漫画全話レビュー「めぞん一刻 第161話「P.S.一刻館」」 5/5 (13)

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掲載情報

掲載雑誌
  • ビックコミックスピリッツ 1988年4月20日号

 

アニメでは

 

時系列とでき事
  • 1987年4月 五代裕作と響子さんと結婚
  • 1988年3-4月 五代裕作と響子さんの娘の春香ちゃん誕生

 

この頃のでき事
  • 4月1日 - 国鉄が分割・民営化され、JRグループ7社(北海道・東日本・東海・西日本・四国・九州・貨物)が発足。
  • 4月4日 - 有明コロシアムが完成。
  • 4月12日 - 中嶋悟が日本人初のフルタイムF1ドライバーとしてF1開幕戦でデビューする。
  • 4月18日 - 大阪市営地下鉄御堂筋線の我孫子駅 - 中百舌鳥駅間が延伸開業し全通。
  • 4月21日 - 花王が日本初のコンパクト洗剤「アタック」を発売。洗剤コンパクト化のきっかけとなる。
  • 4月21日 - 三菱電機が掃除機「ダニパンチシリーズ」を発売。

 

あらすじ

遂に五代君と響子さんの結婚式を迎えます。つつがなく式を終え、二次会にはかつての恋のライバル三鷹さんや、今までお世話になった人も集まり、皆に祝福されます。そして月日は流れ…五代君と響子さんに娘の春香ちゃんが生まれ、そして帰ってきたところは…そう、一刻館でした。

 

みどころ

  • 五代君と響子さんの結婚
  • 一刻館に帰ってくる五代君と響子さん
  • 登場人物それぞれの後日談

 

はじめに

遂に最終回です。これで泣いても笑ってもめぞん一刻は終わりです。初期のお祭りがいつ今でも続くようなドタバタコメディ、中盤のラブコメ、そして終盤のラブストーリーと物語が変遷を重ね、そして6年間続いた物語もこれにて完結。全てが納得のいくハッピーエンドで終わり、漫画史上ででも例を見ないほどの完璧な終わり方をしました。この終わり方を超える漫画を私は未だに知りません。

 

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めぞん一刻オールスター集結

さて、最終回はどういう話になるかと思ったら、ズバリ結婚式でしたね。勿論、五代君の目標が響子さんと結婚することであり、物語もそこに向かって進んでいたのですが、こうもストレートに結婚式で締めくくるとは思いませんでした。この辺りの構成は、クリエイターの方はどうも捻る方向にあるようで、読者の予想の少し上の展開をして驚かせたいとの思いがあるようで、それで失敗しているのではないか、捻りすぎではないのか、そこは捻らなくて良いのではないかと思うことが多々あります。ところがこのめぞん一刻は、最終回のテーマをストレートに結婚式にしてきました。当初からゴール地点が響子さんと結婚することだったので、ストレートすぎるぐらい素直な最終回で正解でした。ここで変にに捻られてしまうと、今までの感動や組み立てが台無しになってしまいますからね。

 

終わり良ければ全て良しとの言葉があるのと逆に、終わり悪ければ全て悪しなんてこともあるので、いくら長年良い話を展開していたとしても、終わりで台無しになることもあります。このパターンにならなくて本当に良かったです。それどころか、最後はおそらく読者の予想を遙かに超える大団円で、非の打ち所のないハッピーエンドなので、読後感が素晴らしく、自分で何かを成し遂げたわけでもないのに、読んだ後に幸福感に包まれるとんでもない作品になってしまいました。

 

そしてこの結婚式にはもうひとつ副次的な効果があります。それはこれまで出てきた登場人物を無理なく集結させ、再登場させることができる点です。おかげで、ちょっとだけ話に絡んだようなキャラまでもが自然に登場していました。これがほんの一コマ描かれているだけでも、嬉しさがファンにとっては大違いなんです。

 

郁子ちゃんと賢太郎

この結婚式では、郁子ちゃんが艶やかな着物姿で久々の登場。この時の郁子ちゃんは19歳です。そしてこの郁子ちゃんに恋心を抱いていた賢太郎も学ランで登場。このときの賢太郎は16歳。学年にすると、郁子ちゃんが大学2年生、賢太郎が高校2年生ってところですかね。その年の差は3歳差。五代君と響子さんの年の差が2歳差で今回ゴールインしましたし、世間的に3歳差のカップルなんて珍しくもないので、この後賢太郎が頑張れば、第2の五代君と響子さんの話に発展するかななんて考えたり…。

