…死にました。アニメでは明確に表現されていませんが、原作だときちんとガクッと頭が落ちるシーンがあり明確に死亡が描写されています。また、本来原作だとたくやは神奈とも致すのですが致しませんでした。これはネタバレになるのでぼかしますが、たくやと神奈の関係を考えると、倫理的に放送できなかったのでしょう。当時のPCでの成人ゲームというジャンルでも「大丈夫か?」との声がありましたからね。これは仕方がないと思います。
異世界とわかって異世界へ旅立つと改変した衝撃
実は今回前もって嫌な予感はしていました。公式サイトで放送の2日前くらいに、毎回次回のあらすじが発表されるのですが。今回は前述したように下記のような説明でした。
神奈を守る決心をしたたくや。
そんな中、龍蔵寺と北条の企みにより、神奈が命の危機に。
神奈を救うため、たくやは異世界に旅立つことを決心するのであった…
この3行目の『神奈を救うため、たくやは異世界に旅立つことを決心するのであった…』。原作を知っている方は、この一行を見て目が点になったはず。勿論私もそうです。何故かと言うと、原作ではこんな話では全くなかったからです。これは物凄い大改変で驚きました。
ここからは次のオレンジ色のマーカーまでネタバレが含まれます。
原作のゲームだと、何も知らない、異世界があるなんてわかっていないたくやが、宝玉を全部集めたら突然異世界へ放り出され、「え?え?何この世界?俺のいた世界とは違う?」と戸惑いながらも周囲を探索。なんとか順応しようと努力していくんです。そして目的もハッキリとはありませんでした。宝玉を全部集めて三角山へ指示通り行ったら異世界へ何の前触れもなく突然…ですからね。強いて目的を挙げると『行方不明になった親父を探すため』でした。
ところが、なんと今回たくやは神奈を救うために異世界へ行くと決意していました。こうなると異世界での目的や話が根本から変わってしまいます。どうするのでしょう…。変わってしまうこと、おかしくなることを挙げていきたいと思います。
異世界があるとわかっている不思議
原作ではたくやは異世界があることは知りませんでした。次元が違う…つまり、違う世界線があることはわかっていて、だからこそリフレクターデバイスを使用して色々やっていたのですが、まるで別世界があるとは知りませんでした。だからこそ未知の異世界にたくやも驚き、シンクロしてプレイヤーも驚愕したのですが、わかって行くんですね…。
全く別世界に行って戸惑いながらも謎を解こうと懸命になるところは、異世界編導入部の面白さだと感じていたのですが、分かっていくのではこの衝撃が薄れてしまうような気がします。
しかも、更に驚くことに、この時点でデラ=グラントの名前が出ました。神奈の回想シーンで有馬広大がその名前を出しており…。これも本来、異世界に行ってからこの世界がなんと言う名前なのかわからず、それが更に不思議さ、怖さ、不安さを増幅したのですが、この時点で異世界はデラ=グラントだよとわかってしまうと、これまた謎や衝撃がなくなってしまい…。
異世界での目的が神奈を救う(超念石を手に入れる)ことになった
異世界へ行く目的は神奈を救うためです。つまり、壊れたペンダントの超念石に代わり、デラ=グラントでしか手に入らない超念石を持って帰ることになっていまいました。
原作だとジオテクにあった超念石を持ってくればOKで、それで神奈は息を吹き返しました。ここはゲーム的面白さもありました。全く別のルートで関係ないと思われたアイテムが、こんなところで役に立つんだとの驚き。それを理解して解決した達成感。この辺りアニメで表現するのは難しいのかもしれませんが、別にこれを異世界での目的にしなくても…。
現代編は現代編だけで完結しても、異世界編がきちんと現代編と後々リンクするので、ここにわざわざ神奈を救うためとの目的をプラスする必要はないはずなんです。そして、神奈を救うためとの目的がハッキリできてしまったことで、異世界での言動に説明付かなくなる部分が出てくるはずです。
逼迫した状況なのに4年ダラダラすることになる
死んだ神奈を生き返らせるために異世界へ旅立つことになったため、異世界での話の骨子が多分おかしくなります。そこは上手く調整するのでしょうか。
原作を知っている方だと今更ですが、たくやは異世界でセーレスと言う女性と出会い子供をもうけます。そしてその子も数年育てるので、現代の時間に換算すると、1996年から2000年までの実に4年間異世界でのんびり暮らします。
神奈を救うために異世界へ旅立ち、超念石を手に入れるとの明確すぎる目的があるのに、この状況はおかしいですよね。しかし、セーレスと出会い子供が生まれること、育てること、数年時間がたつこと。これらは異世界編で外せないでき事です。ただ、気掛かりなのは、三角山の地底湖で現れた幻影がセーレスではなく母親のケイティアだったこと。まさかと思いますが、セーレスを出さないことはあり得るのでしょうか。
この辺りかなり強引にストーリーを曲げたり解釈を変えないと、整合性が取れない気がします。まさか「セーレスは出ないのか?」なんて心配をするとは思いませんでした。まあ、さすがにそんなことはないとは思いますが…。
最後は現代に戻って神奈に超念石を使うことになる
神奈を救うために超念石を手に入れるため異世界へ旅立ったと言うことは、逆に今度は異世界から現代に戻ってこなければその目的は達成できません。