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この2人の状況をまとめると、賢太郎の初恋の相手が郁子ちゃんであり、身長にコンプレックスあり、3歳差に壁を感じており、育った環境からか少し卑屈な性格で、五代君を反面教師としていた時代がありました。一方郁子ちゃんは、容姿端麗で頭が良く、賢太郎よりも身長が高く、賢太郎のことは弟のように見ていて、人見知りもせず明朗快活。どことなく五代君と響子さんの関係に似ていますね。この2人の恋愛物語作ると面白そうだなと思います。

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賢太郎と郁子ちゃんは受付で並んで座っていましたが、これは賢太郎チャンスでは…。ただ、郁子ちゃんの容姿や性格を考えると、どう考えてもクラスの人気者でモテるタイプなんですよねえ。賢太郎はそこに割って入れるかどうか…。

 

そのほかの出席者

郁子ちゃんと賢太郎、一刻館住人以外での出席者を見ていくと、当たり前ですが五代君のお姉さん、その子供のみっちゃんもいました。五代君とお姉さんの話はほとんどありませんでしたね。三鷹さんの妹も直接は出てきませんでした。めぞん一刻は、両親や祖父母は描くのですが、どうも兄弟はあまり描かない傾向にあるようです。

 

また、当然のように坂本も会社をサボって出席。坂本は作中、五代君の友人で名前のある2人のうち1人ですからね。ちなみにもう1人は小林なのですが、大学以来ほとんど出てこないレアキャラとなってしまいました。今回も小林は結婚式では登場せず。二次会で坂本の後ろに描かれている眼鏡がその人で、1コマだけですが登場していました。五代君と坂本はこの後もずっと友人でいて欲しいのですが、どんなに仲が良い友人でも現実は厳しい物で、仕事や家庭に追われ、会う時間が無くなったり、転勤や引っ越しで物理的に距離が離れてしまい疎遠になったりしてしまうんですよね。仲が良ければそんなことは関係ないと学生さんは思うかも知れませんが、中々そうはいかないのが現実でして…。と、こんな深読みも初めて読んだ中高生の頃は思わなかったのですが、年を取って色々経験すると、このめぞん一刻の見方も少し変わってきますね。読むたびにどこに注目するのか、どの話の裏を想像するのかなど、少し変わることがあります。

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しかし、坂本は多分大丈夫な気がします。スチャラか社員と言われていたように、ある意味義務や責任を放り投げてでも遊ぶタイプなので、仕事や家庭を横に置いて五代君との友情は続くはず…。続いて欲しいです。しかし坂本も感慨深げですね。なにせ坂本は、どう考えても響子さんと付き合うのは釣り合わないだろと、五代君に冗談半分としても言っていましたからね。まさかその五代君が6年の片思いの末、そのあこがれの響子さんと結婚してしまうとは…。友人として感慨もひとしおでしょう。

 

音無老人のお言葉

音無老人は響子さんの幸せのために、息子のことは忘れて再婚した方が良いよとアドバイスを最初から送り、至言を何度となく発していて、めぞん一刻の聖人と過去にも書いてきたのですが、今回も聖人でした。

 

音無老人
「うん…こういう日が来るのを待っとったよ…うんとしあわせになりなさい。いままでの分もね…
あんたはこの日のために生まれてきたんだよ。響子さん。」

 

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いやあ…聖人でですね。惣一郎さんを亡くして響子さんが悲しいのは当然なのですが、父である音無老人は響子さんに負けず劣らず悲しいはずなのに、一貫して響子さんを元気付け、響子さんのためを思って色々なアドバイスをしてくれていました。そして、自分の息子との結婚式ではなく、この五代君との結婚式のことを「この日のために生まれてきたんだよ。」と言ってあげる優しさ。

 

響子さんは惣一郎さんを忘れられなかったのは勿論なのですが、同じくらい悲しいはずの音無老人を差し置いて、自分だけ吹っ切って幸せになることにも引け目を感じていたのではないでしょうか。その音無老人からこの言葉を聞けて、響子さんも肩の荷が下りた気分だったでしょう。勿論、これは漫画でフィクションなので、こう言うのも変な話なのですが、自分も悲しいのに相手を元気付けてあげる音無老人の聖人さには頭が下がります。

 

結婚式は神前式

五代君と響子さんの結婚式は神前式でしたね。この時代も主流は洋風だったと思うのですが敢えての神前式。五代君と響子さん、そして一刻館のイメージ的にやはり和風ですよね。漫画では描写がありませんでしたが、アニメで三鷹さんと明日菜さんの結婚式は洋風でした。こちらもイメージ通り。

 

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響子と呼び捨て

茶々丸での二次会には、三鷹さんと明日菜さんも顔を出していました。さすがに結婚式には恋のライバルで響子さんを取り合っていた関係上、もうわだかまりも無いのでしょうが、三鷹さんは出席できなかったみたいですね。そして三鷹さんと一緒に来た明日菜さんはしっかりと妊娠していました。結婚式から考えて計算が合わないと周りに言われていましたが、やはり三鷹さんは明日菜さんとの結婚が誤解で決まった時点で手を出したんですね。そりゃあ三鷹さんですからね。

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その三鷹さんから五代君に一言だけ言葉がありましたが、「とにかく…がんばれ。」でした。シンプルですが結構重い言葉ですね。家族ができた以上、もう責任は自分だけではないですからね。自分が仕事を辞めてしまえば、奥さんや子供も苦しむことになるわけで、今までと責任の重さが段違いです。

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また、最後の挨拶では、五代君が響子さんのことを響子と言い直す場面があり、恐らくこの瞬間から五代君は響子さんのことを響子と呼び捨てにするようになったのでしょう。ただ五代君が響子さんを響子と呼ぶようになっただけの、本来恋人や夫婦なら当たり前のことなのですが、なにせ読者は情けない19歳の浪人五代君、そして響子さんが雲の上の存在だった頃から見ていますからね。たったこのワンシーンだけで感慨深い物があります。

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ただいま

結婚式、二次会が終わり、本来ならホテルを予約してある五代君と響子さんですが、そのままなんとなく一刻館へ帰宅。ホテルへ泊まらず、一刻館へ帰ってきてしまいました。ここで五代君と響子さん、そして一刻館住人から出た言葉が「ただいま」です。このシーンはめぞん一刻の物語を端的に表しています。あくまでめぞん一刻の主舞台は一刻館であり、閉じた世界で起こる物語なんです。

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初期は毎日お祭りが続くような一刻館を中心としたドタバタコメディであり、永遠にこのドタバタがループする感覚がありました。中盤の八神が登場したラブコメパートも、八神が一刻館へ押しかけ、一刻館中心で物語が進みました。そして終盤のラブストーリーも、一刻館の中で五代君と響子さんが結ばれ、大げんかも仲直りもしました。全ては外の世界とある意味か隔絶された一刻館の中で起こる特殊な空間でのお話なんです。そして五代君と響子さんは、結婚してもやはり一刻館の戻ってきてしまい、そして「ただいま」なんです。

 

そして日々は流れ…

そしてここからがめぞん一刻最終回の真骨頂です。主要登場人物のその後が綺麗に描かれるんです。そのシーンはそれぞれ数コマから1ページと短い物なのですが、ここでそれぞれがそれぞれの道を歩み、皆幸せになったり頑張っている様が描かれているので、あの人はどうなったんだろう的モヤモヤが全くないんです。これが私がめぞん一刻が大好きな理由のひとつでもあります。

 

  • 読んだ後に幸福感に浸れること
  • 全ての登場人物に決着が付くこと
  • これ以上ない大団円であること

 

簡潔に書くと、私がめぞん一刻を好きな理由は上記の三つです。それぞれに少し説明をします。

 

読んだ後に幸福感に浸れること

これは言葉の通りで、読んだ後に自分が幸せになった気分になるんです。漫画を読んだだけなので、自分が何かをしたわけでもなく、実際に自分の人生が何か変わるかと言えば、決してそんなことはないのですが、読み終わった後に何故か自分がほわ~っと幸せな気持ちになるんです。

五代君と響子さんが結婚して幸せになるのを見て、「良かったね!」と漫画のキャラにここまで思ってしまうのはこれ以外にありません。自分でもこんな気持ちになるのは信じられませんが、五代君と響子さんが幸せになって本当に良かったと思えるんです。そして漫画の中でキャラが幸せになったのを見て自分も幸せを感じる…。こんな気持ちになるとは…。