原作だと異世界へ行ったら行ったきりで、現代に戻ることはありませんでした。全てのルートを埋めてクリアした場合、2周目のオマケとして、各ヒロインのトゥルーエンド(澪と同棲していたり)はありましたが、本筋の話で現代に戻ることはなかったんです。ただ、この流れだと、本筋で異世界から現代に戻り、神奈に超念石を使う描写が必須になってしまいました。しかし、神奈に超念石を使ったところで、結局真ヒロインのユーノと事象の根源へ旅立つわけで…。
つまり、エンディングや物語の締め方の根本にアニオリが入ることが確定してしまいました。この話の時点で原作通りに終わりを迎えないことが決定です。これまで不可解な原作の改編が多く、つまらない場合がほとんどだったので不安しかありません。
ネタバレはここまでです。
そもそも、異世界編って本当の意味で1本道なんですよね。現代編はA.D.M.S(アダムス)と言う画期的なシステムにより、時間と世界線を複雑に移動しまくるゲームで、アニメ化するのはかなり弄らないといけないことはわかります。
異世界編は現代編とは違い、選択肢が本当に1つも出てこない単なる小説なので、弄る必要ないはずです。一部現在の倫理観や放送コードの問題で修正する必要はあるものの、アニメ化するのは簡単なはずなのです。しかし、その1本道の異世界編を弄るんですね。まあ、現代編を必要以上に弄っていたのでそうなるかもなとは覚悟していましたが。
念のため書いておくと、なにも原作通りにしろと言っていっているのではありません。原作大好きで原作との比較を多く書いているので、原作信者と言われれば否定できないのですが…。
現代編に関しては弄らなければアニメ化不可能なので弄るのは必然でしょう。ただ、良い改変と悪い改変が当然あると思います。いわゆる改悪と改良ですね。これまでのYU-NOは残念ながら改悪だと思っています。改良なら何も言わないどころか素直に拍手します。
原作が好きすぎて私の目が曇っているのかもしれませんが、冷静に見てもやはり改悪が多いと思っています。改悪の特徴としては、見ていて「何故?」、「どうして?」、「なんでそこ変えるの?」と言う感想や疑問が出てきて、『変えた意味が分からない』となったら改悪だと思っています。今のところ95%これです。
原作が良くできているのですから、変えるならきちんとした動機や理由が必要だと思うのですが、それがほぼ見えてきません。または理由が分かるとしても、「それは必要ないでしょ」という『無駄』を感じることも改悪の基準だと思います。この例だと初期にあった『たくやがヤクザに何回も突撃しては失敗するシーン』がわかりやすいです。
リフレクターデバイスの使い方や効果を視聴者にわからせるための演出なのはわかります。ただ、そんなわかりやすく提示しなくても、物語を見ていけば段々分かってきますし、そこまで視聴者はバカではないはずです。
ここまで原作から悪い方向に変えられると、「次はどんな改悪されるんだろう…(ドキドキ)」とおかしな方向へ楽しみ始めている自分もいるのですが…。
またしても絵理子先生が颯爽と登場
北条をノックアウトしたあと、またしても奇抜な格好の絵理子先生が登場。北条に聞きたいことがあると引きずって連れ去ってしまいました。美月の時も話に絡んできましたが、この世界でも絵理子先生は龍造寺を探っている様子。
ちなみに、神奈が死んでしまい、たくやがロードしてやり直そうとしていましたが、以前にも話に出てきたように、この神奈が死んだ世界は世界で存在し続けます。つまり、宝玉セーブとロードを駆使して誰かを救ったと言っても、それは本当に救ったと言えるのかどうか…。
亜由美が死んだ世界も、結城が転落死した世界も、そして、神奈が死んだ世界も違う世界として存在し続けます。世界線は無限ではなく、エネルギー保存の法則に従い、現実味のなさすぎる無理のある世界は消滅してその数を一定数に保つようですけどね。
遂に異世界へ旅立つ
原作でもリフレクターデバイスに全て宝玉をセットし、三角山の洞窟に行くと異世界へ移動しました。アニメでもそれは同じだったのですが、柱の柱時計の中にある宝玉やピクロスまで全て神奈の指示で動いて異世界へ旅立っていました。原作ゲームだとこの辺りもプレイヤーが自力で謎を解く必要があったんですけどね。
それまで異世界のこともろくに知らず、行き方もピクロスも知らなかったたくやが、神奈のお使いみたいに指示通りにするだけで異世界へ旅立ったのは少し拍子抜けがしました。
総評
いやあ…しかし、『異世界へ行くと分かって旅立つ』、『異世界へ行く目的は神奈を救うために超念石を取り行く』に話の根幹自体変えてくるとは思いませんでした。行き当たりばったりでここまでの大改変をするとは思えないので、ストーリーはでき上がっているのでしょうが、正直そこまでして頑張って変える意味はあったのでしょうか。ゲーム性含むストーリーは間違いなく面白いので、話を変えることに注力せず、あくまでゲームからアニメの媒体の変換作業に徹すればよかったと思うんですけどね。何故余計な苦労(改変)をしてまでつまらなくなるかもしれないリスクを冒すのでしょうか…。
今回で現代編は終わりです。次からは異世界編…のはずなのですが、次回予告では『特別編 真実は並列世界の果てに ~新たなる旅立ちへ~』となっていました。タイトルからするとおそらく総集編だと思われます。EPG(電子番組表)では違うサブタイトルの『デラ=グラントの黄昏』だったので、もしかしたら制作が間に合わずに急遽総集編にしたのかもしれません。
こんな人にお勧め
- タイムトラベル、タイムリープものが好きな人
- 異世界ものが好きな人
- 壮大な話が好きな人
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