 

全ての登場人物に決着が付くこと

めぞん一刻は以前にも書きましたが、主要登場人物にそれぞれ退場シーンが用意されており、ある意味それがその登場人物の最終回ともなっています。この決着の付け方だけでも十分なのですが、更にめぞん一刻は最後の最後に「その後」のそれぞれを描いているんです。ほんの少しサラッと触れるだけなのですが、それぞれが幸せな描写があり、あの人はどうなったんだろう的モヤモヤが一切ありません。全てに決着が付くんです。

 

これ以上ない大団円であること

そしてめぞん一刻は、五代君と響子さん含め、皆がハッピーエンドであること。これ以上ないくらいに大団円なんです。ここまで皆が幸せで充実していると、綺麗すぎて首を捻ってしまいそうですが、めぞん一刻の作風上これで良いんです。誰かが不幸になったり、苦労して終わることを期待して読んでいたわけではありませんからね。この辺りの読者の要望を汲み取る入れるスタンスも好きです。以前に書いたように、この辺りクリエイターは読者の予想を裏切るため、捻った終わり方にしたがるんですけどね。それをやらないでくれて有り難かったです。

 

エピローグ

さて、それではその大団円ですが、それぞれの登場人物がどうなったのか見ていきましょう。

 

七尾こずえ

こずえちゃんは銀行員の先輩と結婚して名古屋在住。夫婦仲は円満とのこと。五代君と5年間付き合っていたのですが、良きところに着地しましたね。名古屋在住とのことで、東京の五代君と会うことは今後もなさそうで、やはりあのときの別れが今生の別れとなりそうです。

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三鷹瞬&九条明日菜

三鷹さんと明日菜さんは予想通り女の子の双子を出産。3人目も順調とのこと。また、1コマ描かれた三鷹さんの家はもう立派で…。さすが政略結婚と言われるだけの資産家同士の家の結婚です。バブル崩壊で下手を打っていなければ、一生お金に困ることは無さそうです。ちなみに、この双子の名前は三鷹もえと三鷹めい。よだれかけに名前が書いてありました。

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三鷹家に生まれると美形になるであろうことは想像に難くなく、それでいて資産家同士の結婚で大金持ち。いわゆるお嬢様になるんでしょうね。学校のアイドルになるのは恐らく間違いないでしょう。

 

八神いぶき

八神は無事女子大に進学。高校も女子校だったので、中学はわかりませんが、高校大学と7年間女子校になります。友人に合コンに誘われていたのですが断っていました。五代君の写真を未だに大事に肌身離さず持っており、心は女子高生の恋に恋する乙女のままでした。

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一般的な恋のお邪魔キャラは、嫌みがあったり意地悪な部分があるのですが、八神はそれがなく、そして他の男の影が一切出てこない究極の一途でした。そしてエピローグでもその五代君一筋が続いていることがわかり、結局最後まで五代君にしか目が向かない本当に珍しいキャラでした。

 

めぞん一刻は大団円と前述しましたが、じゃあこれはハッピーエンドなのかと言われると…八神的にはこれで幸せなんだと思います。本気で五代君を好きとは言え、恋に恋する自分にも幸せを感じているみたいなので…。

 

二階堂望

二階堂は大学卒業後、地元に就職したため一刻館を出て実家に戻り、過干渉な母親にうんざりして、一刻館の戻りたいと呟いていました。最初はあれだけいやがっていた一刻館だったのに、結局一刻館に馴染み、戻りたいとまで言うほどになっていました。すぐに出て行くと暴れていた二階堂ですが、結局大学在学中の4年感ずっと一刻館に住んでいたんですね。

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二階堂に関しては大団円の中に入れるのはちょっと無理があるのですが、まあイレギュラー的存在ですし、ギャグ要素のオチになっていたのでまあいいかなと。

 

六本木朱美

朱美さんのエピローグが突然出てきたときにはビックリしました。まさか茶々丸のマスターと結婚するとは…。前回、茶々丸のマスターがそれとなく朱美さんと結婚したい意思があるような描写はあったので予感はしていたんですけどね。まさかこうもあっさり朱美さんの結婚を処理されるとは。別にこれはネガティブな感想ではなく、朱美さんらしくて笑えるなと。そして更に出てくる「六本木朱美、現在「茶々丸」2Fに生息中。」との文字。この表現も朱美さんらしくクスッとしてしまいます。

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春香ちゃん誕生

そして最後は五代君と響子さんが病院から帰ってきて、ただいまと言い、抱いている春香ちゃんに一刻館を紹介。パパとママが会ったところなのよと言って終わりました。

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音無響子
「春香ちゃん…おうちに帰ってきたのよ。ここはね…パパとママが初めて会った場所なの…」

 

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結婚式後と同じく、タクシーから降りた響子さんが「ただいま」と言い、そして「おうち」に帰ってきたのよと。全てのことが一刻館を中心に起こったんですよね。そしてなにがあっても皆一刻館に帰ると。そして、その五代君と響子さんが出会った瞬間から今までの約7年間、ずっと読者はこの2人を見てきているわけで、ちょっとした神様目線でもあります。

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初登場の時五代君は19歳の浪人生で駄目人間でした。響子さんは惣一郎さんを亡くし半年足らずでまだ21歳でした。それがこの7年の間、ゆっくりと成長していき、一つ一つ問題をクリアして今に至るわけですが、それを全部見ているんですよね。フィクションの漫画なのは重々承知しているのですが、世界観が非常にしっかりしていて、現実世界をモチーフとしているラブコメなので、まるでこの世界が本当にあり、五代君や響子さんも存在し、そして彼らを神様目線で見守っている感覚が襲ってくるんです。他にも面白いラブコメやラブストーリーの漫画は沢山あるのですが、ここまで本当に存在するかのような錯覚になる漫画はこのめぞん一刻だけです。

 

 

一刻館のその後

エピローグで朱美さんが茶々丸のマスターと結婚し、茶々丸の2Fに生息中とありましたが、二階堂と同じく、朱美さんも一刻館を出て行っているんです。そのことがわかるのが、朱美さんが一刻館に「来る」ところで、一刻館で五代君と響子さんの帰りを待っていた一の瀬さんと四谷さんとは違い、朱美さんは外から来るんです。ここは結構寂しく感じました。アニメ全話レビューの方でも書いているのですが、めぞん一刻における一刻館の成立要件は何かと言えば、実は五代君と響子さんの存在ではなく、一の瀬さん、四谷さん、朱美さんの3人だと思っています。この3人衆の一角が崩れてしまったんです。

 

一刻館の恒例行事と言えば宴会です。五代君や響子さんを肴に…もといオモチャにして、一の瀬さん、四谷さん、朱美さんが酒を飲む。これがもう実質できなくなってしまったんです。五代君は家庭を持ち、響子さんと管理人室に住んでいるので、これまでのように五代君の部屋で宴会なんてことはできませんし、さすがに強引に引っ張ってくることも難しいでしょう。そしてなんと言っても一刻館3人衆の1人朱美さんがいなくなったことを考えると、一の瀬さんと四谷さんの2人で飲む…ところは想像できません。あくまで朱美さんも含めた3人いてこそ、あの宴会の画が様になっていたので、おそらくあの頃の宴会はもう戻ってこないでしょう。これを想うと、五代君と響子さんのゴールは嬉しいのですが、読者が知っている一刻館の崩壊を容易に想像できて、少し切なくなってしまいます。

 

更に、一刻館の空き室が一気に増えてしまったことで、一刻館そのものの存続も危ういのではないかなと想像します。管理人室に五代君と響子さん、そして春香ちゃん。1号室に一の瀬花江、一の瀬氏、賢太郎。2階の4号室に四谷さん。一刻館で埋まっている部屋はたったこれだけです。管理人室を除けば、6部屋中2部屋しか埋まっていないんです。1階はともかく、2階なんて四谷さんのみですよ…。四谷さんはののぞきが趣味で、ことあるごとに五代君の部屋や朱美さんの部屋を覗いていましたが、これが全くできなくなってしまいました。また、四谷さんがからかう人間もいなくなってしまい…。四谷さんどうするんでしょうね。もしかして賢太郎を次のオモチャにするのか、それとも新住人でも入ってくるのか…。

 

めぞん一刻のその後の妄想

ここでめぞん一刻のその後を妄想してみます。

 

まず一刻館の状況ですが、前述したように6部屋中4部屋が空き部屋という危機的状況。この一刻館を存続させるなら、せめてあと2部屋くらい埋めないと苦しいです。さすがに家賃収入が60,900円(予想)では、いくらお金持ちの音無家が半分ボランティアとして一刻館を運営しているととしても、続けさせてくれるかどうか…。

 

また、一刻館は連載当時としてもボロく、古臭い下宿風のアパートと言われていたので、音無家がアパート経営を続けるなら、立て替えもあるかも知れません。しかしその場合、この一刻館のような下宿スタイルとはならず、各部屋きちんと別れた標準的なアパートになってしまうでしょう。そうなると、今までのような住人同士の交流がなくなってしまいます。そして家賃もおそらく、今のように1ルームで20,300円、2Kで40,600円なんで破格の値段も都内ですし無理でしょう。そうすると一の瀬さん一家や四谷さんは払えるのかどうか…。

 

この一刻館の所有者は音無老人です。つまり音無家ですが、財産を相続するのは間違いなく郁子ちゃんの母(惣一郎さんの姉)でしょう。音無老人はもう年なので、今更一刻館の経営や立て替えには興味がないか、実権がない、もしくは近いうちになくなると思われ、そうすると一刻館の運命は、この郁子ちゃんの母に掛かっている気がします。更にその後のことを考えると、次にこの財産(一刻館)を相続するのは郁子ちゃんです。一刻館の所有者が郁子ちゃんになるなんてなんか不思議な感じです。さすがにその頃には立て替えられているのでしょうけどね。そうしたらもしかしたら郁子ちゃんが新一刻館の管理人になるかも知れません。そしてそこでもなにか物語が展開されるかもなんて想像してしまいます。

 

めぞん一刻は終わらない?

めぞん一刻はそのタイトルの通り、一刻館で起こるでき事が中心の物語でした。これを考えると、今回五代君と響子さんの物語は終わった物の、一刻館は存続しているわけで、めぞん一刻の物語自体は、私たちの知らないところで存続しているんでしょうね。

 

五代君と響子さんが結婚してから春香ちゃんが生まれるまでの1年感は時間が飛びましたし、春香ちゃんを連れて帰ってきた後のことも一刻館を舞台にした物語、つまりめぞん一刻になります。それが漫画になるかどうかは別の問題として、なにせ一刻館での物語がめぞん一刻ですからね。

 

そう考えると賢太郎と郁子ちゃんの話や、新しい住人が入ってきてドタバタ、春香ちゃんの成長を見るホームコメディなんかも、めぞん一刻として成立するんだろうなあと思います。

 

何回読んでも面白い

めぞん一刻は何回読んでも面白く、最終回が近付くと胸がドキドキしてしまいます。面白い漫画でも1回読めば十分との物があったり、何回も読める物があったりするのですが、これは明らかに後者で、何回読んでも面白いです。

 

登場人物の心の内を知ってもう一度読むと、あの発言はそういうことかと納得することがあります。サブタイトルが高橋留美子さん独特の言葉のセンスで作られている物が多く、どの言葉に引っ掛けた物か、内容のどこに掛かっているのかを考えるのも楽しいです。7年間の話なので、繰り返される年中行事を見比べ、同じようなところや変わっているところを見比べるのもまた一興です。登場人物や話の枝葉だけ変わった対になるような話もあるので、それを探し出して見比べ、どのように捻っているのか探るのもまたアリです。そして読んでいる自分の状況(年齢や立場、そのときの気持ち)で違う角度から面白さを見付けることまでできます。

 

暫く漫画を読んでいない人は、また久々に読んでみるのも違った面白さがあってお勧めです。

 

総評

このめぞん一刻に関しては感謝しかありません。生み出してくれた作者の高橋留美子さん、制作に関わったアシスタントやスタッフ、出版関係の方全てに感謝です。

 

また、全161話を毎日1話ずつレビューしてきたわけですが、実に日数にして4ヶ月半以上でした。こんな長い企画にお付き合いいただき有り難うございました。9月頃から忙しくなり、それに加えて毎日レビューで時間をと取られ、ほとんどコメントにお返しできなくなってしまいました。これで一旦落ち着くので、また頂いたたコメントにお返しする時間ができると思います。

 

めぞん一刻の漫画全話レビューはこれにて終了です。最後に総括として一つ記事を書く予定ではありますが、ここまで長いことお付き合いいただき有り難うございました。

 

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